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魔導国家ヴェリス編

76話 向かうはアルヴィジョ跡地!

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 クリス達は、のんびりと馬車に揺られながら、アルヴィジョ跡地方面へと向かっている。
 辺りは閑散とした針葉樹林となっており、過去に造られた街道はそこそこ荒れている為、馬車が非常に揺れる。
 その為、休憩も適度に入れつつ向かっていて予想よりもゆっくりのペースだ。

 今回の冒険は特に期間も決めておらず、また空間収納にはあり余る大量の食料も保管されてるので飢えを恐れる心配もない。

 「ラファエル君、大丈夫?長旅とか初めてでしょ?」
 「うん。大丈夫。この馬車、足を伸ばして座れるのが良いね。スウェントル王国の褒美品なんでしょ?」
 「そうだよ!かなり良い馬車を貰っちゃった!」

 馬車の中ではアクセルとラファエルが指相撲をして暇つぶしをしながら、仲良く話をしていた。
 クリスは馬車の窓から外を眺め、うっそうとしげる森林を眺めている。

 「今回、私達はアルヴィジョ跡地の中心部へと向かいます。東西は双子殿下の罰としての開拓ですからお仕事を取るわけにはいきません。中心部にて、色々と発見出来たら東西の活性化に繋がり、双子殿下の仕事量も増えて、良いことだらけですわね。」

 モニカはクリスのセリフを聞いて(相変わらず、狙いを定めた獲物には容赦無いわね。クリス様。正直、荒くれ者の巣窟である冒険者街をまとめ上げて、更にダンジョン研究だなんて、忙しすぎて死ねるレベルの中、更に追い討ちをかけようとしているのだもの…。)と、恐れおののいていた。

 クリスは現在ご機嫌に笑いながらも、やはり直接アンバーとアザレアと対面することなく、間接的な断罪の参加となってしまった為に、どこか消化不良気味の様子だ。

 暗殺未遂をした王族を、被害者であるラファエルや、ラファエルを保護しているクリス達の前へと出さなかったのは当然の処置として理解しているが、目の前で死にかけていたラファエルを思い出す度に、クリスは自分の言葉でヴァーミリオンの様に叱りつけたかったという気持ちがあった。

 余談だが、クリスの正論という断罪を受け、愛する子供達から隠居を言い渡されたヴァーミリオンは、まだ一年の即位期間があると言うのにも関わらず、既に腑抜けてしまい、ただ虚ろな目で王座に座っているだけの毎日となっている。

 まぁ、今までも大した仕事はしていなかったので大きな問題もなく、カッシュやシアン、ブラウンやヴァイオレットがこれまで通りに国家運営に精を出している状況だ。

 閑話休題。

 「母上、アルヴィジョ跡地って、ダンジョンなんでしょ?国の跡地がダンジョンってどういう事ですか?」
 「そうですわね…図書館で仕入れた情報ですが、まずはこの世界のダンジョンの定義について説明しますわね。強い魔素が溜まった洞窟や古い遺跡などが変異して、ダンジョンそのものが意思を持っているかの様に色々な効果を発する物を総じてダンジョンと呼びます。」
 「色々な効果って、ダンジョン内で生まれる魔物とか、宝箱とかの事ですか?」
 「はい。冒険者がダンジョンに潜り、毎回宝箱を拾っているのにも関わらず、時間を開けると再度宝箱が現れたり、日によって入れる部屋が異なったり、ダンジョンそのものが入る度に変異したり…色々ある様ですわね。」

 人によって宝箱の中身が違うのも、原理は分からないが、どう考えても何らかの意思が働いている様にしか考えられない為、ダンジョン研究者はその理屈を解明しようと長年研究に勤しんでいるが、まだ何も解明出来ていないのが現状だ。

 また、自然の中に発生するダンジョンや、アルヴィジョ跡地の様に元々は都市だった場所が長い年月をかけてダンジョン化する事もある。

 一部の古代の塔や城などがダンジョン化しているのも確認されており、人工物がダンジョン化した場合は総じて強力な魔物が生まれている事も確認されている。

 「このアルヴィジョ跡地は、広大な跡地全てがダンジョンという訳ではありません。情報によると、西の大聖堂周辺、東の砦跡周辺、中央の王城周辺がダンジョン化しているとの事ですわ。」

 通常のダンジョンと違い、遺跡都市がダンジョンしている為、通常の民家跡地から宝箱が出てきたり、街道だと思って進んで行くと突如全く別の場所へと転移したりと、まるでビックリ箱の中を冒険している様な感覚に陥る為、冒険者には人気のスポットとなっている。

 中でも、クリスの説明した【西の大聖堂】【東の砦跡】【中央の王城】の三箇所は、建物周辺は簡易的な遺跡跡ダンジョンとなっており、比較的低ランク冒険者でも散策出来る。
 しかし、各々メインの建物内部は、外観と内部の広さが異なっていて広大なダンジョンと化し、また強力な魔物が徘徊しているとのことで、遅々としてダンジョンの探索が進んでいない状況となっているのだ。

 「今回、私達が向かうのは、強力なアンデット系の魔物が守っているというアルヴィジョ跡地の王城ダンジョンですわ。先程述べた三箇所はまだ踏破されていないとの事で、最深部には何があるのか不明です。今から最深部に向かうのが楽しみですわね。帰還のヒントになるような物が有れば良いのですが、まぁそう都合良くは行きませんわよね。」

 アクセルとラファエルはお互いの背中を背もたれとしながら、クリスの話を真剣に聞いていた。
 その真剣な表情と、ほのぼのした雰囲気のミスマッチにクリスは癒されつつ、ラファエルへと話しかける。

 「ラファエル様も晴れて冒険者登録をし、冒険者用の装備を身につけている訳ですが、着心地はどうですか?」
 「はい!このワインレッドのローブ、アクセル君のジャケットとお揃いの色で嬉しいです。魔力伝導率も良くて、凄い軽いですね。」
 「渡した杖はどうですか?聖宝石をはめ込んで居ますので、魔法も使いやすいと思いますが。」
 「まだ、この杖で魔法の練習をしていないので何とも言えませんが、凄く手にフィットして使いやすそうですよ。生まれて初めての冒険なので、ワクワクするのと緊張で、胸がドキドキしています。」

 そう笑顔で話すラファエルは、王宮にいた時の陰鬱な表情から解き放たれ、本来の素直な性格が出てきている様子だ。

 アクセルがラファエルの胸の辺りに手を当てて、「本当にドキドキしてるねー」と言い、ラファエルがアクセルの胸へと手を当て返して「アクセル君は…全然ドキドキしてないね。ドキドキしてるのって、僕だけ?なんか恥ずかしいなぁ…。」などとじゃれ合っている姿もまた、クリスは本当にラファエルが無事で良かったと思うと共に、ラファエルを旅に同行させた事で愛しのアクセルに信頼の置ける友人が出来た事を、心から喜んだのであった。



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投稿が予定より遅れて申し訳ないです。

いつでもコメント、お待ちしています。


今後の更新予定ですが、アルヴィジョ跡地の冒険と、魔導国家ヴェリスでの帰還方法の研究話をそこそこ入れます。
もう少し、ヴェリス編は続きますので、どうぞお付き合い頂けると嬉しいです。

また、何かリクエストがあれば、出来る限り番外編や閑話、内容によっては本編などで取り入れたく思いますので、お気軽にコメントを宜しくお願いします!

更新を楽しみにして頂いている読者の方々、これまでそこそこのペースで更新していましたが、今後はかなりの亀更新となってしまいます。

どうか見捨てず、長い目で見守って下さい。
今後とも宜しくお願いします!
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