執着系上司の初恋

月夜(つきよ)

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初恋は香りとともに

溢れ出たもの 前半

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視点が混在します。2課の雰囲気をお楽しみください

2課の視点

「この契約が切れてしまい、再契約のない取引先なのですが、、、」
契約ファイルを広げ、真面目に冴木課長に質問するのは、白いタートルネックのセーターとカーキ色のジャージ素材のタイトスカートを履いた加藤さん。少しゆったり目なセーターに合わせたスカートはとっても素敵な曲線を描き、膝下まである長さが上品さを感じさせる。しかも、サイドに10センチほどのスリットが入り、タイトなシルエットを保ちつつ、動きやすさも兼ね備えているようだ。

「この契約ファイルでは、10年以上前の元契約に関しては確認ができない。10年以上前となると、システムが一新される前だから、データに入っているかどうか、、」
男性としては少し色白で、女性も羨ましがるような美肌を持つ冴木課長が、本人にとってはもう少し高さが欲しいだろうと思われるデスクに座り、長い脚を持て余す様に足を組み、これまた真面目に質問に答えている。
しかし、その目線は机の上の契約ファイルを見てはいないようだ。

課長、目線がセクハラです!!

おそらく、2課の総意。

麗しいアーモンド型の瞳は、加藤さんの慎ましいスリットを瞳孔が開き気味に見つめていた。
願わくは、加藤さん、お仕事の話に集中し、目の前のセクハラ野郎の様子など気がつかないであげて下さい。

これは、2課の懇願。

しかし、2課各々が思うことは様々だ。

課長の本能を感じさせる目線、、きゃああっー!たまらない!文子、興奮しちゃう(佐々木女史)

お前は、男子中学生か。綺麗な顔の無駄遣いね。。。(美魔女谷口)

課長、初めて見ました。課長のオス顏。社内風紀の観点から見るとアウトですね(冷静沈着男子山城)

ナイスエロです!スリット。課長、俺は課長の味方です。(忠犬宮本)

冴木課長の愚行を誰も注意しないのは、自らの身の保身と、毎朝、念願の加藤さんからコーヒーをもらうと、満面のイケメンスマイルを繰り出すのに皆が少し絆されているから。
そんなに好きじゃ仕方ないよね。。。とつい思ってしまう。イケメンは得なものだ。まあ、今のところ加藤さんに害が出ていないからこそ許されている。

「んー、社内クラウドを確認しても、データが見れないな。10年以上前のものは紙ベースでの保管みたいだ」
長い指でマウスを操り、パソコンの画面を見つめる姿はいつも通りの出来る男、冴木課長だ。
皆一安心し、仕事に取りかかる。
そこに一名、発言者が。
「僕が資料室からファイル持ってきますよ。ついでに、主要取引先の過去の契約も入力しちゃいましょ。」
気がきく忠犬宮本。
「じゃあ、私も行きます。資料室はまだ行ったことがないですし、ファイルも主要取引先分もいるとなると一人じゃ大変でしょう?何より、私が言い出した事なので。」
どこまでも真面目加藤さん。
二人は扉に向かって歩き出した。しかし、
「お前には用がある!」
宮本の右肩を掴み、凄みを聞かせ無理やり選手交代したのは心の狭い冴木課長。
宮本は上下にひたすらコクコクとうなづき、佐々木さんはキラキラとした目で加藤さんと冴木課長を見送った。


華 視点
課長とエレベーターに乗り、3階下がり大会議室や記者会見用応接室など普段使われないスペースを通り過ぎたところにある資料室へと向かう。歩きながら、前を歩く課長のリーチの長さに驚く。颯爽と歩く後ろ姿を見つめていると、ついつい引き締まった太ももや、臀部に視線がいってしまう。そんな時、
(ダメダメ、見とれていては職を失う)最近心の中で一番効果のある呪文を唱える。イケメンの攻撃はするっと鋼鉄の仮面をすり抜けるので困りものだ。こうして見とれていると二人の距離が離れていたので、小走りに近づいていく。

「ごめん。ちょっと早かったな。」

課長はそう言って、振り返りざまに、微笑し手を差し伸べた。

ん?手?

前方に、微笑み手を差し出すイケメン1人。

イケメンの視線を受け止める私、1人。

どうやら、お手をどうぞ、と言われている。

いやいやいやいや、心の中で頭が高速左右回転する。
おかしいよね?私、資料室に行くだけだよ。
会社だよ。オフィスだよ。道は平坦。山道はなし。その手は必要ないと思われます!
それとも、足が遅いから待ってらんねえよ的な?
と混乱している間に、ぱっしっと手首を掴まれ連れて行かれる。
えぇぇぇっと頭は混乱中だが、掴まれた手首から課長の手の熱くてしっとりとした感触が伝わってくる。
状況を処理できなくなった頭は、課長結構体温高いね。なんて感想をもらした。

資料室に入るとさっと手は離され、課長は黙々とファイルを探し出した。
ほっとしたような複雑な気持ちで、離された手首に課長の感触を感じつつファイルを段ボールごと集め、大きいものは課長が、小さいものを私が運ぶ事になった。
ダンボール二箱を床の上から持ち上げ、課長を見ると、なぜか下の方を凝視していた。
なんか落としたかな?と思って、自分の足元の床を見るが何もない。

「あ、加藤、、。脚が、いやスカートがめくれて、、その、、見えている。」
真っ赤な顔をした冴木課長の言葉に、私の今日の服装を思い出し、慌てて段ボールを乱暴に置こうとした時、

「ビリリーッ」

スカートのスリットに引っかかっていた段ボールの底を止めていた大きな梱包用のホチキスの芯が、乱暴に段ボールを置いた事で、スカートを引っ張りスリットを大きく広げてしまった。
瞬間的に、手で裂けた部分を隠し、座り込むが、既に手遅れだ。羞恥に顔が赤くなり、目が潤んでしまう。

絶対見られたぁ、、、

私の、、黒いガーターストッキング、しかもレースサスペンダー付き。

今日は、こないだ買ったジャージ素材のスカートを履いて見たところ、どうにもショーツの線が気になった。
そこで、前の職場に行った日、後輩から「私の気持ちです!」と渡されたエロエロ下着達を思い出した。
私の地味なクローゼットに異彩を放つ、色とりどりのレース達。ご丁寧に3着セットで、コーディネートされていた。ガーターなんて履いた事がないので、ドキドキしながらショーツともに履いたところ、ジャージ素材のスカートに全く下着の線が出ず、後輩の心遣いに感謝したのに。。
話が違うよ!どんなトラップだ。

「いや、あの、加藤。そんなに見てないから大丈夫だ!」
課長の慰めにならない慰めの言葉が聞こえ、涙目になりながら顔をあげると、

「っ、!!」
課長は、大きな手で顔を隠し、はぁぁーと長いため息を吐いた。

やばいと思い、こんなエロエロ下着を毎日履いているわけじゃないと言い訳を試みる。

「違うんです。これは、プレゼントされて。トラップが、、」

「プレゼント?誰に?」真顔になった課長に聞かれる。

え?そこなの?エロエロ下着じゃなくて?

「前の職場の後輩、、女の子です。」とりあえず答える。

「そうか。。。いい後輩だな。」
すっかりいつも通りの顔の冴木課長は、スーツのジャケットを脱ぎ、しゃがみこんで私の肩にそれをふわりと掛けた。ジャケットから課長の爽やかで、ほのかに甘いバニラの香りがした。

「その、、すごく似合ってた。」

課長は少し目元を赤らめそう言うと、ちょっと待ってろと言い資料室を出て行った。

自分の顔がぼふっと顔が赤くなり、耳までどこかにぶつけたようにカッと熱く感じた。

イケメンの集中攻撃を受けました。
鋼鉄の仮面の威力無効化しました。

そんな画面が頭に浮かんだ。




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