【短編】平凡な僕と美形幼馴染

桜月夜

文字の大きさ
上 下
1 / 1

平凡な僕と美形幼馴染

しおりを挟む
 僕は三人兄弟の真ん中だったんだけど、兄と弟は両親に似てとても整った顔立ちをしていた。
 街中を歩けば必ずと言っていいほどモデルや芸能界のスカウトをされ、学校ではファンクラブが出来るくらいだった。
 そんな兄弟に挟まれた僕は、至って平凡な顔立ちをしていた。普通なら良いだろと思うかもしれないけど、美形揃いの家族の中で、僕だけが浮いているのだ。気にしないわけがないだろう。両親は僕のことも可愛がってくれていたと思うけど、どうしても目立つ兄と弟の方に興味がいくからか、僕は忘れられがちだった。
「この子だけなんで地味なんだろう」
「本当に兄弟なのかな?」
「お兄さんと弟さん、すごくイケメンだね」
「次男さんは、目立たないね」
 物心つく頃には、周囲からこんな風に言われて生きてきたのだ、自分の容姿がコンプレックスになるなんて当然だろう。
 そんなコンプレックスを抱えながら、僕は容姿に似合った平凡な人生を送ろうと思っていた。
 だけど、家族が美形だけではなく、幼馴染も美形だったため、日々は平凡ではなくいつも騒がしかった。
 そして、幼馴染のストーカーに嫉妬をされ、刺されて死んだ。

 それが、僕の前世の記憶だった。

 前世の記憶を思い出したのは、僕が7歳の誕生日だった。
 今度の人生は、中世ヨーロッパ風のファンタジーな世界に生まれたらしい。もしかしたら、流行りの異世界転生かもしれない。だけど、僕はゲームも漫画もあまり読まなかったから、もし異世界転生だったとしても、よくわからない。それに、僕の容姿は前世と同様に平凡だった。
 異世界転生していたとしても、せいぜいモブといったところだろう。
 そして、今回も両親は超絶美形だった。昨年生まれたばかりの弟も、赤ちゃんながら、将来絶対美形になること間違いないだろう顔立ちをしている。
(生まれる世界が変わっても、僕は平凡なんだなぁ)
 もはや諦めの境地だ。
 それにしても、幼馴染まで美形だなんて、前世とほとんど変わらない自分の境遇に笑いそうになったほどだ。
(もう刺されて死にたくはないから、必要以上に仲良くしないようにしよう)
 嫉妬で刺されるなんて、一回で十分だ。そんな理由で死にたくない。今度こそ、平凡な人生を全うしたい。
 僕は心に誓った。

(誓ったのに……)

 僕の心の誓いを笑うように、美形幼馴染みイザヤは、僕にウザ絡みしてくる。
 それは毎日毎日。
 15歳になって貴族学園に入学してからは、隣にいるのが当たり前のような顔をしていつも一緒にいる。
 定期的に席替えがあるのに、何故かいつも隣か前後は幼馴染の席だった。
「ルイは可愛いなぁ」
 最近では、そんな血迷った発言を僕にするようになった。
「何言ってるの? 自分の姿、鏡でみたことある?」
 どう見ても僕よりもイザヤの方が可愛いだろう。いや可愛いというより、カッコいい? まだ若干幼さは残っているが、切れ長の目を細めて微笑む姿は天使か神のようだった。周りの女の子たちが、そんなイザヤのことを顔を赤くさせて見ている。
 そういえば前世の幼馴染も、僕によく「可愛い」だの「天使」だの意味の分からないことを言っていた気がする。それで、幼馴染のストーカーに嫉妬されて殺されたんだ。
「そういうこと言ってると、勘違いされて僕に迷惑がかかるからやめてよね」
 本気でそう思う。
 痛い思いはしたくない。
「大丈夫、大丈夫」
 何を根拠にか、そんな軽く大丈夫というのか。
 僕は大きく溜息を吐く。
 このやりとり、もう何十回……いや何百回もしている。
 僕から離れようと、休み時間に隠れてもすぐに見つかるし、登校時間をズラそうとしても、どういう訳か屋敷の外に出るとイザヤの馬車が迎えに来てる。下校は言わず物がな……。

「今度は大丈夫だよ。誰にもルイの事を傷つけさせないから」
 イザヤがにっこりと天使みたいな微笑みで何か呟いたけど、小さな声だったから聞こえなかった。
「何?」
 聞き返したけど、「何でもないよ」と有無を言わさぬ笑顔で返されたので、聞き返すのを諦めた。

 とりあえず、この幼馴染からは逃げられないんだろうな……と心のどこかで、諦めの気持ちと、そんなイザヤの執着に安堵する僕がいた。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

蔑まれ王子と愛され王子

あぎ
BL
蔑まれ王子と愛され王子 蔑まれ王子 顔が醜いからと城の別邸に幽閉されている。 基本的なことは1人でできる。 父と母にここ何年もあっていない 愛され王子 顔が美しく、次の国大使。 全属性を使える。光魔法も抜かりなく使える 兄として弟のために頑張らないと!と頑張っていたが弟がいなくなっていて病んだ 父と母はこの世界でいちばん大嫌い ※pixiv掲載小説※ 自身の掲載小説のため、オリジナルです

一日の隣人恋愛~たかが四日間、気がつけば婚約してるし、公認されてる~

荷居人(にいと)
BL
「やっぱり・・・椎名!やっと見つけた!」 「え?え?」 ってか俺、椎名って名前じゃねぇし! 中学3年受験を控える年になり、始業式を終え、帰宅してすぐ出掛けたコンビニで出会った、高そうなスーツを着て、無駄にキラキラ輝いた王子のような男と目が合い、コンビニの似合わない人っているんだなと初めて思った瞬間に手を握られ顔を近づけられる。 同じ男でも、こうも無駄に美形だと嫌悪感ひとつ湧かない。女ならばコロッとこいつに惚れてしまうことだろう。 なんて冷静ぶってはいるが、俺は男でありながら美形男性に弱い。最初こそ自分もこうなりたいと憧れだったが、ついつい流行に乗ろうと雑誌を見て行く内に憧れからただの面食いになり、女の美人よりも男の美人に悶えられるほどに弱くなった。 なぜこうなったのかは自分でもわからない。 目の前のキラキラと俺を見つめる美形はモデルとして見たことはないが、今まで見てきた雑誌の中のアイドルやモデルたちよりも断然上も上の超美形。 混乱して口が思うように動かずしゃべれない。頭は冷静なのにこんな美形に話しかけられれば緊張するに決まっている。 例え人違いだとしても。 「男に生まれているとは思わなかった。名前は?」 「い、一ノ瀬」 「名字じゃない、名前を聞いているんだよ」 「うっ姫星」 イケメンボイスとも言える声で言われ、あまり好きではない女のような名前を隠さずにはいられない。せめて顔を離してくれればまだ冷静になれるのに。 「僕は横臥騎士、会えて嬉しいよ。今回は名前だけ知れたら十分だ。きあら、次こそはキミを幸せにするよ」 「はい・・・おうが、ないと様」 「フルネーム?様もいらない。騎士と呼んで」 「騎士・・・?」 「そう、いいこだ。じゃあ、明日からよろしくね」 そう言って去る美形は去り際までかっこいい姿に見惚れて見えなくなってから気づいた。美形男のおかしな発言。それと明日?? まさかこれが俺の前世による必然的出会いで、翌日から生活に多大な変化をもたらすとは誰が思っただろう。 執着系ストーカーでありながら完璧すぎる男と平凡を歩んできた面食い(男限定)故、美形であればあるほど引くぐらいに弱い平凡男の物語。

台風の目はどこだ

あこ
BL
とある学園で生徒会会長を務める本多政輝は、数年に一度起きる原因不明の体調不良により入院をする事に。 政輝の恋人が入院先に居座るのもいつものこと。 そんな入院生活中、二人がいない学園では嵐が吹き荒れていた。 ✔︎ いわゆる全寮制王道学園が舞台 ✔︎ 私の見果てぬ夢である『王道脇』を書こうとしたら、こうなりました(2019/05/11に書きました) ✔︎ 風紀委員会委員長×生徒会会長様 ✔︎ 恋人がいないと充電切れする委員長様 ✔︎ 時々原因不明の体調不良で入院する会長様 ✔︎ 会長様を見守るオカン気味な副会長様 ✔︎ アンチくんや他の役員はかけらほども出てきません。 ✔︎ ギャクになるといいなと思って書きました(目標にしましたが、叶いませんでした)

6回殺された第二王子がさらにループして報われるための話

あめ
BL
何度も殺されては人生のやり直しをする第二王子がボロボロの状態で今までと大きく変わった7回目の人生を過ごす話 基本シリアス多めで第二王子(受け)が可哀想 からの周りに愛されまくってのハッピーエンド予定

罰ゲームで告白したら、一生添い遂げることになった話

雷尾
BL
タイトルの通りです。 高校生たちの罰ゲーム告白から始まるお話。 受け:藤岡 賢治(ふじおかけんじ)野球部員。結構ガタイが良い 攻め:東 海斗(あずまかいと)校内一の引くほどの美形

俺に告白すると本命と結ばれる伝説がある。

はかまる
BL
恋愛成就率100%のプロの当て馬主人公が拗らせストーカーに好かれていたけど気づけない話

前世から俺の事好きだという犬系イケメンに迫られた結果

はかまる
BL
突然好きですと告白してきた年下の美形の後輩。話を聞くと前世から好きだったと話され「????」状態の平凡男子高校生がなんだかんだと丸め込まれていく話。

俺がイケメン皇子に溺愛されるまでの物語 ~ただし勘違い中~

空兎
BL
大国の第一皇子と結婚する予定だった姉ちゃんが失踪したせいで俺が身代わりに嫁ぐ羽目になった。ええええっ、俺自国でハーレム作るつもりだったのに何でこんな目に!?しかもなんかよくわからんが皇子にめっちゃ嫌われているんですけど!?このままだと自国の存続が危なそうなので仕方なしにチートスキル使いながらラザール帝国で自分の有用性アピールして人間関係を築いているんだけどその度に皇子が不機嫌になります。なにこれめんどい。

処理中です...