執着系上司の初恋

月夜(つきよ)

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初恋は香りとともに

上司のつつがなく続く日々 プロローグ

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昼過ぎからどんよりとしたねずみ色の雲が低く広がって、季節はすっかり冬。
冷たい風に身体が冷やされ、モチベーションなんか上がるわけもなし。

得意先からの帰り道、気がつけばため息が出た。

今日はこのまま直帰していつものを片手にソファでくつろぎたい。。そんな思考にとらわれて、すぐそばの部下の存在を忘れていた。


「・・冴木課長、すいません。
僕のせいで、課長にまで謝罪のために同行させてしまって。」


そう申し訳なさそうに、縦に長い身体を折り曲げて俺に謝っていたのは入社二年目の宮本だ。


「いや、悪い。。宮本に対してのため息じゃないよ。自分に対してのため息だ。
大口案件を二年目の君に任せるのを決めたのは僕だし、進捗フォローを怠った僕にも非がある。
謝罪に同行するのは当然だ。
まあ、上司の謝罪の仕方も勉強になっただろ?」
やらかした事は戻らない。要はどう次に繋げるかだと不敵に笑ってみせる。
まあ、宮本の場合はこいつを育てる環境にも問題があるから、ここで詰んでも意味はない。

「課長っ!俺、課長について行きます!!課長の右腕になれるよう頑張ります!」

茶色のタレ目がちの目をキラキラさせた長身の宮本に、パーソナルスペースを無視した距離感で詰められると、綺麗な顔が近すぎてうざい。

「わかった、っとに、近いから。それに上司には 俺 じゃなく 僕 だと言ってるだろう。
  それに、今回は大事なかったが、同じミスは二度はするなよ。」
意識的に低い声と表情で念押しをする。

「、、っもちろんですっ!」
宮本はなぜか目元を赤くして、息が荒い?が返事は真面目だ。

若いっていいなとこいつを思えるのは、俺が30も半ばを過ぎたオッサンだからだろうな。
宮本は長身が際立つちっさい顔と無駄に眩しいキラキラ感溢れる奴なのに、冷めた所もなく真っ直ぐで努力家だ。
勢いで仕事をこなすのがたまに傷だが、、まあまだ若い。

「課長みたく、仕事の出来る大人な男になりたいんです!」

モデルのような細身の紺色スーツを着こなした今どき男子が息巻くのに苦笑する。
こんな風に慕われていると、フォローもしたくなるだろう。
別に、男にかわいさなど求めていないが。ついでに男に興味もないがな。
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