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10※(※性描写あり)
しおりを挟むルークに護衛をやめろと言われだが、不遜な態度で断ってしまった。だが自分の口から出た言葉は戻すことはできない。
ホテルの部屋に帰って真っ先にしたのはキアランへの謝罪だった。
「すみません、売り言葉に買い言葉で……フィンレーさんの大事な幼馴染なのに……」
「いえ、ルークの性格なら遅かれ早かれそんなことになるかとは思っていました。彼自身、言葉が過ぎるところがありますので。私の方こそ止められなくて申し訳ありません」
またもやきっぱりと返されてしまった。言葉はいつも通りでも突き放すような言い方だ。やはり自分が何かしてしまって、彼の機嫌を損ねたのだろうか。
「そういえば……その傷はどうしたのですか」
昨日おったひじの擦り傷をさされ尋ねられる。
「ああ、名前はわからないんですが遊びをしていたら転んじまって……若い奴らがすいすいーとやってるので簡単だと思ったんですがね」
「そうですか」
「そうそう、しょっちゅう倒れてたのを見かねたのか起こしてもらって。これはお礼をしないとなんて飯を奢ったり。あれ?言ってなかったですか」
キアランの方から話しかけてきてくれためアレックスはいつもより饒舌になった。機嫌が少し良くなってきたのかと思ったからだ。その時なぜだかキアランの顔に変化が現れた。氷点下の能面のようだった顔つきがだんだんと頬が赤くなり、ついには両手で顔を覆ったのだ。
「どうしました?」
「……いえ、自分の浅薄さを恥じていたところです」
「はあ」
「とにかく、アレックスさん申し訳ありませんでした。お風呂に行ってきます」
慌てたように向かっていく。態度が軟化したように感じて息をついて安堵した。
雇い主のシャワーの音を聞きながらそう言えばとアレックスは懐から漢方を取り出した。店主が元気になる薬だと言っていた。栄養剤みたいなものだし今こそ使う時だろう。寝酒と薬をリビングデスクに準備した。もちろん店主に言われた通り半包のみだ。アレックスは護衛につかまれて少し痛んだ肩をさする。キアランの護衛をできるのならこれくらいの痛みなんてことない。
「今日一日幼馴染さんと出歩いて疲れたでしょう。栄養剤でもどうですか?」
「ええ。わざわざありがとうございます。ありがたく頂戴いたしますね」
相変わらず風呂上がりは色っぽい。しかも先ほどはなかった笑顔付き。本当に機嫌がいいらしい。
栄養剤を勧めると、キアランは感謝をして酒と共にゆっくり飲んでいた。それを見守ってアレックスはシャワーを浴びに行った。
キアランの体に異変が起きたのは、風呂場から出てきて就寝の挨拶をしようとした時である。
「……!どうした!」
ソファに腰掛けていると思った副文官は、アレックスが来る頃には姿勢を崩して今にも床に倒れそうに前傾している。慌てて体を支えようと肩に触れたら、手を跳ね除けられた。いつもの彼らしくない乱暴な仕草に胸騒ぎがする。
「いえっ……っ……」
キアランをよくよく観察すると高熱が出たように顔全体を真っ赤にして額から汗をとめどなく流している。見ているだけでも辛そうだ。ベッドサイドの栄養剤はアレックスが出した半量全てなくなっており、コップの酒は二、三ミリほどしか減っていなかった。しかしこれは一口二口酒を飲んだ反応ではない。
……栄養剤のせいなのか?
「大丈夫、なのか?」
「ええ……休めばきっと良くなります……っ」
「危ない!」
思わず敬語が崩れてしまったが相手はそれを気にするほどの余裕は今持っていない。
寝室へ向かおうとするキアランはやはり不調らしくフラフラとした足取りだ。膝が笑って物に足をぶつけたら倒れ込んでしまいそうだ。そうなっては敵わない。心配で見ていられない。
アレックスは強引にキアランを抱いてベッドに運ぼうとする。アレックスにとって大人一人運ぶのは造作もない。
キアランを前から持ち上げる。弱い抵抗に遭い、雇い主の前半身がのしかかる形になるとキアランの股間にあたる部分に違和感を覚える。硬いそれはアレックスの太ももにあたるとすぐに引っ込められた。下を見ずとも男ならすぐにわかる。勃起しているのだ。瞬時に原因がわかってしまった。
「これは……」
「……お恥ずかしいですが、栄養剤を飲んで兆してしまったようです。しばらく一人にさせてください。アレックスさんは申し訳ありませんがソファで……」
「……すみません俺のせいです」
元気になる薬と言われたからてっきり疲労をとるものだと思ったのだ。それがまさか性的欲求を呼び起こすものだったとは。自分のせいだ。体全体でなくて体の一部分を元気にする薬だなんて、己の言語力の低さを恨んだ。アレックスは知らなかったが、薬を酒で飲んだのもより効果を強める原因となった。
自身のせいでキアランが被害を被ったのだ。アレックスが責任を取らなければ。その時は下心などなくて、迷惑をかけたことの申し訳なさしかなかった。
アレックスはよし、と気合を入れるとキアランをソファに座らせ自身はラグマットの敷いてある床にひざまづく。体に力が入らないらしく、大人しく従ってくれた。アレックスが触れるたび興奮して荒い息を吐いている。キアランは汗をかき必死にいつもの穏やかな表情をしようと努めているが目だけが爛々とこちらを覗く。
「フィンレーさん、ごめんな……犬に噛まれたとでも思ってくださいよ」
アレックスはそう言うとキアランの前をくつろげた。下着ごと膝まで下ろす。ぶるんと勢いよく完全に勃起した屹立が飛び出してくる。
それはキアランの涼やかなルックスに似合わず血管がはっきりとわかり亀頭と竿共にずんぐりと太めであった。見つめているだけでキアランのペニスから先走りが鈴口からこぼれる。薬のせいかぱんぱんに腫れて解放を求めて苦しそうだ。
「……触るぞ」
ストレートであったアレックスだが、同性の性器なのに不思議と不快感は感じなかった。共同浴場で他の男のものを見かけたときは暑苦しいと思っていたのだが。このペニスの持ち主が好きな相手だからか。そう考えると思いがけず好きな人の性器を見られて幸運だったかもしれない。それはキアランの不幸の上に成り立つものであったが。
「くっ……アレックスさんっ……」
そんなくだらないことを考えている今にもキアランは苦しそうに呻いている。楽にしなければと凶悪な彼の屹立に手を伸ばした。
アレックスは自ら慰めるときのように手で輪っかを作って上下に扱く。キアランは恥ずかしいのか右手の甲で口元を押さえている。
「……俺にいじられるのが気持ち悪かったら、目を閉じて好きな相手でも思い浮かべてください」
「そんなことっ……」
「舌、噛んじゃいますよ」
「っ……ん」
低く、心地よい声を抑えて欲しくなくて片手でキアランの腕を下ろす。そのまま続けて肉茎を愛撫した。片手で陰嚢をふにふにと持ち上げ優しく揉んでいく。不快ではなかったらしく、より先走りが溢れた。ペニスの根本から裏筋を通ってカリ首へ。カリ全体を手のひらで包み込んで捻るように擦る。面白いくらい素直に反応してくれて嬉しさが湧いてくる。
「はぁっ……アレックス、さん……」
キアランが悩ましげに鼻のかかった息を出す。それが嬉しくて愛おしくてもう少し強く手を動かしていく。キアランの反応を見る限り、色々な部分を触るよりは同じ動きをずっと繰り返したほうが気持ちいいらしく、そのように扱く。
ソファの肘掛けを握っていたキアランの手はアレックスの頭へと伸びてきた。そうして硬めの短髪を撫でられたかと思うと、刈り上げられたうなじをさりさり音を立てながら悪戯される。なんだか恥ずかしい。
キアランは目元を赤く染め眉間に皺を寄せて時々目を瞑っている。淫靡なことをしているはずなのに、そこには美しさも同居していた。
「ほ、ほら遠慮せずに出せばいいんだからな」
キアランの予想以上の色気にアレックスは彼の顔を見れない。キアランのことを好きだと自覚して、すぐ性的なことをすることになったのだ。ベッドでのキアランの乱れ方を想像する間さえなかった。触っているだけで恥ずかしい。
代わりに彼のペニスの様子を見つめていた。キアランの綺麗なペニスは先走りをだくだくとこぼして卑猥に濡れぼそる。アレックスの手のひらもキアランのそれで濡れていた。
「っ……アレックス……さん……」
キアランが息を詰め、腹筋を硬くする。もう限界だろうとアレックスはスパートをかけた。色っぽい声を聞いていたかったが焦らすと辛いのはキアランだろう。
より一層早く、強く触れる。すると硬く凝ったペニスの鈴口から生暖かい液体が勢いよく噴き出してきた。予備動作もなく達するとは。アレックスはタイミングを見誤って避ける事ができなかった。
「あ……」
「ああ……アレックスさん……ごめんなさい」
「い、いえ……楽になったならいいです」
頬から顎で一直線に粘り気のある精液がかかる。他人の白濁をかけられるなんて経験ははじめてだったので目にかからないようにするので精一杯だった。
キアランの手はアレックスの顔へ。ゆっくりと伸びてきて、親指の付け根でアレックスについたそれを塗り広げる。アレックスの頬をキャンバスに見立てたような動きだった。
「何をしてるんですか……?」
「アレックスさん……もっと明るいところで見せてください」
「は、いや……」
アレックスは何も答えられず精液は頬全体に広がっていく。間接照明で仄暗い部屋で見る文官は、瞳をキラキラと瞬かせて精液のかかったアレックスを凝視している。異様に興奮している様子でよくわからないスイッチが入っているようだった。
「っ、明日も護衛があるので失礼しますっ!おやすみなさい!」
好きな人のことを受け入れたいとは思うが、これ以上一緒にいたら何か取り返しのつかないアブノーマルなことに巻き込まれそうで、アレックスは部屋から逃走した。洗面台で大雑把に顔を洗って淫靡な雰囲気をなんとか消し去った。
もしかしてとんでもない人を好きになってしまったのではないだろうか。
顔を洗っている最中も、ベッドに潜り込んだ時もキアランの逸物の柔らかくて硬い感触、口の端についた精液の味が忘れられなかった。もちろん、横目で見たキアランが感じて顔を天井に向けた時の表情も。必死に目を閉じてようやく寝付けたのは夜が明けようという時だった。
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