17 / 24
17
しおりを挟む
やっと落ち着いたマリアベル嬢に椅子に座ってもらい、4人でお茶をする。
それにしても、こんな風に対面する事になるとは……。改めてじっくりマリアベル嬢の顔を見てみるが、やはり全く記憶にない。
私に恩があるからと、事件解決の為にとても頑張ってくれていたのに、思い出せないことが心苦し過ぎる。でもどんなに思い出そうとしても、やはり学校で会ったことがある以外の記憶がない。
「あの、マリアベル嬢、改めて今回はありがとうございました。あと私の事はどうぞエルメアと呼んでください」
「エルメア、様」
「はい、どうぞ今後はそのように。……お母様はいかがお過ごしですか?」
「……母は、事情を改めて皆様にお伝えした後、アルベルト殿下とエルメア様のお父上…サーラント公爵閣下の計らいで、特に罪に問われることはなく……今は家で過ごしております」
「……そうなのですね、よかった……」
めちゃくちゃ安心したー!!アルマ殿は嵌められただけだ。何か罪に問われていたら、私もちゃんと証言しようと思っていたが、父とアルベルト殿下だけで収めてくれていた。
本当によかった……。
よし、じゃああとは何で助けてくれたか聞くだけなんだけど……。私貴女のこと覚えてないけど、何で助けたの?って聞くのかなり気まずい。気まず過ぎる。
聞くしかないけど!気になるし!
「……それで、あの、マリアベル嬢もアルマ殿も、私と関わりがあり、今回事件解決のお手伝いをしてくださったとアルベルト殿下から聞いておりまして……。でも私、本当に申し訳ないのですがマリアベル嬢の事もアルマ殿の事も思い出せないのです。……いつお会いしたことがあるかお伺いしても?」
散々危険な目にあわせたくせに、貴女のこと知りませんとか本当にひどい奴だな……自分よ……。
こんなにわかりやすい見た目の女の子と会っていたら普通忘れないはずだよね?でも覚えてないんだよ!!めちゃくちゃ記憶遡っても、こんな美人が記憶にないんだよ!
そんなことを考えながらマリアベル嬢の言葉を待っていたら返答は予想外のものだった。
「……覚えていらっしゃらなくて、当然です。直接お会いしてお話するのは、これが初めてです。……一度も関わったことはございません」
「え?」
私は思わずぽかんとした顔になった。あれ?恩があるって話では……?あ、もしかして個人的なやつではなくて、サーラント公爵家として何かしたことがあるってこと……?
「あ、ではサーラント公爵家と何か関係が?」
「……いえ、私も母もサーラント公爵家の皆様と関わりを持ったこともございません」
「えーっと??」
ちらっとアルベルト殿下を見たら、難しい顔してマリアベル嬢を見ていた。そしてコーネリアス公爵も。
ん?もしかして恩があるのは嘘だったってこと……?いやでも嘘ついてまで私を命をかけて助ける意味なんてないよな……。
さっきまで穏やかだったアルベルト殿下が少し厳しい雰囲気でマリアベル嬢に声をかけた。
「……実際にエルメアに関わったこともない、サーラント公爵家にも関係がない。それではどうやってエルメアを知った?……恩があるというのは嘘だったのか?」
「……アルベルト殿下とコーネリアス公爵閣下に申し上げたことに嘘はありません。私はエルメア様に多大な恩があります。人生をかけて返すべき恩が」
「ならその詳細を話してほしい。エルメアの前なら、言えない理由もないだろう?」
「……言えません」
「……それは私達がいるからか?」
「いえ……エルメア様にも、お二人にも、内容はお話出来ません」
マリアベル嬢は俯くと、膝の上で拳を握りしめた。
おいおい、アルベルト殿下、なんで怖い感じになってるの?いや、まあ命をかけてまで助けてくれた理由は知りたかったけど……。それでも、理由を知らなくたって助けてくれた事実は変わらない。
殿下の雰囲気が怖かったので助けを求めようとコーネリアス公爵を見たら、彼も真剣な表情でマリアベル嬢をじっと見つめていた。
いやだから怖いって!!
思わず、あの!!と大きい声をあげる。
「マリアベル嬢が話したくないのなら、私は話してくれなくても構いません!……ただ、私はマリアベル嬢を覚えてもいないのに、危険なことをさせてしまったことが心苦しくて……。だから良ければ理由が聞きたかっただけなのです」
「……エルメア様、申し訳ありません……。私も母も、この話は絶対にお伝えすることが出来ないのです。……ですがっ!決して貴女に危害を加える為、何か要求する為に関わったのではありません。それだけは本当です!」
「………わかりました。……私に危害を加えるつもりなら、そもそもこの件に関わらければ良かった。それなのにわざわざマリアベル嬢は私の為にたくさん協力してくれた。それだけで十分ですよ。……そうですよね?」
牽制のつもりでアルベルト殿下とコーネリアス公爵に順番に、ね?ね?と声をかける。
もし、何か目的があったのだとしても、彼女が命をかける程のリスクを負う必要性はない。割に合わないだろう。それに彼女の表情を見て、私を大切に思ってくれていることは伝わってきた。
目を見開いて二人を交互に眺めていると、アルベルト殿下が溜め息を吐いた。
いやなんでこいつはしょうがないなみたいな顔してるんだよ!
「エルメア、別にマリアベル嬢を責めている訳じゃない。ただ、恩があるから手伝わせて欲しいと言っていたのに、実際君とは関わりがないというのは気になるだろう」
「嘘は言ってないって言ってます。それでいいじゃないですか」
「……君というやつは本当に……」
もう一度大きな溜め息をつくと、アルベルト殿下はわかった、この事には言及しないと言ってくれた。
ほっと胸を撫でおろす。よかった、マリアベル嬢が怪しい!捕まえろ!みたいなことになったらどうしようかと思った。
マリアベル嬢によかったね!って気持ちでにこっと笑いかけたら、まるで眩しいものを見るような目で見られた。
そして彼女は小さく、本当に小さく呟いた。
「……私が大好きな貴女のままで、私、本当に嬉しいです」
会ったこともない、関わったこともないと言っていたのに、大好きな私のままという言葉が引っかかった。
でもマリアベル嬢の優しげな瞳は、私への悪意等は一切はなく、ただ深い愛情のようなものを感じられて、だから私はその言葉は聞こえなかったふりをした。
これ以上、突っ込んではいけない気がしたのだ。
それにしても、こんな風に対面する事になるとは……。改めてじっくりマリアベル嬢の顔を見てみるが、やはり全く記憶にない。
私に恩があるからと、事件解決の為にとても頑張ってくれていたのに、思い出せないことが心苦し過ぎる。でもどんなに思い出そうとしても、やはり学校で会ったことがある以外の記憶がない。
「あの、マリアベル嬢、改めて今回はありがとうございました。あと私の事はどうぞエルメアと呼んでください」
「エルメア、様」
「はい、どうぞ今後はそのように。……お母様はいかがお過ごしですか?」
「……母は、事情を改めて皆様にお伝えした後、アルベルト殿下とエルメア様のお父上…サーラント公爵閣下の計らいで、特に罪に問われることはなく……今は家で過ごしております」
「……そうなのですね、よかった……」
めちゃくちゃ安心したー!!アルマ殿は嵌められただけだ。何か罪に問われていたら、私もちゃんと証言しようと思っていたが、父とアルベルト殿下だけで収めてくれていた。
本当によかった……。
よし、じゃああとは何で助けてくれたか聞くだけなんだけど……。私貴女のこと覚えてないけど、何で助けたの?って聞くのかなり気まずい。気まず過ぎる。
聞くしかないけど!気になるし!
「……それで、あの、マリアベル嬢もアルマ殿も、私と関わりがあり、今回事件解決のお手伝いをしてくださったとアルベルト殿下から聞いておりまして……。でも私、本当に申し訳ないのですがマリアベル嬢の事もアルマ殿の事も思い出せないのです。……いつお会いしたことがあるかお伺いしても?」
散々危険な目にあわせたくせに、貴女のこと知りませんとか本当にひどい奴だな……自分よ……。
こんなにわかりやすい見た目の女の子と会っていたら普通忘れないはずだよね?でも覚えてないんだよ!!めちゃくちゃ記憶遡っても、こんな美人が記憶にないんだよ!
そんなことを考えながらマリアベル嬢の言葉を待っていたら返答は予想外のものだった。
「……覚えていらっしゃらなくて、当然です。直接お会いしてお話するのは、これが初めてです。……一度も関わったことはございません」
「え?」
私は思わずぽかんとした顔になった。あれ?恩があるって話では……?あ、もしかして個人的なやつではなくて、サーラント公爵家として何かしたことがあるってこと……?
「あ、ではサーラント公爵家と何か関係が?」
「……いえ、私も母もサーラント公爵家の皆様と関わりを持ったこともございません」
「えーっと??」
ちらっとアルベルト殿下を見たら、難しい顔してマリアベル嬢を見ていた。そしてコーネリアス公爵も。
ん?もしかして恩があるのは嘘だったってこと……?いやでも嘘ついてまで私を命をかけて助ける意味なんてないよな……。
さっきまで穏やかだったアルベルト殿下が少し厳しい雰囲気でマリアベル嬢に声をかけた。
「……実際にエルメアに関わったこともない、サーラント公爵家にも関係がない。それではどうやってエルメアを知った?……恩があるというのは嘘だったのか?」
「……アルベルト殿下とコーネリアス公爵閣下に申し上げたことに嘘はありません。私はエルメア様に多大な恩があります。人生をかけて返すべき恩が」
「ならその詳細を話してほしい。エルメアの前なら、言えない理由もないだろう?」
「……言えません」
「……それは私達がいるからか?」
「いえ……エルメア様にも、お二人にも、内容はお話出来ません」
マリアベル嬢は俯くと、膝の上で拳を握りしめた。
おいおい、アルベルト殿下、なんで怖い感じになってるの?いや、まあ命をかけてまで助けてくれた理由は知りたかったけど……。それでも、理由を知らなくたって助けてくれた事実は変わらない。
殿下の雰囲気が怖かったので助けを求めようとコーネリアス公爵を見たら、彼も真剣な表情でマリアベル嬢をじっと見つめていた。
いやだから怖いって!!
思わず、あの!!と大きい声をあげる。
「マリアベル嬢が話したくないのなら、私は話してくれなくても構いません!……ただ、私はマリアベル嬢を覚えてもいないのに、危険なことをさせてしまったことが心苦しくて……。だから良ければ理由が聞きたかっただけなのです」
「……エルメア様、申し訳ありません……。私も母も、この話は絶対にお伝えすることが出来ないのです。……ですがっ!決して貴女に危害を加える為、何か要求する為に関わったのではありません。それだけは本当です!」
「………わかりました。……私に危害を加えるつもりなら、そもそもこの件に関わらければ良かった。それなのにわざわざマリアベル嬢は私の為にたくさん協力してくれた。それだけで十分ですよ。……そうですよね?」
牽制のつもりでアルベルト殿下とコーネリアス公爵に順番に、ね?ね?と声をかける。
もし、何か目的があったのだとしても、彼女が命をかける程のリスクを負う必要性はない。割に合わないだろう。それに彼女の表情を見て、私を大切に思ってくれていることは伝わってきた。
目を見開いて二人を交互に眺めていると、アルベルト殿下が溜め息を吐いた。
いやなんでこいつはしょうがないなみたいな顔してるんだよ!
「エルメア、別にマリアベル嬢を責めている訳じゃない。ただ、恩があるから手伝わせて欲しいと言っていたのに、実際君とは関わりがないというのは気になるだろう」
「嘘は言ってないって言ってます。それでいいじゃないですか」
「……君というやつは本当に……」
もう一度大きな溜め息をつくと、アルベルト殿下はわかった、この事には言及しないと言ってくれた。
ほっと胸を撫でおろす。よかった、マリアベル嬢が怪しい!捕まえろ!みたいなことになったらどうしようかと思った。
マリアベル嬢によかったね!って気持ちでにこっと笑いかけたら、まるで眩しいものを見るような目で見られた。
そして彼女は小さく、本当に小さく呟いた。
「……私が大好きな貴女のままで、私、本当に嬉しいです」
会ったこともない、関わったこともないと言っていたのに、大好きな私のままという言葉が引っかかった。
でもマリアベル嬢の優しげな瞳は、私への悪意等は一切はなく、ただ深い愛情のようなものを感じられて、だから私はその言葉は聞こえなかったふりをした。
これ以上、突っ込んではいけない気がしたのだ。
26
お気に入りに追加
4,756
あなたにおすすめの小説
私達、政略結婚ですから。
黎
恋愛
オルヒデーエは、来月ザイデルバスト王子との結婚を控えていた。しかし2年前に王宮に来て以来、王子とはろくに会わず話もしない。一方で1年前現れたレディ・トゥルペは、王子に指輪を贈られ、二人きりで会ってもいる。王子に自分達の関係性を問いただすも「政略結婚だが」と知らん顔、レディ・トゥルペも、オルヒデーエに向かって「政略結婚ですから」としたり顔。半年前からは、レディ・トゥルペに数々の嫌がらせをしたという噂まで流れていた。
それが罪状として読み上げられる中、オルヒデーエは王子との数少ない思い出を振り返り、その処断を待つ。
侯爵令嬢の置き土産
ひろたひかる
恋愛
侯爵令嬢マリエは婚約者であるドナルドから婚約を解消すると告げられた。マリエは動揺しつつも了承し、「私は忘れません」と言い置いて去っていった。***婚約破棄ネタですが、悪役令嬢とか転生、乙女ゲーとかの要素は皆無です。***今のところ本編を一話、別視点で一話の二話の投稿を予定しています。さくっと終わります。
「小説家になろう」でも同一の内容で投稿しております。
皆様ごきげんよう。悪役令嬢はこれにて退場させていただきます。
しあ
恋愛
「クラリス=ミクランジェ、君を国宝窃盗容疑でこの国から追放する」
卒業パーティで、私の婚約者のヒルデガルト=クライス、この国の皇太子殿下に追放を言い渡される。
その婚約者の隣には可愛い女の子がーー。
損得重視の両親は私を庇う様子はないーーー。
オマケに私専属の執事まで私と一緒に国外追放に。
どうしてこんなことに……。
なんて言うつもりはなくて、国外追放?
計画通りです!国外で楽しく暮らしちゃいますね!
では、皆様ごきげんよう!
ざまぁはハッピーエンドのエンディング後に
ララ
恋愛
私は由緒正しい公爵家に生まれたシルビア。
幼い頃に結ばれた婚約により時期王妃になることが確定している。
だからこそ王妃教育も精一杯受け、王妃にふさわしい振る舞いと能力を身につけた。
特に婚約者である王太子は少し?いやかなり頭が足りないのだ。
余計に私が頑張らなければならない。
王妃となり国を支える。
そんな確定した未来であったはずなのにある日突然破られた。
学園にピンク色の髪を持つ少女が現れたからだ。
なんとその子は自身をヒロイン?だとか言って婚約者のいるしかも王族である王太子に馴れ馴れしく接してきた。
何度かそれを諌めるも聞く耳を持たず挙句の果てには私がいじめてくるだなんだ言って王太子に泣きついた。
なんと王太子は彼女の言葉を全て鵜呑みにして私を悪女に仕立て上げ国外追放をいい渡す。
はぁ〜、一体誰の悪知恵なんだか?
まぁいいわ。
国外追放喜んでお受けいたします。
けれどどうかお忘れにならないでくださいな?
全ての責はあなたにあると言うことを。
後悔しても知りませんわよ。
そう言い残して私は毅然とした態度で、内心ルンルンとこの国を去る。
ふふっ、これからが楽しみだわ。
それは報われない恋のはずだった
ララ
恋愛
異母妹に全てを奪われた。‥‥ついには命までもーー。どうせ死ぬのなら最期くらい好きにしたっていいでしょう?
私には大好きな人がいる。幼いころの初恋。決して叶うことのない無謀な恋。
それはわかっていたから恐れ多くもこの気持ちを誰にも話すことはなかった。けれど‥‥死ぬと分かった今ならばもう何も怖いものなんてないわ。
忘れてくれたってかまわない。身勝手でしょう。でも許してね。これが最初で最後だから。あなたにこれ以上迷惑をかけることはないわ。
「幼き頃からあなたのことが好きでした。私の初恋です。本当に‥‥本当に大好きでした。ありがとう。そして‥‥さよなら。」
主人公 カミラ・フォーテール
異母妹 リリア・フォーテール
いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持
空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。
その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。
※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。
※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。
シナリオ通り追放されて早死にしましたが幸せでした
黒姫
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢に転生しました。神様によると、婚約者の王太子に断罪されて極北の修道院に幽閉され、30歳を前にして死んでしまう設定は変えられないそうです。さて、それでも幸せになるにはどうしたら良いでしょうか?(2/16 完結。カテゴリーを恋愛に変更しました。)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる