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スウェントル王国編
37話 今後の予定を立てますわよ
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リアム宰相とクリス達のやり取りは続き、しかしそれは表面上はお互い友好的な空気を持って進められた。
「クリスティーナ様方のその類い稀な魔法は、やはり異世界の技術なのですね。」
「えぇ、こちらの世界よりも進んだ術式を、この身にまとっている聖宝石にて即座に展開する事で、こちらの魔法よりも明らかにレベルの違う術式…魔法を行使する事が出来ます。」
「その、聖宝石と進んだ魔法技術…術式と言うのですね、があってこその、貴女達の強さに繋がると言うことですか。」
リアムは、クリス達の異常な程の強さについて、その理由を伺っている。
見た目だけでは判断出来ないとは言え、鍛え抜いてきた騎士団達よりも、小柄な少年少女達の方が強いという違和感を払拭したかったのだ。
つまり、その術式と聖宝石があれば、騎士団の大幅な戦力増強を図ることが出来るとリアムは考えるも、その目論見はクリスによって打ち砕かれた。
「リアム宰相様は、術式の仕組みや聖宝石の製造技術についてお考えかと思います。確かに、騎士団の皆様やこの世界の高ランク冒険者が、私達の技術を持てば、基礎体力が物を言いますので、私達よりも強い実力を発揮出来る可能性はあるでしょう。しかし、この術式は非常に高度な技術でして、私達の世界でも行使出来るのは実力者のみだけですわ。一般的な術使いは、この世界の魔法使いに多少毛が生えた…失礼。少しだけ強い程度の差です。」
「今、別に言い直さなくてもよかったのでは?」
「おほほ。続けますわね。また聖宝石の製造技術は、私も存じ上げておりませんの。専門の職人がおりましてね、非常に高価なので、購入出来るのも上位貴族や大商人、高ランク冒険者に限られています。よって、私達の世界のただの冒険者などは、この世界のレベルと大きな違いはありませんわ。」
一部の人間が、大きな力を行使出来るのは、歪ではあるがその戦力を持って戦争などしようものなら、お互いに大きな損失となる状況の為、武力を持った戦争は聖宝石が発明されてからは発生していない。
強力な技術が、各国お互いに様子を見る羽目になり、結果市民にとっては平和な環境が出来上がったのである。
クリスはそれを説明し、オーバーテクノロジーとも言える術式の技術開示や聖宝石の提供は、周辺国とのパワーバランスを崩しかねない為、行わない旨を宰相に伝えた。先手を打ったのである。
「そうですか…。それは残念です。しかし、しばらく王城にとどまって頂き、クリスティーナ様の持っている技術の開示とまではいかなくとも結構なので、王国の魔法研究者や迷宮研究者との相談やヒントなどを与えて頂く事は叶いませんか?もちろん、先日の報酬以外にも、融通を利かせて頂きます。」
そう言って、頭を下げる宰相。
「宰相様、頭を下げないでくださいまし。多少の自由をお許し頂けるのであれば、しばらく王城に滞在させて頂く事は構いません。名誉な事です。自分達で技術を進歩させる為のヒントやアドバイス程度であれば、問題は無いでしょう。」
「おぉ!それは助かります!また、アクセル様に提案がありまして。騎士団にご興味がおありのようなので、もしアクセル様が宜しければ、白銀騎士団に稽古をつけて頂けませんか?同様に報酬を弾みますし、騎士団にとっても良い刺激となりましょう。」
「はい!有難き幸せ。ただ、僕…私の力も聖宝石ありきの身体能力向上の術式があってこそです。騎士団の皆様に何か指導が出来るとも思えないのですが、宜しいのですか?」
「えぇ、術式とまでは行かずとも、何か強さのコツなどがあれば、貪欲に吸収していく真面目な者達が集まっています。強くて年若い可憐な少年のアクセル様は、今や騎士団の憧れの的になっていますよ。」
「へ…へー。筋肉お兄さんや筋肉おじさま達の憧れ…ですか。まぁ、ぼ…私にとっても勉強になりますので、ぜひ!ポールも一緒だよ?」
「はい、アクセル様の仰せのままに。」
「モニカさんは、私と共に、魔法研究者とのやり取りの補佐をして頂きますわね。」
「はい。クリス様。かしこまりました。」
リアムは、目的である魔法技術の開示までは聞き出せなかったが、概ね満足のいく交渉が出来た。
クリス達にとっても、リアムに恩を売る事で、スウェントル王国内での立場を明確にしつつある。
今回の結果についてだが、クリス達はあくまでもお手伝い程度の認識にて、周りに与える影響も最小限に持っていく事が出来、損失なども無いため特に断る理由も無いのだ。
元より、クリス達は良いように使われる腹づもりは無い。この程度の事で満足してくれて、さらに報酬も貰えるならと余裕を持って宰相の提案に乗ったのである。
「それでは、今後の予定の相談といきましょうか。」
「はい、かしこまりました。」
クリス達をしばらく手元に置く事が出来た事に満足し、その間に魔法技術を出来る限り調べつくそうと考えているリアムだが、無駄骨になってしまうのは、また別の話。
取り急ぎ、明日の国王と王妃とのお茶会の約束をし、今後の研究者や騎士団との顔合わせなどを話し合い、本日は解散となった。
ーーーー
次回は王様と王妃様のターンになります。
「クリスティーナ様方のその類い稀な魔法は、やはり異世界の技術なのですね。」
「えぇ、こちらの世界よりも進んだ術式を、この身にまとっている聖宝石にて即座に展開する事で、こちらの魔法よりも明らかにレベルの違う術式…魔法を行使する事が出来ます。」
「その、聖宝石と進んだ魔法技術…術式と言うのですね、があってこその、貴女達の強さに繋がると言うことですか。」
リアムは、クリス達の異常な程の強さについて、その理由を伺っている。
見た目だけでは判断出来ないとは言え、鍛え抜いてきた騎士団達よりも、小柄な少年少女達の方が強いという違和感を払拭したかったのだ。
つまり、その術式と聖宝石があれば、騎士団の大幅な戦力増強を図ることが出来るとリアムは考えるも、その目論見はクリスによって打ち砕かれた。
「リアム宰相様は、術式の仕組みや聖宝石の製造技術についてお考えかと思います。確かに、騎士団の皆様やこの世界の高ランク冒険者が、私達の技術を持てば、基礎体力が物を言いますので、私達よりも強い実力を発揮出来る可能性はあるでしょう。しかし、この術式は非常に高度な技術でして、私達の世界でも行使出来るのは実力者のみだけですわ。一般的な術使いは、この世界の魔法使いに多少毛が生えた…失礼。少しだけ強い程度の差です。」
「今、別に言い直さなくてもよかったのでは?」
「おほほ。続けますわね。また聖宝石の製造技術は、私も存じ上げておりませんの。専門の職人がおりましてね、非常に高価なので、購入出来るのも上位貴族や大商人、高ランク冒険者に限られています。よって、私達の世界のただの冒険者などは、この世界のレベルと大きな違いはありませんわ。」
一部の人間が、大きな力を行使出来るのは、歪ではあるがその戦力を持って戦争などしようものなら、お互いに大きな損失となる状況の為、武力を持った戦争は聖宝石が発明されてからは発生していない。
強力な技術が、各国お互いに様子を見る羽目になり、結果市民にとっては平和な環境が出来上がったのである。
クリスはそれを説明し、オーバーテクノロジーとも言える術式の技術開示や聖宝石の提供は、周辺国とのパワーバランスを崩しかねない為、行わない旨を宰相に伝えた。先手を打ったのである。
「そうですか…。それは残念です。しかし、しばらく王城にとどまって頂き、クリスティーナ様の持っている技術の開示とまではいかなくとも結構なので、王国の魔法研究者や迷宮研究者との相談やヒントなどを与えて頂く事は叶いませんか?もちろん、先日の報酬以外にも、融通を利かせて頂きます。」
そう言って、頭を下げる宰相。
「宰相様、頭を下げないでくださいまし。多少の自由をお許し頂けるのであれば、しばらく王城に滞在させて頂く事は構いません。名誉な事です。自分達で技術を進歩させる為のヒントやアドバイス程度であれば、問題は無いでしょう。」
「おぉ!それは助かります!また、アクセル様に提案がありまして。騎士団にご興味がおありのようなので、もしアクセル様が宜しければ、白銀騎士団に稽古をつけて頂けませんか?同様に報酬を弾みますし、騎士団にとっても良い刺激となりましょう。」
「はい!有難き幸せ。ただ、僕…私の力も聖宝石ありきの身体能力向上の術式があってこそです。騎士団の皆様に何か指導が出来るとも思えないのですが、宜しいのですか?」
「えぇ、術式とまでは行かずとも、何か強さのコツなどがあれば、貪欲に吸収していく真面目な者達が集まっています。強くて年若い可憐な少年のアクセル様は、今や騎士団の憧れの的になっていますよ。」
「へ…へー。筋肉お兄さんや筋肉おじさま達の憧れ…ですか。まぁ、ぼ…私にとっても勉強になりますので、ぜひ!ポールも一緒だよ?」
「はい、アクセル様の仰せのままに。」
「モニカさんは、私と共に、魔法研究者とのやり取りの補佐をして頂きますわね。」
「はい。クリス様。かしこまりました。」
リアムは、目的である魔法技術の開示までは聞き出せなかったが、概ね満足のいく交渉が出来た。
クリス達にとっても、リアムに恩を売る事で、スウェントル王国内での立場を明確にしつつある。
今回の結果についてだが、クリス達はあくまでもお手伝い程度の認識にて、周りに与える影響も最小限に持っていく事が出来、損失なども無いため特に断る理由も無いのだ。
元より、クリス達は良いように使われる腹づもりは無い。この程度の事で満足してくれて、さらに報酬も貰えるならと余裕を持って宰相の提案に乗ったのである。
「それでは、今後の予定の相談といきましょうか。」
「はい、かしこまりました。」
クリス達をしばらく手元に置く事が出来た事に満足し、その間に魔法技術を出来る限り調べつくそうと考えているリアムだが、無駄骨になってしまうのは、また別の話。
取り急ぎ、明日の国王と王妃とのお茶会の約束をし、今後の研究者や騎士団との顔合わせなどを話し合い、本日は解散となった。
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次回は王様と王妃様のターンになります。
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