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魔導国家ヴェリス編
62話 それって友情ですわよね?
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夕暮れにヴェリスの城下町に到着した一行は、その街並みを見て感心していた。
「あら…思った以上に発展していますわね。私の世界でも最近出来た街路灯が、所々に建っていますわ。」
仄かな光を放つ街路灯は、夜の足元を照らす為に、交差点などのポイントに所々設置されていた。
中に設置されている屑魔石で約一週間は持つ為、屑魔石の有効活用に役立っており、初級冒険者の日銭を稼ぐのに一役買っていた。
「この街路灯は、ヴァイオレット姉上…第一王女が研究支援し、開発したものです。僕も少しだけお手伝いしました。」
「へぇ、そうなんですのね。ヴァイオレット様はどの様なお方なのかしら?」
「魔法研究に力を入れている、凄腕の姉上ですよ。僕も良く研究に誘って頂けました。まぁ、魔力目的だったと思いますけどね…。」
「あらあら、まぁまぁ。ヴァイオレット王女殿下も、ラファエル様の事を嫌いだったら共同研究なんて誘いませんわよ。ブラウン様然り、ヴァイオレット様然り。不器用な方々ですこと。」
「そうなのでしょうか…?」
「きっと、そうですわよ。」
クリスは、ブラウンに色々と都合よく動いて貰うために、厳しい事を言ってはいるが、道中の態度でブラウンそのものは、信頼に足る人物であると判断していた。
実直で真面目な性格、確かに異母弟を心配する気持ちとこれからの行動の改め、今までの自身の行いを認め反省する姿勢。
道中にブラウンを虐め…もとい、指摘をすればその分だけ改善点を克服しようというその姿勢は、クリスに非常に好印象を与えていたのだ。
ただ、真面目すぎるのと、ブラウン自身が周りにどれほどの影響力があるのかを理解していないのがクリスは気になっていた。きっとブラウンがラファエルを遠巻きにしていたから、ほかの兄弟も追従したのではと踏んでいるのだ。
「…自分の影響力を判っていないのも、それは罪でしてよ…。」
「母上?今何か仰いましたか?」
「いえ、なんでもありませんわ。そうそう、私達は一旦この城下町の宿で暫くは過ごしますわ。ここの王宮で泊まるよう言われましたが、ラファエル様も落ち着かないでしょうし、明日は一日宿でゆっくりとします。また後日、ブラウン様がお迎えに来て頂けるとの事ですので、しばらくはアクセルさんもラファエル様も、ゆっくりして下さいな。まぁ、ラファエル様は宿からは出るときはフード付きの外套で身を隠さなければなりませんが。」
ブラウンは、国王に事のあらましと今後の方針を相談する為に先に王宮へと戻っている。
また、今回の事件を水面下で抑える為、アンバーとアザレアを自室に軟禁する事を決めていた。
1人づつ呼び出して事実確認に働きかけるとクリスにも伝えている。ラファエルの安全を確実なものとしてから、王宮へと呼び出してくれると言っており、王宮内のイザコザについて王族自身が動くと言うならば、クリスも別に反対する事もない為、ブラウンの裁量に任せる事にした。
クリスは、魔導国家ヴェリスの王族の事をそこまで詳しくない為、もし代表の王族が証拠隠滅に走ろうとするのであれば、力技で王族の罪を明らかにし、国そのものに制裁を加える事も考えていたのだ。
しかし、ブラウンと言う決して愚かではない王子が最初にクリスと相対したのは、エイルーク王家にとっての幸運であった。
クリスは、王宮の中でどの様なやり取りがされるのか、ゆっくりと待つ事にした。
(出した回答次第では、容赦はしませんからね…。ブラウン殿下、頑張って下さいな。)
内心で呟き、アクセルの頭を撫でて宿へと向かうクリス達。
「さて、また男女で別れて宿を取りますか。」
「はい!母上!」
元気に返事をするアクセルに対して、何故かモジモジしながらアクセルの服の裾をクイクイっと引っ張って恥ずかしそうにラファエルはアクセルに表情を伺うようにして問いかけた。
「ねぇ、アクセル君…また一緒に寝てもいい?」
「うん。いいよ!一緒に寝よ!」
…盗賊団から助けて今まで、ラファエルはずっとアクセルにべったりだ。
まるで雛鳥が初めて親鳥を見た時にインプリンティングされたかのように、アクセルにくっついている。
少しでもアクセルがラファエルの側を離れようとすると、不安な表情を隠す事が出来ない位に懐いているのだ。
アクセルもそれを喜んでいる様子で、クリスはポールにひっそりと耳打ちした。
「ポールさん?あの…アクセルさんとラファエル様は…普通の友情関係かしら?余りにもイチャイチャしているように見えまして…アクセルさんに男色の気配は無かったと思うのですが、同じベッドで寝ているみたいですし…やましい事はしてませんわよね?まぁ…最終的には、私、アクセルさんの意思を尊重しますし、例え男色であったとしても、可愛い息子に違いはないんですのよ?でも、出来れば私、アクセルさんの子供を抱きたいですわ。」
「ぶふぅ!ク、クリス様!?突然何を仰るのですか?た、確かに仲は良すぎる感じですが、子供は仲良くなると距離感が近くなりますからね。近くで見ているとわかりますが、純粋に友人同士ですよ。まぁ、あの年代は同性の友だちに異様に執着する時期ってあると思いますしね…。」
「そう言うものですか…。」
クリスは自分がアクセルの年代の頃を思い出したら、確かに妙に自分に執着して「クリスお姉様!私と手を繋いでお庭でも見に行きましょう!」などと纏わり付いてきた従姉妹の存在を思い出し、その執着も婚約と同時に消えたのを思い出して、まぁ、そう言うものか、と思うようにした。
「あ、でもポールさん、2人の幼い友情が行き過ぎてしまったが故に、夜中にベッドの中でガサゴソだけはしないよう見張っておいて下さいな。」
「何を妄想していらっしゃるんですか!絶対にありませんからご安心ください!まぁ一応注意だけはしておきますね。」
それを聞いていたモニカは、薄っすらと頬を染め、手を頬に当てながら、「アクセル様とラファエル様のベッドでガサゴソ…なんて耽美な…。」と呟いていたが、クリスには聞こえなかったようだ。
ーーーー
おまけ
宿の男部屋のやり取り
「アクセル様とラファエル様、すごい距離感近いですけど、友情ですよね?」
「んー?友情とか良く分かんないけど、ラファエル君と一緒にいると癒されるんだ。」
「ぼ、僕もアクセル君といると癒されるよ!」
「あの…ベッドの中で男同士の行き過ぎた行為は謹んで下さいね。」
「あはは!僕もラファエル君も、そんなんじゃ無いよねー?」
「え?行き過ぎた行為って何?」
「だから僕とラファエル君が、キスしたり、体を触り合って気持ちよくなったりとか。」
「あぁー。確かに違うけど、アクセル君となら抱きしめ合ったり、ほっぺにキス位なら出来るよ!でもそれ以上は流石にねー。」
「あー、ほっぺにキスは出来るね!それならポールにだって出来るよ。あ、ねぇねぇ、今日はカードゲームの罰ゲーム何にする?」
「くすぐりは無しでー!」
「じゃあ、ほっぺにチュー?」
「あはは、それ罰ゲームにならないよー。」
(…アクセル様とラファエル様、多分大丈夫だな。)
2人の無邪気な子犬がじゃれ合っている様な雰囲気に、ひとまず安心したポールであった。
「あら…思った以上に発展していますわね。私の世界でも最近出来た街路灯が、所々に建っていますわ。」
仄かな光を放つ街路灯は、夜の足元を照らす為に、交差点などのポイントに所々設置されていた。
中に設置されている屑魔石で約一週間は持つ為、屑魔石の有効活用に役立っており、初級冒険者の日銭を稼ぐのに一役買っていた。
「この街路灯は、ヴァイオレット姉上…第一王女が研究支援し、開発したものです。僕も少しだけお手伝いしました。」
「へぇ、そうなんですのね。ヴァイオレット様はどの様なお方なのかしら?」
「魔法研究に力を入れている、凄腕の姉上ですよ。僕も良く研究に誘って頂けました。まぁ、魔力目的だったと思いますけどね…。」
「あらあら、まぁまぁ。ヴァイオレット王女殿下も、ラファエル様の事を嫌いだったら共同研究なんて誘いませんわよ。ブラウン様然り、ヴァイオレット様然り。不器用な方々ですこと。」
「そうなのでしょうか…?」
「きっと、そうですわよ。」
クリスは、ブラウンに色々と都合よく動いて貰うために、厳しい事を言ってはいるが、道中の態度でブラウンそのものは、信頼に足る人物であると判断していた。
実直で真面目な性格、確かに異母弟を心配する気持ちとこれからの行動の改め、今までの自身の行いを認め反省する姿勢。
道中にブラウンを虐め…もとい、指摘をすればその分だけ改善点を克服しようというその姿勢は、クリスに非常に好印象を与えていたのだ。
ただ、真面目すぎるのと、ブラウン自身が周りにどれほどの影響力があるのかを理解していないのがクリスは気になっていた。きっとブラウンがラファエルを遠巻きにしていたから、ほかの兄弟も追従したのではと踏んでいるのだ。
「…自分の影響力を判っていないのも、それは罪でしてよ…。」
「母上?今何か仰いましたか?」
「いえ、なんでもありませんわ。そうそう、私達は一旦この城下町の宿で暫くは過ごしますわ。ここの王宮で泊まるよう言われましたが、ラファエル様も落ち着かないでしょうし、明日は一日宿でゆっくりとします。また後日、ブラウン様がお迎えに来て頂けるとの事ですので、しばらくはアクセルさんもラファエル様も、ゆっくりして下さいな。まぁ、ラファエル様は宿からは出るときはフード付きの外套で身を隠さなければなりませんが。」
ブラウンは、国王に事のあらましと今後の方針を相談する為に先に王宮へと戻っている。
また、今回の事件を水面下で抑える為、アンバーとアザレアを自室に軟禁する事を決めていた。
1人づつ呼び出して事実確認に働きかけるとクリスにも伝えている。ラファエルの安全を確実なものとしてから、王宮へと呼び出してくれると言っており、王宮内のイザコザについて王族自身が動くと言うならば、クリスも別に反対する事もない為、ブラウンの裁量に任せる事にした。
クリスは、魔導国家ヴェリスの王族の事をそこまで詳しくない為、もし代表の王族が証拠隠滅に走ろうとするのであれば、力技で王族の罪を明らかにし、国そのものに制裁を加える事も考えていたのだ。
しかし、ブラウンと言う決して愚かではない王子が最初にクリスと相対したのは、エイルーク王家にとっての幸運であった。
クリスは、王宮の中でどの様なやり取りがされるのか、ゆっくりと待つ事にした。
(出した回答次第では、容赦はしませんからね…。ブラウン殿下、頑張って下さいな。)
内心で呟き、アクセルの頭を撫でて宿へと向かうクリス達。
「さて、また男女で別れて宿を取りますか。」
「はい!母上!」
元気に返事をするアクセルに対して、何故かモジモジしながらアクセルの服の裾をクイクイっと引っ張って恥ずかしそうにラファエルはアクセルに表情を伺うようにして問いかけた。
「ねぇ、アクセル君…また一緒に寝てもいい?」
「うん。いいよ!一緒に寝よ!」
…盗賊団から助けて今まで、ラファエルはずっとアクセルにべったりだ。
まるで雛鳥が初めて親鳥を見た時にインプリンティングされたかのように、アクセルにくっついている。
少しでもアクセルがラファエルの側を離れようとすると、不安な表情を隠す事が出来ない位に懐いているのだ。
アクセルもそれを喜んでいる様子で、クリスはポールにひっそりと耳打ちした。
「ポールさん?あの…アクセルさんとラファエル様は…普通の友情関係かしら?余りにもイチャイチャしているように見えまして…アクセルさんに男色の気配は無かったと思うのですが、同じベッドで寝ているみたいですし…やましい事はしてませんわよね?まぁ…最終的には、私、アクセルさんの意思を尊重しますし、例え男色であったとしても、可愛い息子に違いはないんですのよ?でも、出来れば私、アクセルさんの子供を抱きたいですわ。」
「ぶふぅ!ク、クリス様!?突然何を仰るのですか?た、確かに仲は良すぎる感じですが、子供は仲良くなると距離感が近くなりますからね。近くで見ているとわかりますが、純粋に友人同士ですよ。まぁ、あの年代は同性の友だちに異様に執着する時期ってあると思いますしね…。」
「そう言うものですか…。」
クリスは自分がアクセルの年代の頃を思い出したら、確かに妙に自分に執着して「クリスお姉様!私と手を繋いでお庭でも見に行きましょう!」などと纏わり付いてきた従姉妹の存在を思い出し、その執着も婚約と同時に消えたのを思い出して、まぁ、そう言うものか、と思うようにした。
「あ、でもポールさん、2人の幼い友情が行き過ぎてしまったが故に、夜中にベッドの中でガサゴソだけはしないよう見張っておいて下さいな。」
「何を妄想していらっしゃるんですか!絶対にありませんからご安心ください!まぁ一応注意だけはしておきますね。」
それを聞いていたモニカは、薄っすらと頬を染め、手を頬に当てながら、「アクセル様とラファエル様のベッドでガサゴソ…なんて耽美な…。」と呟いていたが、クリスには聞こえなかったようだ。
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おまけ
宿の男部屋のやり取り
「アクセル様とラファエル様、すごい距離感近いですけど、友情ですよね?」
「んー?友情とか良く分かんないけど、ラファエル君と一緒にいると癒されるんだ。」
「ぼ、僕もアクセル君といると癒されるよ!」
「あの…ベッドの中で男同士の行き過ぎた行為は謹んで下さいね。」
「あはは!僕もラファエル君も、そんなんじゃ無いよねー?」
「え?行き過ぎた行為って何?」
「だから僕とラファエル君が、キスしたり、体を触り合って気持ちよくなったりとか。」
「あぁー。確かに違うけど、アクセル君となら抱きしめ合ったり、ほっぺにキス位なら出来るよ!でもそれ以上は流石にねー。」
「あー、ほっぺにキスは出来るね!それならポールにだって出来るよ。あ、ねぇねぇ、今日はカードゲームの罰ゲーム何にする?」
「くすぐりは無しでー!」
「じゃあ、ほっぺにチュー?」
「あはは、それ罰ゲームにならないよー。」
(…アクセル様とラファエル様、多分大丈夫だな。)
2人の無邪気な子犬がじゃれ合っている様な雰囲気に、ひとまず安心したポールであった。
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