執着系上司の初恋

月夜(つきよ)

文字の大きさ
上 下
82 / 110
絆を結う

愛でるもの 二課飲み会

しおりを挟む
美魔女谷口視点

主人が人の悪い笑みで冴木課長の後任人事を決めてから二ヶ月。
それにより、昔にちょっとばかり冴木課長と男女の関わりがあったと思われる安藤課長が二課にやってきて一ヶ月。
どんな事になるのかと様子見していたけれど・・。

今日は、冴木課長と安藤課長の送別会兼歓迎会。
長机の真ん中には美形な顔に甘やかな笑みを浮かべる冴木課長、その隣にはほんのり微笑む加藤さん。そんな糖分高めのカップルの前に、小馬鹿にした笑みを隠しきれない安藤新課長。
その安藤課長を私と山城君で挟む。

「酒のつまみにバカップル。・・胸焼けしそうね。」
シャンディガフを片手にため息混じりな安藤課長。

ため息の原因の目の前のカップルは・・。

「今日は寒かったから一層手が冷たいね?」
とテーブル下の加藤さんのひざ元へ手を伸ばし、甘い笑顔で話しかける冴木課長。
その距離15センチ。
ちょっと近すぎやしないかしら?
「て、手を握るのは・・。」
まだ羞恥心を捨てきれない29歳常識人加藤さん。
そのほおがふんわりと赤く染まる。
その様子を美形な狼がよだれを垂らして見ている・・。
よだれが頭に落ちてきそうよ?

胸焼け・・。
全くの同感だわ。
そして、どこか主人を思わせるその溺愛ぶり。
その溺愛重そうだけど、加藤さんが幸せならまあいいでしょう。
それに安藤課長も愛しい彼女を溺愛する冴木課長を見ても、ジェラシー的なものは感じられない。
うん、これなら主人の狙い通り?

「料理一通り頼みました!ここ海鮮が美味しいんですって!」
キラキラワンコこと宮本がカップルの隣に座ろうとする。
ああ、おバカさんねぇ。
「宮本、お前は谷口さんのとなりだ。」
さっきの甘い笑みはどこへ?ドスの効いた冴木課長の低音ボイスが響く。
加藤さんの隣に座ろうと中腰になった忠犬は、ボスの威嚇にピャッと俊敏に移動してきた。
「な、なんかすごい動機が・・。」
怒られてもどこかそれを喜ぶM気質な忠犬。
「いい彼女(飼い主)がいないと心配ねぇ。察しなさいよ。あの心の狭い溺愛上司の取り扱いぐらい覚えときなさい。」
「はい、彼女は可愛くて優しいので大丈夫ですっ!」
色素の薄い茶色の目を輝かせ女の子のようにキラキラと満面の笑みを浮かべる忠犬。
そう、飼い主の話は嬉しいのね?尻尾の幻覚が見えるわ。
「ちょっと、心が狭すぎやしないかしら、冴木課長。重い男は嫌われるわよ?ねえ、加藤さん?」
呆れたように言うのは安藤課長。
「あ、いや、ちょっと、困ります・・。」
「いいんだよ、あっちの方がドアに近いだろ?」
溺愛上司は困り顔の加藤さんさえ愛おしいらしい。
「・・加藤さん、明日からは私が上司だから。
苦しくなったらいつでもこちらに来てね。
待ってるわ。」
ほおづえをつき少しばかり首を傾げた安藤課長は、通常時は隠している小悪魔的な魅惑の笑みで加藤さんを魅了する。
「は、はい。」
ぽっとついその美貌に赤面する加藤さん。
・・それ、ダメなヤツよ?加藤さん。
「お、おまえ。」
とメラメラと対抗心を隠さない溺愛上司。
「明日から楽しみねぇ。」
とにっこり笑う安藤課長。

ううん、主人の狙い通り?かしら?
「そうですね。冴木課長は安心して一課に行って頂けますね?」
クスッと笑うのは冷静沈着男子山城。
「そうよ?安心して私に任せて。だいじーに、大切に、優しく甘やかしてあげるから。」
うふふと笑う安藤課長。
「「甘やかすはいらないでしょっ」」
これは皆の総意。
「あら、じゃあ厳しいのがお好み?」
意味ありげにペロリと唇を舐める安藤課長。

普通はないのかっ!?(皆の心の声)

「安藤課長?ほどほどに。面白いのは分かるけど。」
つい小言を言ってしまうのは私も歳をとったからかしら。
「ふふ、わかりますよね。でも気をつけます。」
こちらににっこり笑う安藤課長に他意は感じられない。
もしかしたら、思ってるより取り扱いしやすい子なのかしら?
「私、可愛い子見るとついかまいたくなっちゃうんですよ。」
ハイペースでグラスを空けた安藤課長はデキャンタに入った白ワインを自身のグラスに注ぎ、にこりと笑いながらこちらにも注ぐ。
「姉御肌なんですね。なんか分かります!」
忠犬宮本が笑う。
「・・姉御?うぅん、どうかしら。可愛いものを愛でるのが好きなの。」
白ワインの入ったワイングラスを片手に妖しく笑う安藤課長。
「め、愛でる?」
愛でるって一体?宮本と加藤さんの頭にはクエッションが。
そして、室内の様子をニマニマと冴木課長の奥となりで見ていた佐々木女史の頭には白百合が。
「まさかの禁断!?」
口からこぼれ出たセリフには気づいていないようだ。
全くねぇ、仕方がない子。
「ねえ、安藤さん。なんだかあなたって私の若い頃と似ているかもね?」
思わずデジャブを感じる憎めない存在。
「・・えっ、そ、そうですか?」
優しく微笑まれると少し恥ずかしいそぶりを見せる安藤課長。
どうやらまた一人、幸せにしたい可愛い子が増えたわね。




しおりを挟む
感想 36

あなたにおすすめの小説

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

エリート警察官の溺愛は甘く切ない

日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。 両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉

身体の繋がりしかない関係

詩織
恋愛
会社の飲み会の帰り、たまたま同じ帰りが方向だった3つ年下の後輩。 その後勢いで身体の関係になった。

鬼上官と、深夜のオフィス

99
恋愛
「このままでは女としての潤いがないまま、生涯を終えてしまうのではないか。」 間もなく30歳となる私は、そんな焦燥感に駆られて婚活アプリを使ってデートの約束を取り付けた。 けれどある日の残業中、アプリを操作しているところを会社の同僚の「鬼上官」こと佐久間君に見られてしまい……? 「婚活アプリで相手を探すくらいだったら、俺を相手にすりゃいい話じゃないですか。」 鬼上官な同僚に翻弄される、深夜のオフィスでの出来事。 ※性的な事柄をモチーフとしていますが その描写は薄いです。

Promise Ring

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
浅井夕海、OL。 下請け会社の社長、多賀谷さんを社長室に案内する際、ふたりっきりのエレベーターで突然、うなじにキスされました。 若くして独立し、業績も上々。 しかも独身でイケメン、そんな多賀谷社長が地味で無表情な私なんか相手にするはずなくて。 なのに次きたとき、やっぱりふたりっきりのエレベーターで……。

クリスマスに咲くバラ

篠原怜
恋愛
亜美は29歳。クリスマスを目前にしてファッションモデルの仕事を引退した。亜美には貴大という婚約者がいるのだが今のところ結婚はの予定はない。彼は実業家の御曹司で、年下だけど頼りになる人。だけど亜美には結婚に踏み切れない複雑な事情があって……。■2012年に著者のサイトで公開したものの再掲です。

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。 ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。 「案外、本当に君以外いないかも」 「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」 「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」 そのドクターの甘さは手加減を知らない。 【登場人物】 末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。   恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる? 田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い? 【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

処理中です...