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第22話 罪と罰(2)
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ノエルはため息をついた。
「誤解なきよう。我々は戦いに来たわけではありません。説得しに来ました。王から、あなたが要求するどんな条件でも飲めと言われております」
グレアムは眉をあげた。腕を組み、副長をまじまじと見る。
「……マジで?」
「マジです」
「ほほう。王が。どんな条件でも、と。ほほー」
「やめてくださいその悪人ヅラ」
よし、とグレアムは手のひらに拳を打ち付けた。
「じゃあサギトを無罪放免にしろ。そしてサギトを宮廷魔道士にしろ。あと忌人差別禁止法を制定して、忌人への職業差別その他行ったら罰せられるようにしろ。それから正規騎士団はもっと仕事しろ前線に来い」
つらつらと述べられて、焦ったのはサギトである。
「ま、待て、何勝手なことを言ってるんだ!俺は宮廷魔道士になんてなりたくない!」
ノエルが首を傾げる。
「おや、団長はサギトさんを護国騎士団にいれたいのではなかったのですか?」
グレアムは頭をかいて、
「ほ、ほんとはそうしたいけど、サギトは俺の部下になるのなんて嫌なんだ。だから」
「嫌じゃないっ」
サギトは思わず大きな声をあげてしまった。
「え?」
「嫌じゃ……ない」
グレアムがサギトの両肩をぐっとつかんだ。
「は、入ってくれるのか、護国騎士団に!」
「えっと、その……。嫌じゃないが、でも」
なんなんだこの急展開は。サギトはどこか遠い国で自害しようと思っているのに。
「どっちでもいいぞ俺は。お前と一緒に逃げてもいいし、お前が護国騎士団に入ってくれるなら騎士を続ける」
騎士たちがざわついた。それはそうだろう。
「だ、団長!なんてことをおっしゃるんですか!」
「我々をそんな簡単に見捨てないで下さい!」
ノエルが額を押さえながら、
「そういうことなら私からも頼みますサギトさん、ご入団いただけないでしょうか」
サギトは視線を彷徨わせた。
「俺は、罪をつぐなわないといけない。たくさん人を殺したから……」
グレアムは怪訝そうな顔をした。
「逃亡は……つぐないにならないぞ?」
もっともなことを言われ、サギトは返答に困ってしまう。黙ったサギトにグレアムは表情を曇らせる。
「もしかしてお前、逃げると言って自殺でもする気なんじゃないのか」
「……まさか、そんなことは考えてない。とにかく俺は行くから。お前はこれからも国を守れよ騎士団長」
サギトはうつむきながらそう言った。グレアムは表情を硬くした。
「それはサギトの罪じゃない、俺の罪だ。つぐないたいなら俺が死ぬ」
「だから、そういうのはやめてくれ。そんなこと言われると俺が困る、本当に」
グレアムは地を這うような低い声を出す。
「じゃあ今から俺の命はお前を生かすことだけに使う。絶対に自殺なんてさせない。地の果てまでもお前について行って阻止してやる!」
ノエルが叫んだ。
「いい加減にして下さい、団長!自分の立場を思い出して下さい!聖教圏がムジャヒールに陥落したら史上最悪の大殺戮が起きるんですよ!聖教圏は敬虔な信徒が多いから、多くの民が改宗を拒むでしょうしムジャヒールはそれを許さない。数十万、いえ数百万の命が散る!あなたが守ってきた数多の命を見捨てるんですか!」
サギトはグレアムが守るものがなんたるかを、改めて思い知らされた。この男はなんと大きな重荷を背負っていることだろう。浅はかに嫉妬していた己を恥じた。民に敬愛されて当然の存在だ。
「この国を守り、人々を救ってきたのは俺じゃない、サギトの力だ。なのに何故この国はサギトを暗殺者なんて立場に追い詰めて、今、自殺させようとしてるんだ」
サギトは、はっと顔を上げる。
(俺の力が人を救ってきた?)
その言葉が何故か、サギトの胸に深々と突き刺さった。
グレアムは言葉を続ける。
「俺は十年前、この国を守りたくて士官学校に入り騎士になった。そして俺のせいでサギトを地獄に叩き落しておきながら、地獄に十年も放置した。国を守るのに忙しかった、なんて言い訳だ。俺は十年、サギトを見捨てたんだ。二度と同じ轍は踏まない」
ノエルが唇を振るわせる。
「つまり、民を見殺しにすると」
グレアムは冷徹な目でノエルを見返す。
「忌人を蔑む者に、忌人の力に守られる権利があるのか?」
「あなたはいつだって忌人、忌人と!命と天秤に掛けるような話ではないでしょう!」
「俺はサギトを幸せにできないような国を守る気はない。ましてサギトの力で」
「ま、待てグレアム!」
サギトは思わず、睨みあう二人の間に割って入っていた。
「サギト……?」
「あまり見くびるな、俺はお前に見捨てられたなんて思ってない。俺はお前に騎士を続けて欲しい。これからも、俺の力で人々を守って欲しい。救って欲しい……」
サギトは心からそう思っていた。『俺を蔑む連中の為に命なんて張れるか』、頭に血が上って確かにそう言ってしまったが、今はそういう悪感情は不思議と消えていた。
そして気恥ずかしさを感じながらも、真心から言葉を繋げる。
「グレアムに魔力を与えてよかった。お前は俺の魔力を正しいことに使ってくれたな。これからもそうしてくれ」
「で、でも、お前は」
「罪は罪だ。俺は俺の罪を誰のせいにしようとも思わない、ちゃんとつぐないたい。暗殺者という道を選ばない方法だってあったはずなんだ。これは俺自身のけじめの問題だ、俺が納得したいんだ」
グレアムは眉間にしわを寄せて口をへの字にした。
「いやだ!」
「こ、子供かお前はっ!」
ノエルがサギトをじっと見つめる。
「サギトさん、罪をつぐないたいのならば、騎士団に入って民を守り、殺した以上の命を救ってつぐなうという方法もあるんじゃないでしょうか?団長と貴方にしか救えない、何百万という命が、ここにあります」
「えっ……」
サギトは意表をつかれたような顔をし、グレアムは目を輝かせる。
「それだ!さすがだぞ副長!いいことを言った!」
「ず、ずるいぞそういうのは」
ノエルがずい、とサギトに顔を近づけた。
「何がずるいのか分かりません。今、あなたの決断に数百万の命が掛かってるの、お分かりになるでしょう?団長は数多の民とサギトさんを天秤にかけたらサギトさんを選ぶような、騎士失格の偽英雄なんです。団長より大分まともそうなあなたが、人々を救って下さい」
「うっ……」
ノエルの言葉に誇張はないのはサギトにも分かった。
今、グレアムを騎士という仕事に留めることが出来るのは、サギトだけだ。
先ほども本気で自刎しようとしていた。グレアムはサギトの為ならきっと全てを捨ててしまう。
(俺が人々を救う?忌むべき魔人の俺が?)
サギトは観念したようにうなずいた。
「わかっ……た。護国騎士団に入ろう。罪をつぐなうために、俺は民を守る……」
その顔は恥ずかしげに赤くなっていた。
「サギト!」
グレアムがぎゅっとサギトを抱きしめた。グレアムの頬ずりでサギトの髪がぐちゃぐちゃに乱れる。
「や、やめろ恥ずかしいっ」
「サギトありがとう、俺むちゃくちゃうれしい!」
ノエルは深い吐息を一つついて、額の汗をぬぐった。口角を上げる。
「では、サギト氏を無罪放免にし、護国騎士団に迎え入れるということで。あと忌人差別禁止法の制定と、騎士団の負担バランスの改善ですね。団長さえ戻ってくるなら、王はそれくらいお安い御用でしょう。これにてこの逃避行、終わりにしていただきますからね」
騎士たちから拍手が沸き起こり、場に安堵の空気が流れた。
だが、その時。
サギトは強烈な魔力の気配を感じた。
グレアムとノエルも察した様子で、緊迫の表情に変わる。
騎士たちの後ろに、緑色の煙のようなものが立ち込めた。
グレアムが叫んだ。
「妖術だ!全員散れっ!」
ーーーーーーーーーーー
エンディングまであと3話!
「誤解なきよう。我々は戦いに来たわけではありません。説得しに来ました。王から、あなたが要求するどんな条件でも飲めと言われております」
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「嫌じゃないっ」
サギトは思わず大きな声をあげてしまった。
「え?」
「嫌じゃ……ない」
グレアムがサギトの両肩をぐっとつかんだ。
「は、入ってくれるのか、護国騎士団に!」
「えっと、その……。嫌じゃないが、でも」
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「どっちでもいいぞ俺は。お前と一緒に逃げてもいいし、お前が護国騎士団に入ってくれるなら騎士を続ける」
騎士たちがざわついた。それはそうだろう。
「だ、団長!なんてことをおっしゃるんですか!」
「我々をそんな簡単に見捨てないで下さい!」
ノエルが額を押さえながら、
「そういうことなら私からも頼みますサギトさん、ご入団いただけないでしょうか」
サギトは視線を彷徨わせた。
「俺は、罪をつぐなわないといけない。たくさん人を殺したから……」
グレアムは怪訝そうな顔をした。
「逃亡は……つぐないにならないぞ?」
もっともなことを言われ、サギトは返答に困ってしまう。黙ったサギトにグレアムは表情を曇らせる。
「もしかしてお前、逃げると言って自殺でもする気なんじゃないのか」
「……まさか、そんなことは考えてない。とにかく俺は行くから。お前はこれからも国を守れよ騎士団長」
サギトはうつむきながらそう言った。グレアムは表情を硬くした。
「それはサギトの罪じゃない、俺の罪だ。つぐないたいなら俺が死ぬ」
「だから、そういうのはやめてくれ。そんなこと言われると俺が困る、本当に」
グレアムは地を這うような低い声を出す。
「じゃあ今から俺の命はお前を生かすことだけに使う。絶対に自殺なんてさせない。地の果てまでもお前について行って阻止してやる!」
ノエルが叫んだ。
「いい加減にして下さい、団長!自分の立場を思い出して下さい!聖教圏がムジャヒールに陥落したら史上最悪の大殺戮が起きるんですよ!聖教圏は敬虔な信徒が多いから、多くの民が改宗を拒むでしょうしムジャヒールはそれを許さない。数十万、いえ数百万の命が散る!あなたが守ってきた数多の命を見捨てるんですか!」
サギトはグレアムが守るものがなんたるかを、改めて思い知らされた。この男はなんと大きな重荷を背負っていることだろう。浅はかに嫉妬していた己を恥じた。民に敬愛されて当然の存在だ。
「この国を守り、人々を救ってきたのは俺じゃない、サギトの力だ。なのに何故この国はサギトを暗殺者なんて立場に追い詰めて、今、自殺させようとしてるんだ」
サギトは、はっと顔を上げる。
(俺の力が人を救ってきた?)
その言葉が何故か、サギトの胸に深々と突き刺さった。
グレアムは言葉を続ける。
「俺は十年前、この国を守りたくて士官学校に入り騎士になった。そして俺のせいでサギトを地獄に叩き落しておきながら、地獄に十年も放置した。国を守るのに忙しかった、なんて言い訳だ。俺は十年、サギトを見捨てたんだ。二度と同じ轍は踏まない」
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「つまり、民を見殺しにすると」
グレアムは冷徹な目でノエルを見返す。
「忌人を蔑む者に、忌人の力に守られる権利があるのか?」
「あなたはいつだって忌人、忌人と!命と天秤に掛けるような話ではないでしょう!」
「俺はサギトを幸せにできないような国を守る気はない。ましてサギトの力で」
「ま、待てグレアム!」
サギトは思わず、睨みあう二人の間に割って入っていた。
「サギト……?」
「あまり見くびるな、俺はお前に見捨てられたなんて思ってない。俺はお前に騎士を続けて欲しい。これからも、俺の力で人々を守って欲しい。救って欲しい……」
サギトは心からそう思っていた。『俺を蔑む連中の為に命なんて張れるか』、頭に血が上って確かにそう言ってしまったが、今はそういう悪感情は不思議と消えていた。
そして気恥ずかしさを感じながらも、真心から言葉を繋げる。
「グレアムに魔力を与えてよかった。お前は俺の魔力を正しいことに使ってくれたな。これからもそうしてくれ」
「で、でも、お前は」
「罪は罪だ。俺は俺の罪を誰のせいにしようとも思わない、ちゃんとつぐないたい。暗殺者という道を選ばない方法だってあったはずなんだ。これは俺自身のけじめの問題だ、俺が納得したいんだ」
グレアムは眉間にしわを寄せて口をへの字にした。
「いやだ!」
「こ、子供かお前はっ!」
ノエルがサギトをじっと見つめる。
「サギトさん、罪をつぐないたいのならば、騎士団に入って民を守り、殺した以上の命を救ってつぐなうという方法もあるんじゃないでしょうか?団長と貴方にしか救えない、何百万という命が、ここにあります」
「えっ……」
サギトは意表をつかれたような顔をし、グレアムは目を輝かせる。
「それだ!さすがだぞ副長!いいことを言った!」
「ず、ずるいぞそういうのは」
ノエルがずい、とサギトに顔を近づけた。
「何がずるいのか分かりません。今、あなたの決断に数百万の命が掛かってるの、お分かりになるでしょう?団長は数多の民とサギトさんを天秤にかけたらサギトさんを選ぶような、騎士失格の偽英雄なんです。団長より大分まともそうなあなたが、人々を救って下さい」
「うっ……」
ノエルの言葉に誇張はないのはサギトにも分かった。
今、グレアムを騎士という仕事に留めることが出来るのは、サギトだけだ。
先ほども本気で自刎しようとしていた。グレアムはサギトの為ならきっと全てを捨ててしまう。
(俺が人々を救う?忌むべき魔人の俺が?)
サギトは観念したようにうなずいた。
「わかっ……た。護国騎士団に入ろう。罪をつぐなうために、俺は民を守る……」
その顔は恥ずかしげに赤くなっていた。
「サギト!」
グレアムがぎゅっとサギトを抱きしめた。グレアムの頬ずりでサギトの髪がぐちゃぐちゃに乱れる。
「や、やめろ恥ずかしいっ」
「サギトありがとう、俺むちゃくちゃうれしい!」
ノエルは深い吐息を一つついて、額の汗をぬぐった。口角を上げる。
「では、サギト氏を無罪放免にし、護国騎士団に迎え入れるということで。あと忌人差別禁止法の制定と、騎士団の負担バランスの改善ですね。団長さえ戻ってくるなら、王はそれくらいお安い御用でしょう。これにてこの逃避行、終わりにしていただきますからね」
騎士たちから拍手が沸き起こり、場に安堵の空気が流れた。
だが、その時。
サギトは強烈な魔力の気配を感じた。
グレアムとノエルも察した様子で、緊迫の表情に変わる。
騎士たちの後ろに、緑色の煙のようなものが立ち込めた。
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「妖術だ!全員散れっ!」
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エンディングまであと3話!
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