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第3話 タロー、ルールを学ぶ
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「はいこれタローくんの分」
山というか丘というか、ちゃんと遊歩道的なものが整備されている、高尾山のようなところを越えた場所に会場はあった。ギルがいったとおり、半日もかからなかった。
ものすごい人だかり……いや魔物だかり。巨大な魔王城を背景に、円柱を切ったような、ローマのコロッセオ的な建物がある。その入り口に向かってまっすぐ続く道の両側に屋台と縁日がずらっと並んでおり、服装も容姿もツノの形も色とりどりの魔物が群がっているのだ。
いちごけずりとフレンチドッグと東京ケーキが好きなタローにとっては心が躍る風景のはずだが、さすがに無心で楽しむわけにはいかなかった。
ムルとジルは金魚を見ている。ギルはタローたちをおいてどこかに行っていたが、まもなく戻ってきてチケットのようなものを差し出した。
「<武闘会>の出場者からもお金とるのよ。あこぎよねえ」
「あ、そうなんですか」
「試合見てくでしょ。せっかくきたんだから。あたしたちの出番はもうちょっと後だけど、もうすぐ去年の優勝者がでるわよ」
「はい、じゃあ、せっかくだから。ありがたくいただきます」
「お金」
「えっ」
手を差し出すギル。タローはしかたなく財布を取り出した。ここの金銭単位はもちろん知らないし、日本の通貨が通用するのかわからなかったが、なんとなくいままでの展開から適当に二千円くらい出しておけばいいと感じた。
正解であった。
「ちょうどね。いちおう出場者割引になってるから……ジル! ムル! いくわよ!」
呼びかけられてジルとムルが走ってくる。どちらも口をもぐもぐさせているからなにか買い食いしていたのだろう。元気よく振り回されるムルの尻尾に魔物が二、三匹薙ぎ倒されている。
「ムル! 人混みで走らないでっていつもいってるじゃん」
「だってまた置いてかれたらやだもん」
「自分で控室に行ってればいいじゃない。ほらチケット。なくすんじゃないわよ」
「はあい」
ムルとジルの年齢はまったく読めない。黒トゲトカゲとピンクのカバの年齢を当てる技術はタローの数年にわたる業務実績のなかでも学ぶ機会がなかった。
ギルはタローと同じくらいと思えたが、なにせ紫系のいろいろ厳しいメイクが障壁となって判断がつかない。ただ、少なくともムルとジルにとっては引率してくれるお姉さんというポジションらしい。
ギル、ムル、ジル、タローの順に並んで歩く。途中で左右の店に引っ張られそうになるムルとジルをタローが軌道修正するはめになった。
入り口は巨大な石の門だった。小さなビルくらいある柱が左右にそびえ立つ。魔物たちがかなりの長さの列を作って待っている。みなチケットを手に待ちきれないという表情だ。
「えーとね、出場者入り口は別にあって……あ、あっちだ」
ギルについていくと石門の横にやや小さい、それでもムルの背丈の三倍はあろうかという鉄扉があった。そばにいた青鬼のような係員にチケットをみせ、はずれ村の者ですと名乗ると、なにかのチェック機能が働いたのか、扉は自動的に開いた。
中に入り、これまた広大な階段を上がっていく。あがるにつれ、何かの声援、太鼓の音、手拍子が聞こえてくる。
「ふわあああ……」
タローは自分でもまぬけだなあと思う歓声を上げた。
競技場はちょうどサッカーのスタジアムのように、横長のフィールドを何十段かの客席が取り巻いている構造だった。これまたサッカーで言えばちょうど選手入場が行われる場所の真上、もっとも高い位置にタローたちは立っていた。
客席の右のほうは青、左の方は赤の服装の客が多いように思えた。客席の最前部では巨大な旗が振られている。腹に響く迫力のある太鼓の音、そして凄まじい怒号のような応援歌が鳴り響く。
ド・ドンド・ドンドン! わーるきゅーれっ!
おーれたちのーむらのほこりー さーあーゆけよ しにーがーみーっ!
フィールドでは赤と青の服を着た合計二十人ほどが忙しく動き回っていた。赤は女性ばかりに見えた。青は男女混合か。先ほどの応援歌からすると……。
「赤いのはあれですか、戦場で死んだ人の魂あつめる女神様たちかなにかですか」
タローが指差すとジルが驚いた顔をつくった。
「あんたよく知ってるわねえ。そうそう、あれが去年の優勝チーム、<ワルキューレ村>。あそこ美人多いから金持ちとか騙してばんばん予算ひっぱってきて強化すごいのよ」
身も蓋もない紹介であるがタローにはわかりやすかった。
「じゃあ青いのは……死神?」
「うん、ワルキューレ村とは犬猿の仲。商売敵」
ああなるほどね、となるタロー。
「落ちてる魂の取り合いなんですね」
「最近どっちも売り上げ厳しいんだって。昔は何十万もまとめて収穫のある年もあったみたいだけどね……あ、抜け出した。決まるかも」
収穫って、と思いながらギルが指差す方を見ると、ワルキューレの一人が死神三人を振り切って、右側、つまり死神を応援する旗や幕がたくさんあるほうへ走っていく。走る先には小さな祠のようなものがあり、中に誰かがいるように見える。
抜け出したワルキューレはそのまま走るが、足を出した死神に倒される。一斉に抗議の声を上げる赤い客席。とそのとき、逆サイドで抜け出した別のワルキューレがそのまま祠に走り込む。死神が寄せるが、ブロックが間に合わない。
「どりゃああああ!」
祠の直前でワルキューレが叫んで拳を振り上げる。祠の中のなにかが叫んだ。
「まいりましたああああ!」
大歓声があがる。抱き合う赤いチーム。赤い客席ではみなハイタッチをしている。青い方は鼓舞するように新しい応援歌を歌い出す。場内放送が流れる。
『ただいまのとくてんはあ、わるきゅーれむらあ、せばんごうきゅうばん、らいらせんしゅでしたあ』
「ルールわかったでしょ? 要するに相手の祠守護者、つまり<キーパー>にまいったさせたら一点。泣き出させたら試合終了」
「な、泣き出す?」
「たくさん点取られたら泣くし、すごくビビらせればすぐ泣く」
なんじゃそりゃ、と思いながらもどこかで納得するタロー。
「武闘会って言ってたから殴り合いするのかと」
「それでもいいんだけどね。ルール上は許されてるけど相手ぜんぶ殴り倒したり魔術でふっとばしたりするの面倒でしょ。とにかく相手の祠さえびっくりさせればいいんだから誰も無駄なことはしないのよ」
「遠くからびっくりさせればいいんじゃ」
「キーパー木の精霊ですごい年寄りだから耳遠いの」
「……さっきムルを襲ってた<盗賊チーム>って、たしか自分たちでエリア優勝とか言ってましたけど、あのワルキューレに勝ったんですか」
ぷっと吹き出すギル。
「あいつら地区予選を一位通過しただけよ。自称エリア優勝。だって地区の他のチームってあたしたちと<きのこの妖精村>と<さくらんぼの妖精村>だもん。まあそれでも勝ち進めば税金免除とかいろいろ優遇あるからみんな必死ね。あ、それに……」
ギルは振り返って、スタジアムの背後にそびえ立つ魔王城を指さした。
「上位チームは魔王選挙に立候補できるよ」
◇
第三話までついてきていただきありがとうございます!
タロー、おうちに帰るの忘れかけてますね。
魔王選挙? ってなったなら……
評価とフォローをどうかよろしくお願いいたします!
またすぐ、お会いしましょう。
山というか丘というか、ちゃんと遊歩道的なものが整備されている、高尾山のようなところを越えた場所に会場はあった。ギルがいったとおり、半日もかからなかった。
ものすごい人だかり……いや魔物だかり。巨大な魔王城を背景に、円柱を切ったような、ローマのコロッセオ的な建物がある。その入り口に向かってまっすぐ続く道の両側に屋台と縁日がずらっと並んでおり、服装も容姿もツノの形も色とりどりの魔物が群がっているのだ。
いちごけずりとフレンチドッグと東京ケーキが好きなタローにとっては心が躍る風景のはずだが、さすがに無心で楽しむわけにはいかなかった。
ムルとジルは金魚を見ている。ギルはタローたちをおいてどこかに行っていたが、まもなく戻ってきてチケットのようなものを差し出した。
「<武闘会>の出場者からもお金とるのよ。あこぎよねえ」
「あ、そうなんですか」
「試合見てくでしょ。せっかくきたんだから。あたしたちの出番はもうちょっと後だけど、もうすぐ去年の優勝者がでるわよ」
「はい、じゃあ、せっかくだから。ありがたくいただきます」
「お金」
「えっ」
手を差し出すギル。タローはしかたなく財布を取り出した。ここの金銭単位はもちろん知らないし、日本の通貨が通用するのかわからなかったが、なんとなくいままでの展開から適当に二千円くらい出しておけばいいと感じた。
正解であった。
「ちょうどね。いちおう出場者割引になってるから……ジル! ムル! いくわよ!」
呼びかけられてジルとムルが走ってくる。どちらも口をもぐもぐさせているからなにか買い食いしていたのだろう。元気よく振り回されるムルの尻尾に魔物が二、三匹薙ぎ倒されている。
「ムル! 人混みで走らないでっていつもいってるじゃん」
「だってまた置いてかれたらやだもん」
「自分で控室に行ってればいいじゃない。ほらチケット。なくすんじゃないわよ」
「はあい」
ムルとジルの年齢はまったく読めない。黒トゲトカゲとピンクのカバの年齢を当てる技術はタローの数年にわたる業務実績のなかでも学ぶ機会がなかった。
ギルはタローと同じくらいと思えたが、なにせ紫系のいろいろ厳しいメイクが障壁となって判断がつかない。ただ、少なくともムルとジルにとっては引率してくれるお姉さんというポジションらしい。
ギル、ムル、ジル、タローの順に並んで歩く。途中で左右の店に引っ張られそうになるムルとジルをタローが軌道修正するはめになった。
入り口は巨大な石の門だった。小さなビルくらいある柱が左右にそびえ立つ。魔物たちがかなりの長さの列を作って待っている。みなチケットを手に待ちきれないという表情だ。
「えーとね、出場者入り口は別にあって……あ、あっちだ」
ギルについていくと石門の横にやや小さい、それでもムルの背丈の三倍はあろうかという鉄扉があった。そばにいた青鬼のような係員にチケットをみせ、はずれ村の者ですと名乗ると、なにかのチェック機能が働いたのか、扉は自動的に開いた。
中に入り、これまた広大な階段を上がっていく。あがるにつれ、何かの声援、太鼓の音、手拍子が聞こえてくる。
「ふわあああ……」
タローは自分でもまぬけだなあと思う歓声を上げた。
競技場はちょうどサッカーのスタジアムのように、横長のフィールドを何十段かの客席が取り巻いている構造だった。これまたサッカーで言えばちょうど選手入場が行われる場所の真上、もっとも高い位置にタローたちは立っていた。
客席の右のほうは青、左の方は赤の服装の客が多いように思えた。客席の最前部では巨大な旗が振られている。腹に響く迫力のある太鼓の音、そして凄まじい怒号のような応援歌が鳴り響く。
ド・ドンド・ドンドン! わーるきゅーれっ!
おーれたちのーむらのほこりー さーあーゆけよ しにーがーみーっ!
フィールドでは赤と青の服を着た合計二十人ほどが忙しく動き回っていた。赤は女性ばかりに見えた。青は男女混合か。先ほどの応援歌からすると……。
「赤いのはあれですか、戦場で死んだ人の魂あつめる女神様たちかなにかですか」
タローが指差すとジルが驚いた顔をつくった。
「あんたよく知ってるわねえ。そうそう、あれが去年の優勝チーム、<ワルキューレ村>。あそこ美人多いから金持ちとか騙してばんばん予算ひっぱってきて強化すごいのよ」
身も蓋もない紹介であるがタローにはわかりやすかった。
「じゃあ青いのは……死神?」
「うん、ワルキューレ村とは犬猿の仲。商売敵」
ああなるほどね、となるタロー。
「落ちてる魂の取り合いなんですね」
「最近どっちも売り上げ厳しいんだって。昔は何十万もまとめて収穫のある年もあったみたいだけどね……あ、抜け出した。決まるかも」
収穫って、と思いながらギルが指差す方を見ると、ワルキューレの一人が死神三人を振り切って、右側、つまり死神を応援する旗や幕がたくさんあるほうへ走っていく。走る先には小さな祠のようなものがあり、中に誰かがいるように見える。
抜け出したワルキューレはそのまま走るが、足を出した死神に倒される。一斉に抗議の声を上げる赤い客席。とそのとき、逆サイドで抜け出した別のワルキューレがそのまま祠に走り込む。死神が寄せるが、ブロックが間に合わない。
「どりゃああああ!」
祠の直前でワルキューレが叫んで拳を振り上げる。祠の中のなにかが叫んだ。
「まいりましたああああ!」
大歓声があがる。抱き合う赤いチーム。赤い客席ではみなハイタッチをしている。青い方は鼓舞するように新しい応援歌を歌い出す。場内放送が流れる。
『ただいまのとくてんはあ、わるきゅーれむらあ、せばんごうきゅうばん、らいらせんしゅでしたあ』
「ルールわかったでしょ? 要するに相手の祠守護者、つまり<キーパー>にまいったさせたら一点。泣き出させたら試合終了」
「な、泣き出す?」
「たくさん点取られたら泣くし、すごくビビらせればすぐ泣く」
なんじゃそりゃ、と思いながらもどこかで納得するタロー。
「武闘会って言ってたから殴り合いするのかと」
「それでもいいんだけどね。ルール上は許されてるけど相手ぜんぶ殴り倒したり魔術でふっとばしたりするの面倒でしょ。とにかく相手の祠さえびっくりさせればいいんだから誰も無駄なことはしないのよ」
「遠くからびっくりさせればいいんじゃ」
「キーパー木の精霊ですごい年寄りだから耳遠いの」
「……さっきムルを襲ってた<盗賊チーム>って、たしか自分たちでエリア優勝とか言ってましたけど、あのワルキューレに勝ったんですか」
ぷっと吹き出すギル。
「あいつら地区予選を一位通過しただけよ。自称エリア優勝。だって地区の他のチームってあたしたちと<きのこの妖精村>と<さくらんぼの妖精村>だもん。まあそれでも勝ち進めば税金免除とかいろいろ優遇あるからみんな必死ね。あ、それに……」
ギルは振り返って、スタジアムの背後にそびえ立つ魔王城を指さした。
「上位チームは魔王選挙に立候補できるよ」
◇
第三話までついてきていただきありがとうございます!
タロー、おうちに帰るの忘れかけてますね。
魔王選挙? ってなったなら……
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またすぐ、お会いしましょう。
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