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第15話 夜伽 (5) ※

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 珊瑚のような唇に、アルキバは己の唇を重ねた。

 思った通りの柔らかさ。その口内へと舌を入れる。
 リチェルの舌を強引に絡め取る。甘い。そして花のような芳しさ。王族とはすごいものだ。アルキバは夢中になってリチェルの口を貪った。
 王族の口を奴隷の唾液で汚す背徳感。たまらない心地良さだった。

 このお綺麗なお口に、もっと汚いものを注いでみたいものだ。

 キスから解放して顔を確かめると、リチェルは耳まで赤くなって呆然とアルキバを見ている。
 アルキバはふっと微笑む。

 いい。もっと汚したくなった。もっと貪りたくなった。

 ナイトガウンの腰紐を解き前を割り、体を晒してやった。

「だめっ……」

 暴れようとするのを押さえつけ、ガウンをするりと全てむく。ついでに下着も剥ぎ取った。

「やっ、やだっ……!」

 そしてその全身を舐め回すように観察した。
 薄く筋肉のついた、細いが健康的な肉体。
 不思議と女以上の艶かしさを感じた。そして芽吹いたばかりの新緑のような、みずみずしさ。
 綺麗な体だ、と思った。

(気に入った)

 手のひらで腹を撫でつけながら、首筋を舐め上げた。リチェルは首をすくめ、泣きながら抗議する。

「や、やめろ!愛してないくせにそんなことするなっ」

 妙な台詞はアルキバの心を大いにくすぐった。

「だからあんたがそれを言うなって」

 視線は白く浮き立つ滑らかな胸の、桃色の粒へと吸い寄せられる。なんと扇動的な色味だろう。
 本能的にしゃぶりついた。唾液で汚し、舌でその感触を味わう。舌の粘膜をこするぷくりとした感覚がたまらない。
 真珠のようなその粒は、舐められてツンと立った。そいつを甘く噛む。

「ゃっ……、んっ……」

 手を下に伸ばし、下半身に生える大きな突起の具合も、確かめてみた。
 嫌がるそぶりで勃ち上がってるじゃないか。
 ぎゅうと握ってやった。リチェルは切なげに目をつぶった。

「やうっ」

「こんななまっちろいもんで剣闘士のケツを掘ってきたのか?なめたことしやがって」

 ペニスから手を離すと、今度は臀部に手を差し入れて、その弾力のある丘にぐっと力を込めた。えもいわれぬさわり心地。
 強くつかまれて、リチェルは痛みに顔を歪めた。

「いっつっ!」

「剣闘士の誇りを傷つけてきたお前には相応の仕置きが必要だな」

 この言葉はもはや、空々しい言い訳かもしれなかった。

 率直に言って今アルキバは、ただの性欲にたぎっていた。

 リチェルの両手首をつかんで頭上に持ち上げ、ガウンの帯でかたく縛った。

「な、なにをする、ほどけっ!」

 ナニをするって、決まってるじゃないか。
 暴れる足には体重を乗せてかため、アルキバはベッドの端に視線を走らせた。
 目当てのものを探す。きっとあるはず……やっぱり、あった。

 枕元にある茶色の小瓶に手を伸ばし取る。片手で器用に蓋を開けた。甘い良い匂いがした。
 性交時に使うための潤滑剤として精製された香油。もしかしたら媚薬も混ざってるかもしれない。

 アルキバがその小瓶を手にしてるのを見て、リチェルが絶望の表情を浮かべた。

「い、嫌だ……!お願いだ、やめてくれ。それだけはやめてくれ、頼む!」
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