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89.この世界でずっと
しおりを挟む俺たちが目覚めたのは、朝の光どころか、陽が空高く昇ってからだった。
目覚めた時には体はさらりと綺麗になっていたけれど、服は何も着ていなかった。俺を抱きかかえたまま、ジードは目を閉じている。
「……ジード、おはよ」
小さな声で言えば、キスが返ってきた。いつから起きてたの、と聞くと少し前からと答える。
「ユウが起きるのを待っていた。寝起きの可愛い顔を見たら、見せたいものがあるから」
「何?」
「この屋敷は一階に、広い厨房がある」
ジードの言葉に目が丸くなった。
「厨房……」
「ユウを迎えに行こうと決めてから、考えたんだ。今までは年に半分も王都にはいないから、騎士団の寮で十分だった。でも、ユウには作りたいものがあるだろう? レトやスフェンに聞いて、広い厨房のある屋敷を探していたら、ちょうど王宮に近いここが売りに出た」
「……家まで買って、俺がこっちに戻らなかったら、どうするつもりだったんだよ?」
「戻らないことなんか、考えなかった」
ジードが俺の手をぎゅっと握った。
「絶対、取り戻すと思っていたから。自分が無理だと思ったら、きっと何も出来はしない」
目の奥が熱くなって、必死で頷いた。
「すごく嬉しい。最初の菓子はジードの為に作る」
「……楽しみだ」
ここからまた、始めよう。
大事な人たちの為に、一つずつ。心を込めてスイーツを作ろう。
異世界で初めて作った菓子は、ジードの役に立てたらと思った。
ジードがいてくれたら俺は、この世界でずっと、何かを作り出すことが出来る。
「必要なものがあるなら、幾らでも獲ってくる」
「……魔林から?」
「どこからでも、ユウの望むままに」
真剣に呟く騎士に、思わず吹き出した。
「頼りにしてる」
抱きついて、好きだよとキスをする。
誰よりもイケメンな俺の騎士は、それはそれは嬉しそうに微笑んだ。
【騎士とスイーツ 完】
ー・-・-・-・-・-・-・-・-・-
長い間、ユウとジードの恋を見守っていただきありがとうございました!BL大賞にて応援してくださった皆様も本当にありがとうございました。
これにて、本編は完結とさせていただきます。今後、二人の番外編を書くかもしれません、その際は、またお付き合いいただければ幸いです。
どうぞ皆様も素敵なクリスマス&よいお年をお迎えくださいませ。
応援ありがとうございます!
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みんなの感想(9件)
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本当に素敵なお話をありがとうございました!
もっとたくさんの人に呼んで欲しい!と、心から思いました!
言葉のセレクトが、本当に素晴らしく、泣いちゃいました😊
これからも応援しています!
本当にありがとうございました🙇
一気に読んでしまいました🎵
ジードと2人の話しも気になりますが、ビードの元婚約者とそのお兄さん2人のその後も気になります😣✨
かりかり様
お読みいただき、ありがとうございます!!ヾ(*´∀`*)ノ
ジードたちだけでなく、ソノワ兄妹のことも気にしてくださったんですね!魔力を失くした兄はこの先も色々ありますが、妹は前向きに立ち直っていきます。
いつかまた、ジードたちの番外編をかけたらいいなと思います。その際はお付き合いいただけたら嬉しいです。
完結お疲れさまでした。(o^―^o)/
いつかジードのためにもケーキを焼いてあげて欲しいな♪
素敵なお話をありがとうございます。
夕稀星さま
あたたかいお言葉ありがとうございますー!いつも見守っていただいて、本当に嬉しかったです。書き続けるパワーを頂戴しました。
そうですね、ユウもこの先ジードの為にケーキを焼くと思います(´∀`*)ウフフ ジードびっくりしそう♪
こちらこそ、最後までお付き合いいただき、ありがとうございました!!!