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溶けない雪
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右耳にだけさしたイヤホンから、大好きだった歌が流れる。
白い息をはぁっと吐いて、クリスマス特有の雰囲気を遮断しようと、目を瞑る。
『私は今でも待っている いつか想いの溶けるまで』
私の耳に届く歌の歌詞は、まるで私そのものだ、と思った。
君を忘れられず、今もこうして、『二人の待ち合わせ場所』にいるのだから。
風の噂で聞いたが、君に彼女ができたらしい。
それなのに、待ってる。
「馬鹿らし…」
マフラーに顔を埋めて、小さく呟いた。
呟いて、その言葉が自分の心を刺すのだから、救えない。
いつか来てくれるんじゃないか、なんて期待しているのだから、笑えない。
こんなことしていたって戻らないのは、とっくにわかっているのに。
君と別れて三年の月日が流れた今でも、クリスマスの日にはこうして来てしまう。
我ながら気持ち悪いな、と思う。
「あ…」
不意に吹いた風に目を開けると、通りの反対に君の姿がみえた。
「ねぇ──」
声をかけるくらいなら…そう思って手をあげたけれど、声は届くことはなかった。
「私、は…」
君の背中に飛びつく小柄な女の子の姿が見えて、声は次第に小さく萎んでいく。
「はぁ…」
わかっていた。わかっていたんだ。諦める理由ができたじゃないか。これで、もう忘れよう。
「…っ、うぅ」
言葉にならない想いが、胸に渦巻く。
諦めようとする度、好きが溢れてしまう。
背を向けて立ち去りたいのに、視線は君を追いかける。
どうしようもなく、好きなんだ。
でもこれ以上苦しみたくないから、弱くなりたくないから。
「愛して、いたよ」
言い訳がましく君の背に呟き、涙を拭って…転びそうになるのも構わないで駆け出した。
君とは、反対の方向に。
いつの間にか降った雪は、私の頭に薄らと積もっていた。
白い息をはぁっと吐いて、クリスマス特有の雰囲気を遮断しようと、目を瞑る。
『私は今でも待っている いつか想いの溶けるまで』
私の耳に届く歌の歌詞は、まるで私そのものだ、と思った。
君を忘れられず、今もこうして、『二人の待ち合わせ場所』にいるのだから。
風の噂で聞いたが、君に彼女ができたらしい。
それなのに、待ってる。
「馬鹿らし…」
マフラーに顔を埋めて、小さく呟いた。
呟いて、その言葉が自分の心を刺すのだから、救えない。
いつか来てくれるんじゃないか、なんて期待しているのだから、笑えない。
こんなことしていたって戻らないのは、とっくにわかっているのに。
君と別れて三年の月日が流れた今でも、クリスマスの日にはこうして来てしまう。
我ながら気持ち悪いな、と思う。
「あ…」
不意に吹いた風に目を開けると、通りの反対に君の姿がみえた。
「ねぇ──」
声をかけるくらいなら…そう思って手をあげたけれど、声は届くことはなかった。
「私、は…」
君の背中に飛びつく小柄な女の子の姿が見えて、声は次第に小さく萎んでいく。
「はぁ…」
わかっていた。わかっていたんだ。諦める理由ができたじゃないか。これで、もう忘れよう。
「…っ、うぅ」
言葉にならない想いが、胸に渦巻く。
諦めようとする度、好きが溢れてしまう。
背を向けて立ち去りたいのに、視線は君を追いかける。
どうしようもなく、好きなんだ。
でもこれ以上苦しみたくないから、弱くなりたくないから。
「愛して、いたよ」
言い訳がましく君の背に呟き、涙を拭って…転びそうになるのも構わないで駆け出した。
君とは、反対の方向に。
いつの間にか降った雪は、私の頭に薄らと積もっていた。
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