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花言葉
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朝、照りつける日差しにリリィが起きると手の中にはあのネックレスが収まったままでいた。
けれど不思議なことにその模様は変わっていた。
ライラックだったそれはアネモネの模様になっていた。
これがカミアの言っていた天気によって変わるもの、だろうか?
コンコン
「失礼します。お目覚めですか?リリィ様」
「ええ。ねぇ、カミア」
「はい?」
起き上がりベッドに座るとネックレスを手に乗せたままカミアをみる。
「これ、花の模様が変わるようにつくられているのね」
「はい。仕組みはわかりませんが…」
「どうしてこれを選んだの?」
「…花言葉です」
花言葉。
カミアは昔から花が好きだった。
「花言葉…私には花の名前しかわからないの。ライラックと、アネモネ…雨の時は何かしら?それより、花言葉は?」
「ご自分で調べてみては?そうしてわかったとき私は嬉しいので。ですから、リリィ様もぜひ」
カミアはそう言っていたがリリィにはなんだか本当は言いたくないから言わない、そんなきがしていた。
「わかったわ」
ネックレスをつける。
「はい。ああ、そうでした」
思い出したようにカミアは言う。
「これ、アスラ様からです」
「アスラ!?」
カミアが取り出したのは封筒。
アスラからの、手紙。
「それと朝食ができていますが…」
「これを読んだら行くわ!」
「かしこまりました」
カミアはなんだか寂しそうな顔をして部屋を出た。
リリィはベッドに腰掛けると手紙をみつめ、慎重に封を開ける。
『リリィ
まだ旅は終わりそうにない。
違う場所に行くことになったんだ。
もっと遠くに。
ごめんな。
でもきっと立派になって帰ってくるから、その時は…
いや、それは会って直接言いたいな。
勝手かもしれないけど、待っていてほしい。
大好きだ。
アスラ』
一言で言うなら、嬉しかった。
とても。
″その時は…″
その続きが気になる。
いや、本当はわかってる。
でも、それでも次に会うときアスラからその言葉が聞ける。
それが嬉しかった。
ベッドに横になると枕に顔を埋め足をバタバタと動かす。
返事を書きたい。
絶対待つ、大好きだ。
そう伝えたい。
文章ではなく声で。
「大好き…」
枕に埋めたまま呟いてみると顔が熱くなるのを感じる。
「しっかりしなきゃ!まずは朝ごはんを食べなきゃね!」
手紙を机の引き出しにいれ、顔をペチペチと叩くと一階に向かった。
目的の場所につき、リリィ以外使わない(父と母は仕事であまり家に帰らない。)長いテーブルの右端にある椅子腰掛ける。
「リリィ様、何か嬉しいことでも?」
クスクス笑いながら朝ごはんを運んでくれるのはこの城に長く仕えるメイドのアリア。
リリィが生まれる前からいるらしい。
「ええ!アスラから手紙があったの!」
その言葉にアリアはピクリと反応する。
「それはそれは、よかったですね」
けれどすぐいつもの優しい笑顔に戻る。
「ええ!」
パンとサラダ。
リリィは少食のため、朝食はこれだけだ。
それを十分ほどで食べ終えると、ごちそうさまをして部屋に戻った。
部屋に入りドアをしめるとアスラからの手紙をまた読み返す。
目の前で、その声で、アスラが好きだというのを想像してみる。
すると先ほどより顔が熱くなりふわふわした感じがする。
と、ドアの向こうからアリアとリリィの父…グレイの声が聞こえてきた。
「お父様!帰ってきたのね!」
ドアをあけ、グレイのもとに行こうとする。
「えぇ、リリィ様が手紙を…」
しかしアスラの話をしているとわかりドアに耳をつけ話を聞く。
「なに!?会えないよう旅に出したと言うのに…!」
「…っ!」
口を抑え声が出そうになるのを堪える。
「はぁ、まぁいい。あいつはしばらく帰らん。いっそそこで…」
グレイは溜息をつく。
「死んでしまえばよいのに」
限界だった。
「やめて!」
気づけばリリィは部屋を飛び出しグレイの目の前までつかつかと歩いて言った。
「リリィ…」
「アスラのこと、そんなふうに言わないで…!」
涙が溢れ出してとまらない。
リリィはその場から逃げるように走り出した。
「リリィ様…!」
無我夢中で走り、ついたのは中庭。
城が広いのと、リリィは体力がないのとでもう息が上がっていた。
それでも涙が止まらない。
アスラを遠ざけたのが実の父だから?
アスラを、好きな人を死ねと言っていたから?
アリアがグレイに報告したから?
その全てに泣いていたのかもしれない。
カミアにもらったネックレスが涙で濡れる。
外してよくみるとミモザアカシアに模様が変化していた。
この花言葉はいつか、母…ファネルに聞いたことがある。
たしか…
「友情」「秘密の恋」
カミアは花言葉で選んだと言っていた。
ライラックとアネモネ、それからミモザアカシア。
全ての花とその花言葉をわかった上でくれたのだろう。
ならカミアはもしかして…
けれど不思議なことにその模様は変わっていた。
ライラックだったそれはアネモネの模様になっていた。
これがカミアの言っていた天気によって変わるもの、だろうか?
コンコン
「失礼します。お目覚めですか?リリィ様」
「ええ。ねぇ、カミア」
「はい?」
起き上がりベッドに座るとネックレスを手に乗せたままカミアをみる。
「これ、花の模様が変わるようにつくられているのね」
「はい。仕組みはわかりませんが…」
「どうしてこれを選んだの?」
「…花言葉です」
花言葉。
カミアは昔から花が好きだった。
「花言葉…私には花の名前しかわからないの。ライラックと、アネモネ…雨の時は何かしら?それより、花言葉は?」
「ご自分で調べてみては?そうしてわかったとき私は嬉しいので。ですから、リリィ様もぜひ」
カミアはそう言っていたがリリィにはなんだか本当は言いたくないから言わない、そんなきがしていた。
「わかったわ」
ネックレスをつける。
「はい。ああ、そうでした」
思い出したようにカミアは言う。
「これ、アスラ様からです」
「アスラ!?」
カミアが取り出したのは封筒。
アスラからの、手紙。
「それと朝食ができていますが…」
「これを読んだら行くわ!」
「かしこまりました」
カミアはなんだか寂しそうな顔をして部屋を出た。
リリィはベッドに腰掛けると手紙をみつめ、慎重に封を開ける。
『リリィ
まだ旅は終わりそうにない。
違う場所に行くことになったんだ。
もっと遠くに。
ごめんな。
でもきっと立派になって帰ってくるから、その時は…
いや、それは会って直接言いたいな。
勝手かもしれないけど、待っていてほしい。
大好きだ。
アスラ』
一言で言うなら、嬉しかった。
とても。
″その時は…″
その続きが気になる。
いや、本当はわかってる。
でも、それでも次に会うときアスラからその言葉が聞ける。
それが嬉しかった。
ベッドに横になると枕に顔を埋め足をバタバタと動かす。
返事を書きたい。
絶対待つ、大好きだ。
そう伝えたい。
文章ではなく声で。
「大好き…」
枕に埋めたまま呟いてみると顔が熱くなるのを感じる。
「しっかりしなきゃ!まずは朝ごはんを食べなきゃね!」
手紙を机の引き出しにいれ、顔をペチペチと叩くと一階に向かった。
目的の場所につき、リリィ以外使わない(父と母は仕事であまり家に帰らない。)長いテーブルの右端にある椅子腰掛ける。
「リリィ様、何か嬉しいことでも?」
クスクス笑いながら朝ごはんを運んでくれるのはこの城に長く仕えるメイドのアリア。
リリィが生まれる前からいるらしい。
「ええ!アスラから手紙があったの!」
その言葉にアリアはピクリと反応する。
「それはそれは、よかったですね」
けれどすぐいつもの優しい笑顔に戻る。
「ええ!」
パンとサラダ。
リリィは少食のため、朝食はこれだけだ。
それを十分ほどで食べ終えると、ごちそうさまをして部屋に戻った。
部屋に入りドアをしめるとアスラからの手紙をまた読み返す。
目の前で、その声で、アスラが好きだというのを想像してみる。
すると先ほどより顔が熱くなりふわふわした感じがする。
と、ドアの向こうからアリアとリリィの父…グレイの声が聞こえてきた。
「お父様!帰ってきたのね!」
ドアをあけ、グレイのもとに行こうとする。
「えぇ、リリィ様が手紙を…」
しかしアスラの話をしているとわかりドアに耳をつけ話を聞く。
「なに!?会えないよう旅に出したと言うのに…!」
「…っ!」
口を抑え声が出そうになるのを堪える。
「はぁ、まぁいい。あいつはしばらく帰らん。いっそそこで…」
グレイは溜息をつく。
「死んでしまえばよいのに」
限界だった。
「やめて!」
気づけばリリィは部屋を飛び出しグレイの目の前までつかつかと歩いて言った。
「リリィ…」
「アスラのこと、そんなふうに言わないで…!」
涙が溢れ出してとまらない。
リリィはその場から逃げるように走り出した。
「リリィ様…!」
無我夢中で走り、ついたのは中庭。
城が広いのと、リリィは体力がないのとでもう息が上がっていた。
それでも涙が止まらない。
アスラを遠ざけたのが実の父だから?
アスラを、好きな人を死ねと言っていたから?
アリアがグレイに報告したから?
その全てに泣いていたのかもしれない。
カミアにもらったネックレスが涙で濡れる。
外してよくみるとミモザアカシアに模様が変化していた。
この花言葉はいつか、母…ファネルに聞いたことがある。
たしか…
「友情」「秘密の恋」
カミアは花言葉で選んだと言っていた。
ライラックとアネモネ、それからミモザアカシア。
全ての花とその花言葉をわかった上でくれたのだろう。
ならカミアはもしかして…
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