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番外編 秋 雛(ひな)の王子 ※
5.長夜 ② ※
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「お叱りを受けそうですが……」
もうとっくに怒っていると呟けば、ヴァンテルの眉が下がった。
「……泣いてらっしゃるお姿にも、そそられます」
ドン! と思いきり胸を叩いても、少しも効いている様子が無い。
「……ばかッ!」
「好きです、アルベルト様」
ふるふると体を震わせていると、瞼、目尻、頬と次々に口づけが降ってくる。
いつの間にか、ヴァンテルの長い指が私の雄を包み込んでいた。人差し指と親指で輪を作り、優しく擦り上げられる。
「っあ!」
ヴァンテルの手の中で、私の雄はたやすく形を変え、天を向く。
男にしては頼りなげだと思うのに、まるで宝を愛でるように丁寧に扱きあげられ、あっという間に口に含まれた。
両足を開かれ、温かい咥内に含まれた瞬間に、先走りがびゅるりと溢れ出る。喉の奥まで深く飲み込まれ、舌でゆっくりと嬲られる。
「あっああッ! ク……リス!!」
自分の腰が揺れるのがわかる。たまらなく恥ずかしいのに、同じ位気持ちが良かった。弾けそうになっている雄を口から出されては含まれ、狂おしい気持ちだけが募る。ヴァンテルの口の中ではちきれんばかりに膨れ上がった時、そっと口が離された。
ヴァンテルは体を起こして、長椅子の近くの小卓から小さな瓶を取り上げた。指に瓶の中のものを塗り付けると、私の後孔の入り口に優しく触れる。ぬるりと粘度の高いものが纏わりついた指が、つぷりと中に入ってくる。
「あ……や! なに?……」
私を見つめながら、ヴァンテルはにっこり笑った。
「蜜を混ぜた膏薬を作りました」
「なんで、そんな……の!」
ぬちぬちと中に押し入ってきた指先から、肉襞の中にじわじわと熱が広がる。閉ざされていた隘路が、見る間に解れて柔らかくなるのが分かる。粘液が溢れ出して、くちゅくちゅと水音がたつ。
指が増やされ、こりりと硬い一点を潰されて体が跳ね上がった。
「クリス……クリス! もう出るッ!! あああ!」
微笑んだヴァンテルが、再び私の雄を咥えた。前と後ろを同時に責め立てられて、堪らず白濁が迸る。
ヴァンテルが音を立てて飲み干した時には、私は捕らえられた魚のように体を跳ねさせるだけだった。
はぁはぁと息をつきながら、長椅子に体を任せていると、ヴァンテルが起き上がる。
美しい獣が歌うように告げる。
「アルベルト様。……夜は、これからです」
長椅子の背を必死で掴み、逃げようとしても、少しも許されはしなかった。
焼けた鉄を思わせる熱く硬い杭が何度も後ろから打ち込まれる。
「あッ! ああ! もう無理……」
「たまらない……。アルベルト様、こんなに蕩けていらっしゃる……」
ヴァンテルの剛直が後孔に突き入れられるたびに、肌を打ち付け合う音が部屋に激しく響く。
中で出された白濁が溢れ、混じり合った粘液が内腿を伝い落ちていく。いつのまにか絨毯にまで滴り落ちて、見る間に染みが広がった。
「ああ、こんなに溢れてしまって……。明日、絨毯はレビンに替えさせましょう」
「や! ……やだっ」
ヴァンテルは時々、ひどく意地悪だ。羞恥に震えるようなことを、わざと言う。
一際激しく突き上げられたかと思うと中がうねり、思わずヴァンテルを締め上げた。
「あっあああ!」
「ッ! アルベルト様っ」
頭の中が熱く、白く溶けていく。全身の力が抜けて、もう何も考えられはしなかった。
ふと目が覚めた時には、絹の寝間着を纏って、自分の寝台にいた。
すぐ隣には、静かな寝息をたてている美しい男がいる。整った顔は穏やかで、昨夜の痴態などまるで何も知らぬかのようだ。
体はどこもさらりと清潔に拭き上げられている。
昨夜も、クリスが運んでくれたのだろう。
情事の後に気を失うように倒れた時。
ヴァンテルはいつも、私の体を丁寧に清めて服を着せ、寝台まで運んでくれる。そして、腕の中に抱え込むようにして眠るのだ。
小鳥のさえずりが聞こえ、部屋の中には白い光が差し込んでいた。もう少し眠ろうかと、愛しい恋人の体に手を回そうとした時だった。
もうとっくに怒っていると呟けば、ヴァンテルの眉が下がった。
「……泣いてらっしゃるお姿にも、そそられます」
ドン! と思いきり胸を叩いても、少しも効いている様子が無い。
「……ばかッ!」
「好きです、アルベルト様」
ふるふると体を震わせていると、瞼、目尻、頬と次々に口づけが降ってくる。
いつの間にか、ヴァンテルの長い指が私の雄を包み込んでいた。人差し指と親指で輪を作り、優しく擦り上げられる。
「っあ!」
ヴァンテルの手の中で、私の雄はたやすく形を変え、天を向く。
男にしては頼りなげだと思うのに、まるで宝を愛でるように丁寧に扱きあげられ、あっという間に口に含まれた。
両足を開かれ、温かい咥内に含まれた瞬間に、先走りがびゅるりと溢れ出る。喉の奥まで深く飲み込まれ、舌でゆっくりと嬲られる。
「あっああッ! ク……リス!!」
自分の腰が揺れるのがわかる。たまらなく恥ずかしいのに、同じ位気持ちが良かった。弾けそうになっている雄を口から出されては含まれ、狂おしい気持ちだけが募る。ヴァンテルの口の中ではちきれんばかりに膨れ上がった時、そっと口が離された。
ヴァンテルは体を起こして、長椅子の近くの小卓から小さな瓶を取り上げた。指に瓶の中のものを塗り付けると、私の後孔の入り口に優しく触れる。ぬるりと粘度の高いものが纏わりついた指が、つぷりと中に入ってくる。
「あ……や! なに?……」
私を見つめながら、ヴァンテルはにっこり笑った。
「蜜を混ぜた膏薬を作りました」
「なんで、そんな……の!」
ぬちぬちと中に押し入ってきた指先から、肉襞の中にじわじわと熱が広がる。閉ざされていた隘路が、見る間に解れて柔らかくなるのが分かる。粘液が溢れ出して、くちゅくちゅと水音がたつ。
指が増やされ、こりりと硬い一点を潰されて体が跳ね上がった。
「クリス……クリス! もう出るッ!! あああ!」
微笑んだヴァンテルが、再び私の雄を咥えた。前と後ろを同時に責め立てられて、堪らず白濁が迸る。
ヴァンテルが音を立てて飲み干した時には、私は捕らえられた魚のように体を跳ねさせるだけだった。
はぁはぁと息をつきながら、長椅子に体を任せていると、ヴァンテルが起き上がる。
美しい獣が歌うように告げる。
「アルベルト様。……夜は、これからです」
長椅子の背を必死で掴み、逃げようとしても、少しも許されはしなかった。
焼けた鉄を思わせる熱く硬い杭が何度も後ろから打ち込まれる。
「あッ! ああ! もう無理……」
「たまらない……。アルベルト様、こんなに蕩けていらっしゃる……」
ヴァンテルの剛直が後孔に突き入れられるたびに、肌を打ち付け合う音が部屋に激しく響く。
中で出された白濁が溢れ、混じり合った粘液が内腿を伝い落ちていく。いつのまにか絨毯にまで滴り落ちて、見る間に染みが広がった。
「ああ、こんなに溢れてしまって……。明日、絨毯はレビンに替えさせましょう」
「や! ……やだっ」
ヴァンテルは時々、ひどく意地悪だ。羞恥に震えるようなことを、わざと言う。
一際激しく突き上げられたかと思うと中がうねり、思わずヴァンテルを締め上げた。
「あっあああ!」
「ッ! アルベルト様っ」
頭の中が熱く、白く溶けていく。全身の力が抜けて、もう何も考えられはしなかった。
ふと目が覚めた時には、絹の寝間着を纏って、自分の寝台にいた。
すぐ隣には、静かな寝息をたてている美しい男がいる。整った顔は穏やかで、昨夜の痴態などまるで何も知らぬかのようだ。
体はどこもさらりと清潔に拭き上げられている。
昨夜も、クリスが運んでくれたのだろう。
情事の後に気を失うように倒れた時。
ヴァンテルはいつも、私の体を丁寧に清めて服を着せ、寝台まで運んでくれる。そして、腕の中に抱え込むようにして眠るのだ。
小鳥のさえずりが聞こえ、部屋の中には白い光が差し込んでいた。もう少し眠ろうかと、愛しい恋人の体に手を回そうとした時だった。
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