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第9話 断罪の獣 ②
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「は……?」
サマエルは杖を持たない方の手を上げた。
それに呼応するように、テントの出口と非常出口に幕が下り、ふさがれる。外気と外の音が遮断された。
サマエルは手にした杖を舞台のすぐ下にまで迫る化け物に向かって突き出し、唱える。
「紫電!」
杖の先端の紫水晶から紫色の稲妻が走り、化け物に直撃した。
化け物は全身を紫の火花に巻かれ、ギャッと叫んで痙攣する。
「ええー!?」
(魔法!?本物の魔法!?)
「待ってよサマエル兄ちゃん!まだウストが神子だなんて決まってないよ!」
天井のほうからオライの声が聞こえた。見上げれば道化師の面を外したオライが、高い台、綱渡りの足場の上にいる。
オライはなぜか「お手玉」をしていた。
黄色く光るいくつもの玉を器用に放り投げて回している。
「オライ!?そんな所にいたら危な……」
オライは視線を下に向けると、唱えた。
「黄玉!」
黄色い光の玉は、オライの手元から化け物へ向かって弾丸のように飛んでいく。
化け物は紫の稲妻による痙攣から復帰し、しかしかなりダメージを負ったようでふらついていた。
光の玉が次々と化け物に直撃し、化け物は今度は黄色い火花に巻かれて痙攣する。
(これも魔法!?)
ヴィネの声が聞こえてきた。走路の上を、化け物に向かって駆けながら。
「でもなオライ、断罪の獣はこの変人優男を殺さなかったぜ?それってやっぱ、こいつは神子ってことなんじゃね?」
ヴィネは右手を横に広げた。その右手に暗黒の煙のようなものがたなびく。
ヴィネは唱えた。
「黒刀!」
暗黒の煙がみるまに黒い刀に変化した。柄も刃も黒い三日月刀だ。
化け物は黄色い火花の痙攣から復活し、近づいてきたヴィネに威嚇の声を上げた。
だが二連続の攻撃によるダメージのためか、威嚇の声も弱々しい。
手負の獣らしく、化け物は最後の力を振り絞るように上体をそらし、ヴィネに襲いかかった。
ヴィネは上から覆いかぶさってきた化け物の体に、長い刀を切りつけた。
一刀両断、そのどろどろの体が二つに切断される。
(煙が刀に変化した!これも魔法だ!)
次にまた天井のほうから声が聞こえてきた。有珠斗が初めて聞く声だ。からかうような声音。
「困ったものだね、オライにも。昼は盗賊団をテントに入れ、夜には神子をテントに入れて断罪の獣を呼び込んだ。これって十年ただ働き程度じゃ済まないんじゃないかな?」
見れば「妖精の女王」改め「次男の軽業師」ラミアが、空中ブランコに乗ってゆらゆらと揺れている。
「白蝶」
そう唱えて、ラミアは握りしめたこぶしをゆっくりと開いた。
手の中から、半透明の白い蝶が現れる。
ラミアは、ふっとその白い蝶に息を吹きかけた。
白い蝶は鱗粉らしき光る粉を大量にまき散らしながら、化け物に向かって舞い降りて、化け物のすぐ上で旋回する。
光る粉は、二つに切断されてなおびくびくと蠢いている化け物の体に、雪のように降り積もった。
光る粉を浴びた化け物の体が、しゅるしゅると縮み、干からびていく。
(魔法の蝶!)
化け物はついに動かなくなった。
床に、巨大な干物のようになって横たわっている。
サマエルは杖を持たない方の手を上げた。
それに呼応するように、テントの出口と非常出口に幕が下り、ふさがれる。外気と外の音が遮断された。
サマエルは手にした杖を舞台のすぐ下にまで迫る化け物に向かって突き出し、唱える。
「紫電!」
杖の先端の紫水晶から紫色の稲妻が走り、化け物に直撃した。
化け物は全身を紫の火花に巻かれ、ギャッと叫んで痙攣する。
「ええー!?」
(魔法!?本物の魔法!?)
「待ってよサマエル兄ちゃん!まだウストが神子だなんて決まってないよ!」
天井のほうからオライの声が聞こえた。見上げれば道化師の面を外したオライが、高い台、綱渡りの足場の上にいる。
オライはなぜか「お手玉」をしていた。
黄色く光るいくつもの玉を器用に放り投げて回している。
「オライ!?そんな所にいたら危な……」
オライは視線を下に向けると、唱えた。
「黄玉!」
黄色い光の玉は、オライの手元から化け物へ向かって弾丸のように飛んでいく。
化け物は紫の稲妻による痙攣から復帰し、しかしかなりダメージを負ったようでふらついていた。
光の玉が次々と化け物に直撃し、化け物は今度は黄色い火花に巻かれて痙攣する。
(これも魔法!?)
ヴィネの声が聞こえてきた。走路の上を、化け物に向かって駆けながら。
「でもなオライ、断罪の獣はこの変人優男を殺さなかったぜ?それってやっぱ、こいつは神子ってことなんじゃね?」
ヴィネは右手を横に広げた。その右手に暗黒の煙のようなものがたなびく。
ヴィネは唱えた。
「黒刀!」
暗黒の煙がみるまに黒い刀に変化した。柄も刃も黒い三日月刀だ。
化け物は黄色い火花の痙攣から復活し、近づいてきたヴィネに威嚇の声を上げた。
だが二連続の攻撃によるダメージのためか、威嚇の声も弱々しい。
手負の獣らしく、化け物は最後の力を振り絞るように上体をそらし、ヴィネに襲いかかった。
ヴィネは上から覆いかぶさってきた化け物の体に、長い刀を切りつけた。
一刀両断、そのどろどろの体が二つに切断される。
(煙が刀に変化した!これも魔法だ!)
次にまた天井のほうから声が聞こえてきた。有珠斗が初めて聞く声だ。からかうような声音。
「困ったものだね、オライにも。昼は盗賊団をテントに入れ、夜には神子をテントに入れて断罪の獣を呼び込んだ。これって十年ただ働き程度じゃ済まないんじゃないかな?」
見れば「妖精の女王」改め「次男の軽業師」ラミアが、空中ブランコに乗ってゆらゆらと揺れている。
「白蝶」
そう唱えて、ラミアは握りしめたこぶしをゆっくりと開いた。
手の中から、半透明の白い蝶が現れる。
ラミアは、ふっとその白い蝶に息を吹きかけた。
白い蝶は鱗粉らしき光る粉を大量にまき散らしながら、化け物に向かって舞い降りて、化け物のすぐ上で旋回する。
光る粉は、二つに切断されてなおびくびくと蠢いている化け物の体に、雪のように降り積もった。
光る粉を浴びた化け物の体が、しゅるしゅると縮み、干からびていく。
(魔法の蝶!)
化け物はついに動かなくなった。
床に、巨大な干物のようになって横たわっている。
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