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第56話 赤眼の蛮族
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同じ朝、ジルソンが牢に囚われ、オルワードが謹慎処分となった情報が、パルティア辺境伯領の領主とその娘の元に届いた。
すなわち、ジルソン、オルワードの祖父と母の元に。
辺境伯オッド・カニエルは拳を震わせた。
「私のいない間に、謀ったなダーリアン三世!」
オッドは落ち凹んだ目の奥に、常に如才ない光を宿す痩せぎすの老人であった。あごから伸びる三角髭が、顔の輪郭をより一層鋭角的にしている。
パルティア辺境伯は、ナバハイル最後の封建領主とも呼ばれる存在だ。
北のパルティア辺境伯領は王国の領土の三割を占める。封土接収と諸侯の官僚化による中央集権化が進んでいる昨今ではとてつもない割合だった。
王直轄領は王国の六割。パルティアはその半分に匹敵する領地を持っていた。
辺境伯の娘、王妃ミランダスも青ざめる。
「まさか、そんなことが」
呆然とする父と娘の傍ら、椅子に鷹揚に腰掛ける客人らしき壮年の男が面白そうに口の端を歪めた。
背が高く武人らしい立派な体つきに、肩まで無造作に垂らした茶色の巻き毛。
粗野と色気の中間のような容貌は、若い頃はさぞ女にもてただろうと思わせる。
その瞳は赤い。
身を包むのは、立襟で、くるぶしまで長く体を覆う異国風の赤い衣。金色の帯を締め、赤い衣の下半分に切り込まれたスリットの下に、動きやすそうな脚衣とブーツが覗く。赤い衣を飾る織模様は実に見事なものだった。
北の「赤眼の蛮族」、メギオン王国の衣装を身につけた男は、血のような赤い瞳を眇める。
「なかなか愉快なことになったな、ミランダス。そなたの話では、常に迷信におびえる腑抜けたうすのろの王のはずでは?」
ミランダスは悔しげに唇を食む。
「確かにそうなのです。こんな大それたことをする兆しなど少しもございませんでした」
オッドは手にした杖を苛立たしげに握りしめながら言う。
「まさか、ジルソンとオルワードのまことの血筋に気づいたのか」
赤眼の男はあごをさする。
「気づかれたならば、もうあの子らに挽回の余地はないな。気長に譲位を待つ、と言う選択肢はなくなった。かくなる上は……」
ミランダスはその鋭い赤い眼光を、不敵な笑みで受け止めた。手にした扇をシュッと開き口元を隠す。
「もちろんですわ。逆らう者には、速やかな死を」
赤眼の男は満足げにうなずき、オッドは覚悟を決めたように鼻息を吐いた。
「開戦じゃ!いつまでも辺境伯に留まっているカニエル家と思うな、必ず手に入れてやるぞ、ナバハイル」
男が釘を刺すように言う。
「しかし慎重に頼みますぞ、オッド卿。冷静さを欠いて長年の計画が水泡に帰しては大変だ。綿密に確実に、ナバハイル王家の息の根を止めようではありませんか」
◇ ◇ ◇
オッドが気勢をあげていた頃、王宮では。
ダーリアン三世が護衛を伴い、前日にジルソンを閉じ込めた王城内の時計塔の、螺旋階段を昇っていた。
ジルソンがリチェルの暗殺を目論んでいたことは間違いないだろうし、一年前までの陵辱行為にも怒りと嫌悪を覚えた。もはや厳罰は免れまい。
しかしそれでも、息子である。刑の執行前にひとつ、話をせねばと考えた。
父子なのに何故か心が交わらない、言い知れぬ違和感を常々感じていた、賢い息子の本音に触れたいと考えた。
塔の最上階、扉前の衛兵が、ダーリアン三世を見て慌てたような様子を見せた。
「どうした?」
「じ、実は、謹慎処分中のオルワード殿下がいらして、たった今こちらに入ったところです」
「なんと……」
ダーリアン三世はため息をつく。白蘭邸から出るなと行っておいたのに、もう謹慎を破るとは。
「分かった。余が話をしよう。……親子だけで話をしたい。そなたらはここで待っておれ」
護衛の騎士達にそう言い残し、ダーリアン三世は、衛兵に開けられた扉の中に一人、入った。
冷たい石の長い廊下を曲がったところに鉄格子の牢がある。この塔はあくまで時計塔であり、塔の内部には最上階に一つしか牢がない。
最上階の牢は元々、身分の高い罪人用の牢で、寝具や調度品も質がよく居心地はさほど悪くない。一般の牢は時計塔の地下にある。
廊下の角を曲がろうとして、ダーリアン三世はぴたと立ち止まった。
角の向こうから、息子二人の会話が聞こえてきたのだ。
「目薬は持って来たか?」
ジルソンが切羽詰った様子で囁き、オルワードが答えた。
「ああ、ここにあるよ。僕の分だけどいいかな」
「助かった」
(目薬?)
と王は不思議がる。ジルソンは眼病を患っていただろうか。僕の分、ということはオルワードも同じ眼病を患っているのか?そんな話は初めて聞いた。
角から向こうをのぞいた。
鉄格子のあちら側のジルソンが今まさに小瓶をつまみ、自分の目に薬を注しているところだった。
その瞳の色を見て、王は硬直する。
真っ赤な瞳だった。
小瓶からその真っ赤な瞳に向かって雫が落ちる。
ジルソンは数度、目を瞬いた。
すると赤い瞳が、青く変った。
ジルソンが弟に確認した。
「どうだ?」
「うん、大丈夫。ちゃんと青くなったよ。髪はまだ平気だね。髪染めもまた持ってくる」
王は愕然とする。
思わずうめき声を上げ、兄弟がさっとこちらに振り向いた。
二人は引きつった笑みを浮かべた。ジルソンは目薬を後ろ手に隠し、上擦った猫なで声を出す。
「ち、父上!面会に来て下さったのですね!もう父上に見捨てられたとばかり思っておりました。私は感激を……」
「その目はなんだ」
大理石の彫刻のような生気の無い顔で見据え、王は尋ねる。
兄弟は青ざめ、震え、王から目をそらした。
ダーリアン三世は乾いた喉から搾り出すような声で問うた。
「そなた達は、誰の子だ?」
◇ ◇ ◇
すなわち、ジルソン、オルワードの祖父と母の元に。
辺境伯オッド・カニエルは拳を震わせた。
「私のいない間に、謀ったなダーリアン三世!」
オッドは落ち凹んだ目の奥に、常に如才ない光を宿す痩せぎすの老人であった。あごから伸びる三角髭が、顔の輪郭をより一層鋭角的にしている。
パルティア辺境伯は、ナバハイル最後の封建領主とも呼ばれる存在だ。
北のパルティア辺境伯領は王国の領土の三割を占める。封土接収と諸侯の官僚化による中央集権化が進んでいる昨今ではとてつもない割合だった。
王直轄領は王国の六割。パルティアはその半分に匹敵する領地を持っていた。
辺境伯の娘、王妃ミランダスも青ざめる。
「まさか、そんなことが」
呆然とする父と娘の傍ら、椅子に鷹揚に腰掛ける客人らしき壮年の男が面白そうに口の端を歪めた。
背が高く武人らしい立派な体つきに、肩まで無造作に垂らした茶色の巻き毛。
粗野と色気の中間のような容貌は、若い頃はさぞ女にもてただろうと思わせる。
その瞳は赤い。
身を包むのは、立襟で、くるぶしまで長く体を覆う異国風の赤い衣。金色の帯を締め、赤い衣の下半分に切り込まれたスリットの下に、動きやすそうな脚衣とブーツが覗く。赤い衣を飾る織模様は実に見事なものだった。
北の「赤眼の蛮族」、メギオン王国の衣装を身につけた男は、血のような赤い瞳を眇める。
「なかなか愉快なことになったな、ミランダス。そなたの話では、常に迷信におびえる腑抜けたうすのろの王のはずでは?」
ミランダスは悔しげに唇を食む。
「確かにそうなのです。こんな大それたことをする兆しなど少しもございませんでした」
オッドは手にした杖を苛立たしげに握りしめながら言う。
「まさか、ジルソンとオルワードのまことの血筋に気づいたのか」
赤眼の男はあごをさする。
「気づかれたならば、もうあの子らに挽回の余地はないな。気長に譲位を待つ、と言う選択肢はなくなった。かくなる上は……」
ミランダスはその鋭い赤い眼光を、不敵な笑みで受け止めた。手にした扇をシュッと開き口元を隠す。
「もちろんですわ。逆らう者には、速やかな死を」
赤眼の男は満足げにうなずき、オッドは覚悟を決めたように鼻息を吐いた。
「開戦じゃ!いつまでも辺境伯に留まっているカニエル家と思うな、必ず手に入れてやるぞ、ナバハイル」
男が釘を刺すように言う。
「しかし慎重に頼みますぞ、オッド卿。冷静さを欠いて長年の計画が水泡に帰しては大変だ。綿密に確実に、ナバハイル王家の息の根を止めようではありませんか」
◇ ◇ ◇
オッドが気勢をあげていた頃、王宮では。
ダーリアン三世が護衛を伴い、前日にジルソンを閉じ込めた王城内の時計塔の、螺旋階段を昇っていた。
ジルソンがリチェルの暗殺を目論んでいたことは間違いないだろうし、一年前までの陵辱行為にも怒りと嫌悪を覚えた。もはや厳罰は免れまい。
しかしそれでも、息子である。刑の執行前にひとつ、話をせねばと考えた。
父子なのに何故か心が交わらない、言い知れぬ違和感を常々感じていた、賢い息子の本音に触れたいと考えた。
塔の最上階、扉前の衛兵が、ダーリアン三世を見て慌てたような様子を見せた。
「どうした?」
「じ、実は、謹慎処分中のオルワード殿下がいらして、たった今こちらに入ったところです」
「なんと……」
ダーリアン三世はため息をつく。白蘭邸から出るなと行っておいたのに、もう謹慎を破るとは。
「分かった。余が話をしよう。……親子だけで話をしたい。そなたらはここで待っておれ」
護衛の騎士達にそう言い残し、ダーリアン三世は、衛兵に開けられた扉の中に一人、入った。
冷たい石の長い廊下を曲がったところに鉄格子の牢がある。この塔はあくまで時計塔であり、塔の内部には最上階に一つしか牢がない。
最上階の牢は元々、身分の高い罪人用の牢で、寝具や調度品も質がよく居心地はさほど悪くない。一般の牢は時計塔の地下にある。
廊下の角を曲がろうとして、ダーリアン三世はぴたと立ち止まった。
角の向こうから、息子二人の会話が聞こえてきたのだ。
「目薬は持って来たか?」
ジルソンが切羽詰った様子で囁き、オルワードが答えた。
「ああ、ここにあるよ。僕の分だけどいいかな」
「助かった」
(目薬?)
と王は不思議がる。ジルソンは眼病を患っていただろうか。僕の分、ということはオルワードも同じ眼病を患っているのか?そんな話は初めて聞いた。
角から向こうをのぞいた。
鉄格子のあちら側のジルソンが今まさに小瓶をつまみ、自分の目に薬を注しているところだった。
その瞳の色を見て、王は硬直する。
真っ赤な瞳だった。
小瓶からその真っ赤な瞳に向かって雫が落ちる。
ジルソンは数度、目を瞬いた。
すると赤い瞳が、青く変った。
ジルソンが弟に確認した。
「どうだ?」
「うん、大丈夫。ちゃんと青くなったよ。髪はまだ平気だね。髪染めもまた持ってくる」
王は愕然とする。
思わずうめき声を上げ、兄弟がさっとこちらに振り向いた。
二人は引きつった笑みを浮かべた。ジルソンは目薬を後ろ手に隠し、上擦った猫なで声を出す。
「ち、父上!面会に来て下さったのですね!もう父上に見捨てられたとばかり思っておりました。私は感激を……」
「その目はなんだ」
大理石の彫刻のような生気の無い顔で見据え、王は尋ねる。
兄弟は青ざめ、震え、王から目をそらした。
ダーリアン三世は乾いた喉から搾り出すような声で問うた。
「そなた達は、誰の子だ?」
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