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そして、正しくなれる
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はじめて辞書を引いた言葉を、今でもおぼえてる。
それは〈眉目秀麗〉。
父さんの兄さんのオジサンに「ビモクシューレーだな」って会うたびに言われて、まずその音が耳に焼きついた。
意味を知ってからは、そう言ってもらおうとオジサンの前でキリッとした顔をするようになった。
それがたぶん、おれのカッコつけ――もしくはナルシスト――の、はじまりだ。
(ついにきたか)
大舞台。
ひとつ前の演劇の途中、チラチラと舞台のそでから客席のほうを見てみたけど、ひとりも元カノは見つけられなかった。もしかしたら、誰も来てくれてないのかもしれない。まあ……しょうがないよな。おれ、その全員にフラれてるわけだし。
しかも今日は、クリスマスイブだ。
やっぱり招待なんかするんじゃなかった。即決で行かないと決めた子だったらまだしも、もし、チケットを送られたこと自体がイヤだったり、どうしようとナヤませてしまった子がいるのなら、謝りたい。
本当に、おれはいつだって自分のことしか考えてない、半人前だ。
変わりたい。もっと成長したい。
あいつのためにも。
この一人芝居を演じ切ったら、おれは…………
(よし。いこう)
舞台のそでから、スポットライトで照らされているところまで、ゆっくり歩いていく。
衣装は、ふだんどおりの学生服。髪型もいつもと同じ。
革靴の底をキュッと鳴らして、おれは客席のほうへ向いた。
「え、えーと……」
光はスポットライトだけで、お客さんはほぼ見えない。
だから、わからない。
この中に12人の元カノがいるのかも、翔がいるのかも、勇がいるのかも。
「えー……」
まずい。
観てる人たちが、ざわざわしはじめている。
頭が真っ白になった。
何もできない。
そうだよ。
おれは、13人もの女の子に愛想をつかされた男なんだ。
そりゃ、何もできないさ。
うまい一人芝居なんか、できないよ。
そもそもセリフがでてこない。
じゃあ、こんなところに棒立ちになって、なにをしてるんだ?
今この瞬間にも、勇は丈の彼女になろうとしてるかもしれないのに。
「あ……その、えっと……」
もうダメだ。
やめたい、はやく舞台をおりたい、そんな弱音を心で口にしたとき――
なにやってんのよっ
バドミントンのラケットで、ハエたたきのように頭をたたかれた――――気がした。
びっくりして舞台の上を見回したが、当然、誰もそこにいない。いるのはおれ一人。
? なんだったんだ?
でも、気持ちが、一気にラクになったよ。
あらためて正面を向く。
「今からするのは、芝居じゃないんです。ただ、おれが、正直に話すっていうだけで……。
最後まで聞いてくれると、うれしいです。
おれには好きな人がいます。
その……好きな人の話をする前に、おれは13人の女の子にフラれてます。
13人とか言うとめっちゃリア充で、モテモテで、どうしょうもない女ったらしみたいですけど、なんて言ったらいいか、ぶっちゃけると……女の子に対して〈したい〉って思うことができる前に関係が終わってますから、べつにジマンでもなんでもありません。
はっきり言うと、おれエッチとかしたことないんです。キスも。
はは……舞台の上で言うことじゃないですよね、これ。
バカだよな……。
それで、ちょっと、おれ最近気づいたことがあるんです。
っていうのは――おれは、その13人の女の子の中の〈好きな人〉をさがしてたんじゃないか、っていうことなんです。
言いまちがえてないです。
中に、じゃなくて、中の。
おれは、つきあった女の子の中の〈好きな人〉を求めてたみたいなんです。
個性の一部――というか。
カケラっていえばいいのかな。
たとえば、ある女の子は努力家だったり、ある女の子は妹っぽいかわいさがあったり、ある女の子は単純に外見が似てたり、ある女の子は誰からも好かれる性格だったり……みたいな感じで。
それをですね……そのカケラを13コ集めて、ぎゅーーーってしたら〈好きな人〉ができあがるんじゃないか、ってヘンなことを考えちゃいました。
つまり13……いや、12人の女の子に告白するっていう、ずいぶん遠回りをしちゃったんですよね。
彼女は幼なじみで、おれ、小さいころから知ってます。
明るくて、活発で、スポーツができて、家族みたいになんでも話せる存在で。
告白します。
おれは」
観客は、静まり返っている。
すこし目がなれて、暗い中に座っている人たちの影がぼんやり見えはじめてきた。
「あいつのことが好きで好きでたまらないのに、ふつうの幼なじみみたいな演技を、おれ……ずっとしてたんです」
想いを言葉にした瞬間、胸がいっぱいになって、そこから何も言えなくなった。
「………………」
突然どこかで、ざわっ、とどよめいた。
誰か一人、いきなり席を立ったようだ。
「――ウソですっ!」
この声は翔だ。
右側の客席の真ん中あたり。
片手を胸にあてている。その手が、着ているセーターをにぎりしめているのがわかる。
「ウソって言ってください‼ お願い! 正! その子に負けないぐらい、私だって」
おれのほうへ来ようとしている。
今の翔は、あきらかに冷静じゃない。
とめないと、と一歩ふみだしたと同時、
「なんですか、あなたは! どいてください!」
「悪いが、ここは通行止めだ。よそへ行け」
「なっ……!」
顔も体も舞台に向けて腕を組み、通せんぼするように堂々と立つあの姿。
あれは三年の先輩の水緒さんだ。おれの招待を受けて、わざわざ来てくれてたのか?
翔はあきらめて、こんどは水緒さんが立っていないほうから通路に出ようとする。
「こっちもダーメ。なんなら超高校級の水泳部の女と、力くらべしてみる?」
水泳部……? あっ、望海だ、あれはノゾミちゃんだ。
翔は彼女たちに、両サイドをはさまれている。通路に出ることもできない。
「ど、どいて……っ‼」
「小波久が好きなら、わかるはずだ」ノゾミちゃんにつかみかかる翔の背後から、水緒さんが声をかける。「芝居の邪魔をするな。そして、あいつはこれから舞台を飛び出して、真実の〈告白〉をしに行くんだよ」
「何……? いったい何を言っているんですか⁉」
翔が肩ごしに水緒さんをみる。
感情むき出しの、するどい眼。
それを受け流すように、水緒さんの口調はとてもおだやかだ。
「その〈告白〉を心から望み、ただ見守る……それが、小波久正という男を好きになった女たち全員の総意だと私は思っている」
いつのまにか客席のバラバラの位置で、何人かが立ち上がっていた。
不思議と、数えなくても、その数がわかる。
右半分に6人、左半分に6人。
みんな、思い思いの立ち姿で、おれのほうに顔を向けている。舞台のそでからも、片切がじっと見ている。
(さあ!)
と、彼女たちに応援されているようだった。
待たれている。期待されている。
でも、どこに行けばいいのかわからない。
でも、少なくともここに勇はいないんだ。
さがそう。
くたびれてヘトヘトになるまで。
「……みなさん、すいません。
聞いてくれて、ありがとうございました。
じゃあ、おれ行きます。
行ってきます。
あいつに……勇に……告白してきます‼‼」
舞台をジャンプでおりて、階段みたいになってる客席の通路を駆け抜ける。
出るとき、近くの席で立っていた塔崎さんが、コクッと力強くうなずいてくれた。
出口の扉がしまる寸前、かすかに手をたたく音が――いや、まさかな。こんな芝居でもなんでもないモノに、拍手なんかもらえないって……。
(雪?)
顔に冷たい何かがあたった気がした。
でもあたりを見回しても、何もふっていない。
冷たい空気。すこし風も強い。
大きなホールのエントランスを出て、その前に広がる場所にいる。
地面は一面の赤レンガで、あたたかい色の光でライトアップされている。中央には小さなクリスマスツリー。
「ちっ。出てきやがったか」
その声にふりかえると、やっぱり丈だった。
おれは、つかみかかるぐらいの勢いで彼に近づく。
丈のすこしニヤけた表情を見れば見るほど、どんどん胸がチリついていく。
「勇はどこだ? いっしょに……いたんじゃないのか?」
こぶしを握りしめる。
もしかしたら、おれは生まれてはじめて、本気のケンカをするかもしれない。
「まてまて。熱くなるな。まず、オレに礼をいえ」
「礼……?」
黒い革ジャンに、下も黒い革のパンツ。
首元に、赤いマフラーがわずかにのぞいている。タイトに巻いて、大部分を革ジャンの中にもぐりこませていた。
「正!」
この声は……。
「待ってくださいっ!」
翔だ。
おれのあとを追って、エントランスから出てきた。一直線にこっちに来る。
「……礼っていうのはな、ここまで勇をつれてきたことだ」
丈がおれの肩に手をおく。
「心配しなくてもあいつは近くにいる。が、その前に、オマエはおれの妹に言うことがあるだろ?」
「そうだな……」
赤いセーターに、チョコレート色のスリムなパンツ。
黒髪ショートに、きれいすぎる顔立ち。
本当に、おれにはもったいない女の子だ。
急に走って乱れた彼女の息が整うのを待って、おれは言った。
「翔。ありがとう」
「えっ……」
「こんな中身ゼロの男を好きになってくれて、『つきあいませんか』まで言ってくれて、みじかい間だったけど、翔みたいな女の子の彼氏気分を味わえて、いい思い出になったよ」
「…………それ、演技ですよね? まだ演技してるんですよね? ほんとじゃない……ですよね?」
「もうおれは演技してない。これから勇に告白するんだ」
「正」
「ごめん。おれが、はっきりしない態度をとり続けたことも、よくなかった」
きおつけの姿勢で、彼女に頭を下げた。
「翔とはつきあえない」
だまって地面をみつめる。
翔が何か言ってくれるまで、頭を下げつづけようと決めた。
「おい」
丈の声。
「こいつはこいつなりに、ちゃんとセイイってのをみせてる。なんか言ってやれよ」
「お兄ちゃん……」
「あーあー、そんな顔すんなって」少し声が出る位置が低く、おれの耳に近くなり――「もういいよ。頭をあげろ。妹にかわって、オレが許可してやっから」
目の前には、翔の両肩をやさしく支える、兄の姿があった。
「正。ハンパな断り方をしやがったらタダじゃおかなかったが……ま、合格だ」
「おっ……お兄ちゃーーーん‼」
「泣くなって。なっ? ずっと乗りたがってたバイクのうしろに乗っけてやるから」
胸に顔をうずめて泣く翔の頭をなでてやりながら、おれと目を合わせる。
「オマエは幸せモンだよ」
「え?」
「こーんな超絶かわいい妹と、勇のハートまで持っていっちまうんだから」
「丈。勇は……」
無言で指をさした。
そっちを見ると、飾り付けされたツリーにかくれるように、静かに立っている姿。
「オレはマジだった。マジで、日付をこえるまでは勇を手放す気はなかったんだ……」
横顔を向けて話す丈とおれの間に、小さくて白いものが流れた。
雪だ。雪がふってきた。
「押し切られたよ。オレの革ジャンを両手でつかんで『いって!』ってな。で、『チケットがないから』って、あそこで待ちつづけてる。はやくいってやれ」
丈は、わしゃっ、と自分で自分の髪をさわった。
両目が前髪でかくれて、ニッ、と片方の口角があがる。
「正。前に言ったの、訂正するぜ。やっぱり恋に早いモン勝ちはある。まったく計算外さ……好きになった女に、オマエみたいな幼なじみがいたなんてな」
丈が背中を向けた。
翔も、もう話しかけてくる様子はない。
それより――おれも行かないと。
ぴん、と緊張してきた。自然と背筋がのびる。
一歩一歩、あいつとの距離が縮まる。
クリスマスツリーのそばに立つ、真っ白なダッフルコート。
待ちきれず、ずいぶん手前でおれは、
「勇!」
と声をかけた。
ん? とツリーの奥の人影がうごく。
「好きだっ!」
フライング気味に、おれはコクった。
そんなにたくさんいるわけじゃないけど、まわりを歩く人たちから注目される。
勇は少し、首をかしげるアクション。
あれ? 聞こえなかったのか?
「勇」
「劇、終わった?」
「ああ。いや……」
「このツリー、ちょっとちっちゃくない?」背比べのときみたいな手を、自分の頭のてっぺんと、真横にあるツリーにあてる。「だいたい二メートルくらいかな~」
「勇」
「もっとおっきくたって、いいよね? そう思わない? サイズが微妙だからさ、写真とってく人もあまりいないみたい」
「おれ……勇のことが好きなんだ」
「私も好きだよ」
まるで朝のアイサツみたいに、勇は言う。
……ん?
なんか、おかしくないか?
告白って、こんなんだっけ?
「どうしたの? 私の顔、じーっと見ちゃって」
「勇。聞いてくれ。おれずっと演技してたんだ」
「演技って?」
「おまえが好きなのに、好きじゃない……っていうか、ただの幼なじみを演じてた」
「そんなの――――おたがいさまでしょ?」
えっ。
それって、どういう……
「ほめてよ、私の名演技。ずっとずっと、ずーーーーーっと、ただの幼なじみをやってたんだからね?」
おれは、そんなことを笑顔で言った勇に、心も体も引き寄せられた。
正しい恋はここにあった。
勇を抱きしめる……
「っ! ちょっと! やめて。恋人同士みたいじゃない」
……つもりだったが、寸前で両手パーで押し返され、体を離されてしまった。
「冷たっ! も~、雪が目に入っちゃったし」
「おれのせいじゃないだろ」
「雪が……」
人差し指を曲げて、目の下にあてている。
顔は、下に向けて。
「勇。あまり、こすったりしないほうがいいぞ」
「ちがう、バカ!」
「え?」
「フツーわかるでしょ?」
「いや……雪が目に入ったんだろ?」
「そういうとこなのよ」
そう言って、20センチ背の高いおれの顔を見上げてくる。
「ニブいっていうか、想像力がないっていうか、ウソを見抜けないっていうか、疑うことを知らないっていうか――」
勇の瞳がキラキラ光っている。
「そんな正が、大好き……」
目をつむった。
さすがに、この意味がわからないほどニブくはない。
キスした。
あまり長いのはわるいかなと思って、1、2って頭で数えて、3秒でやめる。
目をあける勇。
「……ほかの女の子にも、そうやってキスしたの?」
「してないよ。だって、はじめて――――」
おれはバランスをくずして、倒れそうになった。
「絶対そうだと思った‼ 信じてたんだから‼」
思いっきり、抱きつかれている。
首のうしろに両手を回していて、しかもそこから、足を浮かせてグルグル回ろうとしてる。
いや……ム、ムリだって……。
おれはひざをついた。
ほっぺにほっぺをくっつけてきて、勇が耳元でささやく。
「やっと恋人同士になれたね」
「ああ」
ビュッと強い風がふいて、夜空に吸い込まれるように、白い雪が高く舞い上がっていった。
◆
昔のことを思い出している。
あの日のことを。
あの日から、おれと勇の新しい関係がはじまったんだ。
幼なじみでも妹でもない――っていうか、幼なじみで妹っていうところに、一つプラスされた。
彼氏彼女の間柄になった。
実家の自分の部屋の窓から、外を見下ろす。
誰もいない。真冬の季節だしな。
ちょうどあの場所に、星乃さんが立っていたんだ。
今は女子大に進学して、彼女もおれと同じように家を出たらしい。
丈ももう、家にはいない。外国へ行った。たまに「正もこっちに来いよ」と、あいつらしいメールが届いている。あの日から高校を卒業するまでの間に、おれたちは親友になっていた。児玉や紺野ともウマが合って、4人でよくツルんだんだ。ちなみに、あいつが暴力事件を起こして転校してきたっていうウワサは、根も葉もない真っ赤なウソだった。
(って、丈からメールか? すごいタイミングだな)
みじかい内容。
勇がフリーになったら即連絡しろ、ってまた勝手なことを……。
おまえこそ、こっちが恋しくなって帰国したら即連絡よこせよ、ってメールを返しておいた。
あいつは恩人だ。
丈がいなければ、たぶん、おれたちが幼なじみの関係から進むことはなかっただろう。
……って、そんなこともないか? 持ち上げすぎかもな。
(またか。こんどは……)
スマホの画面をみる。
勇の〈彼氏〉を演じていた、外井くんからのラインだ。
「ドラマみました。やっぱ、小波久くんはかっこいいですね。光ってました」
「ありがとう。でも、まだまだ未熟だから、もっとがんばるよ」
親指をたてたイラストのスタンプが返ってくる。
相変わらず、いいヤツだな。
こんないいヤツを……勇が〈彼氏〉にして巻き込んでしまったことが、ほんとに申し訳ない。
聞けば、勇は〈おれのため〉に外井くんとつきあったフリをしたらしい。
おれが中学のときも、高校に上がってからも、誰ともつきあおうとしないのが〈自分のせい〉だって、あいつはカンちがいしてたみたいなんだ。
勇にエンリョして、おれが女子とつきあおうとしない――だったら、自分が男子とつきあってるってことにすれば、正も女の子と自由に恋愛するだろう――そんな考えだったらしい。
今となっては、笑い話だ。
よくそのネタで、勇をからかってる。
たぶん、今日も……
「あーっ‼」
部屋のドアがあいた。
「玄関にクツがあったから、もしかしたらと思ったけど……」
「うん。久しぶりだな」
ぎゅっ、とハグし合ったあとで、まっすぐ見つめる。
「勇。大事な話があるんだ」
「えっ。な、なによ…………真剣な顔しちゃって……それにそのスーツは何? サラリーマンにでも転職する気になった?」
「おれと結婚してくれ」
「えーーーーーっ‼」
部屋に勇の声がひびいた。
あの日から恋人になったおれたちは、その週末に、ばあちゃんに会いに行った。
で、報告したんだ。つきあうことにしたよ、って。
ばあちゃんは涙を流してよろこんでくれた。
そしてここからが大事な点だ。
ばあちゃんの体が、みるみる良くなっていったんだ。お医者さんもおどろくほどに。
おれは詳しいことはわからないけど、気持ちがポジティブになったら、体のわるいものが小さくなったり無くなったりすることがあるらしい。
ずいぶん顔色も良くなって、ばあちゃんは「100まで生きるからね」と、今でも元気いっぱいだ。
「ダメか?」
「ダメじゃないけど……私まだ大学生だし……」
「これ、指輪」
「バカ。そんな、あっさりと渡していいもんじゃないでしょ!」
と、抱きついてくる。
はずみで、指輪のケースを床に落としてしまった。
たぶん指輪も約束も、おれたちには必要ないんだ。
「ねぇ正……私たちみたいな、連れ子同士が結婚できるかどうか、知ってる?」
至近距離でおれを見上げながら勇が問いかけた。
「知ってるよ」
「……そっか、それぐらい、あらかじめ調べてるよね」
「おまえも知ってただろ?」
勇の顔が赤くなった。
赤くなった理由は、勇と、おれだけが知っている。
[完]
それは〈眉目秀麗〉。
父さんの兄さんのオジサンに「ビモクシューレーだな」って会うたびに言われて、まずその音が耳に焼きついた。
意味を知ってからは、そう言ってもらおうとオジサンの前でキリッとした顔をするようになった。
それがたぶん、おれのカッコつけ――もしくはナルシスト――の、はじまりだ。
(ついにきたか)
大舞台。
ひとつ前の演劇の途中、チラチラと舞台のそでから客席のほうを見てみたけど、ひとりも元カノは見つけられなかった。もしかしたら、誰も来てくれてないのかもしれない。まあ……しょうがないよな。おれ、その全員にフラれてるわけだし。
しかも今日は、クリスマスイブだ。
やっぱり招待なんかするんじゃなかった。即決で行かないと決めた子だったらまだしも、もし、チケットを送られたこと自体がイヤだったり、どうしようとナヤませてしまった子がいるのなら、謝りたい。
本当に、おれはいつだって自分のことしか考えてない、半人前だ。
変わりたい。もっと成長したい。
あいつのためにも。
この一人芝居を演じ切ったら、おれは…………
(よし。いこう)
舞台のそでから、スポットライトで照らされているところまで、ゆっくり歩いていく。
衣装は、ふだんどおりの学生服。髪型もいつもと同じ。
革靴の底をキュッと鳴らして、おれは客席のほうへ向いた。
「え、えーと……」
光はスポットライトだけで、お客さんはほぼ見えない。
だから、わからない。
この中に12人の元カノがいるのかも、翔がいるのかも、勇がいるのかも。
「えー……」
まずい。
観てる人たちが、ざわざわしはじめている。
頭が真っ白になった。
何もできない。
そうだよ。
おれは、13人もの女の子に愛想をつかされた男なんだ。
そりゃ、何もできないさ。
うまい一人芝居なんか、できないよ。
そもそもセリフがでてこない。
じゃあ、こんなところに棒立ちになって、なにをしてるんだ?
今この瞬間にも、勇は丈の彼女になろうとしてるかもしれないのに。
「あ……その、えっと……」
もうダメだ。
やめたい、はやく舞台をおりたい、そんな弱音を心で口にしたとき――
なにやってんのよっ
バドミントンのラケットで、ハエたたきのように頭をたたかれた――――気がした。
びっくりして舞台の上を見回したが、当然、誰もそこにいない。いるのはおれ一人。
? なんだったんだ?
でも、気持ちが、一気にラクになったよ。
あらためて正面を向く。
「今からするのは、芝居じゃないんです。ただ、おれが、正直に話すっていうだけで……。
最後まで聞いてくれると、うれしいです。
おれには好きな人がいます。
その……好きな人の話をする前に、おれは13人の女の子にフラれてます。
13人とか言うとめっちゃリア充で、モテモテで、どうしょうもない女ったらしみたいですけど、なんて言ったらいいか、ぶっちゃけると……女の子に対して〈したい〉って思うことができる前に関係が終わってますから、べつにジマンでもなんでもありません。
はっきり言うと、おれエッチとかしたことないんです。キスも。
はは……舞台の上で言うことじゃないですよね、これ。
バカだよな……。
それで、ちょっと、おれ最近気づいたことがあるんです。
っていうのは――おれは、その13人の女の子の中の〈好きな人〉をさがしてたんじゃないか、っていうことなんです。
言いまちがえてないです。
中に、じゃなくて、中の。
おれは、つきあった女の子の中の〈好きな人〉を求めてたみたいなんです。
個性の一部――というか。
カケラっていえばいいのかな。
たとえば、ある女の子は努力家だったり、ある女の子は妹っぽいかわいさがあったり、ある女の子は単純に外見が似てたり、ある女の子は誰からも好かれる性格だったり……みたいな感じで。
それをですね……そのカケラを13コ集めて、ぎゅーーーってしたら〈好きな人〉ができあがるんじゃないか、ってヘンなことを考えちゃいました。
つまり13……いや、12人の女の子に告白するっていう、ずいぶん遠回りをしちゃったんですよね。
彼女は幼なじみで、おれ、小さいころから知ってます。
明るくて、活発で、スポーツができて、家族みたいになんでも話せる存在で。
告白します。
おれは」
観客は、静まり返っている。
すこし目がなれて、暗い中に座っている人たちの影がぼんやり見えはじめてきた。
「あいつのことが好きで好きでたまらないのに、ふつうの幼なじみみたいな演技を、おれ……ずっとしてたんです」
想いを言葉にした瞬間、胸がいっぱいになって、そこから何も言えなくなった。
「………………」
突然どこかで、ざわっ、とどよめいた。
誰か一人、いきなり席を立ったようだ。
「――ウソですっ!」
この声は翔だ。
右側の客席の真ん中あたり。
片手を胸にあてている。その手が、着ているセーターをにぎりしめているのがわかる。
「ウソって言ってください‼ お願い! 正! その子に負けないぐらい、私だって」
おれのほうへ来ようとしている。
今の翔は、あきらかに冷静じゃない。
とめないと、と一歩ふみだしたと同時、
「なんですか、あなたは! どいてください!」
「悪いが、ここは通行止めだ。よそへ行け」
「なっ……!」
顔も体も舞台に向けて腕を組み、通せんぼするように堂々と立つあの姿。
あれは三年の先輩の水緒さんだ。おれの招待を受けて、わざわざ来てくれてたのか?
翔はあきらめて、こんどは水緒さんが立っていないほうから通路に出ようとする。
「こっちもダーメ。なんなら超高校級の水泳部の女と、力くらべしてみる?」
水泳部……? あっ、望海だ、あれはノゾミちゃんだ。
翔は彼女たちに、両サイドをはさまれている。通路に出ることもできない。
「ど、どいて……っ‼」
「小波久が好きなら、わかるはずだ」ノゾミちゃんにつかみかかる翔の背後から、水緒さんが声をかける。「芝居の邪魔をするな。そして、あいつはこれから舞台を飛び出して、真実の〈告白〉をしに行くんだよ」
「何……? いったい何を言っているんですか⁉」
翔が肩ごしに水緒さんをみる。
感情むき出しの、するどい眼。
それを受け流すように、水緒さんの口調はとてもおだやかだ。
「その〈告白〉を心から望み、ただ見守る……それが、小波久正という男を好きになった女たち全員の総意だと私は思っている」
いつのまにか客席のバラバラの位置で、何人かが立ち上がっていた。
不思議と、数えなくても、その数がわかる。
右半分に6人、左半分に6人。
みんな、思い思いの立ち姿で、おれのほうに顔を向けている。舞台のそでからも、片切がじっと見ている。
(さあ!)
と、彼女たちに応援されているようだった。
待たれている。期待されている。
でも、どこに行けばいいのかわからない。
でも、少なくともここに勇はいないんだ。
さがそう。
くたびれてヘトヘトになるまで。
「……みなさん、すいません。
聞いてくれて、ありがとうございました。
じゃあ、おれ行きます。
行ってきます。
あいつに……勇に……告白してきます‼‼」
舞台をジャンプでおりて、階段みたいになってる客席の通路を駆け抜ける。
出るとき、近くの席で立っていた塔崎さんが、コクッと力強くうなずいてくれた。
出口の扉がしまる寸前、かすかに手をたたく音が――いや、まさかな。こんな芝居でもなんでもないモノに、拍手なんかもらえないって……。
(雪?)
顔に冷たい何かがあたった気がした。
でもあたりを見回しても、何もふっていない。
冷たい空気。すこし風も強い。
大きなホールのエントランスを出て、その前に広がる場所にいる。
地面は一面の赤レンガで、あたたかい色の光でライトアップされている。中央には小さなクリスマスツリー。
「ちっ。出てきやがったか」
その声にふりかえると、やっぱり丈だった。
おれは、つかみかかるぐらいの勢いで彼に近づく。
丈のすこしニヤけた表情を見れば見るほど、どんどん胸がチリついていく。
「勇はどこだ? いっしょに……いたんじゃないのか?」
こぶしを握りしめる。
もしかしたら、おれは生まれてはじめて、本気のケンカをするかもしれない。
「まてまて。熱くなるな。まず、オレに礼をいえ」
「礼……?」
黒い革ジャンに、下も黒い革のパンツ。
首元に、赤いマフラーがわずかにのぞいている。タイトに巻いて、大部分を革ジャンの中にもぐりこませていた。
「正!」
この声は……。
「待ってくださいっ!」
翔だ。
おれのあとを追って、エントランスから出てきた。一直線にこっちに来る。
「……礼っていうのはな、ここまで勇をつれてきたことだ」
丈がおれの肩に手をおく。
「心配しなくてもあいつは近くにいる。が、その前に、オマエはおれの妹に言うことがあるだろ?」
「そうだな……」
赤いセーターに、チョコレート色のスリムなパンツ。
黒髪ショートに、きれいすぎる顔立ち。
本当に、おれにはもったいない女の子だ。
急に走って乱れた彼女の息が整うのを待って、おれは言った。
「翔。ありがとう」
「えっ……」
「こんな中身ゼロの男を好きになってくれて、『つきあいませんか』まで言ってくれて、みじかい間だったけど、翔みたいな女の子の彼氏気分を味わえて、いい思い出になったよ」
「…………それ、演技ですよね? まだ演技してるんですよね? ほんとじゃない……ですよね?」
「もうおれは演技してない。これから勇に告白するんだ」
「正」
「ごめん。おれが、はっきりしない態度をとり続けたことも、よくなかった」
きおつけの姿勢で、彼女に頭を下げた。
「翔とはつきあえない」
だまって地面をみつめる。
翔が何か言ってくれるまで、頭を下げつづけようと決めた。
「おい」
丈の声。
「こいつはこいつなりに、ちゃんとセイイってのをみせてる。なんか言ってやれよ」
「お兄ちゃん……」
「あーあー、そんな顔すんなって」少し声が出る位置が低く、おれの耳に近くなり――「もういいよ。頭をあげろ。妹にかわって、オレが許可してやっから」
目の前には、翔の両肩をやさしく支える、兄の姿があった。
「正。ハンパな断り方をしやがったらタダじゃおかなかったが……ま、合格だ」
「おっ……お兄ちゃーーーん‼」
「泣くなって。なっ? ずっと乗りたがってたバイクのうしろに乗っけてやるから」
胸に顔をうずめて泣く翔の頭をなでてやりながら、おれと目を合わせる。
「オマエは幸せモンだよ」
「え?」
「こーんな超絶かわいい妹と、勇のハートまで持っていっちまうんだから」
「丈。勇は……」
無言で指をさした。
そっちを見ると、飾り付けされたツリーにかくれるように、静かに立っている姿。
「オレはマジだった。マジで、日付をこえるまでは勇を手放す気はなかったんだ……」
横顔を向けて話す丈とおれの間に、小さくて白いものが流れた。
雪だ。雪がふってきた。
「押し切られたよ。オレの革ジャンを両手でつかんで『いって!』ってな。で、『チケットがないから』って、あそこで待ちつづけてる。はやくいってやれ」
丈は、わしゃっ、と自分で自分の髪をさわった。
両目が前髪でかくれて、ニッ、と片方の口角があがる。
「正。前に言ったの、訂正するぜ。やっぱり恋に早いモン勝ちはある。まったく計算外さ……好きになった女に、オマエみたいな幼なじみがいたなんてな」
丈が背中を向けた。
翔も、もう話しかけてくる様子はない。
それより――おれも行かないと。
ぴん、と緊張してきた。自然と背筋がのびる。
一歩一歩、あいつとの距離が縮まる。
クリスマスツリーのそばに立つ、真っ白なダッフルコート。
待ちきれず、ずいぶん手前でおれは、
「勇!」
と声をかけた。
ん? とツリーの奥の人影がうごく。
「好きだっ!」
フライング気味に、おれはコクった。
そんなにたくさんいるわけじゃないけど、まわりを歩く人たちから注目される。
勇は少し、首をかしげるアクション。
あれ? 聞こえなかったのか?
「勇」
「劇、終わった?」
「ああ。いや……」
「このツリー、ちょっとちっちゃくない?」背比べのときみたいな手を、自分の頭のてっぺんと、真横にあるツリーにあてる。「だいたい二メートルくらいかな~」
「勇」
「もっとおっきくたって、いいよね? そう思わない? サイズが微妙だからさ、写真とってく人もあまりいないみたい」
「おれ……勇のことが好きなんだ」
「私も好きだよ」
まるで朝のアイサツみたいに、勇は言う。
……ん?
なんか、おかしくないか?
告白って、こんなんだっけ?
「どうしたの? 私の顔、じーっと見ちゃって」
「勇。聞いてくれ。おれずっと演技してたんだ」
「演技って?」
「おまえが好きなのに、好きじゃない……っていうか、ただの幼なじみを演じてた」
「そんなの――――おたがいさまでしょ?」
えっ。
それって、どういう……
「ほめてよ、私の名演技。ずっとずっと、ずーーーーーっと、ただの幼なじみをやってたんだからね?」
おれは、そんなことを笑顔で言った勇に、心も体も引き寄せられた。
正しい恋はここにあった。
勇を抱きしめる……
「っ! ちょっと! やめて。恋人同士みたいじゃない」
……つもりだったが、寸前で両手パーで押し返され、体を離されてしまった。
「冷たっ! も~、雪が目に入っちゃったし」
「おれのせいじゃないだろ」
「雪が……」
人差し指を曲げて、目の下にあてている。
顔は、下に向けて。
「勇。あまり、こすったりしないほうがいいぞ」
「ちがう、バカ!」
「え?」
「フツーわかるでしょ?」
「いや……雪が目に入ったんだろ?」
「そういうとこなのよ」
そう言って、20センチ背の高いおれの顔を見上げてくる。
「ニブいっていうか、想像力がないっていうか、ウソを見抜けないっていうか、疑うことを知らないっていうか――」
勇の瞳がキラキラ光っている。
「そんな正が、大好き……」
目をつむった。
さすがに、この意味がわからないほどニブくはない。
キスした。
あまり長いのはわるいかなと思って、1、2って頭で数えて、3秒でやめる。
目をあける勇。
「……ほかの女の子にも、そうやってキスしたの?」
「してないよ。だって、はじめて――――」
おれはバランスをくずして、倒れそうになった。
「絶対そうだと思った‼ 信じてたんだから‼」
思いっきり、抱きつかれている。
首のうしろに両手を回していて、しかもそこから、足を浮かせてグルグル回ろうとしてる。
いや……ム、ムリだって……。
おれはひざをついた。
ほっぺにほっぺをくっつけてきて、勇が耳元でささやく。
「やっと恋人同士になれたね」
「ああ」
ビュッと強い風がふいて、夜空に吸い込まれるように、白い雪が高く舞い上がっていった。
◆
昔のことを思い出している。
あの日のことを。
あの日から、おれと勇の新しい関係がはじまったんだ。
幼なじみでも妹でもない――っていうか、幼なじみで妹っていうところに、一つプラスされた。
彼氏彼女の間柄になった。
実家の自分の部屋の窓から、外を見下ろす。
誰もいない。真冬の季節だしな。
ちょうどあの場所に、星乃さんが立っていたんだ。
今は女子大に進学して、彼女もおれと同じように家を出たらしい。
丈ももう、家にはいない。外国へ行った。たまに「正もこっちに来いよ」と、あいつらしいメールが届いている。あの日から高校を卒業するまでの間に、おれたちは親友になっていた。児玉や紺野ともウマが合って、4人でよくツルんだんだ。ちなみに、あいつが暴力事件を起こして転校してきたっていうウワサは、根も葉もない真っ赤なウソだった。
(って、丈からメールか? すごいタイミングだな)
みじかい内容。
勇がフリーになったら即連絡しろ、ってまた勝手なことを……。
おまえこそ、こっちが恋しくなって帰国したら即連絡よこせよ、ってメールを返しておいた。
あいつは恩人だ。
丈がいなければ、たぶん、おれたちが幼なじみの関係から進むことはなかっただろう。
……って、そんなこともないか? 持ち上げすぎかもな。
(またか。こんどは……)
スマホの画面をみる。
勇の〈彼氏〉を演じていた、外井くんからのラインだ。
「ドラマみました。やっぱ、小波久くんはかっこいいですね。光ってました」
「ありがとう。でも、まだまだ未熟だから、もっとがんばるよ」
親指をたてたイラストのスタンプが返ってくる。
相変わらず、いいヤツだな。
こんないいヤツを……勇が〈彼氏〉にして巻き込んでしまったことが、ほんとに申し訳ない。
聞けば、勇は〈おれのため〉に外井くんとつきあったフリをしたらしい。
おれが中学のときも、高校に上がってからも、誰ともつきあおうとしないのが〈自分のせい〉だって、あいつはカンちがいしてたみたいなんだ。
勇にエンリョして、おれが女子とつきあおうとしない――だったら、自分が男子とつきあってるってことにすれば、正も女の子と自由に恋愛するだろう――そんな考えだったらしい。
今となっては、笑い話だ。
よくそのネタで、勇をからかってる。
たぶん、今日も……
「あーっ‼」
部屋のドアがあいた。
「玄関にクツがあったから、もしかしたらと思ったけど……」
「うん。久しぶりだな」
ぎゅっ、とハグし合ったあとで、まっすぐ見つめる。
「勇。大事な話があるんだ」
「えっ。な、なによ…………真剣な顔しちゃって……それにそのスーツは何? サラリーマンにでも転職する気になった?」
「おれと結婚してくれ」
「えーーーーーっ‼」
部屋に勇の声がひびいた。
あの日から恋人になったおれたちは、その週末に、ばあちゃんに会いに行った。
で、報告したんだ。つきあうことにしたよ、って。
ばあちゃんは涙を流してよろこんでくれた。
そしてここからが大事な点だ。
ばあちゃんの体が、みるみる良くなっていったんだ。お医者さんもおどろくほどに。
おれは詳しいことはわからないけど、気持ちがポジティブになったら、体のわるいものが小さくなったり無くなったりすることがあるらしい。
ずいぶん顔色も良くなって、ばあちゃんは「100まで生きるからね」と、今でも元気いっぱいだ。
「ダメか?」
「ダメじゃないけど……私まだ大学生だし……」
「これ、指輪」
「バカ。そんな、あっさりと渡していいもんじゃないでしょ!」
と、抱きついてくる。
はずみで、指輪のケースを床に落としてしまった。
たぶん指輪も約束も、おれたちには必要ないんだ。
「ねぇ正……私たちみたいな、連れ子同士が結婚できるかどうか、知ってる?」
至近距離でおれを見上げながら勇が問いかけた。
「知ってるよ」
「……そっか、それぐらい、あらかじめ調べてるよね」
「おまえも知ってただろ?」
勇の顔が赤くなった。
赤くなった理由は、勇と、おれだけが知っている。
[完]
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