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番外編 竜の城の恋人たち

7.フロルの発情③ ※

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 フロルの腰を鷲掴みにして、レオンが思い切り突きあげる。ぐぽりと最奥が開かれ、フロルは目の前が一気に真っ白になった。そこに押し込むようにして、レオンはさらに抽送を繰り返す。

「あッ! あああ……っ! あつ……い」
「フロル!」

 細かく痙攣を繰り返すフロルの髪が揺れ、レオンの目の前に真っ白なうなじが見えた。レオンは迷うことなく自分の歯を突き立てた。

 フロルの口から細い悲鳴が上がった。肌を食い破られる痛みが走り、同時に自分を貫いているものと同じ快感が溢れ出す。今まで感じたことがないほどの悦びに包まれると、一段と大きくなったレオンの剛直がフロルの最奥に熱を放った。体中から湧き上がる快感に包まれて、フロルは堪らず中を強く締め上げた。

「ッ! ……フロル!」
「あ……なか、れおんで、いっぱい……」
「そんな事、言われたら」
「ん……おっきい……」

 フロルの中で今にも溶けてしまいそうだと思いながら、レオンは精を放ち続けた。アルファの吐精は止めようとしても止められない。オメガの中を全て満たし、溢れるほどの精を注ぎ終わるまでは。

 フロルの薄い腹にレオンが手を回すと、フロルは自分の手を重ねた。

「いっぱいなの、うれしい……」
「……フロル」

 唯一人の相手を得たアルファの本能は一つだ。

 ――このオメガは自分のものだ。誰にも渡さず……自分の子を孕ませる。

 くっきりと痕のついたフロルの項を舐めれば、にじんだ血の味すら甘く感じた。レオンは、舌を這わせるたびにびくびくと震えるフロルを腕の中に囲い込む。

 (今すぐじゃなくてもいい。いつかは……)

 フロルの体からは段々に力が抜ける。レオンが愛していると囁けば、こくりと頷く。甘い快楽を追い続けるフロルをレオンは強く強く抱きしめた。フロルの口からため息のような声が漏れる。

「……やっぱり、……どきどきする……ね」
「え?」

 疲れ切ってまどろみ始めたフロルは、もう何も言わなかった。レオンは、柔らかなフロルの髪にそっと口づけた。二人のための時間はこれからたくさんある。ゆっくり話をすればいいのだと思うと、泣きたいほど幸せだった。





 翌日、カイが目覚めた時には、太陽は空高く昇っていた。

「……あれ、レオンはどこに行った?」
「とっくにお部屋に戻られましたよ」

 ダナエが窓を全て開け放ったので、部屋の中にはびゅうびゅうと風が通り抜けていく。カイはぶるりと震えたが、誰も気にかける者はいない。山のように積まれていた酒樽は片端から空いており、使用人たちがせっせと片付けている。

「一晩でよくもこんなにお飲みになりましたね!」
「人型だからこんな量ですんだんだ。竜の姿なら話にもならない」

 ダナエに呆れた目で見られ、ふんと鼻を鳴らした時だった。

 カイは大きく目を瞬いた。
 自分の体の中の魔力が強くなっている。今までとは違い、陽の光のように暖かく黄金色の輝きだ。これはレオンの持つ魔力が変化したのだろう。

 (ああ、そうか。ようやく二人はつがいになったのか)

  カイは嬉しかった。幼い二人の姿を心に思い描く。一時はすれ違い、どうなることかと思ったが、ちゃんと絆を結ぶことができたようだ。

「なあ、ダナエ」
「はい?」
「......めでたいことがあった。今日は城の皆で宴会にしよう!」
「馬鹿なことを! どれだけ飲んだら気がすむんですか!」
「いや、本当に祝い事なんだって!」
「知りません」

 カイがダナエの怒りを収めるまでには大層な時間がかかった。その間、竜の城の恋人たちはぐっすりと眠っていた。

 ――ねえ、フロル。ずっと一緒にいてね。
 ――変なレオン。もちろん、ずっと一緒にいるよ。

 竜の心に浮かんだ幼い二人の面影が夢となって恋人たちに降り注ぐ。幼い二人は微笑んで手を繋いだ。カイが部屋に乱入してくるまでの間、レオンとフロルは互いを抱きしめたまま、幸せな眠りを味わい続けた。







★番外編もこれで終わりです。ここまでお読みいただきありがとうございました!
たくさんのいいねやエール、ご感想に励まされ、楽しく書くことができました^^
またレオンやフロル、カイの話を書きたくなったら追加します。その際はお付き合い頂けましたら幸いです。
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