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26.恋慕 ※
③ ※
しおりを挟む「……んッ! ……ん」
唇を貪られながら、ゆっくりと服が脱がされていく。体の中に熱が灯り、互いの吐息が熱い。襟が広げられ、ずっと覆っていた肩が現れた時、ヴァンテルは怪訝な表情を見せた。
「これは?」
左の鎖骨には、トベルクの付けた噛み痕が残っていた。
「噛まれた」
一瞬の間の後に、目の前の男の背に幻の炎が噴き上がる。背筋が凍り、私は喉の奥に声を飲みこんだ。
ヴァンテルは、長く美しい指先でそっと痕に触れていく。
瞳には、ぞっとするほど冷たい色が宿っている。
「……どこで?」
「や、宿屋で」
ぎり、と奥歯を噛み締める音がする。
「おいたわしい。時間が経っても、こんなに痕が残るほど歯を立てるなんて」
誰にとは聞かれず、代わりに呪詛に満ちた言葉が美しい唇からこぼれ落ちた。
──やはりあの時、息の根を止めておけばよかった、と。
「……あ! ん! あッ」
ヴァンテルは、ゆっくりと肌を吸い上げた。左鎖骨の噛まれた痕に沿って、紅い花が咲いていく。
ちり、とわずかな痛みが増すたびに、体の奥に熱が灯る。
ただ肌を吸われ、痕を付けられているだけだ。なのにどうして、こんなにも体が火照るのだろう。吸われた場所から指先にまで痺れが走っていく。
──どうしてクリスなら、怖くないんだろう……。
「な……んで、そこばっかり……」
「こんなに堂々と印をつけられて黙ってはいられません」
決して歯は立てず、紅色の痕を付けた場所には、確かめるように口づけを落とす。
はぁ、と息を吐けば、ヴァンテルが顔を上げて唇に触れた。割り開いて入ってきた舌は、味わうように口の中をかき混ぜて溶かしていく。
「……ッ、ん!」
ふわふわと頭の中までが蕩けてしまう。そう思っていると、熱い唇はいつのまにか肌の上を移動していく。首から胸に向かうと、ぷくりと膨らんだ先を食んでゆっくりと舌先で転がす。音を立てて吸われた途端、自分の芯が甘く疼くのを感じた。
「……あ」
もう片方の乳首は、指先で優しく優しく捏ねられている。そんなところが感じるなんて思ったことはなかったのに、両方の乳首を弄られているうちに、兆していた自分の芯がすっかり起ち上がっている。
……もう、どうしよう。息が熱くなって、こんなに昂ってしまって。
少しでも身動きしようとすれば、乳首に柔らかく歯が立てられ、体が跳ねてしまう。ヴァンテルは優しく脇腹を撫でると、前を寛げて私の芯をそっと触った。
「ッあ! や!」
そこはとうに潤んでいて、先からはとろとろと雫が滴っている。緩く擦られれば、ぐちゅぐちゅと音がする。体中に甘い刺激が走って、どうにかなってしまいそうだった。
「クリス、ん!」
ヴァンテルが私の芯を擦りながら深く口づける。芯は硬く膨れ上がりながら、びくびくと脈打っている。大きな手が握り込むように緩急をつけてくると、腰が揺れた。
ヴァンテルの指が根元から強く擦り上げた途端、どろりと濃い白濁が勢いよく噴き出す。
「──ッ!!」
自分のはしたなさに体をずらそうとすれば、逃がさないとばかりに寝台に強く縫い留められる。舌を絡められ、嬌声は喉の奥で堰き止められたまま、芯にはさらに刺激が続けられた。
──クリス、クリス。……もうやめて。
視線で訴えても、獣のような目をした男は少しも聞いてはくれなかった。
「ン! ふ……」
頭の中が白くなり、どきんどきんと胸が鳴り続けている。
溢れる唾液が喉を伝う。ヴァンテルがひときわ強く擦り上げると、快感に耐えきれずに残る欲が溢れ出る。
脈打つ芯から最後まで白濁が絞り出されて、足先まで痺れていく。
あの美しい指を自分の欲で汚してしまったのかと思うと、恥ずかしさに気が遠くなる。
私からようやく唇を離した男が、指先に纏った白濁を見て微笑んだ。舌先で指をぺろりと舐めたのを見て、思わず叫ぶ。
「……なっ! クリスの馬鹿!!」
「先ほど、嫌いではないと仰いました」
「きらい!」
「では、もう一度好きになっていただかなくては」
瞳の底にまるで狼のような激しさを秘めて、ヴァンテルは艶然と微笑んだ。
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