魔道暗殺者と救国の騎士

空月 瞭明

文字の大きさ
上 下
66 / 71

[番外編] 最後の仕事(19)※

しおりを挟む
 目を覚ますと、体は湯ではなく布団に包まれていた。
 もう見慣れた、グレアムの寝室。

「お目覚めか、王子様」

 声に振り向けばグレアムが、面白そうにサギトを見つめている。サギトの隣に身を横たえ、肘で頭を支えながら。
 サギトは慌てて上体を起こした。シンプルだが清潔な部屋着を着せられている。

「俺、寝たのか!?」

「すごい可愛かったぞ、お風呂で寝ちゃうサギトは。赤ちゃんみたいで!」

「うっ……。どのくらい寝てたんだ」

「四時間くらいかな。もう午後のティータイムだ」

「そんなに……」

「昨日徹夜だったからな、疲れがたまってたよな。俺もちょっと寝たよ」

 一体いつ寝てしまったのか。サギトは自分の記憶をたどる。髪を洗われるところまでは、はっきりと覚えているのだが。
 髪を洗われて、その後は。

「も、もしかして、寝ている間に俺の体、洗ってくれたのか?この服を着せてくれたのも、お前か?」

 グレアムはちょっと気まずそうな顔をする。

「あ、ええと、……うん、そうだ。すまん」

「い、いや謝るな。その……ありがとう。おぼろげにしか覚えてないが、お前に洗われるのはとても……気持ちよかった。なんだか幸せな気持ちになった……」

 サギトはそう言って、恥ずかしそうにうつむく。
 グレアムの返事はなかった。
 しばらく沈黙が続き、なぜ黙ってるんだろう、と思ってサギトはグレアムの方を見る。

 彼は眉間にしわを寄せて怖い顔をしていた。

「もう、無理だ……。限界だ……。俺は十分に耐えた……」

「は?なにを……」

 グレアムが文字通り襲いかかって来た。
 抱きしめられ、噛みつくように首筋を吸われた。太もものあたりに硬いものがぐりぐりと押し付けられる。

「わわっ、ちょっと待て、昼間だぞ!」

「サギトが二十四時間エロいのが悪い!」

「エロいのはお前だっ」

 グレアムはサギトの身につける部屋着を剥ぐように脱がせる。着せたり脱がせたり、忙しい男だ。自らも服を脱ぎ捨てると、ベッド脇に常備している小瓶をもぎ取り、蓋を開けてその中のクリームを指になすりつけた。

 仰向けに寝かせたサギトの足を押し開き、双丘の狭間を指で撫でる。

「ふ、あ……っ」

 いきなりあられもない格好をさせられて焦るサギトを、グレアムはすがるような目で見る。

「ダメか……?」

(この体勢で聞くな!)

 サギトは、グレアムの下半身ですくと立ち上がるご立派なものをちらりと見て、すぐに目をそらした。
 頬を朱に染めて、ボソリと言う。

「もういい。す、好きにしろ……」

 サギトの仕事に徹夜で付き合ってくれた上に、居眠りした自分の世話までしてくれた。
 昼間から不埒なことをするくらい、許さねば。
しおりを挟む
↓第9回BL小説大賞奨励賞いただけました
忘れられた王子は剣闘士奴隷に愛を乞う
感想 92

あなたにおすすめの小説

【完結】I adore you

ひつじのめい
BL
幼馴染みの蒼はルックスはモテる要素しかないのに、性格まで良くて羨ましく思いながらも夏樹は蒼の事を1番の友達だと思っていた。 そんな時、夏樹に彼女が出来た事が引き金となり2人の関係に変化が訪れる。 ※小説家になろうさんでも公開しているものを修正しています。

諦めようとした話。

みつば
BL
もう限界だった。僕がどうしても君に与えられない幸せに目を背けているのは。 どうか幸せになって 溺愛攻め(微執着)×ネガティブ受け(めんどくさい)

『これで最後だから』と、抱きしめた腕の中で泣いていた

和泉奏
BL
「…俺も、愛しています」と返した従者の表情は、泣きそうなのに綺麗で。 皇太子×従者

もしかして俺の人生って詰んでるかもしれない

バナナ男さん
BL
唯一の仇名が《 根暗の根本君 》である地味男である< 根本 源 >には、まるで王子様の様なキラキラ幼馴染< 空野 翔 >がいる。 ある日、そんな幼馴染と仲良くなりたいカースト上位女子に呼び出され、金魚のフンと言われてしまい、改めて自分の立ち位置というモノを冷静に考えたが……あれ?なんか俺達っておかしくない?? イケメンヤンデレ男子✕地味な平凡男子のちょっとした日常の一コマ話です。

パラレルワールドの世界で俺はあなたに嫌われている

いちみやりょう
BL
彼が負傷した隊員を庇って敵から剣で斬られそうになった時、自然と体が動いた。 「ジル!!!」 俺の体から血飛沫が出るのと、隊長が俺の名前を叫んだのは同時だった。 隊長はすぐさま敵をなぎ倒して、俺の体を抱き寄せてくれた。 「ジル!」 「……隊長……お怪我は……?」 「……ない。ジルが庇ってくれたからな」 隊長は俺の傷の具合でもう助からないのだと、悟ってしまったようだ。 目を細めて俺を見て、涙を耐えるように不器用に笑った。 ーーーー 『愛してる、ジル』 前の世界の隊長の声を思い出す。 この世界の貴方は俺にそんなことを言わない。 だけど俺は、前の世界にいた時の貴方の優しさが忘れられない。 俺のことを憎んで、俺に冷たく当たっても俺は貴方を信じたい。

騎士団で一目惚れをした話

菫野
BL
ずっと側にいてくれた美形の幼馴染×主人公 憧れの騎士団に見習いとして入団した主人公は、ある日出会った年上の騎士に一目惚れをしてしまうが妻子がいたようで爆速で失恋する。

騎士団長の秘密

さねうずる
BL
「俺は、ポラール殿を好いている」 「「「 なんて!?!?!?」」 無口無表情の騎士団長が好きなのは別騎士団のシロクマ獣人副団長 チャラシロクマ×イケメン騎士団長

顔も知らない番のアルファよ、オメガの前に跪け!

小池 月
BL
 男性オメガの「本田ルカ」は中学三年のときにアルファにうなじを噛まれた。性的暴行はされていなかったが、通り魔的犯行により知らない相手と番になってしまった。  それからルカは、孤独な発情期を耐えて過ごすことになる。  ルカは十九歳でオメガモデルにスカウトされる。順調にモデルとして活動する中、仕事で出会った俳優の男性アルファ「神宮寺蓮」がルカの番相手と判明する。  ルカは蓮が許せないがオメガの本能は蓮を欲する。そんな相反する思いに悩むルカ。そのルカの苦しみを理解してくれていた周囲の裏切りが発覚し、ルカは誰を信じていいのか混乱してーー。 ★バース性に苦しみながら前を向くルカと、ルカに惹かれることで変わっていく蓮のオメガバースBL★ 性描写のある話には※印をつけます。第12回BL大賞に参加作品です。読んでいただけたら嬉しいです。応援よろしくお願いします(^^♪ 11月27日完結しました✨✨ ありがとうございました☆

処理中です...