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[番外編] 最後の仕事(2)
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王都のメインストリートの一つ、ドルバ通りは人混みであふれていた。ちょうど今日は聖教の祭日だった。いつもより出店が多い。
多くの青空市が立っていた。色鮮やかな青果に、こまごまとした工芸品、生活雑貨に古着に古書。武器や防具なんてのもある。
グレアムのような有名人と一緒に歩いていたら目立つのではないか、と思ってはいたが、やはり目立つ。
明らかに注目されてしまっている。紫眼なので街を歩いて他人からジロジロ見られるのには慣れているものの、いつもの視線と種類が違う。
いつもは怪しい者を胡乱げに見る目で見られるのだが、今は珍獣か幽霊でも見るような驚きの目でやたらと二度見される。
見られている立場ながら、無理もないな、困惑の極みだろうな、とサギトは思う。
あのグレアムがいて、その隣になぜか紫眼がいて、その紫眼が護国騎士団の服を着ている。
そしてグレアムは紫眼の男の手をしっかり繋いで、時に肩やら腰やらに手を回してやたらとべたついている。
こんなわけのわからないものを見せられる民もお気の毒だ。
そんな視線にまるで気づかない鈍感な男は、青空市を興味深げに眺めながら歩いている。祭日だからいつもより賑わっているとは言え、普段とそれほどは変わらない街の姿なのだが。
ごく普通の街の光景に、グレアムは感嘆の声を上げる。
「すっごいな、ここだけでなんでも揃うんじゃないか?王都は果物の種類が多くていいな。全部砦にもって行きたいくらいだけどすぐ腐るんだろうな。ちょっと買ってきていいか?」
「あ、ああ」
しばらくして戻って来たグレアムはぶどうを一房、手にしていた。
そしてぶどうを一粒、サギトの目の前に掲げた。
「はい、あーん」
「なんだそれは」
サギトが眉間にしわを寄せる。
「食べるんだよ、俺の手から!デートは『あーん』をするものなんだ!」
「嘘だっ、絶対にいやだ……」
と拒絶の言葉を放ったその口に中にひょいと入れられてしまった。
「んんっ」
しまった、と思うがまさか吐き出すわけにもいかない。サギトは満面の笑みのグレアムを睨みながら、入れられたぶどうを仕方なく咀嚼する。
グレアムが瞳をうるませながら、両手でサギトの頬を包み込んだ。
「もぐもぐしてる……。サギトがぶどうをもぐもぐしている……!なんってかわいいほっぺただ!俺はいっそ、ぶどうになりたい!」
狂ってるんじゃないかと心配になるような台詞を吐きながら、グレアムは、まだ咀嚼中のサギトの口に唇を押し付けた。
「んっ!?んーっ!!」
サギトは慌ててぶどうを飲み下しながら、両腕を突き出してグレアムの体を押しのけた。
「ばっ、馬鹿かお前は人前でっ!」
赤くなって怒った顔をしているサギトに、グレアムは頭をかいて謝った。
「す、すまん、あまりにもかわいすぎて」
サギトは周囲のほとんど青ざめているような人々をちらちらと見回し、グレアムの腕を取った。
「と、とりあえず向こうに行くぞっ」
多くの青空市が立っていた。色鮮やかな青果に、こまごまとした工芸品、生活雑貨に古着に古書。武器や防具なんてのもある。
グレアムのような有名人と一緒に歩いていたら目立つのではないか、と思ってはいたが、やはり目立つ。
明らかに注目されてしまっている。紫眼なので街を歩いて他人からジロジロ見られるのには慣れているものの、いつもの視線と種類が違う。
いつもは怪しい者を胡乱げに見る目で見られるのだが、今は珍獣か幽霊でも見るような驚きの目でやたらと二度見される。
見られている立場ながら、無理もないな、困惑の極みだろうな、とサギトは思う。
あのグレアムがいて、その隣になぜか紫眼がいて、その紫眼が護国騎士団の服を着ている。
そしてグレアムは紫眼の男の手をしっかり繋いで、時に肩やら腰やらに手を回してやたらとべたついている。
こんなわけのわからないものを見せられる民もお気の毒だ。
そんな視線にまるで気づかない鈍感な男は、青空市を興味深げに眺めながら歩いている。祭日だからいつもより賑わっているとは言え、普段とそれほどは変わらない街の姿なのだが。
ごく普通の街の光景に、グレアムは感嘆の声を上げる。
「すっごいな、ここだけでなんでも揃うんじゃないか?王都は果物の種類が多くていいな。全部砦にもって行きたいくらいだけどすぐ腐るんだろうな。ちょっと買ってきていいか?」
「あ、ああ」
しばらくして戻って来たグレアムはぶどうを一房、手にしていた。
そしてぶどうを一粒、サギトの目の前に掲げた。
「はい、あーん」
「なんだそれは」
サギトが眉間にしわを寄せる。
「食べるんだよ、俺の手から!デートは『あーん』をするものなんだ!」
「嘘だっ、絶対にいやだ……」
と拒絶の言葉を放ったその口に中にひょいと入れられてしまった。
「んんっ」
しまった、と思うがまさか吐き出すわけにもいかない。サギトは満面の笑みのグレアムを睨みながら、入れられたぶどうを仕方なく咀嚼する。
グレアムが瞳をうるませながら、両手でサギトの頬を包み込んだ。
「もぐもぐしてる……。サギトがぶどうをもぐもぐしている……!なんってかわいいほっぺただ!俺はいっそ、ぶどうになりたい!」
狂ってるんじゃないかと心配になるような台詞を吐きながら、グレアムは、まだ咀嚼中のサギトの口に唇を押し付けた。
「んっ!?んーっ!!」
サギトは慌ててぶどうを飲み下しながら、両腕を突き出してグレアムの体を押しのけた。
「ばっ、馬鹿かお前は人前でっ!」
赤くなって怒った顔をしているサギトに、グレアムは頭をかいて謝った。
「す、すまん、あまりにもかわいすぎて」
サギトは周囲のほとんど青ざめているような人々をちらちらと見回し、グレアムの腕を取った。
「と、とりあえず向こうに行くぞっ」
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↓第9回BL小説大賞奨励賞いただけました
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