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第14話 反省会(2)
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ノエルは肩をすくめながら机の前まで歩み寄る。
「おや、まあ。例のあの方ですよね?ついに見つけたってあんな喜び勇んで向かったのに撃沈ですか。今は何をされてる方なんですか」
「薬屋をやってた」
「へえ」
「追い返されちまった……」
ため息交じりに呟くグレアム。ノエルの眼光が鋭く光った。グレアムは嫌な予感がした。こいつはすごく、勘がいい。
「随分、落ち込み方が激しいですねえ」
「う?そ、そうか?」
「何したんです?」
グレアムは気まずく目をそらした。
「いや、別に、何も」
勘のいい副長は、有無を言わせぬ口調で畳み掛ける。
「何、したんです?」
グレアムは観念した。
「キスを……」
「まさか、口にとか言いませんよね?」
「口に……」
ノエルは目をつぶって額を抑えた。
「で?」
「帰れって言われた」
「でしょうねえ……。何してんですか貴方は、ただの変態じゃないですか」
「だ、だって俺たちの仲は!普通にちんこをしごきあってたんだぞ!」
「そんな青春の一ページ語られても困りますよ」
「いやそういう感じじゃない、もっと淫靡でエロエロで俺たちは完全に恋人同士だった!」
グレアムは断固とした口調で主張した。
「お相手はそう思ってなかったんじゃないですか?」
「あ、あんなにエロいことをいっぱいしたのに!?あそこまでやって恋人じゃなかったとかあり得るのか!?俺とサギトが恋人同士じゃないなんて知らなかった!知らなかったぞ!」
「声が大きいですよ、落ち着いてください。子供の頃のお話でしょう、若気の至りって言葉があるじゃないですか。今はお互いに成人男性でしょう?十年ぶりの再会でいきなり男にキスしてくる男って、そりゃ変態ですよ。気持ち悪いったら」
「なんども変態って言うな!あとさらっと『気持ち悪い』やめろ、ものすごい傷付く!」
言い訳をさせてもらえば、有頂天になってしまった。
サギトが十年間、誰のものにもなっていなかったという事実が嬉しすぎて。
この十年で、サギトはますます美しくなっていた。
透き通る紫の大きな瞳。さらさらの黒髪にぬけるような白い肌。少年期特有の中性的雰囲気をいまだに宿すその容姿は、まるで妖精のようだった。そういえば紫眼はあまり年を取らない、という話を聞いたことがある。
十年間夢想し続けたが、実物はその夢想を軽く超えていた。子供の頃はひたすらに純真可憐だったが、それにひと匙、妖艶な影を付け加えたような。いわく言いがたい情念をそそられる美青年へと成長していた。
サギトを間近に見た瞬間、グレアムの心に沸き起こったのは不安と恐れだった。
結婚していたらどうしよう。恋人がいたらどうしよう。こんな美しい青年を、人々が放っておくわけがない。
だから質問攻めにしてしまった。
でも、サギトは誰のものにもならずひっそりと暮らしていた。のみならず、まだ純潔ですらあった。心踊るなと言う方が無理だ。
十年間、ずっと我慢してたんだ。キスくらいしたくなって当然じゃないか。
しかしまさか、あんなに嫌がられるなんて。
グレアムは落ち込んでいた。グレアムはサギトとは恋人同士だったと思っていた。そして恋人関係が今も続いているような錯覚すら。錯覚。全て錯覚だったのだろうか。自分の身勝手な。
ノエルが深々とため息をつく。
「貴方は童貞をこじらせすぎなんですよ」
「恋人に操を立てるのは当然だろう!俺の恋人はサギトなんだから!」
「本当に恋人なんですか?ただのお友達と思ってる相手に勝手に十年も操を立てられたら、重いし怖いし気持ち悪いし……気持ち悪いですよ?」
「お前は気持ち悪いを言い過ぎだ!サギトだってまだ清いままだった!」
「……なんで知ってるんですか」
「さっき質問したから」
ノエルが頬を引きつらせ、毛虫でも見るような目で見てきた。
「最低ですね」
「え……」
「口にキスするわ、そんな質問してくるわ、ありえないです……」
グレアムは目を泳がせた。最低と言われてみれば最低な気がしてきた。深刻な顔でつぶやく。
「もしかして、嫌われてしまっただろうか」
「その確率は99パーセントですね」
「確率高すぎじゃないか!?」
「本当は100パーセントです。貴方が私の上官なので遠慮して99にしました。まあ、本当に元恋人なら、謝れば許してくれるかもしれませんよ」
「謝りに行かねえと!で次こそ騎士団に入って欲しいって話を切りださねえと。ああでもまた二人きりになったら俺は欲望を抑えられるかどうか」
「いやホントの変態ですよ!やめてくださいね、警察沙汰になるような行いだけは!」
「わ、わかった。ちゃんと段階を踏めばいんだろ。そうだよな十年のブランクがあるんだもんな、まず何度か会って徐々に十年の間に開いた距離を縮めて。スキンシップはそれからだよな」
ノエルと話してだんだんと、己の非道を自覚できてきた。
体格だって顔つきだってあの頃とは違う。大きな男にいきなりキスされ、怖かったのかもしれない。あんな怯えた顔をさせてしまった。自分はひどいことをしてしまったのだ。
「いや目標変わってませんか!?団長に魔力を分け与えてくれた、ものすごーくお強い一騎当千のツワモノだから騎士団に加えたいってお話ですよね?」
「そ、それはもちろんそうだ、嘘じゃないぞ。本当に強いぞ、俺の力なんてあいつからの貰い物なんだから。あいつこそが本物なんだ」
ノエルは顎に手を当て、首を傾げる。
「でも、深窓の令嬢のごとき純真可憐な美少年で、いつも本を読んでいたんですよね。団長は王子として、美少年姫の操を狙う盛りのついた悪童共を毎日成敗したんですよね」
「うん、そうだ」
「蛙一匹の死に傷心するほど善良で繊細な御方で、魔術を使ってやることといえば蝶々とお友達になること」
「そうそう」
「夢精にショックを受け団長に泣きついた時のご様子はエンジェルのごとき愛らしさ。恋人同士の二人は逢瀬を重ね、自慰すら知らなかった清純なエンジェルは、団長の前でだけ淫靡でエロエロな姿を晒した」
「その通り」
「そして美少年姫は永遠の愛の証として、団長に自らの魔力を分け与えた。団長の左手首の血を舐め取る美少年姫は、あたかも初めての口淫をする乙女のごとし。その淫らかつウブな舌使いの感触はいまだに団長のおかずトップ3」
「よく覚えてるな」
「団長からうんざりするほど聞かされましたよ、童貞の妄想……失礼、思い出話を。もちろん話半分に聞いてますが色々しゃべり過ぎなんですよ、お相手のお気持ちを考えて下さい」
「酒が入るとつい語りたくなるんだよなあ」
「はっきり言って最低ですからね、そういう男。でまぁ、いくら絶大な魔力があっても、そんな可憐な方に兵士がつとまりますか?団長の初恋の人なのは分かりますけど、公私混同はいかがなものでしょうか」
グレアムはムッとして反論した。
「そんなことを言うな!」
「おや勘繰り過ぎたでしょうか?それは失礼いたしました」
「初恋なんて言い方じゃ、まるで過去の終わった話みたいじゃないか!俺とサギトの関係を、初恋などという言葉で割り引かないで欲しい!」
「……ちょっと何言ってるのか分からないのですが。とりあえず公私混同の疑いだけが深まりました」
「次は必ず、ここに連れてくる」
グレアムは決意を込めて、ぐっと拳を握りしめた。
「絶対に人の話聞いてませんよね?」
ノエルはため息をつきながら、手に持っていた分厚い書類をデスクに置いた。
「じゃ、各地の戦況報告、明日の軍議までにちゃんと目を通しておいてくださいね」
「おう……」
上の空で答えるグレアムに、呆れたように首を振って、ノエルは部屋を出て行った。
再び一人になったグレアムは、書類に目を通すわけもなく、サギトのことを考えた。
何としてでもサギトを護国騎士団に入れたい。
グレアムはどうしても、サギトを自分のそばに置きたかった。副長に公私混同と言われたが、まあそうかもしれない。恋人同士はそばに居たいと思うのが当然じゃないか。
でもそれだけではない。あの力を薬屋にしておくわけにはいかない。これは国の為でもある。
今、ランバルト王国のみならず聖教圏諸国の全ての命運がグレアム一人に預けられている。
王都で休暇中の今だって、国境付近にはグレアムの、防衛のための魔術が張り巡らされている。たとえば侵入してきた妖獣を一時的に行動停止させる術。停止させている間にグレアムが飛んでいって屠ることができる。百体以上の強力な使い魔も、要所要所に配置し警備に当たらせている。「休暇中」だろうとグレアムの精神の一部は常に、それらの魔術維持のために稼動している。
こんなグレアムが死ねば、聖教圏はムジャヒール帝国にあっさり陥落するだろう。
あまりにも危うい状態だった。
無論サギトにグレアムの過重労働を担わせようとは全く思っていないが、それでも共に戦ってくれれば、どれだけ心強いだろう。
サギトと一緒なら、ムジャヒールとの戦いに終止符を打つことができるかもしれないとすら思えた。
もちろん、サギトの気持ち次第なのだが。
グレアムは己の左手首を見つめた。そこにある二つの赤い膨らみ。サギトの噛み跡。
グレアムはその噛み跡にキスをした。
必ずうんと言わせてみせる、とグレアムは思う。十年のブランクを埋めさえすれば、きっとサギトは自分の元に来てくれる、と。
だって俺達は恋人同士なのだから。
「おや、まあ。例のあの方ですよね?ついに見つけたってあんな喜び勇んで向かったのに撃沈ですか。今は何をされてる方なんですか」
「薬屋をやってた」
「へえ」
「追い返されちまった……」
ため息交じりに呟くグレアム。ノエルの眼光が鋭く光った。グレアムは嫌な予感がした。こいつはすごく、勘がいい。
「随分、落ち込み方が激しいですねえ」
「う?そ、そうか?」
「何したんです?」
グレアムは気まずく目をそらした。
「いや、別に、何も」
勘のいい副長は、有無を言わせぬ口調で畳み掛ける。
「何、したんです?」
グレアムは観念した。
「キスを……」
「まさか、口にとか言いませんよね?」
「口に……」
ノエルは目をつぶって額を抑えた。
「で?」
「帰れって言われた」
「でしょうねえ……。何してんですか貴方は、ただの変態じゃないですか」
「だ、だって俺たちの仲は!普通にちんこをしごきあってたんだぞ!」
「そんな青春の一ページ語られても困りますよ」
「いやそういう感じじゃない、もっと淫靡でエロエロで俺たちは完全に恋人同士だった!」
グレアムは断固とした口調で主張した。
「お相手はそう思ってなかったんじゃないですか?」
「あ、あんなにエロいことをいっぱいしたのに!?あそこまでやって恋人じゃなかったとかあり得るのか!?俺とサギトが恋人同士じゃないなんて知らなかった!知らなかったぞ!」
「声が大きいですよ、落ち着いてください。子供の頃のお話でしょう、若気の至りって言葉があるじゃないですか。今はお互いに成人男性でしょう?十年ぶりの再会でいきなり男にキスしてくる男って、そりゃ変態ですよ。気持ち悪いったら」
「なんども変態って言うな!あとさらっと『気持ち悪い』やめろ、ものすごい傷付く!」
言い訳をさせてもらえば、有頂天になってしまった。
サギトが十年間、誰のものにもなっていなかったという事実が嬉しすぎて。
この十年で、サギトはますます美しくなっていた。
透き通る紫の大きな瞳。さらさらの黒髪にぬけるような白い肌。少年期特有の中性的雰囲気をいまだに宿すその容姿は、まるで妖精のようだった。そういえば紫眼はあまり年を取らない、という話を聞いたことがある。
十年間夢想し続けたが、実物はその夢想を軽く超えていた。子供の頃はひたすらに純真可憐だったが、それにひと匙、妖艶な影を付け加えたような。いわく言いがたい情念をそそられる美青年へと成長していた。
サギトを間近に見た瞬間、グレアムの心に沸き起こったのは不安と恐れだった。
結婚していたらどうしよう。恋人がいたらどうしよう。こんな美しい青年を、人々が放っておくわけがない。
だから質問攻めにしてしまった。
でも、サギトは誰のものにもならずひっそりと暮らしていた。のみならず、まだ純潔ですらあった。心踊るなと言う方が無理だ。
十年間、ずっと我慢してたんだ。キスくらいしたくなって当然じゃないか。
しかしまさか、あんなに嫌がられるなんて。
グレアムは落ち込んでいた。グレアムはサギトとは恋人同士だったと思っていた。そして恋人関係が今も続いているような錯覚すら。錯覚。全て錯覚だったのだろうか。自分の身勝手な。
ノエルが深々とため息をつく。
「貴方は童貞をこじらせすぎなんですよ」
「恋人に操を立てるのは当然だろう!俺の恋人はサギトなんだから!」
「本当に恋人なんですか?ただのお友達と思ってる相手に勝手に十年も操を立てられたら、重いし怖いし気持ち悪いし……気持ち悪いですよ?」
「お前は気持ち悪いを言い過ぎだ!サギトだってまだ清いままだった!」
「……なんで知ってるんですか」
「さっき質問したから」
ノエルが頬を引きつらせ、毛虫でも見るような目で見てきた。
「最低ですね」
「え……」
「口にキスするわ、そんな質問してくるわ、ありえないです……」
グレアムは目を泳がせた。最低と言われてみれば最低な気がしてきた。深刻な顔でつぶやく。
「もしかして、嫌われてしまっただろうか」
「その確率は99パーセントですね」
「確率高すぎじゃないか!?」
「本当は100パーセントです。貴方が私の上官なので遠慮して99にしました。まあ、本当に元恋人なら、謝れば許してくれるかもしれませんよ」
「謝りに行かねえと!で次こそ騎士団に入って欲しいって話を切りださねえと。ああでもまた二人きりになったら俺は欲望を抑えられるかどうか」
「いやホントの変態ですよ!やめてくださいね、警察沙汰になるような行いだけは!」
「わ、わかった。ちゃんと段階を踏めばいんだろ。そうだよな十年のブランクがあるんだもんな、まず何度か会って徐々に十年の間に開いた距離を縮めて。スキンシップはそれからだよな」
ノエルと話してだんだんと、己の非道を自覚できてきた。
体格だって顔つきだってあの頃とは違う。大きな男にいきなりキスされ、怖かったのかもしれない。あんな怯えた顔をさせてしまった。自分はひどいことをしてしまったのだ。
「いや目標変わってませんか!?団長に魔力を分け与えてくれた、ものすごーくお強い一騎当千のツワモノだから騎士団に加えたいってお話ですよね?」
「そ、それはもちろんそうだ、嘘じゃないぞ。本当に強いぞ、俺の力なんてあいつからの貰い物なんだから。あいつこそが本物なんだ」
ノエルは顎に手を当て、首を傾げる。
「でも、深窓の令嬢のごとき純真可憐な美少年で、いつも本を読んでいたんですよね。団長は王子として、美少年姫の操を狙う盛りのついた悪童共を毎日成敗したんですよね」
「うん、そうだ」
「蛙一匹の死に傷心するほど善良で繊細な御方で、魔術を使ってやることといえば蝶々とお友達になること」
「そうそう」
「夢精にショックを受け団長に泣きついた時のご様子はエンジェルのごとき愛らしさ。恋人同士の二人は逢瀬を重ね、自慰すら知らなかった清純なエンジェルは、団長の前でだけ淫靡でエロエロな姿を晒した」
「その通り」
「そして美少年姫は永遠の愛の証として、団長に自らの魔力を分け与えた。団長の左手首の血を舐め取る美少年姫は、あたかも初めての口淫をする乙女のごとし。その淫らかつウブな舌使いの感触はいまだに団長のおかずトップ3」
「よく覚えてるな」
「団長からうんざりするほど聞かされましたよ、童貞の妄想……失礼、思い出話を。もちろん話半分に聞いてますが色々しゃべり過ぎなんですよ、お相手のお気持ちを考えて下さい」
「酒が入るとつい語りたくなるんだよなあ」
「はっきり言って最低ですからね、そういう男。でまぁ、いくら絶大な魔力があっても、そんな可憐な方に兵士がつとまりますか?団長の初恋の人なのは分かりますけど、公私混同はいかがなものでしょうか」
グレアムはムッとして反論した。
「そんなことを言うな!」
「おや勘繰り過ぎたでしょうか?それは失礼いたしました」
「初恋なんて言い方じゃ、まるで過去の終わった話みたいじゃないか!俺とサギトの関係を、初恋などという言葉で割り引かないで欲しい!」
「……ちょっと何言ってるのか分からないのですが。とりあえず公私混同の疑いだけが深まりました」
「次は必ず、ここに連れてくる」
グレアムは決意を込めて、ぐっと拳を握りしめた。
「絶対に人の話聞いてませんよね?」
ノエルはため息をつきながら、手に持っていた分厚い書類をデスクに置いた。
「じゃ、各地の戦況報告、明日の軍議までにちゃんと目を通しておいてくださいね」
「おう……」
上の空で答えるグレアムに、呆れたように首を振って、ノエルは部屋を出て行った。
再び一人になったグレアムは、書類に目を通すわけもなく、サギトのことを考えた。
何としてでもサギトを護国騎士団に入れたい。
グレアムはどうしても、サギトを自分のそばに置きたかった。副長に公私混同と言われたが、まあそうかもしれない。恋人同士はそばに居たいと思うのが当然じゃないか。
でもそれだけではない。あの力を薬屋にしておくわけにはいかない。これは国の為でもある。
今、ランバルト王国のみならず聖教圏諸国の全ての命運がグレアム一人に預けられている。
王都で休暇中の今だって、国境付近にはグレアムの、防衛のための魔術が張り巡らされている。たとえば侵入してきた妖獣を一時的に行動停止させる術。停止させている間にグレアムが飛んでいって屠ることができる。百体以上の強力な使い魔も、要所要所に配置し警備に当たらせている。「休暇中」だろうとグレアムの精神の一部は常に、それらの魔術維持のために稼動している。
こんなグレアムが死ねば、聖教圏はムジャヒール帝国にあっさり陥落するだろう。
あまりにも危うい状態だった。
無論サギトにグレアムの過重労働を担わせようとは全く思っていないが、それでも共に戦ってくれれば、どれだけ心強いだろう。
サギトと一緒なら、ムジャヒールとの戦いに終止符を打つことができるかもしれないとすら思えた。
もちろん、サギトの気持ち次第なのだが。
グレアムは己の左手首を見つめた。そこにある二つの赤い膨らみ。サギトの噛み跡。
グレアムはその噛み跡にキスをした。
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