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スウェントル王国編
38話 わ た く し が研究する立場ですのよ
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宰相と話し合った翌日、クリスとモニカはフィクサー王に誘われ、王宮の人払いのされた美しい庭園にてお茶会に参加していた。
フィクサー王、ジェニファー王妃と3人でテーブルを囲んでいる状況だ。
モニカはクリスの少し後ろに控えて、従者としての役割を果たしている。
王と王妃の後ろには妙齢の侍女が2名ほど控え、いつでもお茶や茶菓子の準備が出来るように控えている。
なお、アクセルとポールは宰相の提案で騎士団の訓練を見学するように勧められ、そちらに参加している。
「クリスティーナ殿、此度はすまんな。リアムからも話は聞いた。」
「いえいえ、あまりお力にはなれませんが、報酬も頂けるとの事ですし、王城に滞在させて頂く事は名誉な事ですので、特に問題はございません。」
昨日のリアムとのやり取りについて、軽く話を流す。
クリスが異世界人と知っているのは、宰相含む3名だけであり、また絶対に口外しないとフィクサー王自らが宣言してくれた。
異世界人だという事については、口外するも何も、わざわざ国のトップが重要機密を開示するとは考えにくく、クリスは王のその宣言を疑うつもりもない。
「因みにじゃ、クリスティーナ殿。望みの褒賞は決まったかの?」
「はい、陛下。皆と話し合い、決まっております。」
「そうか、では、遠慮せず申してみよ。栄誉としてSSランク冒険者にして欲しいでも、立派な邸宅が欲しいでも何でも良い。叶えられる物なら何でも言って良いぞ。」
「広い御心に感謝申し上げます。では、僭越ながら、国内でも立派な馬2体と、乗り心地の良い馬車を望みます。」
「ほほう、馬車のう。王家の紋章は外しての提供じゃが、出来るぞ。それだけで良いのか?それだと、余りにも褒賞としては心苦しいのじゃ。」
「では、金銭に関わらない所ではございますが、王立図書館の禁書庫の立ち入りと閲覧権限、魔導国家ヴェリスの魔法研究者への紹介状を王名にて頂きとうございます。」
追加の要望に、フィクサー王とジェニファー王妃は、笑顔のまま無言になってしまった。
(えぇー!?クリスティーナ殿、何を言っとるの?何で儂がヴェリスなんぞに紹介状を書かなければならないといけないんじゃ!?嫌じゃ嫌じゃ!!この国出て行く気満々じゃろ!?)
フィクサー王は内心すごく嫌がっていたが、そこは王族としてポーカーフェイスを貫いていた。
しばらく黙っていた2人に対して、クリスは優雅にお茶を飲んだ後、神々しいまでに綺麗な笑顔で王と王妃を交互に見つめた。
「…これは、陛下では叶える事が出来ない願い事ですか?」
無駄に美しい笑顔から溢れ出る威圧感に押し潰されそうになりながらも、フィクサー王は震えそうになる声を抑えながら、威厳たっぷりに回答する。
「いや、そんな事は無いぞ?ただ、理由を問うても良いか?」
「既に私とアクセルが異世界人である事は、ご存知であると伺っております。間違いないですね?」
「うむ。家族と離ればなれとなり、心細いであろう。そんな中、よくぞこの国の発展に力を貸してくれた。」
「いえいえ。大した事はしておりませんわ。私達は元の世界に戻る為、旅を続けなければいけません。その為の馬車なのです。そして、魔法技術が発展しているヴェリスであれば、何か帰還方法のヒントでも得られるかと考えまして。陛下からの紹介状があればヴェリスの魔法研究者へも、話が早くすみますでしょう?禁書の閲覧権限は、少しでもヒントを自ら得る為ですわ。禁書を用いて何かしようなどと企んでいるわけではございません。」
(嫌じゃー!やっぱり出て行く気じゃ!なんとかせねば!)
フィクサー王は、クリス達の有用性にしっかりと気がついている。
この王都にいるだけで、街の住民はクリス達を新進気鋭のお貴族様冒険者としてよく話題に上がり、明るい話題を振りまいてくれるのだ。利益的な話だと、また別のダンジョンの隠し部屋などを次々と見つけてくれそうな気がするのだ。
「そうか、しかしのう。魔導国家ヴェリスも始祖である【スカーレット=エイルーク】が異世界人であるという話は各国のトップでは有名な話じゃ。」
「あら、やはりそうなのですね。」
「しかし、のう?ジェニファーよ、確か、異世界の転移について研究はしているが、成功した試しがないんじゃよな?」
「えぇ、陛下。一度も成功例がございません。そんな中、クリスティーナ様が魔導国家ヴェリスへと赴けば、研究材料として扱われる危険性もございますわ。」
ジェニファー王妃の援護を受けつつ、ヴェリスへの旅立ちを防ごうとする2人。
しかし、クリスは微笑みを浮かべながらも、心配は無いと伝える。
「大丈夫ですわ。もし、私達を研究材料に出来るような人材がいたら見てみたいですわねぇ。私達の元の世界でもそんな事が出来るのは、老成したお師匠様位かと。まぁ、ヴェリスで何か不穏な動きをする輩がいた場合は、いざとなれば洗脳でもすれば宜しいでしょう。あ、勿論、陛下や王妃様にはそんな不敬な事は致しませんから、ご安心くださいましね。… 私が知りたいのは、ヴェリスの研究内容ですわ。それが例え、不完全でも問題はありません。わ た く し が 研究する立場ですのよ。紹介状を、王名にてしたためる事、叶えて頂けますか?」
女神のように微笑みながら、高貴かつ荘厳な威圧感を無意識に放つクリス。
フィクサー王は笑顔でジェニファーを見つめ、ジェニファー王妃は微笑みながら、落ち着いた風を装ってお茶をすする。
(ひぃぃぃ!今洗脳って言った!?言ったよね、超怖い!ジェニーちゃん助けて!)
(やだ。私、お茶の味、全くしませんわ。すごい逃げたい…。いやん、私よりも若いのに、なんなのこの威圧感。どうやって出してるの?…陛下、こっち見ないでくださいまし!)
しばらく考えるそぶりをしたフィクサー王は、威厳たっぷりにクリスの要望をあっさり認めた。
「よし、クリスティーナ殿の要望は分かった。全て叶えられる要望じゃ。何の問題も無いぞ。」
「陛下のご温情に感謝申し上げます。」
クリスがお礼を述べたその瞬間、ジェニファーは生暖かい視線を王へと向けた。
(陛下…よく頑張りましたわ。後で、一緒に反省会しましょうね。)
フィクサー王とジェニファー王妃の内心を知ってか知らずか、クリスは優雅にお茶のおかわりを侍女に頼んでいた。
ーーーーーー
次回は、アクセルとポールが騎士団の訓練場で遊びます。
フィクサー王、ジェニファー王妃と3人でテーブルを囲んでいる状況だ。
モニカはクリスの少し後ろに控えて、従者としての役割を果たしている。
王と王妃の後ろには妙齢の侍女が2名ほど控え、いつでもお茶や茶菓子の準備が出来るように控えている。
なお、アクセルとポールは宰相の提案で騎士団の訓練を見学するように勧められ、そちらに参加している。
「クリスティーナ殿、此度はすまんな。リアムからも話は聞いた。」
「いえいえ、あまりお力にはなれませんが、報酬も頂けるとの事ですし、王城に滞在させて頂く事は名誉な事ですので、特に問題はございません。」
昨日のリアムとのやり取りについて、軽く話を流す。
クリスが異世界人と知っているのは、宰相含む3名だけであり、また絶対に口外しないとフィクサー王自らが宣言してくれた。
異世界人だという事については、口外するも何も、わざわざ国のトップが重要機密を開示するとは考えにくく、クリスは王のその宣言を疑うつもりもない。
「因みにじゃ、クリスティーナ殿。望みの褒賞は決まったかの?」
「はい、陛下。皆と話し合い、決まっております。」
「そうか、では、遠慮せず申してみよ。栄誉としてSSランク冒険者にして欲しいでも、立派な邸宅が欲しいでも何でも良い。叶えられる物なら何でも言って良いぞ。」
「広い御心に感謝申し上げます。では、僭越ながら、国内でも立派な馬2体と、乗り心地の良い馬車を望みます。」
「ほほう、馬車のう。王家の紋章は外しての提供じゃが、出来るぞ。それだけで良いのか?それだと、余りにも褒賞としては心苦しいのじゃ。」
「では、金銭に関わらない所ではございますが、王立図書館の禁書庫の立ち入りと閲覧権限、魔導国家ヴェリスの魔法研究者への紹介状を王名にて頂きとうございます。」
追加の要望に、フィクサー王とジェニファー王妃は、笑顔のまま無言になってしまった。
(えぇー!?クリスティーナ殿、何を言っとるの?何で儂がヴェリスなんぞに紹介状を書かなければならないといけないんじゃ!?嫌じゃ嫌じゃ!!この国出て行く気満々じゃろ!?)
フィクサー王は内心すごく嫌がっていたが、そこは王族としてポーカーフェイスを貫いていた。
しばらく黙っていた2人に対して、クリスは優雅にお茶を飲んだ後、神々しいまでに綺麗な笑顔で王と王妃を交互に見つめた。
「…これは、陛下では叶える事が出来ない願い事ですか?」
無駄に美しい笑顔から溢れ出る威圧感に押し潰されそうになりながらも、フィクサー王は震えそうになる声を抑えながら、威厳たっぷりに回答する。
「いや、そんな事は無いぞ?ただ、理由を問うても良いか?」
「既に私とアクセルが異世界人である事は、ご存知であると伺っております。間違いないですね?」
「うむ。家族と離ればなれとなり、心細いであろう。そんな中、よくぞこの国の発展に力を貸してくれた。」
「いえいえ。大した事はしておりませんわ。私達は元の世界に戻る為、旅を続けなければいけません。その為の馬車なのです。そして、魔法技術が発展しているヴェリスであれば、何か帰還方法のヒントでも得られるかと考えまして。陛下からの紹介状があればヴェリスの魔法研究者へも、話が早くすみますでしょう?禁書の閲覧権限は、少しでもヒントを自ら得る為ですわ。禁書を用いて何かしようなどと企んでいるわけではございません。」
(嫌じゃー!やっぱり出て行く気じゃ!なんとかせねば!)
フィクサー王は、クリス達の有用性にしっかりと気がついている。
この王都にいるだけで、街の住民はクリス達を新進気鋭のお貴族様冒険者としてよく話題に上がり、明るい話題を振りまいてくれるのだ。利益的な話だと、また別のダンジョンの隠し部屋などを次々と見つけてくれそうな気がするのだ。
「そうか、しかしのう。魔導国家ヴェリスも始祖である【スカーレット=エイルーク】が異世界人であるという話は各国のトップでは有名な話じゃ。」
「あら、やはりそうなのですね。」
「しかし、のう?ジェニファーよ、確か、異世界の転移について研究はしているが、成功した試しがないんじゃよな?」
「えぇ、陛下。一度も成功例がございません。そんな中、クリスティーナ様が魔導国家ヴェリスへと赴けば、研究材料として扱われる危険性もございますわ。」
ジェニファー王妃の援護を受けつつ、ヴェリスへの旅立ちを防ごうとする2人。
しかし、クリスは微笑みを浮かべながらも、心配は無いと伝える。
「大丈夫ですわ。もし、私達を研究材料に出来るような人材がいたら見てみたいですわねぇ。私達の元の世界でもそんな事が出来るのは、老成したお師匠様位かと。まぁ、ヴェリスで何か不穏な動きをする輩がいた場合は、いざとなれば洗脳でもすれば宜しいでしょう。あ、勿論、陛下や王妃様にはそんな不敬な事は致しませんから、ご安心くださいましね。… 私が知りたいのは、ヴェリスの研究内容ですわ。それが例え、不完全でも問題はありません。わ た く し が 研究する立場ですのよ。紹介状を、王名にてしたためる事、叶えて頂けますか?」
女神のように微笑みながら、高貴かつ荘厳な威圧感を無意識に放つクリス。
フィクサー王は笑顔でジェニファーを見つめ、ジェニファー王妃は微笑みながら、落ち着いた風を装ってお茶をすする。
(ひぃぃぃ!今洗脳って言った!?言ったよね、超怖い!ジェニーちゃん助けて!)
(やだ。私、お茶の味、全くしませんわ。すごい逃げたい…。いやん、私よりも若いのに、なんなのこの威圧感。どうやって出してるの?…陛下、こっち見ないでくださいまし!)
しばらく考えるそぶりをしたフィクサー王は、威厳たっぷりにクリスの要望をあっさり認めた。
「よし、クリスティーナ殿の要望は分かった。全て叶えられる要望じゃ。何の問題も無いぞ。」
「陛下のご温情に感謝申し上げます。」
クリスがお礼を述べたその瞬間、ジェニファーは生暖かい視線を王へと向けた。
(陛下…よく頑張りましたわ。後で、一緒に反省会しましょうね。)
フィクサー王とジェニファー王妃の内心を知ってか知らずか、クリスは優雅にお茶のおかわりを侍女に頼んでいた。
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次回は、アクセルとポールが騎士団の訓練場で遊びます。
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