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Ⅵ.番外編 レイとセツ

第4話 あなたに溺れて② ※

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「セツ様?」
「⋯⋯レイ⋯⋯ふ⋯⋯うッ」

 呆然と立ちすくむレイの姿が、視界の端にうつった。
  小卓の上の香油と僕を代わる代わる見ている。

 ⋯⋯もう、死にたい。
 裸でうつ伏せのまま喘いでる姿なんて、最悪じゃないか。

 レイは、すぐに向きを変えて扉に向かった。
 ああ、そうだよな。見たくもないはずだ。
 目が熱くなって、鼻の奥がツンとする。

 かちゃり、と音がする。
 すぐに戻ってきたレイが、ベッドに乗り上げてきた。

「⋯⋯セツ様。これで大丈夫です。鍵はかけました」

 耳元で甘い声が囁かれて、それだけで腰が震えた。
 肩に手がかかり、体の向きを変えられる。

 僕の目の前には、見たこともないような獰猛な獣がいた。


「ひ!!」

 舌をねじ込まれた瞬間、僕の前が弾けた。

 白濁が飛び散って、レイのシャツだけでなく、黒いズボンに染みを作る。
 ガクガクと震える体をベッドに縫い留めて、レイは僕の口の中を舐めまわす。
 舌で、口の中を捏ねられて、何が何だかわからない。

 唾液が口の端から溢れ、首に垂れていく。
 それを追うように、レイの唇が首の脇を這った。

「あ。ふあ、あ!」
「セツ様⋯⋯。セツ様!!」

 レイの手が、僕の胸をまさぐる。
 ぴんと立っている胸の先を指の腹でそっと触れられた。
 それだけで、極めたはずの雄が勃ち上がる。
 もう片方の乳首を口に含まれれば、体が反れた。軽く歯を立てられ、いやいやと首を振る。
 レイの手が、僕の腰をがっしりとつかむ。

「レイ、やめ⋯⋯」
「一人で、なさるなんて」

 レイの唇は、どんどん下に移っていく。
 胸から臍に舌が這い、両手で腿を広げられた。内腿を強く吸い上げられていく。レイの髪を掴めば、小さな笑い声がした。

「夢みたいです。セツ様、こんな、貴方が見られるなんて」
「──んッ!!」

 熱い口の中に含まれて、体がわななく。
 レイの舌が僕自身の先から竿をねっとりと舐め上げる。双球は柔かく転がされ、会陰の部分まで唾液が伝わっていく。
「⋯⋯感じてくださるんですね。硬くなってる」

「⋯⋯っ」
 ぼろぼろと涙が溢れて頬を伝っていくのが分かった。
 両手で顔を覆うと、レイの動きが止まる。
「セツ様?」
 レイは、体を起こして、僕に顔を近づけてきた。

 ぐすぐすと泣き続けていると、とまどうように髪を撫でる。
「⋯⋯泣かないで。お嫌でしたか?」
「ちが、そうじゃなくて。⋯⋯だって、こんな。体だけ、どうしようもなくなって」

 レイが、顔から僕の両手をそっとどけて、頬に口づける。
 ぎゅっと、胸の中に強く抱きしめられた。

「貴方が、好きです。泣いてらっしゃるのに、そんな顔を見ているだけで、欲望が抑えきれなくなりそうです⋯⋯」
 腿に、張りつめたレイ自身が当たっている。
 視線を上げれば、苦悩に歪むレイの顔が、なんだかとても愛おしくなる。

「僕は、レイのこと嫌いじゃないよ。ただ、好きかどうかはよくわからない」
「⋯⋯セツ様?」

 レイの頬に両手を当てて見つめる。
「それでも、いいの?」

 そう言った瞬間、噛みつくように口づけられた。


「あ⋯⋯ああああっ!!」

 香油を足された後孔は、どうしようもなく蕩けていた。
 レイの指を何本も含んで、ぐちゃぐちゃと水音が部屋に響いている。
 体中吸われ、舐めまわされて、幾つも鬱血の痕が付く。
 絡めた指は固く握られて、ベッドに押しつけられていた。

 さんざん中をかき回した指が抜かれて、熱い塊が押し付けられる。
「セツ様。⋯⋯お許しを」
 レイの腰が大きく動き、熱い熱が肉壁を開いていく。

「ん! んっうぅっ!!」
「⋯⋯は! ⋯⋯あ、あっ! セツ様!!」

 たまらなかった。

 どくどくと自分の中で脈打つ熱が、奥まで入り込んでくる。
 自分から手を伸ばして、レイの体をかき抱いた。
 腹の中がレイの質量で満たされている。

「⋯⋯くっ!!」
 レイは僕の唇を貪りながら、中を擦り上げた。
 律動の激しさに、目の前が白くなる。
 打ちつけられるたびに体がせりあがり、悲鳴が漏れる。

「⋯⋯セツ様!!」
 最奥にレイが入ってくる。
 肩に熱い痛みを感じた。レイの形の良い歯が噛みついている。
「⋯⋯あ! あああ!!!!」

 レイは大きく膨れ上がって僕を貫き、溢れる精を注ぎ込んだ。



「先日の香油の使い心地はいかがでしたでしょう?」
 商人が笑顔で訊ねてくる。

 こいつを南の離宮に出入り禁止にすべきかどうか、僕は真剣に悩んでいた。
 ただ、一つだけ優れた点がある。翌朝まで、媚薬が変に残ることはなかった。
 おかげで、死ぬほど恥ずかしい思いはしたが。

「⋯⋯これと同じような品で、媚薬抜きの香油はあるの?」
「心得ましてございます」

 商人の満面の笑みに、僕はまんまと、してやられた感が消えなかった。
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