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第二部 眼病の泉
第26話 相愛② ※
しおりを挟むシェンと繋がったまま、孔の縁からはとろとろと白濁が溢れ続けている。抱き合ったまま、何度も口づける。口の端から溢れる唾液を互いに吸い上げて舌を絡めた。
「⋯⋯まだ足りない」
体を倒されて、繋がったままの場所をゆっくりと擦り上げられる。
後孔の中で、おさまっていたはずのシェンの雄が再び力を持つ。滑りが良くなった場所は、ただ気持ちがいいだけだ。肉壁を擦られれば、ぐちゅぐちゅとひっきりなしに水音が聞こえる。
ギリギリのところまで引き抜かれ、浅い場所を捏ねるように突かれる。
「あっんッ! シェン!」
自分の口から洩れる声が、高くかすれていく。これは本当にぼくの声なのか。
「気持ちいい?」
たまらず何度も頷く。満足げに微笑んだ恋人が小さく舌を出して、ぼくの唇を舐めた。
「言って⋯⋯イルマ」
──言わないと、ずっとこのままだよ。
甘い言葉にわずかに毒が混じる。
すり潰すように一点を責められて、透明な液がたらたらと先端からこぼれていく。
「⋯⋯ん。あッ! シェン、挿れて!! 気持ちいいから⋯⋯もっと⋯⋯!」
初めて触れ合った時のように、媚薬はもう必要なかった。
手前ばかり刺激していたシェンの怒張は、奥まで一気に突き進む。奥の奥まで激しく突きあげられ、足先までが痺れて力が入らない。
「⋯⋯あああッ!」
律動が繰り返され、膝裏を抱え上げられて熱が打ちつけられる。
搾り取るように中が蠢くと、目の前の美しい顔が切なげに歪む。
壮絶に淫靡な顔に、心が震えた。
何度も繰り返し欲が吐き出され、ぼくの中の全てが暴かれ、塗り替えられていく。
自分の中に知らなかった欲が刻みつけられ、何度も耳元で繰り返し囁かれる。
「愛している、イルマ。──私だけのものだ」と。
──いつの間に、眠っていたのだろう。
瞼を開ければ、穏やかな瑠璃色の瞳が自分を見ていた。
ぼくを抱きしめている腕に力がこもる。黄金の瞳と瑠璃色の瞳。お互いの中に、たった一人の姿が映っている。
「ずいぶん長い時間、かかった気がする」
「⋯⋯?」
「⋯⋯自分の気持ちに素直になるまで。初めて会った時も、再び会った時も。ずっと、この瞳に惹かれていた。この瞳が自分だけを見てほしいと願っていた」
シェンが、ぼくの瞼に口づけた。
「⋯⋯ぼくは長い間、自分の瞳が好きじゃなかった。だけど、シェンがそう言うなら、この瞳も悪くない」
「今はイルマが何色の瞳でもいい。⋯⋯私は、イルマならそれだけでいい」
シェンはそう言ってぼくを抱きしめた。優しい口づけが、いくつも顔中に降ってくる。
砂漠の朝は早い。もうじき夜が明ける。
ラヤンの村を出てタブラへ。そして、南の離宮に帰ることを考えたら少しでも眠った方がいい。頭のどこかでそう考えているのに、この腕が自分からは離せそうにない。
じっとシェンを見つめていたら、ふっと視線を逸らされた。
ぼくはシェンの首に唇を寄せる。シェンの体がびくんと震えて、腿に硬いものが当たった。
「そんな瞳で見られたら、何度でも欲しくなる」
囁く言葉を塞ぐように唇を合わせる。
『人を好きになるってのは、きれいなことばかりじゃない。みっともなくて、辛くて、苦い。それでも、どうしようもないんだ』
いつか聞いたラウド兄上の言葉が、不意に浮かびあがる。
砂漠に来るまで、たくさんの気持ちを味わってきた。
「ねえ、シェン。ぼくは、シェンを好きになってよかった」
「⋯⋯うん」
ぼくを強く抱きしめるシェンの耳が赤くなっている。
──明日は旅立てないかもしれないな。
うっすらとそう思いながら、愛しい相手の背中に手を回す。
「イルマ。⋯⋯愛してる」
何度も囁かれる愛の言葉に、同じように言葉を返した。
「シェン、ぼくも」
シェンが、ゆっくりとぼくの体に愛撫の口づけを降らせていく。
何度もおさまっては立ち上る欲望に、ぼくたちは、ただ従順に身を任せた。
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