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魔導国家ヴェリス編
49話 盗賊達はビリビリしてグルグル巻きですわよ
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魔導国家ヴェリスは、スウェントル王国の王都から、馬車で北西に4日程走らせた所にある国だ。
王都から旅立ち2日が過ぎたが、途中の宿場町に泊まりつつ、クリス達は魔導国家ヴェリスへと向けて順調に旅をしていた。
「やはり、王から頂いたこの馬車は、乗り心地が良いですわね。乗り合い馬車だと、どうしても窮屈ですからね。」
「はい!ロゼルナ家の馬車にも勝るとも劣らない乗り心地です。快適ですね。」
「クリス様、アクセル様、そろそろお昼の時間ですが、いかがいたしますか?」
「あら、もうそんな時間なのね。モニカさん、休憩出来そうな場所で止めるようにポールさんへお伝え下さいまし。」
現在、スウェントル王国からヴェリスへと向かう森林街道を通っており、馬車は通れるよう舗装はされているが、薄暗く、また魔物や盗賊も頻繁に発生する為に、通常であれば森林街道を抜けた先にある宿場町まで無理をしてでも走り抜けるのが定石だが、そのような常識など気にしないのがクリスティーナ様御一行である。
「クリス様ー!街道を少しそれた所に、少し広まった休憩出来そうな川辺が有ります。ただ、その周辺に盗賊と思われる敵性反応が二十人程感じますが、どうしますか?」
「ポールさん、ありがとうございます。気にしなくて宜しいですわ。休憩いたしましょう。お馬さんも疲れているでしょうしね。」
盗賊団の拠点近くと分かっていながら、休憩を優先するのがクリスティーナクオリティである。
「クリス様、どうせ襲って来るのがわかりきっているのであれば、先に潰してからゆっくり休憩しませんか?」
「あら、モニカさん。良い意見ですね。襲われたら撃退しましょう、としか考えていませんでしたわ。」
モニカの物騒な提案に乗り気で返事をするクリス。アクセルは何故か隣でウンウンと頷きながら目をキラキラ輝かせていた。
「恐らくほかに敵性反応も無いですし、広場に馬車を待機させても問題はないと思います。どうしましょう?俺とモニカでちゃちゃっと潰して来ましょうか?」
「いえ、最近じっとして運動不足なので、私とアクセルさんが、気分転換に親子で盗賊退治をしますわね。アクセルさん、そうしたいのでしょう?」
「はい!さすが母上!」
「モニカさんとポールさんは、念のため馬車を見張っててくださいな。」
「は…はい。分かりました。」
ポールもモニカも、自分の主人達が最強すぎて、怪我をするところも想像できない為に、最強親子がやりたいと言うのであれば、それを無理して止める必要性を感じなかった。
「あまり無茶はしないで下さいね。」
「そうですわね。盗賊達を殺したりは致しませんから、安心してくださいましね。」
「僕も手加減するから大丈夫だよ。」
ポールの心配して掛けたセリフを、右斜め上に解釈して返事をする親子に、ポールとモニカは苦笑いを浮かべるしか出来なかった。
森の川辺の広間に馬車を止め、馬を繋ぎ休憩させると、クリスとアクセルはそのまま結界を張って2人で宙に浮かんだ。クリスがアクセルの分もまとめて術式展開をしているようである。
「母上、僕も空中浮遊術使えますよ?苦手だけど。」
「えぇ、知っていますわ。でも、速度を出して飛ぶのはまだ苦手でしょう?」
「…はい。練習します~。」
「うふふ、繊細な術式は苦手ですものね。では、ポールさん、モニカさん。馬車をよろしくお願いしますわね。」
そう言って、クリスとアクセルは凄い勢いで敵性反応のある方向へと飛んで行った。
モニカとポールは、クリス親子を見送った後に、自分達の主人の常識外れな行動に今更ながらたしなめるべきだったのか、これで良かったのかと悩んでいた。
「なぁ、モニカ。クリス様達に行かせて良かったのかな?」
「うーん。従者としては、良くないんだけど…でも親子2人で盗賊退治したかったんでしょう?無理に止めることは出来ないわよ。」
「だよなぁ~。って、話している間に…。うわぁ…。あっという間に敵性反応が無くなったんだけど、何したんだあの人達。」
「乾いた笑いしか出ないわね…。さすがだわクリス様。」
ポールが索敵しながら様子を伺っていたら、あっという間に敵性反応が無くなった事に、驚きよりも呆れの方が強く出てしまったのは、致し方ない事であろう。
さて、盗賊団で何が起きたかを少し時を戻してみて見ることとする。
クリスとアクセルは、結界を張りながら凄い勢いで盗賊団のアジトへと飛んで行った。
盗賊達は洞窟を拠点としており、洞窟の入り口周りに薄汚い男達がたむろしていた。
そこに、人外に美しい若い女性と少年が空を飛びながらやって来た光景は、盗賊達にとっても非現実的な光景で、精霊か女神が降臨したのかと勘違いしてしまったのであった。
因みに飛ぶ姿勢は直立姿勢で、腕を胸の辺りでかざしながら、高速水平移動をするその姿は、妙に威圧感があった。
「ひっ、な、何者だ!?ですか!?」
「へ?なんで空飛んでやがりますか?なんでキラキラしてやがります?」
「ちょ、ちょ!近づくんじゃねぇ!です!」
クリスとアクセルの荘厳かつ高貴なオーラに当てられて、普段、丁寧な言葉を敢えて使わない様にしている盗賊達も、思わず語尾がですます口調になってしまった様子だ。
普段は下卑た笑いを浮かべながら、街道を行く小隊などを襲い、男は殺して女は犯すのを生業としている盗賊達も、空を飛びながら結界でキラキラしたエフェクトを撒き散らし、凄い勢いで飛んでくる美女と美少年に謎の恐怖を覚えてしまったのであった。
そしてそのまま、アクセルは無邪気で綺麗な笑顔を浮かべつつ、水魔法で辺りを濡らし、続けて優雅な笑みを浮かべたクリスが電撃魔法を使うと、表にいた盗賊十人程を一網打尽に感電させて行動不能にせしめたのであった。
見事な親子の連携プレーである。
「「「ぎゃぁぁぁぁ!!」」」
と、感電した際に大声で叫んだため、中にいた盗賊達全員が表に出てきてくれたのは、クリス達にとって手間が省けた次第だ。
「どうした!」
「何が起きた!?てか、おま…あなた、様は誰でやがりますか!?」
「ひっ!女神様のお怒りなのか!?」
自分達の悪行が女神の怒りに触れたのかと勘違いする者まで現れる始末。
同様に、親子の連携プレーで感電させ行動不能にすると、クリスはどこからかロープを取り出して、術式で器用に盗賊団全員を縛り上げたのであった。
「母上?この妙なロープはどこから?」
「あぁ、これは以前、ダンジョンの宝箱から手に入れたロープですわよ。」
正確に言うと、ただのロープにクリスがちょっとした術式を加えて、伸縮自在にした物である。
ひと塊りになった盗賊団達を横目に、盗賊団のアジトである洞窟へと入って行くクリス親子。
そこで見たものは、今まで旅行く者たちから奪ってきた金目の物や商品等であった。
「あらあら、まぁまぁ。こうやって見ると、さすがに不愉快ですわね。全部没収して、ヴェリスの然るべき施設に提出致しましょう。」
「ですね。ついでに盗賊達も捕縛して貰いましょう。このままだと、害悪にしかならないです。」
クリス親子は憤りながらも、洞窟の更に奥に進むと、そこには牢屋があり、人影が倒れているのが見えてきた。
「母上、厄介事の匂いがしませんか?」
「えぇ、奇遇ですわね。私もそう思います。ですが、さすがに見過ごす事は出来ませんわね…。」
そこには、褐色肌で金髪の耳の尖っている、魔族とエルフの特徴を持った、明らかに高貴な身分と思われる服装をしているアクセルと同年代の少年が、猿轡を噛まされ腕と足を縛られて横たわっていたのであった。
気を失っている様子で、目を閉じ苦しそうに身じろぎをしている。
「あらあら、まぁまぁ。その上着に縫われている紋章…。魔導国家ヴェリスの王家、エイルークの家紋ですわね…。大当たりですわ。」
「母上…。」
珍しく、クリスとアクセルが遠い目をして、少し現実逃避をした瞬間だった。
王都から旅立ち2日が過ぎたが、途中の宿場町に泊まりつつ、クリス達は魔導国家ヴェリスへと向けて順調に旅をしていた。
「やはり、王から頂いたこの馬車は、乗り心地が良いですわね。乗り合い馬車だと、どうしても窮屈ですからね。」
「はい!ロゼルナ家の馬車にも勝るとも劣らない乗り心地です。快適ですね。」
「クリス様、アクセル様、そろそろお昼の時間ですが、いかがいたしますか?」
「あら、もうそんな時間なのね。モニカさん、休憩出来そうな場所で止めるようにポールさんへお伝え下さいまし。」
現在、スウェントル王国からヴェリスへと向かう森林街道を通っており、馬車は通れるよう舗装はされているが、薄暗く、また魔物や盗賊も頻繁に発生する為に、通常であれば森林街道を抜けた先にある宿場町まで無理をしてでも走り抜けるのが定石だが、そのような常識など気にしないのがクリスティーナ様御一行である。
「クリス様ー!街道を少しそれた所に、少し広まった休憩出来そうな川辺が有ります。ただ、その周辺に盗賊と思われる敵性反応が二十人程感じますが、どうしますか?」
「ポールさん、ありがとうございます。気にしなくて宜しいですわ。休憩いたしましょう。お馬さんも疲れているでしょうしね。」
盗賊団の拠点近くと分かっていながら、休憩を優先するのがクリスティーナクオリティである。
「クリス様、どうせ襲って来るのがわかりきっているのであれば、先に潰してからゆっくり休憩しませんか?」
「あら、モニカさん。良い意見ですね。襲われたら撃退しましょう、としか考えていませんでしたわ。」
モニカの物騒な提案に乗り気で返事をするクリス。アクセルは何故か隣でウンウンと頷きながら目をキラキラ輝かせていた。
「恐らくほかに敵性反応も無いですし、広場に馬車を待機させても問題はないと思います。どうしましょう?俺とモニカでちゃちゃっと潰して来ましょうか?」
「いえ、最近じっとして運動不足なので、私とアクセルさんが、気分転換に親子で盗賊退治をしますわね。アクセルさん、そうしたいのでしょう?」
「はい!さすが母上!」
「モニカさんとポールさんは、念のため馬車を見張っててくださいな。」
「は…はい。分かりました。」
ポールもモニカも、自分の主人達が最強すぎて、怪我をするところも想像できない為に、最強親子がやりたいと言うのであれば、それを無理して止める必要性を感じなかった。
「あまり無茶はしないで下さいね。」
「そうですわね。盗賊達を殺したりは致しませんから、安心してくださいましね。」
「僕も手加減するから大丈夫だよ。」
ポールの心配して掛けたセリフを、右斜め上に解釈して返事をする親子に、ポールとモニカは苦笑いを浮かべるしか出来なかった。
森の川辺の広間に馬車を止め、馬を繋ぎ休憩させると、クリスとアクセルはそのまま結界を張って2人で宙に浮かんだ。クリスがアクセルの分もまとめて術式展開をしているようである。
「母上、僕も空中浮遊術使えますよ?苦手だけど。」
「えぇ、知っていますわ。でも、速度を出して飛ぶのはまだ苦手でしょう?」
「…はい。練習します~。」
「うふふ、繊細な術式は苦手ですものね。では、ポールさん、モニカさん。馬車をよろしくお願いしますわね。」
そう言って、クリスとアクセルは凄い勢いで敵性反応のある方向へと飛んで行った。
モニカとポールは、クリス親子を見送った後に、自分達の主人の常識外れな行動に今更ながらたしなめるべきだったのか、これで良かったのかと悩んでいた。
「なぁ、モニカ。クリス様達に行かせて良かったのかな?」
「うーん。従者としては、良くないんだけど…でも親子2人で盗賊退治したかったんでしょう?無理に止めることは出来ないわよ。」
「だよなぁ~。って、話している間に…。うわぁ…。あっという間に敵性反応が無くなったんだけど、何したんだあの人達。」
「乾いた笑いしか出ないわね…。さすがだわクリス様。」
ポールが索敵しながら様子を伺っていたら、あっという間に敵性反応が無くなった事に、驚きよりも呆れの方が強く出てしまったのは、致し方ない事であろう。
さて、盗賊団で何が起きたかを少し時を戻してみて見ることとする。
クリスとアクセルは、結界を張りながら凄い勢いで盗賊団のアジトへと飛んで行った。
盗賊達は洞窟を拠点としており、洞窟の入り口周りに薄汚い男達がたむろしていた。
そこに、人外に美しい若い女性と少年が空を飛びながらやって来た光景は、盗賊達にとっても非現実的な光景で、精霊か女神が降臨したのかと勘違いしてしまったのであった。
因みに飛ぶ姿勢は直立姿勢で、腕を胸の辺りでかざしながら、高速水平移動をするその姿は、妙に威圧感があった。
「ひっ、な、何者だ!?ですか!?」
「へ?なんで空飛んでやがりますか?なんでキラキラしてやがります?」
「ちょ、ちょ!近づくんじゃねぇ!です!」
クリスとアクセルの荘厳かつ高貴なオーラに当てられて、普段、丁寧な言葉を敢えて使わない様にしている盗賊達も、思わず語尾がですます口調になってしまった様子だ。
普段は下卑た笑いを浮かべながら、街道を行く小隊などを襲い、男は殺して女は犯すのを生業としている盗賊達も、空を飛びながら結界でキラキラしたエフェクトを撒き散らし、凄い勢いで飛んでくる美女と美少年に謎の恐怖を覚えてしまったのであった。
そしてそのまま、アクセルは無邪気で綺麗な笑顔を浮かべつつ、水魔法で辺りを濡らし、続けて優雅な笑みを浮かべたクリスが電撃魔法を使うと、表にいた盗賊十人程を一網打尽に感電させて行動不能にせしめたのであった。
見事な親子の連携プレーである。
「「「ぎゃぁぁぁぁ!!」」」
と、感電した際に大声で叫んだため、中にいた盗賊達全員が表に出てきてくれたのは、クリス達にとって手間が省けた次第だ。
「どうした!」
「何が起きた!?てか、おま…あなた、様は誰でやがりますか!?」
「ひっ!女神様のお怒りなのか!?」
自分達の悪行が女神の怒りに触れたのかと勘違いする者まで現れる始末。
同様に、親子の連携プレーで感電させ行動不能にすると、クリスはどこからかロープを取り出して、術式で器用に盗賊団全員を縛り上げたのであった。
「母上?この妙なロープはどこから?」
「あぁ、これは以前、ダンジョンの宝箱から手に入れたロープですわよ。」
正確に言うと、ただのロープにクリスがちょっとした術式を加えて、伸縮自在にした物である。
ひと塊りになった盗賊団達を横目に、盗賊団のアジトである洞窟へと入って行くクリス親子。
そこで見たものは、今まで旅行く者たちから奪ってきた金目の物や商品等であった。
「あらあら、まぁまぁ。こうやって見ると、さすがに不愉快ですわね。全部没収して、ヴェリスの然るべき施設に提出致しましょう。」
「ですね。ついでに盗賊達も捕縛して貰いましょう。このままだと、害悪にしかならないです。」
クリス親子は憤りながらも、洞窟の更に奥に進むと、そこには牢屋があり、人影が倒れているのが見えてきた。
「母上、厄介事の匂いがしませんか?」
「えぇ、奇遇ですわね。私もそう思います。ですが、さすがに見過ごす事は出来ませんわね…。」
そこには、褐色肌で金髪の耳の尖っている、魔族とエルフの特徴を持った、明らかに高貴な身分と思われる服装をしているアクセルと同年代の少年が、猿轡を噛まされ腕と足を縛られて横たわっていたのであった。
気を失っている様子で、目を閉じ苦しそうに身じろぎをしている。
「あらあら、まぁまぁ。その上着に縫われている紋章…。魔導国家ヴェリスの王家、エイルークの家紋ですわね…。大当たりですわ。」
「母上…。」
珍しく、クリスとアクセルが遠い目をして、少し現実逃避をした瞬間だった。
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