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幾久しく幸せな日々
ひねもすのたりのたりかな 和田部長編
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和田営業本部長のひねもすのたりのたりかなな日々
冴木課長の風邪の日
「すみ、げほ、げほ、、ません。さえ、、きです。あの、宮本の案件で、、ごほん、ううんっ!、、相談ありまして、、、。」
俺の社用携帯に、スカしたツラした憎めない部下からいつもとはだいぶ違った声で電話があった。
こりゃあ風邪だな。無理に喋るこたぁねえと思うが、コイツに言っても無意味だろう。
「おい、聞きづれぇからメールにしろ。あと、そんなんじゃ仕事にならねえ。会社来てんなら早く帰れよ。」
優しい俺は部下に働けとは言わねえが、業務が滞りない様に連絡、報告はさせる。
「は、、ごほん、ごほん。家です。メール、、します。」
ものすごい声で電話が切れた。
、、、心配だねぇ。
ついついニヤリとしてしまう。
電話が出来るんだから死にそうってことはないんだろう。だが、アイツは一人暮らしだ。ここはあの美人ちゃんにお見舞いさせるのが良いよなぁ。。。まあ、でも1日休んだくらいじゃお見舞いにわざわざ行く理由にはちょっと弱いな。
ここは、明日も休んだらこの俺が一肌脱いでやろうじゃねえか。
「ちょっと、何企んでるんだよ?部長会議の資料にそんな面白い事は書いてなかっただろ?」
退屈な部長会を終え、喫煙室でニヤリとしながらタバコをくゆらせていた俺に話しかけてきたのは、人事部長の川上だ。腐れ縁のコイツにも面白いネタを提供するか。あ、でもコイツにはあの嫁がいたか。
「なあ、今日は冴木が病欠って知ってるか?」
「へえ、そうなんだ。珍しい。最近インフルエンザも流行ってるし、心配だねぇ。あ、うちの姫は大丈夫かな?」
、、相変わらず嫁中心だな、お前。。今は冴木の話をしてんだがな。まあいい。これはこいつのいつものこと。
「もし、明日も冴木が休んだら、冴木のとこに美人ちゃんを行かせようと思ってな。」
「くくっ。悪い顔してるねー。冴木君に恩着せて何させるつもりなの?、、まあ、楽しそうだから僕のお姫様にも言っておくよ。」
結局、二日連続の有給消化となった冴木にあの美人ちゃんを送り込み、ニヤニヤしながら恩着せがましくメールを送った。これで、アイツも俺の誘いに乗らざるおえないだろう。いつ飲みに連れて行くかと思っていたら、川上からヤツの嫁経由で冴木と美人ちゃんがクリスマスデートに行くとのネタを仕入れた。
こりゃあ、ここいらであの不器用そうな二人がくっつくに違いない。
そして、そのきっかけは俺。
なんていう美味しいオチ。まあ、もし冴木がバカやってあの美人ちゃんを取り逃がしても、それはそれで美味しいネタには変わらねえし、きっとそこで諦めるほど冴木の美人ちゃんへの執着は浅くはねえだろう。
そんなこんなで、週明け2課に様子を見に行った。
そこには塩をまいていた冴木とは別人のニヤ下がったただの男と、色っぺー女がいた。
っ、、!
俺は自分の口元をがしっと掴み、必死に笑いをこらえた。
本当は、床に這いつくばって笑い転げたいぐらいだが、それはあの美人ちゃんにはちと可哀想だし、冴木に二課への入室を出禁にされそうだ。そして久しぶりにカワイイ部下を強引に飲みへと連れ出す。今日はクリスマスだが、そんなことは知ったこっちゃねえ。だって、昨日散々勤しんだんだろう?毎日じゃ嫌われるぞ。
クリスマス 終業後立ち飲みバーで
クリスマスに甘い予定がない奴らがひしめく立ち飲みバーはガヤガヤとざわつき、必要に迫られた近い距離感は、心の壁をたやすく突き崩す。
「おい、幸せそうなツラしてなんだよ。俺にも少しは愛想良くしろ。」酒を片手に冴木をからかう。
「こんな日にわざわざ飲みに連れ出す上司にいい顔なんて出来るわけないじゃないですか。」諦めた様に麗しい顔を歪めて言う。
そんな事言っちゃっていいのかねぇ。お前は俺に恩義があるんじゃねえの?
「お前、誰のおかげであの美人ちゃんに甲斐甲斐しくお見舞いをしてもらえて、かつ、デートに誘えて、し、か、も、ラブラブになれたと思ってるんだ!」俺が今日一番言いたかった事、お前には感謝の心が足りんのだ。
「う゛、、ごほっ、。」
酒を詰まらせ、涙目になる冴木を見ると、俺の心は幾分満たされた。しかし、まだ序の口だ。
「あんな細腰相手に毎日無理させちゃ、早々に逃げられるぞ。今日ぐらいは恩人に付き合えよ。どうせ、あの美人ちゃんと一緒にいたらお前のスカしたブツも我慢ならねえんだろ?」
ニヤリと笑う俺は楽しくてしょうがない。
「、、もう、勘弁してください。。感謝はしますが、彼女との事を色々妄想するのはやめてください。セクハラですよ。」気まずそうに、テーブルに肘をついた手で髪の毛をかき乱しながら文句を言うコイツに感じるのは、ただの照れ隠しと、垣間見える独占欲。誰かにあの美人ちゃんの痴態を妄想させることも許しがたいってことか。
ラブは人を変えるねぇ~。お熱いこって、何よりだ。まあ、湧いたコイツをやっぱり飲みに誘って良かったと確信する。
「幸せなのは何よりだ。したくもない苦労をして、やった努力も認められないっていうどん底からやっと掴んだラブだ。大事にしたらいい。
でもな、大事ならちゃんとお前が守れよ。社内恋愛は、周りに弱みを晒してる様なもんだ。お互いが、お互いの評価を落とさない様にしっかりやれ。くっついたからこそ、さらに周りの予想の上をいく成果を出して、誰にも文句は言わせるな。それがお前が出来る美人ちゃんの守り方だ。
、、まあ、それで仕事にかまけて放っておくと美味しいご馳走は横からひょいっと盗られちまうからな。誰にも盗られたくないなら、早くしっかりと目に見える形で捕まえろ。」
俺は左手を軽く掲げ、薬指の指輪をちらつかせる。
「、、肝に命じます。。」
くく、真面目な顔しちゃって、盗られることを想像でもしたんだろ、しょうがない奴。でも、お前にはもっと尻を叩く必要があると俺は思うんだ。
「お前さ、分かってると思うけど春には1課に異動は決定だ。
正式な内示は3月には出るが、2課に来て5年だから、お前も予想はしてただろ?まだ周りには口外禁止だが、知っておいた方がいい。あの美人ちゃんと楽してべったりいつまでも居られるわけじゃねえ。一課に行けば出張も多いし残業も増えるが、それをどうコントロールするかはお前次第だ。
まあ、お前ならやれると思ってる。せいぜい逃すなよ。」
バシンと背中を叩くと、しかめ面をされた。なんだよ、気合いだよ気合い。
さて、言いたいことも言ったし、俺の家には俺にはもったいない嫁が待っている。さっさと帰って、今日も可愛がってやらなくては。
冴木課長の風邪の日
「すみ、げほ、げほ、、ません。さえ、、きです。あの、宮本の案件で、、ごほん、ううんっ!、、相談ありまして、、、。」
俺の社用携帯に、スカしたツラした憎めない部下からいつもとはだいぶ違った声で電話があった。
こりゃあ風邪だな。無理に喋るこたぁねえと思うが、コイツに言っても無意味だろう。
「おい、聞きづれぇからメールにしろ。あと、そんなんじゃ仕事にならねえ。会社来てんなら早く帰れよ。」
優しい俺は部下に働けとは言わねえが、業務が滞りない様に連絡、報告はさせる。
「は、、ごほん、ごほん。家です。メール、、します。」
ものすごい声で電話が切れた。
、、、心配だねぇ。
ついついニヤリとしてしまう。
電話が出来るんだから死にそうってことはないんだろう。だが、アイツは一人暮らしだ。ここはあの美人ちゃんにお見舞いさせるのが良いよなぁ。。。まあ、でも1日休んだくらいじゃお見舞いにわざわざ行く理由にはちょっと弱いな。
ここは、明日も休んだらこの俺が一肌脱いでやろうじゃねえか。
「ちょっと、何企んでるんだよ?部長会議の資料にそんな面白い事は書いてなかっただろ?」
退屈な部長会を終え、喫煙室でニヤリとしながらタバコをくゆらせていた俺に話しかけてきたのは、人事部長の川上だ。腐れ縁のコイツにも面白いネタを提供するか。あ、でもコイツにはあの嫁がいたか。
「なあ、今日は冴木が病欠って知ってるか?」
「へえ、そうなんだ。珍しい。最近インフルエンザも流行ってるし、心配だねぇ。あ、うちの姫は大丈夫かな?」
、、相変わらず嫁中心だな、お前。。今は冴木の話をしてんだがな。まあいい。これはこいつのいつものこと。
「もし、明日も冴木が休んだら、冴木のとこに美人ちゃんを行かせようと思ってな。」
「くくっ。悪い顔してるねー。冴木君に恩着せて何させるつもりなの?、、まあ、楽しそうだから僕のお姫様にも言っておくよ。」
結局、二日連続の有給消化となった冴木にあの美人ちゃんを送り込み、ニヤニヤしながら恩着せがましくメールを送った。これで、アイツも俺の誘いに乗らざるおえないだろう。いつ飲みに連れて行くかと思っていたら、川上からヤツの嫁経由で冴木と美人ちゃんがクリスマスデートに行くとのネタを仕入れた。
こりゃあ、ここいらであの不器用そうな二人がくっつくに違いない。
そして、そのきっかけは俺。
なんていう美味しいオチ。まあ、もし冴木がバカやってあの美人ちゃんを取り逃がしても、それはそれで美味しいネタには変わらねえし、きっとそこで諦めるほど冴木の美人ちゃんへの執着は浅くはねえだろう。
そんなこんなで、週明け2課に様子を見に行った。
そこには塩をまいていた冴木とは別人のニヤ下がったただの男と、色っぺー女がいた。
っ、、!
俺は自分の口元をがしっと掴み、必死に笑いをこらえた。
本当は、床に這いつくばって笑い転げたいぐらいだが、それはあの美人ちゃんにはちと可哀想だし、冴木に二課への入室を出禁にされそうだ。そして久しぶりにカワイイ部下を強引に飲みへと連れ出す。今日はクリスマスだが、そんなことは知ったこっちゃねえ。だって、昨日散々勤しんだんだろう?毎日じゃ嫌われるぞ。
クリスマス 終業後立ち飲みバーで
クリスマスに甘い予定がない奴らがひしめく立ち飲みバーはガヤガヤとざわつき、必要に迫られた近い距離感は、心の壁をたやすく突き崩す。
「おい、幸せそうなツラしてなんだよ。俺にも少しは愛想良くしろ。」酒を片手に冴木をからかう。
「こんな日にわざわざ飲みに連れ出す上司にいい顔なんて出来るわけないじゃないですか。」諦めた様に麗しい顔を歪めて言う。
そんな事言っちゃっていいのかねぇ。お前は俺に恩義があるんじゃねえの?
「お前、誰のおかげであの美人ちゃんに甲斐甲斐しくお見舞いをしてもらえて、かつ、デートに誘えて、し、か、も、ラブラブになれたと思ってるんだ!」俺が今日一番言いたかった事、お前には感謝の心が足りんのだ。
「う゛、、ごほっ、。」
酒を詰まらせ、涙目になる冴木を見ると、俺の心は幾分満たされた。しかし、まだ序の口だ。
「あんな細腰相手に毎日無理させちゃ、早々に逃げられるぞ。今日ぐらいは恩人に付き合えよ。どうせ、あの美人ちゃんと一緒にいたらお前のスカしたブツも我慢ならねえんだろ?」
ニヤリと笑う俺は楽しくてしょうがない。
「、、もう、勘弁してください。。感謝はしますが、彼女との事を色々妄想するのはやめてください。セクハラですよ。」気まずそうに、テーブルに肘をついた手で髪の毛をかき乱しながら文句を言うコイツに感じるのは、ただの照れ隠しと、垣間見える独占欲。誰かにあの美人ちゃんの痴態を妄想させることも許しがたいってことか。
ラブは人を変えるねぇ~。お熱いこって、何よりだ。まあ、湧いたコイツをやっぱり飲みに誘って良かったと確信する。
「幸せなのは何よりだ。したくもない苦労をして、やった努力も認められないっていうどん底からやっと掴んだラブだ。大事にしたらいい。
でもな、大事ならちゃんとお前が守れよ。社内恋愛は、周りに弱みを晒してる様なもんだ。お互いが、お互いの評価を落とさない様にしっかりやれ。くっついたからこそ、さらに周りの予想の上をいく成果を出して、誰にも文句は言わせるな。それがお前が出来る美人ちゃんの守り方だ。
、、まあ、それで仕事にかまけて放っておくと美味しいご馳走は横からひょいっと盗られちまうからな。誰にも盗られたくないなら、早くしっかりと目に見える形で捕まえろ。」
俺は左手を軽く掲げ、薬指の指輪をちらつかせる。
「、、肝に命じます。。」
くく、真面目な顔しちゃって、盗られることを想像でもしたんだろ、しょうがない奴。でも、お前にはもっと尻を叩く必要があると俺は思うんだ。
「お前さ、分かってると思うけど春には1課に異動は決定だ。
正式な内示は3月には出るが、2課に来て5年だから、お前も予想はしてただろ?まだ周りには口外禁止だが、知っておいた方がいい。あの美人ちゃんと楽してべったりいつまでも居られるわけじゃねえ。一課に行けば出張も多いし残業も増えるが、それをどうコントロールするかはお前次第だ。
まあ、お前ならやれると思ってる。せいぜい逃すなよ。」
バシンと背中を叩くと、しかめ面をされた。なんだよ、気合いだよ気合い。
さて、言いたいことも言ったし、俺の家には俺にはもったいない嫁が待っている。さっさと帰って、今日も可愛がってやらなくては。
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