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魔導国家ヴェリス編
67話 建設的に進めますわよ!
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モニカ達が冒険者ギルドで絡まれた翌日、クリスの泊まっている高級宿にブラウンと宰相のカッシュが訪れ、クリスの部屋で3人で密談をしていた。
ブラウン達の護衛5名(前回と同じ面子である)は宿のロビーで待機し、クリス以外のメンバーは男部屋で待機している状況である。
クリスは微笑みを浮かべながらも、全身から滲み出る冷たいオーラを纏いブラウンに相対していた。
「ブラウン殿下、貴方の言いたい事は良く分かりました。とりあえず双子殿下は軟禁の上、外出不可でラファエル様の安全は問題無いと。双子殿下の処罰は保留中で、結論はラファエル様の意見も聞いてから…と言う事ですわね?」
「は…はい…。」
クリスは、口元は美しい笑みを浮かべつつも視線は絶対零度という器用な微笑みを浮かべ、ブラウンとカッシュに対し優雅な威圧を全力で放っている。
ブラウンより、先日のアンバーとアザレアの事情聴取の結果をクリスにありのままを報告をした結果、上記のような状況となっているのであった。
第一王子とこの国の政治を司る宰相が共に、直訳すると『まだ元凶の処分は決まってないけど、王宮に来て一緒に結論を考えて下さい。』と、王族の仕出かした事件に巻き込まれているクリスへと言って来たのだ。クリスが呆れて憤るのも致し方ないであろう。
クリスが威圧を敢えて放っているのは、一種のパフォーマンスでもあるが、それは王族にも効果は絶大の様だ。
流石のブラウンも、ここまでクリスから威圧されるとは思っておらず、王族と言うのに叱られるのを待つ子供の様に怯えていた。
「おほほ。カッシュ宰相様、初対面で不躾な質問を致しますが…先ほどのブラウン様の報告ですと、この国の国王陛下は無能である様に聞こえましたが…そう判断されても仕方ないのは、宰相様でしたら否定出来ませんわよねぇ?」
ブラウンの補佐として付いてきたカッシュ宰相は突如話を振られ一瞬挙動不審になったが、すぐに落ち着いた風を装い返事をする。
「…そうですな。取り調べの際、私はシアン王妃と共に政務に励んでいた為、状況を全て把握しているわけではありませぬが…。クリスティーナ様にはヴァーミリオン陛下の実情をお話ししますと…」
「あぁ、別にこの国や陛下の実情などどうでも良いのです。私達には正直関係の無いお話しですから。長々と貴方達の結論を先延ばしにした言い訳を聴きたい訳ではありませんの。ご理解頂けます?」
「う…はい。」
「ほほほ。私、王家の方が【王族の責務】とやらを果たしてくれると思っていたのですが、どうやら期待し過ぎたみたいですわね。…ブラウン殿下やカッシュ宰相の立場もわかりますのよ?この国をまとめ上げる陛下が結論を出さないのだからどうしようもないのでしょう?」
「…まぁ…その…はい。仰る通りです…。」
「まぁ、私からしたら、貴方達から双子殿下の処罰等を提案をして陛下に責任を持って貰えば良いだけだと思うのですが、お国の事情もお有りでしょう。」
カッシュも完全に、クリスの威圧に飲み込まれてしまっていた。
「さて、では今後の相談をしましょう。今はどうせ結論が出ないので、建設的な質問をさせて下さいな?」
「重ねがさね、申し訳ない…。」
クリスは一息ため息をわざとらしく吐き、その様子を見ていたブラウンとカッシュが警戒心をあらわに、クリスを上目遣いで見る。
「はぁ…。では、ブラウン殿下?貴方の思うがままに答えて頂けますか?」
「…はい。」
「今回の事件の元凶はどこにあるとお考えで?」
「…ヴァーミリオン陛下の、説明不足から起きた、双子の暴走かと考えております。」
「あらあら。この国の国王が説明責任を果たさなかったばかりに起きてしまった悲しい事件と言う事ですわね?」
「…はい。」
そこで、クリスはニッコリと微笑み、カッシュへと視線を移す。
「では…カッシュ宰相様に問います。この国の国王は、頼りになりますか?」
「…」
「沈黙は肯定と捉えますわよ?」
「…魔力の高さでは、国内トップクラスの為、国の象徴として頑張って頂いています。」
「はい。カッシュ宰相様の言いたいことは理解出来ましたわ。」
ブラウンもカッシュも、非常にまずい空気が流れているのは理解出来ていたが、その空気を変えるだけの話題転換が出来ないでいた。
そもそもの第三者にここまで言われる筋合いは無いと思いながらも、ここまで言わせてしまっているという自覚もあり、またクリスの持つ圧倒的なオーラの前に2人は従わざるを得ない様な感覚になってしまっていた。
「さて、カッシュ宰相様。次代の国王は誰を推薦なさいますか?カッシュ宰相様の意見を聞きたいですわ。」
「え…いえ。まだ決まっていない事を軽々しく口には出せないですな…。」
雲行きの怪しい話題になって来て、なんとか取り繕うカッシュだが、もちろんクリスには通用するはずも無く、一刀両断されてしまう。
「忌憚ない感覚で回答して下さいな。ずっと政治の出来ない国王の補佐をされて来たカッシュ様が、国王になって欲しい方を上げて欲しいだけですわ。今は私たちしかおりません。口外するつもりも無いですわ。」
「いえ…しかしですね…。」
「あらあら…立太子出来るような優秀な王子や王女がいらっしゃらないとでも?それとも、宰相閣下ともあろう方が、何も考えていらっしゃらないのですか?それは国の由々しき事態ではありません事?」
カッシュは、胃がキリキリと痛むのを感じていたが、ここで答えなければ次にどの様な口撃を喰らうか恐れおののき、また少しでも言い返そうなら自分達の上をいく口上でやり込められてしまうのを理解した為、絶対に口外はしないで欲しいのと、宰相の立場としての意見で決定事項では無いと念押しの上、この方が国王であれば国もまとめやすいという人物の名前を挙げた。またブラウンもそれに追随するかの様に肯定を返した事により、クリスは満足げに頷いたのであった。
「…そうなんですのね。ブラウン殿下とカッシュ宰相様の貴重なご意見、ありがとうございます。」
そう言ってクリスは扇子を広げ、口元を隠しながら楽しそうにクスクスと笑った。
「ねぇ、後はラファエル様や、他の王子様と王女様達も交えてお話ししましょう?どうせまだ、情報は隠匿してらっしゃるのでしょう?私、ヴァーミリオン陛下に今後ラファエル様をお預かりする事を、直接お願いしなければなりませんし…ねぇ?それに加えて、この国の魔導研究機関にもしばらくお世話になりとうございます故、そのご挨拶も含めて…宜しいですわよね?」
ブラウンとカッシュは、揃って唾を飲み込み、これから起こりうる騒動を予感し、内心震え上がるのであった。
ブラウン達の護衛5名(前回と同じ面子である)は宿のロビーで待機し、クリス以外のメンバーは男部屋で待機している状況である。
クリスは微笑みを浮かべながらも、全身から滲み出る冷たいオーラを纏いブラウンに相対していた。
「ブラウン殿下、貴方の言いたい事は良く分かりました。とりあえず双子殿下は軟禁の上、外出不可でラファエル様の安全は問題無いと。双子殿下の処罰は保留中で、結論はラファエル様の意見も聞いてから…と言う事ですわね?」
「は…はい…。」
クリスは、口元は美しい笑みを浮かべつつも視線は絶対零度という器用な微笑みを浮かべ、ブラウンとカッシュに対し優雅な威圧を全力で放っている。
ブラウンより、先日のアンバーとアザレアの事情聴取の結果をクリスにありのままを報告をした結果、上記のような状況となっているのであった。
第一王子とこの国の政治を司る宰相が共に、直訳すると『まだ元凶の処分は決まってないけど、王宮に来て一緒に結論を考えて下さい。』と、王族の仕出かした事件に巻き込まれているクリスへと言って来たのだ。クリスが呆れて憤るのも致し方ないであろう。
クリスが威圧を敢えて放っているのは、一種のパフォーマンスでもあるが、それは王族にも効果は絶大の様だ。
流石のブラウンも、ここまでクリスから威圧されるとは思っておらず、王族と言うのに叱られるのを待つ子供の様に怯えていた。
「おほほ。カッシュ宰相様、初対面で不躾な質問を致しますが…先ほどのブラウン様の報告ですと、この国の国王陛下は無能である様に聞こえましたが…そう判断されても仕方ないのは、宰相様でしたら否定出来ませんわよねぇ?」
ブラウンの補佐として付いてきたカッシュ宰相は突如話を振られ一瞬挙動不審になったが、すぐに落ち着いた風を装い返事をする。
「…そうですな。取り調べの際、私はシアン王妃と共に政務に励んでいた為、状況を全て把握しているわけではありませぬが…。クリスティーナ様にはヴァーミリオン陛下の実情をお話ししますと…」
「あぁ、別にこの国や陛下の実情などどうでも良いのです。私達には正直関係の無いお話しですから。長々と貴方達の結論を先延ばしにした言い訳を聴きたい訳ではありませんの。ご理解頂けます?」
「う…はい。」
「ほほほ。私、王家の方が【王族の責務】とやらを果たしてくれると思っていたのですが、どうやら期待し過ぎたみたいですわね。…ブラウン殿下やカッシュ宰相の立場もわかりますのよ?この国をまとめ上げる陛下が結論を出さないのだからどうしようもないのでしょう?」
「…まぁ…その…はい。仰る通りです…。」
「まぁ、私からしたら、貴方達から双子殿下の処罰等を提案をして陛下に責任を持って貰えば良いだけだと思うのですが、お国の事情もお有りでしょう。」
カッシュも完全に、クリスの威圧に飲み込まれてしまっていた。
「さて、では今後の相談をしましょう。今はどうせ結論が出ないので、建設的な質問をさせて下さいな?」
「重ねがさね、申し訳ない…。」
クリスは一息ため息をわざとらしく吐き、その様子を見ていたブラウンとカッシュが警戒心をあらわに、クリスを上目遣いで見る。
「はぁ…。では、ブラウン殿下?貴方の思うがままに答えて頂けますか?」
「…はい。」
「今回の事件の元凶はどこにあるとお考えで?」
「…ヴァーミリオン陛下の、説明不足から起きた、双子の暴走かと考えております。」
「あらあら。この国の国王が説明責任を果たさなかったばかりに起きてしまった悲しい事件と言う事ですわね?」
「…はい。」
そこで、クリスはニッコリと微笑み、カッシュへと視線を移す。
「では…カッシュ宰相様に問います。この国の国王は、頼りになりますか?」
「…」
「沈黙は肯定と捉えますわよ?」
「…魔力の高さでは、国内トップクラスの為、国の象徴として頑張って頂いています。」
「はい。カッシュ宰相様の言いたいことは理解出来ましたわ。」
ブラウンもカッシュも、非常にまずい空気が流れているのは理解出来ていたが、その空気を変えるだけの話題転換が出来ないでいた。
そもそもの第三者にここまで言われる筋合いは無いと思いながらも、ここまで言わせてしまっているという自覚もあり、またクリスの持つ圧倒的なオーラの前に2人は従わざるを得ない様な感覚になってしまっていた。
「さて、カッシュ宰相様。次代の国王は誰を推薦なさいますか?カッシュ宰相様の意見を聞きたいですわ。」
「え…いえ。まだ決まっていない事を軽々しく口には出せないですな…。」
雲行きの怪しい話題になって来て、なんとか取り繕うカッシュだが、もちろんクリスには通用するはずも無く、一刀両断されてしまう。
「忌憚ない感覚で回答して下さいな。ずっと政治の出来ない国王の補佐をされて来たカッシュ様が、国王になって欲しい方を上げて欲しいだけですわ。今は私たちしかおりません。口外するつもりも無いですわ。」
「いえ…しかしですね…。」
「あらあら…立太子出来るような優秀な王子や王女がいらっしゃらないとでも?それとも、宰相閣下ともあろう方が、何も考えていらっしゃらないのですか?それは国の由々しき事態ではありません事?」
カッシュは、胃がキリキリと痛むのを感じていたが、ここで答えなければ次にどの様な口撃を喰らうか恐れおののき、また少しでも言い返そうなら自分達の上をいく口上でやり込められてしまうのを理解した為、絶対に口外はしないで欲しいのと、宰相の立場としての意見で決定事項では無いと念押しの上、この方が国王であれば国もまとめやすいという人物の名前を挙げた。またブラウンもそれに追随するかの様に肯定を返した事により、クリスは満足げに頷いたのであった。
「…そうなんですのね。ブラウン殿下とカッシュ宰相様の貴重なご意見、ありがとうございます。」
そう言ってクリスは扇子を広げ、口元を隠しながら楽しそうにクスクスと笑った。
「ねぇ、後はラファエル様や、他の王子様と王女様達も交えてお話ししましょう?どうせまだ、情報は隠匿してらっしゃるのでしょう?私、ヴァーミリオン陛下に今後ラファエル様をお預かりする事を、直接お願いしなければなりませんし…ねぇ?それに加えて、この国の魔導研究機関にもしばらくお世話になりとうございます故、そのご挨拶も含めて…宜しいですわよね?」
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