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初恋は香りとともに
過去と現在 前半
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華視点
「悪い、小1時間で戻る。ゲスト、どうせびしょ濡れやろ。一旦ホテルの部屋案内して、集合はディナー予約した15分前に客室迎え行くって伝えといてな。」
懐かしい関西訛りの東京弁。
どうやら元カレは仕事の取引先を観光に連れて来ていたようだ。そういえば、昔商社の営業はホストみたいに相手をもてなさなければ、仕事なんてあっという間になくなる。なんて言ってたなぁ。。相変わらずだと元カレを見つめる。
2年、3年振り?ちょっと痩せたかな?そう思ってると、
「デート邪魔して悪いな。アレ彼氏?めっちゃこわいわー。」
おどけながら話しているが、本心ではないのはなんとなく分かる。
「どこで話すの?」
思ったより冷たい声が出た。これが私の本心なんだろう。
もう、傷を掻き壊すような事はしたくないのに、どうして会いたくない時に限って、昔も今も出会うんだろう。
私、なんか悪い事したかな。。課長は笑って見送ってくれたけど。
課長にとっては、大した事ないんだろうな。あのまま今日は帰るって言えば良かったかも。待たせてるの申し訳ない感じ。
「水族館出たとこの裏にベンチあんねん。こんな寒い日、そんなとこ誰もおらんからそこ行こか。」
水族館を出て、裏手に曲がると確かにベンチが数個あり、真っ暗でこんなに寒い中誰もいない。
元彼が座った方と反対側のベンチのはじに座る。
「はは、結構クルな。この距離。しゃーないわ。俺のせいや。」
泣きそうな顔なんてしないで欲しい。
私は、あれからやっと今、ここまで立ち直ったのに。
「ずっと、謝りたかった。ちゃんとな。
駅であんなの見せられたら、もう会いたくないって言うんはよう分かる。
それでもな、話したかった。浮気した理由も、華ちゃんが悪いんやない事も。」
浮気した理由?そんなこと?そんなの聞きたいと私が思ってると思うの?
「別に、興味ない。それだけなら、帰る。」
立ち上がろうとした私の手を元彼が掴もうとして、私がさっと後ずさる。
「、、ごめん。触られたくないな、俺に。
華ちゃん思ってる事とちゃうねん。
もう、最後やから聞いて。頼む。」
懇願する元彼に、どうしようかと思ったが、「最後」と言われ渋々座り直した。
そうして聞く元彼の話は、あの時の私には想像できないものだった。
「俺、焦ってたんだ。同期はみんな海外駐在行ってんのに、俺はずっと国内で腐ってて。でも、商社つったら、女の子にはモテる。
だから一生懸命カッコつけて、そんな時華ちゃんに会ったんだ。
可愛らしいええ子やなって思ってたのに、仕事どんどん覚えて、デートなんてそっちのけで仕事してて。
カッコつけてる俺が仕事と俺どっちが大切?なんて女々しい事言えんかった。
そん時、カフェの子が近寄って来たんや。
最初はダメだって言った。
でもな、華ちゃん広報に行ったらさらに会えんようになって、俺華ちゃんにも置いてかれたんやなと思った。
いい訳してるのはよう分かる。
俺が甘ちゃんで、しょうもなかったんや。
結納キャンセルして、華ちゃんに会えんようになって、めっちゃ後悔した。
でも、もう戻らないって諦めたくなくて一度会社の前で待ち伏せした。
そしたら、見たことある華ちゃんの同期の子がおって、話しかけたらめっちゃ怒られてん。
お前のせいで華は仕事辞めたんだ!あの子の人生めちゃくちゃにしてよく顔出せるな!って。
そん時、やっと俺、自分がやらかした事を理解したんや。
、、本当に申し訳なかった。」
元彼は私に向かって深々と頭を下げた。
なんて言っていいか、分からなかった。
元彼が浮気したのが一番悪い。
それはそうなんだけど。。
胸が、痛くて苦しい。
でも、それを元彼に悟られたくない。
「頭、上げて。」
毅然と言う。全然、傷ついてないって顔で。
そう言うと、元彼は私とは反対に泣きそうな顔をしてた。
元彼のこんな顔は付き合ってる時見た事なかったな。
私、元彼の事好きだったけど、ちゃんと元彼っていう人を分かってなかった。
彼の事、大人の男だからとどんな風に、どんな事を不安に思ってるかなんて気付きもしなかった。
それで、最後は元彼から逃げ出した。また昔の彼氏の様に浮気されたって。
「もう、、いい。分かった。」
私はそれだけを言う。
別れた私達は、もう戻らない。責めても変わらないし、下手に慰める必要もない。お互いのために。
「余計なこと言っていいか?」
元彼が苦笑いしながら言うから、目線で何?と視線を送ると、
「お前の彼氏も今頃相当ヤキモチ焼いてる。今日は、諦めろ。
そんで、、、幸せにな。」
。。。意味わかんないけど、最後の顔は好きだった元彼の顔だった。
私は元彼と別れ、水族館に小走りで戻る。
20分は過ぎてる。
課長はまだ私を待っていてくれるかな。
「悪い、小1時間で戻る。ゲスト、どうせびしょ濡れやろ。一旦ホテルの部屋案内して、集合はディナー予約した15分前に客室迎え行くって伝えといてな。」
懐かしい関西訛りの東京弁。
どうやら元カレは仕事の取引先を観光に連れて来ていたようだ。そういえば、昔商社の営業はホストみたいに相手をもてなさなければ、仕事なんてあっという間になくなる。なんて言ってたなぁ。。相変わらずだと元カレを見つめる。
2年、3年振り?ちょっと痩せたかな?そう思ってると、
「デート邪魔して悪いな。アレ彼氏?めっちゃこわいわー。」
おどけながら話しているが、本心ではないのはなんとなく分かる。
「どこで話すの?」
思ったより冷たい声が出た。これが私の本心なんだろう。
もう、傷を掻き壊すような事はしたくないのに、どうして会いたくない時に限って、昔も今も出会うんだろう。
私、なんか悪い事したかな。。課長は笑って見送ってくれたけど。
課長にとっては、大した事ないんだろうな。あのまま今日は帰るって言えば良かったかも。待たせてるの申し訳ない感じ。
「水族館出たとこの裏にベンチあんねん。こんな寒い日、そんなとこ誰もおらんからそこ行こか。」
水族館を出て、裏手に曲がると確かにベンチが数個あり、真っ暗でこんなに寒い中誰もいない。
元彼が座った方と反対側のベンチのはじに座る。
「はは、結構クルな。この距離。しゃーないわ。俺のせいや。」
泣きそうな顔なんてしないで欲しい。
私は、あれからやっと今、ここまで立ち直ったのに。
「ずっと、謝りたかった。ちゃんとな。
駅であんなの見せられたら、もう会いたくないって言うんはよう分かる。
それでもな、話したかった。浮気した理由も、華ちゃんが悪いんやない事も。」
浮気した理由?そんなこと?そんなの聞きたいと私が思ってると思うの?
「別に、興味ない。それだけなら、帰る。」
立ち上がろうとした私の手を元彼が掴もうとして、私がさっと後ずさる。
「、、ごめん。触られたくないな、俺に。
華ちゃん思ってる事とちゃうねん。
もう、最後やから聞いて。頼む。」
懇願する元彼に、どうしようかと思ったが、「最後」と言われ渋々座り直した。
そうして聞く元彼の話は、あの時の私には想像できないものだった。
「俺、焦ってたんだ。同期はみんな海外駐在行ってんのに、俺はずっと国内で腐ってて。でも、商社つったら、女の子にはモテる。
だから一生懸命カッコつけて、そんな時華ちゃんに会ったんだ。
可愛らしいええ子やなって思ってたのに、仕事どんどん覚えて、デートなんてそっちのけで仕事してて。
カッコつけてる俺が仕事と俺どっちが大切?なんて女々しい事言えんかった。
そん時、カフェの子が近寄って来たんや。
最初はダメだって言った。
でもな、華ちゃん広報に行ったらさらに会えんようになって、俺華ちゃんにも置いてかれたんやなと思った。
いい訳してるのはよう分かる。
俺が甘ちゃんで、しょうもなかったんや。
結納キャンセルして、華ちゃんに会えんようになって、めっちゃ後悔した。
でも、もう戻らないって諦めたくなくて一度会社の前で待ち伏せした。
そしたら、見たことある華ちゃんの同期の子がおって、話しかけたらめっちゃ怒られてん。
お前のせいで華は仕事辞めたんだ!あの子の人生めちゃくちゃにしてよく顔出せるな!って。
そん時、やっと俺、自分がやらかした事を理解したんや。
、、本当に申し訳なかった。」
元彼は私に向かって深々と頭を下げた。
なんて言っていいか、分からなかった。
元彼が浮気したのが一番悪い。
それはそうなんだけど。。
胸が、痛くて苦しい。
でも、それを元彼に悟られたくない。
「頭、上げて。」
毅然と言う。全然、傷ついてないって顔で。
そう言うと、元彼は私とは反対に泣きそうな顔をしてた。
元彼のこんな顔は付き合ってる時見た事なかったな。
私、元彼の事好きだったけど、ちゃんと元彼っていう人を分かってなかった。
彼の事、大人の男だからとどんな風に、どんな事を不安に思ってるかなんて気付きもしなかった。
それで、最後は元彼から逃げ出した。また昔の彼氏の様に浮気されたって。
「もう、、いい。分かった。」
私はそれだけを言う。
別れた私達は、もう戻らない。責めても変わらないし、下手に慰める必要もない。お互いのために。
「余計なこと言っていいか?」
元彼が苦笑いしながら言うから、目線で何?と視線を送ると、
「お前の彼氏も今頃相当ヤキモチ焼いてる。今日は、諦めろ。
そんで、、、幸せにな。」
。。。意味わかんないけど、最後の顔は好きだった元彼の顔だった。
私は元彼と別れ、水族館に小走りで戻る。
20分は過ぎてる。
課長はまだ私を待っていてくれるかな。
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