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[番外編] 最後の仕事(9)
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三人は患者達の隔離小屋を出た。村長は隔離小屋の近くにある別の倉庫をまるごと貸してくれた。
深く頭を下げて去っていく村長を見送ってから、グレアムがサギトに尋ねる。
「なんだ、あの病は」
「おそらく花爛病だ。別名、『悪魔の薔薇』」
「聞いたことのない病気だが……」
「そうだろうな、過去三百年、症例がなかった病だ。人間社会では一度撲滅された病だが、魔獣の世界では残っていたのだな。三百年ぶりに悪魔の薔薇が人類に持ち込まれてしまった。記録によれば、四百年前に大流行し、世界の四分の一を死に至らしめた病だ」
グレアムが目を見開く。
「四分の一!」
サギトはかつて本で読んだ知識を脳内で引っ張り出す。
「飛沫感染するこの病に侵されると、高熱が出て薔薇のような形の水疱が全身に現れる。時間と共に水疱が膨れて破れ、爛れる。表皮の水疱が爛れ出したら、体内で臓器が壊死し始めたサインだ。そうなるともう手遅れだ」
「だから、さっきの人はもう手遅れだって言ったのか」
「ああ。治療法はただひとつ、水泡が破れる前の特効薬の投与だ」
「あるのか、特効薬が!」
「三百年症例がなかった病だから、当然どこにも薬は置いてないがな。新たに作るしかない。なんとか間に合わせねば。これは時間との戦いだ」
「調合、できるのか」
「調合法の記録は残されている。信頼できる医術書で読んだ。瑠璃カビ20、ワーヴガエルの背脂2、ウィルシの実の成熟前の果汁2、グレンデルの髄液3、カズラの根3。これが一人分の原料だ」
「よ、よく覚えてるな」
「まぁ、一度読んだからな」
「すげえ……。じゃあまず原料を揃えないとな。王都に戻れば店で売ってるかな」
「使い魔に集めさせたほうが早い。ほとんどが使い魔に採集可能なものだ」
サギトは闇を呼び出した。サギトの前に生じた大きな闇の渦から、羽の生えた猿たちが飛び出して来る。その数、三十匹。
背中にとんびのような茶色の羽を生やした、猿の使い魔。
猿たちはサギトの命を受けて一気に小屋を出て飛び立っていった。
グレアムが口を縦長にして驚いている。
「あ、あの猿が集めてきてくれるのか?」
「大丈夫、普段から採集用に使役している。器用で知能も高く腕力もある、非常に有用な使い魔たちだ」
「そんな高機能使い魔を一瞬で大量召還か。本当、すげえなあお前は。ほとんど採集可能、ってことは猿には持ってこれないものもあるんだよな」
「グレンデルの髄液は無理だろうし、店にもまず売ってない」
言って、グレアムをちらと見る。
「だから、役立ってもらうぞ、世界一の魔道剣士殿」
「お?おう。グレンデルってえっと……」
※※※
深く頭を下げて去っていく村長を見送ってから、グレアムがサギトに尋ねる。
「なんだ、あの病は」
「おそらく花爛病だ。別名、『悪魔の薔薇』」
「聞いたことのない病気だが……」
「そうだろうな、過去三百年、症例がなかった病だ。人間社会では一度撲滅された病だが、魔獣の世界では残っていたのだな。三百年ぶりに悪魔の薔薇が人類に持ち込まれてしまった。記録によれば、四百年前に大流行し、世界の四分の一を死に至らしめた病だ」
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「だから、さっきの人はもう手遅れだって言ったのか」
「ああ。治療法はただひとつ、水泡が破れる前の特効薬の投与だ」
「あるのか、特効薬が!」
「三百年症例がなかった病だから、当然どこにも薬は置いてないがな。新たに作るしかない。なんとか間に合わせねば。これは時間との戦いだ」
「調合、できるのか」
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「よ、よく覚えてるな」
「まぁ、一度読んだからな」
「すげえ……。じゃあまず原料を揃えないとな。王都に戻れば店で売ってるかな」
「使い魔に集めさせたほうが早い。ほとんどが使い魔に採集可能なものだ」
サギトは闇を呼び出した。サギトの前に生じた大きな闇の渦から、羽の生えた猿たちが飛び出して来る。その数、三十匹。
背中にとんびのような茶色の羽を生やした、猿の使い魔。
猿たちはサギトの命を受けて一気に小屋を出て飛び立っていった。
グレアムが口を縦長にして驚いている。
「あ、あの猿が集めてきてくれるのか?」
「大丈夫、普段から採集用に使役している。器用で知能も高く腕力もある、非常に有用な使い魔たちだ」
「そんな高機能使い魔を一瞬で大量召還か。本当、すげえなあお前は。ほとんど採集可能、ってことは猿には持ってこれないものもあるんだよな」
「グレンデルの髄液は無理だろうし、店にもまず売ってない」
言って、グレアムをちらと見る。
「だから、役立ってもらうぞ、世界一の魔道剣士殿」
「お?おう。グレンデルってえっと……」
※※※
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↓第9回BL小説大賞奨励賞いただけました
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