宰相夫人の異世界転移〜息子と一緒に冒険しますわ〜

森樹

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スウェントル王国〜番外編〜

44話 変人研究者とクリス

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  時は遡り、クリス達がゴーレムの素材を王城へ納め、魔物・迷宮・魔法の研究者達が一堂に集まって各々が研究の成果を出そうと躍起になっていた時の話である。

  スウェントル王国の魔物・迷宮研究の第一人者である人族のジーナ=ケネックは、クリスの話を聴きたくてウズウズしていたのだった。

  「この前、【木漏れ日と星屑のささやき】のダンジョンに行って、わざわざ最下層まで行ったって言うのに…。まさか隠し扉の封印が解けないだなんて!謁見の時に一目見たけど、あの妖艶華麗なクリスティーナ様は何者なの?この国一番のSランク冒険者の魔法使いまで連れて行ったって言うのに…。いつになったらあのお方とお話をさせて頂けるのよ!」

  30歳前後に見える気の強そうな顔をした彼女は、魔物とダンジョン研究に没頭し、伯爵家三女という高位貴族にも関わらず独身でいる変わり者だ。
  実家からも10代の頃は婚約者を当てがおうと努力していたのだが、なまじ研究者としての実力が発揮され、その魔力の高さも相まって若くして研究者のトップとなった実力者であり、伯爵家としても『国の為になるなら独身でもそこまで見栄えは悪くないか…』と諦めの境地に達した次第だ。

  研究棟の講堂には、提供された3体のゴーレム素材が所狭しと横になっている。
  その周囲では、ゴーレムの解析などをしている研究者が20人近くいるが、ただの塊になってしまっている素材から、ゴーレムの生態を読み取るのは困難を極めていた。

  「あぁ…クリスティーナ様…。早くお話がしたいわ。美しくて聡明でエレガント極まるあのお方。更に、私の知らない魔法技術を持たれているだなんて、なんて理想の女性なのかしら!」

  一目見ただけのクリスに傾倒しきっているジーナは、ゴーレムの塊の側で今にも鼻血を出しそうな勢いではしゃいでいる。
  周りの研究者達がこのジーナの様子を見ても何も動じないのは、これが平常運転である事を暗に物語っていた。
  そんな時、迷宮研究の相棒である魔族のダミアン=ブリッツがジーナにクリスの来訪を伝えた。

  「あー、ジーナさん?今、憧れのクリスティーナさんがすぐそこまで来てるっすよ。入れてもいいっすか?」
  「は?今?」
  「はい。すぐ、そこ、扉の向こうにクリスティーナさん。」

  ジーナはツカツカとダミアンに近寄り、襟首を捻り上げた。

  「ねぇ、あんた。今日のクリスティーナ様の来訪、いつ知った?」
  「んー、3日程前っすかね?」
  「あんた、私に報告した?それ?」
  「したっすよー。そん時、ジーナさん髪の毛振り回しながら『ゴーレムの繋ぎ目は一体どーなっとんじゃー!』って叫んでましたけど。」

  ジーナは目線を上にし、なにかを思い出す素振りをした後、ダミアンの襟首から手を離した。

  「…ごめん。聴いたかも…。私のバカ…。あぁ~どーしよ、今日に限ってノーメイクだわ…。」
  「あははー。大丈夫っすよ。ノーメイクのジーナさんも、メイクでバッチリなジーナさんも対して変わんねっす。地味なものは地味っすから~。」
  「ひっど!あんたね「ほら~、クリスティーナさん待たせてるっすよ。」…あぁん!クリスティーナ様!お待たせしました!」

  そう言って勢いよく扉を開けたら、クリスとモニカが目を丸くして、ジーナを見つめていた。
  大層何かに驚いた顔をしている。

  「えっと…?初めまして。迷宮と魔物研究の責任者のジーナです。この度はクリス様に足をお運び頂き、ありがとうございます。」
  「…あらあら、まぁまぁ。頭をお上げくださいな。私はただの冒険者ですわ。こちらこそ、貴方達の研究の力になれるよう、お手伝い致しますわね。」
  「よろしくお願いします!」
  「あの…あたしは、クリス様の従者であるモニカです。大した事は出来ませんが、力仕事ならお申し付け下さい。」
  「こんな可憐な女性に力仕事など…うちの研究員がしますので、どうぞお気遣い無く。ご丁寧にありがとうございます。」

  クリスとモニカの挨拶に対し、丁寧な応対をするジーナ。しかし、クリスとモニカは何故かそわそわしている様子だ。

  「あの…どうかなさいましたか?」
  「いえ、ジーナ様が問題ないのであれば。私達は別に良いのですが…。」
  「?」

  どうにもはっきりとしない態度のクリスに訝しげな視線で首を傾げるジーナ。

  「私が気にしすぎでしたら、申し訳ありませんわ。ジーナ様の白衣の下、下着のみなのは、そういう主義でいらっしゃるのかしら?」
  「!!?」

  ジーナの格好は、無地のベージュ色のブラジャーとパンティーを装着し、その上に白衣という、痴女ルックだがなんともだらしのない服装であった。
  慌てて顔を赤くして、白衣の前を閉じるジーナ。

  「いえ、あの、これは連日ここに寝泊まりしていて周りは見知った研究員達ですし別に見られてもお互いなんの興味も無いのが分かっておりましてだから楽な格好で良いや~なんて思ったのが運のつきと言いますかなんと言いますか普段からこうだという訳では無くてですね…」
  「あー、クリスティーナさん、この人こういう人なんで、別に気にしなくても良いっすよー。」

  慌てて弁明をしようとしたジーナだが、全く弁明になっていなかった。
  ダミアンの一言が全てを物語っており、クリスも(研究者とは、変人が集まっているものですわね)と、世の研究者が聴けば全力で否定するような事を思いつつ、ジーナの変態じみた格好も、ダミアンの気だるい喋り方も笑顔で流すことにした。

  「うふふ。楽しい方々ですわね。さて、ジーナ様、研究するのに楽な格好をするのは悪い事ではありませんわ。仕事熱心で格好良いではありませんか。」
  「はぁぁ、クリスティーナ様!ありがたきお言葉!」

  クリスの場を取り持つ為の、心のこもっていない言葉に心から感激するジーナ。

  「あ、クリスティーナ様!お席を準備致しますので、しばらくお待ちください!色々とお話を聞かせていただきたく思います!」
  「はい、別に逃げませんよ。慌てなくても大丈夫ですわ。うふふ。」

  クリスの微笑みに顔を赤くして、ジーナはお茶の準備をしに、小走りで研究室内に走っていった。

  「…ダミアン様?ジーナ様が、迷宮や魔物研究の第一人者でお間違い無いのかしら?」
  「はーい。あんなのですが、彼女が一番柔軟で研究熱心ですよー。魔力量は俺の方が多いっすけど、細かい魔法式の解析能力や、それに伴う頭脳はピカイチっす。」
  「あら、そう。それはそれは…。楽しみね…。教えがいがある人は好きよ…。」

  静かにそう呟いたクリスを見て、常にのらりくらりしているダミアンも、妙に背筋が凍る思いがした。

ーーーーーー

ジーナとダミアン編、もう少し続いちゃいます。


あとは、国王と王妃、旦那と長男の番外編を予定していますが、他に番外編で読みたいキャラがいたら感想にコメントお願いします!

そんなモブキャラより本編進めろ!ってコメントでも結構ですよ?

何もコメント無ければショボンとしながら、予定通り進めます。

ではでは。今後ともよろしくお願いします~。
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