5 / 5
5
しおりを挟む
汚れたシーツを洗っている間に風呂を沸かして、久しぶりに兄弟で風呂に入る。
互いの汗と精液をシャワーで洗い流した。
シャワーヘッドを持って俺の体に石鹸の泡を撫でつけ流しながら、陽翔が笑う。
「兄貴、べとべと~」
「うっせ、誰のせいだ!」
そして大人二人にはだいぶ狭くなった湯船につかる。
浴槽の中で足を伸ばす陽翔の股の間に、俺が座って後ろから抱っこされるような形で。
「な、なんでこんな体勢……」
「狭いから仕方なくない!?まさか兄貴と両想いになれるなんて、今日は最高の日だ」
ちょっと待て、今なんか言われたな。
「誰が両想いだって!?」
「だって素股させてくれたでしょ!え、兄貴、好きでもないやつに素股させるの!?そんな淫乱なの!?」
「う……」
ああいえばこういう、口の達者なやつ。俺が返答に困っていると、
「俺のこと、まだ嫌い……?」
陽翔の声音が急に変わった。
滅多に聞くことのない、陽翔の頼りなく不安げな声。
俺は振り向いて焦って否定する。
「嫌いなわけないだろ!」
ていうか「まだ」ってなんだ、俺はお前のこと嫌いだったことは一度もないぞ。
コンプレックス故にちょいちょい邪険にしてたけど、「嫌ってる」と思っていたのか?
「じゃあ、好き?俺のこと好きになってくれた?」
首をかしげる陽翔の瞳はキラキラとして、でも底の方が不安そうに揺れている。
胸にちくりと痛みを感じる。
俺がぶつけてきた幼稚なコンプレックスが、陽翔にこんな顔をさせているのか。
「……好き、だよ。嫌いとか思ったことは、一度もねえよ……」
俺は恥ずかしくて目を泳がせながら、正直につぶやく。
その途端、空が晴れ渡るように、陽翔は笑顔になる。
「両想いだね!」
「りょっ……。もういい、そういうことでいい。ていうかお前、彼女……とか……」
俺は再び陽翔に背を向け、ぼそりと尋ねる。
こんな高身長イケメンだ、彼女がいないわけがない。……と、ずっと勝手に彼女持ちだと思っていたのだが。
「兄貴、俺のことどんな奴だと思ってるの!?いたら兄貴とこんなことするわけなくない!?」
「そう……か……」
なぜかほっと安心してしまう自分に戸惑う。
「彼氏ならいるけど」
え……?
俺はその言葉に硬直する。
さーっと己の血の気が引く音が聞こえた気がした。
彼女はいないけど、彼氏ならいる?
青ざめうつむく俺の背中を、陽翔が後ろから抱きしめた。
たくましい腕で俺の体を抱き込んで、俺の両肩をクロスした手で力強くつかむ。
「今日、できた。今さっき、できた。兄貴が俺の彼氏になってくれた」
「って俺かよ!」
「兄貴以外、いないじゃん!十年越しの片想いが実って嬉しい俺」
陽翔はちゅっちゅと後ろから、濡れた耳に口づけしてくる。
俺はくすぐったくて首をすくめる。
「そ、それやめろ!ていうか俺はお前の彼氏になったのか!?」
「両想いでえっちしたらもう彼氏でしょ!」
「なっ……!も……もういい、そういうことで、いい……」
十年越しの片想いとか、彼氏とか。
顔が熱いのは風呂のせいだけじゃない。
なにキュンキュンしてんだ俺。
陽翔は俺の背中を抱きしめたまま、耳元につぶやく。
またさっきと同じ、不安げな声で、こわごわと。
「兄貴と……キスしたい……」
背中からダイレクトに、陽翔の速すぎる心音が伝わってきた。
おいおい。
なんでそこで、心拍数爆上げすんだお前。
これだけ大胆なことしておいて、両想いとか彼氏とか強引なこと言っておいて。
キスのおねだり一つに、なにびびってんだよお前。
そしてなんで「可愛い」とか思ってるんだよ俺。
俺は振り向くと、片手を伸ばして陽翔の頭を引き寄せた。
驚く陽翔の唇を、下から乱暴に奪う。
想像より柔らかい唇に、強く自分のものを押し付け続け、ゆっくりと離した。
「……キスくらいでびびってんじゃねえよ」
肌を上気させた陽翔が、呆けたように俺を見てる。
俺は照れて目を伏せる。
だから、あんだけ色んなことしておいて、初心な反応するんじゃねえ。
こっちが恥ずかしくなるじゃないか。
陽翔が情けなく眉を下げて、感情を吐露するように言う。
「俺、兄貴のことが好き。好き過ぎてどうしたらいいのか分かんない。無茶苦茶、好きなんだ」
まっすぐ過ぎる告白に、俺は赤くなりながら、うんとうなずく。
陽翔が俺の顎を持ち上げて、再び唇を重ねてきた。
舌が侵入してきて、俺の舌と絡み合う。唾液が混ざり合い、思考がとろけていく。
陽翔と口内で繋がる気持ちよさに俺は酔う。
ようやく唇を離した陽翔が、荒い息をつきながら、湯の中の俺の太ももに不埒な動きで手を這わせる。
「今度は、お尻に入れたい……」
「お、お前はっ……!」
初心モードはもうおしまいか。
俺は小声で答える。
「そっ……そのうち……な!まだちょっと、心の準備とか……」
って「そのうち」ってなんだよ俺、なにあっさりOKしてんだ俺。
「嫌だ」とか「無理だ」とか言えよ。
「わかった!じゃあもう一回、素股させて!今やろ、ここでやろ?ここでやればシーツ洗う必要なくない?」
「う……。うん……」
俺は前のめりの陽翔にこくりと首を縦に振った。
やっぱり、嫌だとか無理だとかは、言えない俺だった。
[完]
互いの汗と精液をシャワーで洗い流した。
シャワーヘッドを持って俺の体に石鹸の泡を撫でつけ流しながら、陽翔が笑う。
「兄貴、べとべと~」
「うっせ、誰のせいだ!」
そして大人二人にはだいぶ狭くなった湯船につかる。
浴槽の中で足を伸ばす陽翔の股の間に、俺が座って後ろから抱っこされるような形で。
「な、なんでこんな体勢……」
「狭いから仕方なくない!?まさか兄貴と両想いになれるなんて、今日は最高の日だ」
ちょっと待て、今なんか言われたな。
「誰が両想いだって!?」
「だって素股させてくれたでしょ!え、兄貴、好きでもないやつに素股させるの!?そんな淫乱なの!?」
「う……」
ああいえばこういう、口の達者なやつ。俺が返答に困っていると、
「俺のこと、まだ嫌い……?」
陽翔の声音が急に変わった。
滅多に聞くことのない、陽翔の頼りなく不安げな声。
俺は振り向いて焦って否定する。
「嫌いなわけないだろ!」
ていうか「まだ」ってなんだ、俺はお前のこと嫌いだったことは一度もないぞ。
コンプレックス故にちょいちょい邪険にしてたけど、「嫌ってる」と思っていたのか?
「じゃあ、好き?俺のこと好きになってくれた?」
首をかしげる陽翔の瞳はキラキラとして、でも底の方が不安そうに揺れている。
胸にちくりと痛みを感じる。
俺がぶつけてきた幼稚なコンプレックスが、陽翔にこんな顔をさせているのか。
「……好き、だよ。嫌いとか思ったことは、一度もねえよ……」
俺は恥ずかしくて目を泳がせながら、正直につぶやく。
その途端、空が晴れ渡るように、陽翔は笑顔になる。
「両想いだね!」
「りょっ……。もういい、そういうことでいい。ていうかお前、彼女……とか……」
俺は再び陽翔に背を向け、ぼそりと尋ねる。
こんな高身長イケメンだ、彼女がいないわけがない。……と、ずっと勝手に彼女持ちだと思っていたのだが。
「兄貴、俺のことどんな奴だと思ってるの!?いたら兄貴とこんなことするわけなくない!?」
「そう……か……」
なぜかほっと安心してしまう自分に戸惑う。
「彼氏ならいるけど」
え……?
俺はその言葉に硬直する。
さーっと己の血の気が引く音が聞こえた気がした。
彼女はいないけど、彼氏ならいる?
青ざめうつむく俺の背中を、陽翔が後ろから抱きしめた。
たくましい腕で俺の体を抱き込んで、俺の両肩をクロスした手で力強くつかむ。
「今日、できた。今さっき、できた。兄貴が俺の彼氏になってくれた」
「って俺かよ!」
「兄貴以外、いないじゃん!十年越しの片想いが実って嬉しい俺」
陽翔はちゅっちゅと後ろから、濡れた耳に口づけしてくる。
俺はくすぐったくて首をすくめる。
「そ、それやめろ!ていうか俺はお前の彼氏になったのか!?」
「両想いでえっちしたらもう彼氏でしょ!」
「なっ……!も……もういい、そういうことで、いい……」
十年越しの片想いとか、彼氏とか。
顔が熱いのは風呂のせいだけじゃない。
なにキュンキュンしてんだ俺。
陽翔は俺の背中を抱きしめたまま、耳元につぶやく。
またさっきと同じ、不安げな声で、こわごわと。
「兄貴と……キスしたい……」
背中からダイレクトに、陽翔の速すぎる心音が伝わってきた。
おいおい。
なんでそこで、心拍数爆上げすんだお前。
これだけ大胆なことしておいて、両想いとか彼氏とか強引なこと言っておいて。
キスのおねだり一つに、なにびびってんだよお前。
そしてなんで「可愛い」とか思ってるんだよ俺。
俺は振り向くと、片手を伸ばして陽翔の頭を引き寄せた。
驚く陽翔の唇を、下から乱暴に奪う。
想像より柔らかい唇に、強く自分のものを押し付け続け、ゆっくりと離した。
「……キスくらいでびびってんじゃねえよ」
肌を上気させた陽翔が、呆けたように俺を見てる。
俺は照れて目を伏せる。
だから、あんだけ色んなことしておいて、初心な反応するんじゃねえ。
こっちが恥ずかしくなるじゃないか。
陽翔が情けなく眉を下げて、感情を吐露するように言う。
「俺、兄貴のことが好き。好き過ぎてどうしたらいいのか分かんない。無茶苦茶、好きなんだ」
まっすぐ過ぎる告白に、俺は赤くなりながら、うんとうなずく。
陽翔が俺の顎を持ち上げて、再び唇を重ねてきた。
舌が侵入してきて、俺の舌と絡み合う。唾液が混ざり合い、思考がとろけていく。
陽翔と口内で繋がる気持ちよさに俺は酔う。
ようやく唇を離した陽翔が、荒い息をつきながら、湯の中の俺の太ももに不埒な動きで手を這わせる。
「今度は、お尻に入れたい……」
「お、お前はっ……!」
初心モードはもうおしまいか。
俺は小声で答える。
「そっ……そのうち……な!まだちょっと、心の準備とか……」
って「そのうち」ってなんだよ俺、なにあっさりOKしてんだ俺。
「嫌だ」とか「無理だ」とか言えよ。
「わかった!じゃあもう一回、素股させて!今やろ、ここでやろ?ここでやればシーツ洗う必要なくない?」
「う……。うん……」
俺は前のめりの陽翔にこくりと首を縦に振った。
やっぱり、嫌だとか無理だとかは、言えない俺だった。
[完]
20
お気に入りに追加
77
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(4件)
あなたにおすすめの小説


頭の上に現れた数字が平凡な俺で抜いた数って冗談ですよね?
いぶぷろふぇ
BL
ある日突然頭の上に謎の数字が見えるようになったごくごく普通の高校生、佐藤栄司。何やら規則性があるらしい数字だが、その意味は分からないまま。
ところが、数字が頭上にある事にも慣れたある日、クラス替えによって隣の席になった学年一のイケメン白田慶は数字に何やら心当たりがあるようで……?
頭上の数字を発端に、普通のはずの高校生がヤンデレ達の愛に巻き込まれていく!?
「白田君!? っていうか、和真も!? 慎吾まで!? ちょ、やめて! そんな目で見つめてこないで!」
美形ヤンデレ攻め×平凡受け
※この作品は以前ぷらいべったーに載せた作品を改題・改稿したものです
※物語は高校生から始まりますが、主人公が成人する後半まで性描写はありません

イケメンの後輩にめちゃめちゃお願いされて、一回だけやってしまったら、大変なことになってしまった話
ゆなな
BL
タイトルどおり熱烈に年下に口説かれるお話。Twitterに載せていたものに加筆しました。Twitter→@yuna_org



就職するところがない俺は男用のアダルトグッズの会社に就職しました
柊香
BL
倒産で職を失った俺はアダルトグッズ開発会社に就職!?
しかも男用!?
好条件だから仕方なく入った会社だが慣れるとだんだん良くなってきて…
二作目です!

普通の男の子がヤンデレや変態に愛されるだけの短編集、はじめました。
山田ハメ太郎
BL
タイトル通りです。
お話ごとに章分けしており、ひとつの章が大体1万文字以下のショート詰め合わせです。
サクッと読めますので、お好きなお話からどうぞ。

こわがりオメガは溺愛アルファ様と毎日おいかけっこ♡
なお
BL
政略結婚(?)したアルファの旦那様をこわがってるオメガ。
あまり近付かないようにしようと逃げ回っている。発情期も結婚してから来ないし、番になってない。このままじゃ離婚になるかもしれない…。
♡♡♡
恐いけど、きっと旦那様のことは好いてるのかな?なオメガ受けちゃん。ちゃんとアルファ旦那攻め様に甘々どろどろに溺愛されて、たまに垣間見えるアルファの執着も楽しめるように書きたいところだけ書くみたいになるかもしれないのでストーリーは面白くないかもです!!!ごめんなさい!!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
私の大好きなテーマ「1人プレイ」と苦手なテーマ「近親」が合わさってマイルドな味わいでした!(なんのこっちゃw)ラブコメっぽくて面白かったです😆弟可愛いな〜💕グイグイ積極的で良かったです。
ももみー様!!
きゃーそうだったんですね、一人プレイが大好きテーマだったんですね!?一人プレイが!!(そこに食いつかない)
そして近親苦手だった~!
さーせんです😂読んでくれてありがとうございます、マイルドになっててよかったぁ🤭✨
一人っ子育ちのせいか、「兄弟」という響きに何かとても麗しい耽美な夢と希望とファンタジーを抱いてしまうほうで、夢と希望とファンタジーを詰め込みました😂
(え、本当の兄弟ってこんなんじゃないの!?)
きゃあ弟気に入ってもらえてよかったです~😍
はああ……可愛い💗💗💗💗💗💗💗💗
弟、夢邪鬼で可愛いし、兄貴!おい兄貴!🤣🤣🤣
いいぞ、もっとやれ!👍
あら?もう終わり?名残惜しいわ〜
これからもお幸せに🤣💗
楽しい兄弟をありがとうございました😆💖
涼風さま!
読んでいただきありがとうございました、こんな素敵な感想までいただけてとっても嬉しいです😍
弟可愛いと言ってもらえて嬉しいです、兄貴ちょろインてやっつです🤣
「いいぞ、もっとやれ!👍」ありがとうございます🤣🤣
>これからもお幸せに
くう、嬉しいお言葉!
こちらこそありがとうございました😊✨
自慰見ちゃってからが早かった!😆
ぐいぐいの陽翔と押され気味の樹だから、間もなく“おちり🍑”で合体だあ💕
ごえもん風呂さまぁ~!
わあ感想くださっていた!!
気づくの遅くてすみません、私ったら私ったら😭
読んでもらえて幸せです、この二人の感じ、絶対にすぐおちり合体までいきますよね🤣
とりあえず、全部、スーツが悪いのだっ!!