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魔導国家ヴェリス編
63話 スカーレットの爪痕は何か
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魔道国家ヴェリスの王宮にて、第一王子ブラウンは第三王子アンバーと、第二王女アザレアの起こした事件の後始末をする為に、まずは両名を自室へ待機させた。
両名の部屋の前には厳重に封印魔法が施されており、内側からは物理的な破壊をしない限り開けることは出来ないようにされている。
所謂軟禁状態である。アンバーとアザレアの両名は、来るべき時が来たかと、逆に落ち着いた雰囲気を持ってその時を待っていた。
ブラウンは事のあらましをヴァーミリオン国王とシアン王妃には既に報告済みであり、現在はブラウンと宰相のカッシュを含めた4人で秘密裏に会議をしている状況である。
全員が事の重大性を理解しており、またアンバーとアザレアの処遇も決めかねていた。
「…以上が、クリスティーナ殿より伺った内容であります。戦闘力を皆無にする為の、魔力封印のアンクレットの魔力遷移を当国魔導研究機関にて解析したところ、アンバーがラファエルに使用した形跡が見つかりました。丁度ラファエルが失踪した日と合致しています。また封印を解除をしたのは、恐らくクリスティーナ一行の誰かだと思われます。この封印を解除する事が出来るなんて信じられませんでしたが、綺麗に解除魔法がかけられていたのも確認が取れています。」
ブラウンが、クリスとラファエルの証言を照らし合わせて、物的証拠も提示をしたところ、ヴァーミリオン国王は盛大にため息をつきながら、重々しく発言をした。
「して、この事を知っておるのは、誰か?」
「クリスティーナ一行と、私、そして私の護衛に同行していた者5名となります。」
「護衛達には黙っているよう、きちんと命令をしておるか?」
「箝口令を出しています。護衛達も、王宮のスキャンダルに巻き込まれてしまい、顔色を悪くしておりました。」
「…英雄がこの事を、口外する可能性は?」
「今のところは。クリスティーナ殿の息子、アクセル殿とラファエルが同年にて、非常に親しい友人となっております故、ラファエルに余計な視線や負担がいかぬよう、取り計らって頂いている状況です。」
そこで、王妃のシアンが強い口調で発言をし、場の空気にさらに緊張感を与えた。
「そもそも、なぜアンバーとアザレアはこの様な事をしたのでしょうか!?スウェントルの英雄に弱みを握られ、彼女達のさじ加減で王宮が傾く様な事になっているのですよ!?情けない!ラファエルが無事だったから良かったものの、本当に死んでいた場合、王家や国家全体は勿論、ラファエルの母親の故郷である森林国家フェアリアとの外交などにどの様な影響が出るかも考えていない浅慮な行動。王族としての責任や義務、政治的背景も含めて一切理解していない行動に、私は怒りを抑えきれません!」
「母上、お気持ちはわかりますが…ここは落ち着いてお話を致しましょう。」
「はぁ…そうね。可愛い息子と娘が共謀して、半分とはいえ血の繋がった弟を害そうとした事に…育て方や教育を間違えたと思うと、冷静になれなくて…。ラファエルになんて詫びたら良いのかしら…。それは王宮に戻りたくも無いわよね…。」
普段は気丈かつ聡明なシアン王妃だが、自分の子供がしでかした事実に打ちのめされ、怒ったと思った矢先に直ぐに落ち込んだりと、精神が不安定になっている様子である。
そこで、静かに話を聞いていたカッシュ宰相が、小さく挙手をし、発言の許可を求めヴァーミリオンが頷く。
「まずは、アンバー殿下とアザレア殿下の犯行の動機を聞かない事には何も出来ますまい。ここに1名づつ呼び出し、話を聞いてから処遇をどうするべきなのか考えませぬか?」
カッシュ宰相の最もな意見に対して、ヴァーミリオンも深く頷く。
「そうだな。ただ、まだ他の王子や王女には黙っていてくれ。いずれ開示はせねばならぬが、今はまだその時では無い。」
****
王宮で着々と話が進んでいる間、クリスとモニカは魔導国家ヴェリスの王立魔導図書館に2人で来ていた。
宿には男3人を残し、万が一王宮からの使いが来た時の対処をポールに任せている。
「魔導図書館というだけあって、魔法に関する本が沢山ございますわね。」
「そうですね。ところで、どの様な本をお探しになられるのですか?」
「私はここで魔法と魔道具について、立ち読みをしております。モニカさんにお願いしたいのは、この国の歴史についてと、王族の遍歴が分かるような資料があれば、そこの机に置いておいてくださいな。」
「かしこまりました。」
モニカはクリスに言われるがまま、クリスの求める書籍を探しに行った。
「興味深い本が沢山ありますが…術式に関する本はどれも古いですわね…。ただ、魔道具作成については、独自の進化をしていますわね。屑魔石を有効活用する魔法式の発見と、鉱山都市マルカとの共同での魔道具生産が順調であると…。市民の生活に密着した道具の開発は褒められる所ですわ。」
すごい勢いで本を読み、重要なポイントを瞬時に見つけ出すその姿は、側から見るとただ書籍をパラパラとめくっている様にしか見えないが、内容をしっかりと理解しているのがクリスのすごい所である。
「クリス様、この国の歴史と王家の遍歴について、ぴったりな本を見つけましたので、こちらに置いておきます。」
「モニカさん、ありがとうございます。後は私が見ますので、モニカさんは好きな本でも読んでいて下さいな。」
「かしこまりました。また何かご用があればお呼びつけ下さい。」
クリスはモニカの準備をした書籍に目を通し、ゆっくりとため息を吐いた。
「魔力至上主義の弊害…ですか…。」
これまでの、魔導国家ヴェリスの歴史を垣間見た後、小さく呟いた。
「【スカーレット=エイルーク】。この女、無茶苦茶ですわね…。力の持ったお馬鹿は私、嫌いですわ…。」
何が書かれていたのか、クリスは、魔導国家ヴェリスの始祖かつ同じ世界出身で転移者でもあるスカーレットに対し、嫌悪感を示していた。
両名の部屋の前には厳重に封印魔法が施されており、内側からは物理的な破壊をしない限り開けることは出来ないようにされている。
所謂軟禁状態である。アンバーとアザレアの両名は、来るべき時が来たかと、逆に落ち着いた雰囲気を持ってその時を待っていた。
ブラウンは事のあらましをヴァーミリオン国王とシアン王妃には既に報告済みであり、現在はブラウンと宰相のカッシュを含めた4人で秘密裏に会議をしている状況である。
全員が事の重大性を理解しており、またアンバーとアザレアの処遇も決めかねていた。
「…以上が、クリスティーナ殿より伺った内容であります。戦闘力を皆無にする為の、魔力封印のアンクレットの魔力遷移を当国魔導研究機関にて解析したところ、アンバーがラファエルに使用した形跡が見つかりました。丁度ラファエルが失踪した日と合致しています。また封印を解除をしたのは、恐らくクリスティーナ一行の誰かだと思われます。この封印を解除する事が出来るなんて信じられませんでしたが、綺麗に解除魔法がかけられていたのも確認が取れています。」
ブラウンが、クリスとラファエルの証言を照らし合わせて、物的証拠も提示をしたところ、ヴァーミリオン国王は盛大にため息をつきながら、重々しく発言をした。
「して、この事を知っておるのは、誰か?」
「クリスティーナ一行と、私、そして私の護衛に同行していた者5名となります。」
「護衛達には黙っているよう、きちんと命令をしておるか?」
「箝口令を出しています。護衛達も、王宮のスキャンダルに巻き込まれてしまい、顔色を悪くしておりました。」
「…英雄がこの事を、口外する可能性は?」
「今のところは。クリスティーナ殿の息子、アクセル殿とラファエルが同年にて、非常に親しい友人となっております故、ラファエルに余計な視線や負担がいかぬよう、取り計らって頂いている状況です。」
そこで、王妃のシアンが強い口調で発言をし、場の空気にさらに緊張感を与えた。
「そもそも、なぜアンバーとアザレアはこの様な事をしたのでしょうか!?スウェントルの英雄に弱みを握られ、彼女達のさじ加減で王宮が傾く様な事になっているのですよ!?情けない!ラファエルが無事だったから良かったものの、本当に死んでいた場合、王家や国家全体は勿論、ラファエルの母親の故郷である森林国家フェアリアとの外交などにどの様な影響が出るかも考えていない浅慮な行動。王族としての責任や義務、政治的背景も含めて一切理解していない行動に、私は怒りを抑えきれません!」
「母上、お気持ちはわかりますが…ここは落ち着いてお話を致しましょう。」
「はぁ…そうね。可愛い息子と娘が共謀して、半分とはいえ血の繋がった弟を害そうとした事に…育て方や教育を間違えたと思うと、冷静になれなくて…。ラファエルになんて詫びたら良いのかしら…。それは王宮に戻りたくも無いわよね…。」
普段は気丈かつ聡明なシアン王妃だが、自分の子供がしでかした事実に打ちのめされ、怒ったと思った矢先に直ぐに落ち込んだりと、精神が不安定になっている様子である。
そこで、静かに話を聞いていたカッシュ宰相が、小さく挙手をし、発言の許可を求めヴァーミリオンが頷く。
「まずは、アンバー殿下とアザレア殿下の犯行の動機を聞かない事には何も出来ますまい。ここに1名づつ呼び出し、話を聞いてから処遇をどうするべきなのか考えませぬか?」
カッシュ宰相の最もな意見に対して、ヴァーミリオンも深く頷く。
「そうだな。ただ、まだ他の王子や王女には黙っていてくれ。いずれ開示はせねばならぬが、今はまだその時では無い。」
****
王宮で着々と話が進んでいる間、クリスとモニカは魔導国家ヴェリスの王立魔導図書館に2人で来ていた。
宿には男3人を残し、万が一王宮からの使いが来た時の対処をポールに任せている。
「魔導図書館というだけあって、魔法に関する本が沢山ございますわね。」
「そうですね。ところで、どの様な本をお探しになられるのですか?」
「私はここで魔法と魔道具について、立ち読みをしております。モニカさんにお願いしたいのは、この国の歴史についてと、王族の遍歴が分かるような資料があれば、そこの机に置いておいてくださいな。」
「かしこまりました。」
モニカはクリスに言われるがまま、クリスの求める書籍を探しに行った。
「興味深い本が沢山ありますが…術式に関する本はどれも古いですわね…。ただ、魔道具作成については、独自の進化をしていますわね。屑魔石を有効活用する魔法式の発見と、鉱山都市マルカとの共同での魔道具生産が順調であると…。市民の生活に密着した道具の開発は褒められる所ですわ。」
すごい勢いで本を読み、重要なポイントを瞬時に見つけ出すその姿は、側から見るとただ書籍をパラパラとめくっている様にしか見えないが、内容をしっかりと理解しているのがクリスのすごい所である。
「クリス様、この国の歴史と王家の遍歴について、ぴったりな本を見つけましたので、こちらに置いておきます。」
「モニカさん、ありがとうございます。後は私が見ますので、モニカさんは好きな本でも読んでいて下さいな。」
「かしこまりました。また何かご用があればお呼びつけ下さい。」
クリスはモニカの準備をした書籍に目を通し、ゆっくりとため息を吐いた。
「魔力至上主義の弊害…ですか…。」
これまでの、魔導国家ヴェリスの歴史を垣間見た後、小さく呟いた。
「【スカーレット=エイルーク】。この女、無茶苦茶ですわね…。力の持ったお馬鹿は私、嫌いですわ…。」
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