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第77話 トラエスト城来襲(3) 覚悟
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ヒルデの適切な処置により、左肩の怪我は大事に至らなかった。
アレスは城の医務室のベッドに腰掛け、巻かれた包帯を触りながら、ヒルデに礼を言った。
「いつも悪いな。すげえ、もう全然痛みがない!」
「お前は体力馬鹿だから回復が早いんだ。それにしても、まずいな。霊体化と即死魔法を使う、死んだ天使を材料とする死霊傀儡か」
「ああ、どんどん死霊傀儡の危険度がアップしてやがる。クソっ、俺が工房の職人天使たちを全員殺しておけば」
ヒルデが意外そうにアレスを見て、ああ、と何かを思いついた顔をする。
「宰相に何か言われたか」
アレスは苦笑する。
「うん、まぁ。甘さを叱られたよ。民を守る覚悟が足りないって言われた」
ヒルデは不快げに目を眇めた。
「あいつがお前に言いそうな言葉だな。あいつは相手が一番堪える言葉を瞬時に見抜いて投げつけるんだ。ジールの言葉は話半分に聞いておけ。文官は武官に無理難題ふっかけたがるものだ」
「でも納得できる部分もあったから」
「よく考えてみろ、ミカエルとか言う強敵が現れたんだろう?土台、皆殺しなんて不可能だったではないか。それよりも死の霧内部に侵入し帰還すると言う経験を積めたことが重要だ。キュディアス殿もそこを評価しているだろう。それに天使の死霊傀儡を送ってきたと言うことは、あそこに囚われていた人間の魂は全て解放してやれたと言うことではないか」
「ううむ」
「お前は完璧な仕事をした」
「そうかな……」
笑顔をこぼしたアレスの思ったことは、「ヒルデはいいやつだなあ」と言うことである。良い友を持ったと思う。
そこで控えめなノックの音がして、そっと扉が開けられた。
「あ、あの、アレスの怪我は……」
レリエルの不安そうな表情が、扉の隙間から覗いた。
ヒルデはちらりと見ると、包帯などの道具を手早くまとめ棚にしまった。
「入っていい。俺は席を外そう」
言って、レリエルの脇をすり抜け退室した。アレスは頭を掻いた。
「や、やべえなんかヒルデに気を遣われた……」
そういえば先程の戦闘後、レリエルに思い切り抱きつかれている姿をばっちりヒルデに目撃されてしまったのだった。
ヒルデは特に表情は変えなかったが、何か思うところはあった、のかも、しれない。
レリエルが近寄る。包帯を心配そうに見つめた。
「大丈夫か?痛むか?」
「いや全然平気だ。もうひとバトルやれそうだ」
「馬鹿言うな……」
そう言ってベッドの隣に腰掛けるレリエル。表情が暗い。よく見ればその手が、微かに震えていた。
「震えてんのか!?」
「え!?そ、そんなことは」
レリエルは震えを見せまいとするかのように、自分の手で自分の手を抑えた。
「どうした?」
アレスに問いかけられ、レリエルはうつむいた。
「……イヴァルト様のあの姿を見たら、少し、怖くなった」
「そうだな……。俺もゾッとした」
「僕もいつか、あんな風になるのかな」
そう言って、レリエルは自嘲気味に笑った。
「そんなこと!俺が絶対にそんなことさせねえよ!」
声を荒げたアレスに、レリエルは視線を揺らした。頬を染める。
「アレス……」
アレスは苛立たしく、髪をかき上げた。
「もうこんな鬱陶しい戦い、やってらんねえ!俺はケリをつける、もう一度死の霧の中に入って、天使の神様と話し合う」
レリエルは目を見開いた。
「神様と!?」
「天使は人間を滅ぼそうとしてるんだろ?なんでそんなことするのか、レリエルが言えないならそれでもいい、神様に会って直接確かめるさ。神様が天使の中で一番偉いやつなんだろ?」
「話し合うって、何を話すんだよ!」
「そうだなあ、まずこっちの第一希望、『カブリア王国を返してとにかくこの世界から出て行って下さい』。第二希望、俺としては忸怩たる思いだが、『カブリア王国はくれてやるからもうその霧の中から出て来ないで大人しくしていて下さい』。そんな所かな。で天使側の希望を知って、妥協点をすり合わせてだな」
「ありえない!」
「俺がやりたいのはあくまで話し合いだ。戦争しようってんじゃない。これならレリエルだって、嫌じゃないだろ?」
「僕!?……そうか、僕が神様と戦いたくないって言ったから……」
「あ、第一希望は『レリエルは置いて出て行って下さい』に変えよう」
レリエルは恥ずかしげに口籠る。
「ば、馬鹿、なんだよそれ」
「いやここは譲れねえ」
「うっ、そ、それに神様と話し合うなんて無理だ!まだ卵の中だ!神様はまだ、再生してないんだ!」
「……は?」
「とにかく無理なんだ……!」
そう言ってレリエルは口をつぐんでしまった。
アレスは顎を抑える。卵とはどういうことだ。
だがもう一度死の霧の中に入りたい、という気持ちは変わらなかった。
天使が狙っているのは、アレスとレリエルの命だ。今まで来た死霊傀儡、全てがアレスとレリエルに向けられたものだ。もうその意図は明らかと言っていいだろう。
ならば天使は死霊傀儡を無意味に帝都に送って来て人々を襲わせる、なんてことはしないだろう。アレスが帝都にとどまる意味などない。逆に民を危険に晒しているだけだ。
こっちから出向いて行って、直撃あるのみ。
アレスの目的は、当初はカブリア王国の奪還だった。
だが天使が何か恐ろしい計画――天界開闢――を進行している、その先に人類の滅びがあるらしい、と分かったからには、事態はより差し迫っている。
絶対にその計画を阻止しなければ。
アレスの気持ちは既に、故郷を奪われた復讐、というような段階は通り過ぎていた。
ただ騎士として、大勢の人の命を守らねばならぬ、と。その思いに駆られていた。
あの時守れなかった悔しさを、ばねにして。
「俺しか天使と戦えない。俺しか人類を救えない。だから俺が、やらなきゃいけないんだ……」
己に言い聞かせるようなアレスの独り言を、レリエルは無言で聞く。
「怖いか?敵地にこっちから行くってのは」
「それは別に。どうせどこにいても死霊傀儡を送りつけられる。同じことだ」
「レリエルはここに残るか?」
「は?」
「俺は一人で行くから、レリエルはここに残ったらいい」
「な、なんで……」
「ここにいたって死霊傀儡を送りつけられるが、それでも敵陣の中よりは安全だろう?」
レリエルが息を飲んだ。
「僕の安全のためだって言うのか!?」
「ああ、この先をお前に協力させるのは筋じゃない気がするんだ。ここからは人間を救うための行動になるから」
「お、お前は本当に変な奴だ!話し合いなんて無駄だけど、やりたいなら気にせず僕を利用すればいいじゃないか!僕だって僕の目的の為、一日でも長く生き延びる為に、お前を利用してるんだからなっ!それに……」
レリエルは一端言葉を切り、口ごもりながら言う。
「それに、僕はアレスの仲間なんだろ。だったら、共闘するものなんじゃないのか……?」
「あ……」
恥ずかしげにそう言うレリエルに、アレスの顔が熱くなる。
「そ、そうか、そうだよな。じゃあ、一緒に来てくれるか?」
「行ってやるさ。道案内が必要だろ。いざって時には光速移動だって役立つだろうし」
レリエルは照れ隠しのようなぶっきらぼうで、共闘続投宣言をする。
「ありがとな」
アレスは微笑み、心からの礼を言った。
しかし、複雑な想念が胸の内を駆け巡ってもいた。
アレスは『神』と交渉するつもりだが、もし交渉決裂した場合は、戦いは避けられないだろう。
レリエルの心の支えとなってきた神と、アレスは戦わねばならない。
(その時は、ごめんなレリエル)
だがそれでも、やらねばならない。
あらゆる覚悟はもう出来ていた。
迷いがあってはならないこと。
迷うことが許されないことを、アレスは分かっていた。
(俺だけが救える。人類を滅ぼすなんて、俺が許さない)
そしてアレスは医務室を退室しレリエルをヒルデに預け、一人で第四騎士団長の執務室、すなわちキュディアスの元に向かった。
※※※
キュディアスは頭を抱えていた。
即死魔法を使う死霊傀儡の出現、しかもトラエスト城内部への侵入という事態。先日レリエルが仄めかした、天使が人類を滅ぼそうとしているという情報も含めて、状況は恐ろしく逼迫していた。
よってキュディアスは、今、目の前にいるアレスの大胆な提案を、冷静に受け止めた。
「お前に、対天使交渉の全権を預けろ、と。で交渉決裂時の戦闘も許可しろ、と。そう言うんだな」
「はい」
「本格的な敵地突入、か……。そうだな、それしかないのかもしれないな」
キュディアスはそこで言葉を切って、目を伏せる。
「すまん。全てをお前に背負わせてしまって」
「問題ありません。騎士ですから」
そう言って背筋をピンと伸ばすアレスに、キュディアスは微笑する。
それは優しく、それでいてどこか辛そうな微笑だった。
「分かった、宰相と相談する」
「お願いします」
頭を下げ、退室するアレス。
その背中を見送り、キュディアスは思う。
あの目は英雄の目だ、と。
すなわち、死を恐れぬ者。
それは死に急ぐ者と同義でもある。
キュディアスは拳を固く握り締め、悔しそうにひとりごちる。
「クソっ、なんにも出来ねえのか俺は!部下を見送ることしかできねえ騎士団長なんて、ざまあねえ……!」
アレスは城の医務室のベッドに腰掛け、巻かれた包帯を触りながら、ヒルデに礼を言った。
「いつも悪いな。すげえ、もう全然痛みがない!」
「お前は体力馬鹿だから回復が早いんだ。それにしても、まずいな。霊体化と即死魔法を使う、死んだ天使を材料とする死霊傀儡か」
「ああ、どんどん死霊傀儡の危険度がアップしてやがる。クソっ、俺が工房の職人天使たちを全員殺しておけば」
ヒルデが意外そうにアレスを見て、ああ、と何かを思いついた顔をする。
「宰相に何か言われたか」
アレスは苦笑する。
「うん、まぁ。甘さを叱られたよ。民を守る覚悟が足りないって言われた」
ヒルデは不快げに目を眇めた。
「あいつがお前に言いそうな言葉だな。あいつは相手が一番堪える言葉を瞬時に見抜いて投げつけるんだ。ジールの言葉は話半分に聞いておけ。文官は武官に無理難題ふっかけたがるものだ」
「でも納得できる部分もあったから」
「よく考えてみろ、ミカエルとか言う強敵が現れたんだろう?土台、皆殺しなんて不可能だったではないか。それよりも死の霧内部に侵入し帰還すると言う経験を積めたことが重要だ。キュディアス殿もそこを評価しているだろう。それに天使の死霊傀儡を送ってきたと言うことは、あそこに囚われていた人間の魂は全て解放してやれたと言うことではないか」
「ううむ」
「お前は完璧な仕事をした」
「そうかな……」
笑顔をこぼしたアレスの思ったことは、「ヒルデはいいやつだなあ」と言うことである。良い友を持ったと思う。
そこで控えめなノックの音がして、そっと扉が開けられた。
「あ、あの、アレスの怪我は……」
レリエルの不安そうな表情が、扉の隙間から覗いた。
ヒルデはちらりと見ると、包帯などの道具を手早くまとめ棚にしまった。
「入っていい。俺は席を外そう」
言って、レリエルの脇をすり抜け退室した。アレスは頭を掻いた。
「や、やべえなんかヒルデに気を遣われた……」
そういえば先程の戦闘後、レリエルに思い切り抱きつかれている姿をばっちりヒルデに目撃されてしまったのだった。
ヒルデは特に表情は変えなかったが、何か思うところはあった、のかも、しれない。
レリエルが近寄る。包帯を心配そうに見つめた。
「大丈夫か?痛むか?」
「いや全然平気だ。もうひとバトルやれそうだ」
「馬鹿言うな……」
そう言ってベッドの隣に腰掛けるレリエル。表情が暗い。よく見ればその手が、微かに震えていた。
「震えてんのか!?」
「え!?そ、そんなことは」
レリエルは震えを見せまいとするかのように、自分の手で自分の手を抑えた。
「どうした?」
アレスに問いかけられ、レリエルはうつむいた。
「……イヴァルト様のあの姿を見たら、少し、怖くなった」
「そうだな……。俺もゾッとした」
「僕もいつか、あんな風になるのかな」
そう言って、レリエルは自嘲気味に笑った。
「そんなこと!俺が絶対にそんなことさせねえよ!」
声を荒げたアレスに、レリエルは視線を揺らした。頬を染める。
「アレス……」
アレスは苛立たしく、髪をかき上げた。
「もうこんな鬱陶しい戦い、やってらんねえ!俺はケリをつける、もう一度死の霧の中に入って、天使の神様と話し合う」
レリエルは目を見開いた。
「神様と!?」
「天使は人間を滅ぼそうとしてるんだろ?なんでそんなことするのか、レリエルが言えないならそれでもいい、神様に会って直接確かめるさ。神様が天使の中で一番偉いやつなんだろ?」
「話し合うって、何を話すんだよ!」
「そうだなあ、まずこっちの第一希望、『カブリア王国を返してとにかくこの世界から出て行って下さい』。第二希望、俺としては忸怩たる思いだが、『カブリア王国はくれてやるからもうその霧の中から出て来ないで大人しくしていて下さい』。そんな所かな。で天使側の希望を知って、妥協点をすり合わせてだな」
「ありえない!」
「俺がやりたいのはあくまで話し合いだ。戦争しようってんじゃない。これならレリエルだって、嫌じゃないだろ?」
「僕!?……そうか、僕が神様と戦いたくないって言ったから……」
「あ、第一希望は『レリエルは置いて出て行って下さい』に変えよう」
レリエルは恥ずかしげに口籠る。
「ば、馬鹿、なんだよそれ」
「いやここは譲れねえ」
「うっ、そ、それに神様と話し合うなんて無理だ!まだ卵の中だ!神様はまだ、再生してないんだ!」
「……は?」
「とにかく無理なんだ……!」
そう言ってレリエルは口をつぐんでしまった。
アレスは顎を抑える。卵とはどういうことだ。
だがもう一度死の霧の中に入りたい、という気持ちは変わらなかった。
天使が狙っているのは、アレスとレリエルの命だ。今まで来た死霊傀儡、全てがアレスとレリエルに向けられたものだ。もうその意図は明らかと言っていいだろう。
ならば天使は死霊傀儡を無意味に帝都に送って来て人々を襲わせる、なんてことはしないだろう。アレスが帝都にとどまる意味などない。逆に民を危険に晒しているだけだ。
こっちから出向いて行って、直撃あるのみ。
アレスの目的は、当初はカブリア王国の奪還だった。
だが天使が何か恐ろしい計画――天界開闢――を進行している、その先に人類の滅びがあるらしい、と分かったからには、事態はより差し迫っている。
絶対にその計画を阻止しなければ。
アレスの気持ちは既に、故郷を奪われた復讐、というような段階は通り過ぎていた。
ただ騎士として、大勢の人の命を守らねばならぬ、と。その思いに駆られていた。
あの時守れなかった悔しさを、ばねにして。
「俺しか天使と戦えない。俺しか人類を救えない。だから俺が、やらなきゃいけないんだ……」
己に言い聞かせるようなアレスの独り言を、レリエルは無言で聞く。
「怖いか?敵地にこっちから行くってのは」
「それは別に。どうせどこにいても死霊傀儡を送りつけられる。同じことだ」
「レリエルはここに残るか?」
「は?」
「俺は一人で行くから、レリエルはここに残ったらいい」
「な、なんで……」
「ここにいたって死霊傀儡を送りつけられるが、それでも敵陣の中よりは安全だろう?」
レリエルが息を飲んだ。
「僕の安全のためだって言うのか!?」
「ああ、この先をお前に協力させるのは筋じゃない気がするんだ。ここからは人間を救うための行動になるから」
「お、お前は本当に変な奴だ!話し合いなんて無駄だけど、やりたいなら気にせず僕を利用すればいいじゃないか!僕だって僕の目的の為、一日でも長く生き延びる為に、お前を利用してるんだからなっ!それに……」
レリエルは一端言葉を切り、口ごもりながら言う。
「それに、僕はアレスの仲間なんだろ。だったら、共闘するものなんじゃないのか……?」
「あ……」
恥ずかしげにそう言うレリエルに、アレスの顔が熱くなる。
「そ、そうか、そうだよな。じゃあ、一緒に来てくれるか?」
「行ってやるさ。道案内が必要だろ。いざって時には光速移動だって役立つだろうし」
レリエルは照れ隠しのようなぶっきらぼうで、共闘続投宣言をする。
「ありがとな」
アレスは微笑み、心からの礼を言った。
しかし、複雑な想念が胸の内を駆け巡ってもいた。
アレスは『神』と交渉するつもりだが、もし交渉決裂した場合は、戦いは避けられないだろう。
レリエルの心の支えとなってきた神と、アレスは戦わねばならない。
(その時は、ごめんなレリエル)
だがそれでも、やらねばならない。
あらゆる覚悟はもう出来ていた。
迷いがあってはならないこと。
迷うことが許されないことを、アレスは分かっていた。
(俺だけが救える。人類を滅ぼすなんて、俺が許さない)
そしてアレスは医務室を退室しレリエルをヒルデに預け、一人で第四騎士団長の執務室、すなわちキュディアスの元に向かった。
※※※
キュディアスは頭を抱えていた。
即死魔法を使う死霊傀儡の出現、しかもトラエスト城内部への侵入という事態。先日レリエルが仄めかした、天使が人類を滅ぼそうとしているという情報も含めて、状況は恐ろしく逼迫していた。
よってキュディアスは、今、目の前にいるアレスの大胆な提案を、冷静に受け止めた。
「お前に、対天使交渉の全権を預けろ、と。で交渉決裂時の戦闘も許可しろ、と。そう言うんだな」
「はい」
「本格的な敵地突入、か……。そうだな、それしかないのかもしれないな」
キュディアスはそこで言葉を切って、目を伏せる。
「すまん。全てをお前に背負わせてしまって」
「問題ありません。騎士ですから」
そう言って背筋をピンと伸ばすアレスに、キュディアスは微笑する。
それは優しく、それでいてどこか辛そうな微笑だった。
「分かった、宰相と相談する」
「お願いします」
頭を下げ、退室するアレス。
その背中を見送り、キュディアスは思う。
あの目は英雄の目だ、と。
すなわち、死を恐れぬ者。
それは死に急ぐ者と同義でもある。
キュディアスは拳を固く握り締め、悔しそうにひとりごちる。
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