執着系上司の初恋

月夜(つきよ)

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絆を結う

小話 ユウマの献身

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初夜後のおまけ

昨夜気を失った華を抱きかかえ、もろもろ残滓を綺麗にしてからガウンを着せベッドへと寝かせた。
今はベッドで無防備な寝顔を見せている。
その安眠を邪魔しない様にさらりと前髪を撫でていると、どうしょうもなく自己嫌悪に陥る。
・・初夜って優しく甘く抱くもんじゃなかったか?
一昨日までは俺だって甘く甘くとろける様に抱こうと思ってたんだ。
でも実際俺の、俺だけの花嫁として姿を見せた華を見たら、そんなやせ我慢など吹っ飛んでしまった。何度も妄想したウェディングドレス姿の華は美しく、艶やかで・・禁欲的な色香に満ちていたから。
初日にこんなふうに抱いたら、少しは自重しなければ早々に逃げられてしまうと思い、明日からはとことん甘やかそうと眠りについた。
ふと目を覚ますと、薄明かりの部屋の中でベッドに一人。
・・目覚めた時にベッドに一人というのがたまらなく不安にかられる様になったのはいつからか。
ベッドから起き上がり素っ裸にガウンを引っ掛けると、ベッドルームを出た。
そこには窓辺で朝日の光を浴びただずむ華を見た。
うっすらと明るくなる室内で、朝日に染まる地平線を見る華の後ろ姿はなんとなく寂しげに見えて声をかけた。
振り返った華は涙を流していて・・。
昨夜の蛮行のせいかっ!?と血の気が引いた。
大丈夫か?と言いながら、もうユウマさんなんてっ!と見切りをつけられたら・・。
嫌な妄想が俺の頭を占め、急いで華へと近づき涙を拭う。
すると・・思ってはみない言葉が返ってきた。

俺がどれだけ華に囚われているか・・伝えきれていないのか?
俺が華を選んだんじゃない。
選ぶなんてもんじゃないんだ。
気がつけば、華だけが俺をこんなにも揺さぶる。
今までの人生をひっくり返す様な強烈な華に向ける執着心を自分でもまだ上手くはコントロールができない。
華が俺を受け入れてくれなかったら俺はどうなっていたかなんて、沼底に落っこちる様なことも想像できない。
「愛してる」
華が俺の手を包み囁いた。
流す涙はきらきらと朝日に照らされ、慈愛に満ちた表情に胸が苦しくなった。

ありがとう。俺なんかを・・。
ごめん。俺なんかが華を愛して。
重過ぎる想いが時として暴走する俺を許してくれ。
ただ、誰よりも愛している。

口を開けばみっともなく涙が溢れてしまうだろう。だから言葉にできない想いを、甘く溶けるようなキスで伝える。
腕の中光に染まる髪やほおに触れ、柔らかさを確かめる様に口づけを交わす。
きっと俺は何度も失敗するんだろう。
暗闇の中、抑えきれない熱で何度も溶け合い、
明るい日差しの中、華を愛する事の赦しを求め愛を込めてキスを贈る。
願わくば、これから先こんな夜と朝が続いていくように・・。

「・・でも、今日はダメですよ?」
腕の中、俺の胸に顔を埋めた華は言う。
「ごめん。」
自分の至らなさに申し訳なくなる。
「タキシードのユウマさんに私だって触りたかったのに・・。
あんな一方的に抱かれるのは・・寂しいです。」
腕の中、顔を上げた華の顔は目元を赤く染める。
・・俺も悪いけどさ、煽る華にも少しは原因があると思うんだが。
「タキシード、もう一回着ようか?今夜。」
そんな気持ちも愛おしいんだ。
「きょ、今日はダメって言ったじゃないですかっ。・・もうっ。お仕置きしちゃいますよ!?」
いやそれ、ご褒美でしょ?くくっと笑っていると、
「いいって言うまで、エッチ禁止ですっ!」
「!!」
ぷいっと腕の中からすり抜ける華。
「ま、待って・・。」「お風呂入ってきます。来ちゃダメですよー。」
情けない俺の声がこだまする。
部屋の奥からはシャワーの音と華の鼻歌。
「・・ははっ。」
くしゃっと前髪をかきあげ、すっかり明るくなった外を見る。
窓に反射するのはどうしょうもなく幸せそうな男。

・・さあ、明るい間にどうやって華に尽くそうか。

華の好きな事、好きな食べ物、喜んでくれるならなんだって用意する。
どうやって喜ばすか考え出したら心浮き立つ様な高揚感。
華の甘い肌を味わうのと同じくらい華の笑顔が見たいから。
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