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初恋は香りとともに
君のとなり 後半
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冴木課長視点
会社の入り口ロビーに入ると、何かと理由をこじつけ、隙あらばと俺に誘いをかける肉食女子達がいた。
その彼女達に難癖つけられてる女の子が一人。
凛とした表情で、相手の心の中を見据えるような強い視線。
その表情は、何か吹っ切ったように迷いがなく惚れ惚れするほど美しかった。
あれは加藤だと気づき、驚きとともに、加藤をそこから連れ去りたくなった。
なぜなら、髪を切り、露わになった白く綺麗な首筋も、誘うように色づく唇も、コートの下からうかがえる艶かしいヒップから足首までの曲線も、他の誰にも見せたくないと強く思ったから。
じりじりと焼けるような独占欲を止める事ができない。
この暴力的な気持ちさえ、加藤を想う気持ちの一部分なのか。
こんな気持ち、俺は知らない。できるなら、知りたくない類のものだ。
すると、加藤が信じられない啖呵を切った。
顔が、身体が熱を持つ。加藤に認められていた嬉しさ、俺を助けようとする気持ち、そして、俺のとなりで成長しようと思ってくれた事。加藤は部下として言っている。分かっているのに、心音が外に聞こえそうなほど胸が高鳴る。
全くなんなんだよ。苛立ちさえ感じる。
俺は加藤の姿に、言葉に、こんなにもかき乱される。これが惚れるって事なのか。
「ねえ、冴木君。嬉しいのは分かるけど、加藤さん助けに行かないの?僕が加藤さんのとなりに立ってもいい?」
川上部長が面白がるようにこちらを伺う。
ああ、もうきっと俺の気持ちなど手に取るように分かるんだろう。
情けないのに、笑いがこみ上げてきた。
彼女の一言に一喜一憂し、振り回される自分。
自分をかき乱す存在は、出会ったら最後、どんなに抗おうと、もう元の自分には戻れないんだ。
それなら俺は、もう君を何があっても逃さないよう捕まえなくては。
「彼女のとなりは俺のもんです。」
誰にも明け渡す気がないと、不敵に笑う。
「くくっ。安心した。腹が決まったな。せいぜい振り回されろ。」
川上部長は満足げに笑った。
俺は、君のとなりに立つ。ただし、まだ今は上司として。
「俺の大事な部下への暴言は許さない。部外者の君たちに今後口出しはさせない。」
そう今までにない気迫で言い放った。
彼女達は、川上部長が連れて行ってくれるようだ。
加藤を見ると、なぜか「すみません」と謝られた。騒ぎを起こしたという事だろうか。
俺にとっては、何一つとして困ることなどない。
「おいで」
加藤の耳にそっと囁き、背に手を当て歩き出す。
エレベーターに乗り込み、隣に並ぶと加藤は少し、いや、だいぶあからさまに離れた。
この距離が今の二人の距離か。
「俺のとなりに立ってくれるんだろう?」
二人の距離を一歩縮め、そうであってくれとの願望を混ぜ込み、からかうように聞く。
「確かにそう言いましたけどっ!!」
そう言う加藤の顔は、赤く染まり、いつもの作られた表情ではなかった。
その可愛らしさに、俺はまた、性懲りも無く振り回される。
会社の入り口ロビーに入ると、何かと理由をこじつけ、隙あらばと俺に誘いをかける肉食女子達がいた。
その彼女達に難癖つけられてる女の子が一人。
凛とした表情で、相手の心の中を見据えるような強い視線。
その表情は、何か吹っ切ったように迷いがなく惚れ惚れするほど美しかった。
あれは加藤だと気づき、驚きとともに、加藤をそこから連れ去りたくなった。
なぜなら、髪を切り、露わになった白く綺麗な首筋も、誘うように色づく唇も、コートの下からうかがえる艶かしいヒップから足首までの曲線も、他の誰にも見せたくないと強く思ったから。
じりじりと焼けるような独占欲を止める事ができない。
この暴力的な気持ちさえ、加藤を想う気持ちの一部分なのか。
こんな気持ち、俺は知らない。できるなら、知りたくない類のものだ。
すると、加藤が信じられない啖呵を切った。
顔が、身体が熱を持つ。加藤に認められていた嬉しさ、俺を助けようとする気持ち、そして、俺のとなりで成長しようと思ってくれた事。加藤は部下として言っている。分かっているのに、心音が外に聞こえそうなほど胸が高鳴る。
全くなんなんだよ。苛立ちさえ感じる。
俺は加藤の姿に、言葉に、こんなにもかき乱される。これが惚れるって事なのか。
「ねえ、冴木君。嬉しいのは分かるけど、加藤さん助けに行かないの?僕が加藤さんのとなりに立ってもいい?」
川上部長が面白がるようにこちらを伺う。
ああ、もうきっと俺の気持ちなど手に取るように分かるんだろう。
情けないのに、笑いがこみ上げてきた。
彼女の一言に一喜一憂し、振り回される自分。
自分をかき乱す存在は、出会ったら最後、どんなに抗おうと、もう元の自分には戻れないんだ。
それなら俺は、もう君を何があっても逃さないよう捕まえなくては。
「彼女のとなりは俺のもんです。」
誰にも明け渡す気がないと、不敵に笑う。
「くくっ。安心した。腹が決まったな。せいぜい振り回されろ。」
川上部長は満足げに笑った。
俺は、君のとなりに立つ。ただし、まだ今は上司として。
「俺の大事な部下への暴言は許さない。部外者の君たちに今後口出しはさせない。」
そう今までにない気迫で言い放った。
彼女達は、川上部長が連れて行ってくれるようだ。
加藤を見ると、なぜか「すみません」と謝られた。騒ぎを起こしたという事だろうか。
俺にとっては、何一つとして困ることなどない。
「おいで」
加藤の耳にそっと囁き、背に手を当て歩き出す。
エレベーターに乗り込み、隣に並ぶと加藤は少し、いや、だいぶあからさまに離れた。
この距離が今の二人の距離か。
「俺のとなりに立ってくれるんだろう?」
二人の距離を一歩縮め、そうであってくれとの願望を混ぜ込み、からかうように聞く。
「確かにそう言いましたけどっ!!」
そう言う加藤の顔は、赤く染まり、いつもの作られた表情ではなかった。
その可愛らしさに、俺はまた、性懲りも無く振り回される。
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