宰相夫人の異世界転移〜息子と一緒に冒険しますわ〜

森樹

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スウェントル王国編

34話 お給料あげて下さい byナタリー

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クリス達は騎士団長ブレイズと和解した後、グレートオーガの巣もアクセルとポールで見つけ出し、街道付近のグレートオーガ含め脅威となり得る魔物を殲滅し尽くしたのだった。

「グレートオーガ28匹の討伐を、我々騎士団が確認しております。まさかこんなに繁殖していたとは…クリスティーナ殿一行がいなければ、我々だけでは対処が出来ませんでした。」
「いえ、これで街道を通る人たちも安心出来ますわね。」
「はい。しかし、我々は何の役にも立たず、心苦しい限りです。」
「何度も言っておりますが、気になさらないでくださいまし。騎士団の方々でも、やろうと思えば出来る事。ただ、魔法が得意な私たちが、今回の討伐に適していたという事ですわ。適材適所、それでいいじゃありませんか。」
「…。心より感謝致します。」

またグレートオーガの体は、体などは素材になり得ないが、そのツノは非常に固く、武器や防具にうってつけの為、高級素材として扱われる。

更に、グレートオーガの睾丸は、精力剤としての効能があり、騎士団員が素材として切り取り、回収していた。
その光景を見ていたアクセルとポールが、並んで自分の股間を守る様にしっかりと握り、顔をしかめて「ひゃぁ」と叫びながら内股で抱きしめ合ったのはご愛嬌だ。

騎士団員も、その時ばかりは年相応の可愛らしい反応をした少年達に微笑ましい気持ちを抱いたものだ。

「この案件は、全てがクリスティーナ殿一行の手柄です。素材回収はこちらで行いましたが、その正規の報酬として、改めて冒険者ギルドを通じてお支払いさせて頂きます。」
「うふふ、本当に真面目ですのね。信頼しておりますわ。お任せします。」

そうして、宿場町にてその日は泊まり、食事の場で騎士団と親交を深めたクリス達。

騎士団員達は、出会った当初は護るべき見た目の貴婦人と少年少女が大言を吐き、正直いけ好かないと感じたが、自分達よりも明らかな強さを見せつけられた後は、尊敬の念を持ってクリス達に接する様になった。

クリス一行も見た目で侮られるのは分かっていたので特に気にしておらず、騎士団員から親交を深めてくれるのであれば、別に悪いことではない為クリス達も率先して輪の中に入っていった。

特にアクセルは、将来、自国の騎士団長になりたいと言った気持ちがあるため、ブレイズに懐いた次第だ。
騎士団をまとめ上げる心得や、団長となってのやりがい、苦しみなど矢継ぎ早に質問している。

ブレイズも、自分よりも圧倒的に強い少年が憧れの視線を真っ直ぐに向けてくれる事に悪い気はせず、綺麗な顔立ちと無邪気な笑顔のアクセルに籠絡されてしまった。

騎士団員も「あんなに喋るブレイズ団長を初めて見た。」と驚愕した次第だ。

****

翌日、スウェントル王都に戻ったクリス達は、ギルドで依頼達成の報告をしに行く。
いつも通り、ナタリーは別の冒険者の受付をしていたが、別の受付がナタリーに何か耳打ちをした後、クリスの顔を見るなり立ち上がって、役目を別の受付へと交代した。

クリスはまだ並んでもいなかったが、今日はナタリーからクリスに近づいてきたのだった。

「クリスティーナ様、お待ちしていました。騎士団長より報告を承っております。こちらへどうぞ。」

と、客室へ誘導してくれるナタリー。

クリス達も慣れたもので、お茶が出され、いつも通り座って待つ。
モニカとポールはクリスとアクセルの背後で控えている。

ナタリーとギルドマスターのハリーが連れ立って現れた。

「この度は、騎士団からの依頼を受けて頂き、ありがとうございました。」
「いえいえ、こちらこそ、有意義な時間を過ごせましたわ。」
「騎士団からはクリスティーナ様への感謝の言葉を頂いており、またグレートオーガの討伐28体の報告と、とその有効部位素材の提供も騎士団より受けており、全てクリスティーナ様の手柄であるとのこと。まずはその報酬である金貨300枚となります。」
「あら、思ったより高いですわね。」
「グレートオーガの睾丸が高値で取引されており、その、1個で金貨2枚となり、1体につき2個ございますので…。後は延長報酬と、ツノの部位素材の料金、騎士団長よりお礼の気持ちの追加報酬が入っております。」

アクセルとポールはその回収している時の光景を思い出したのか、少しもぞもぞして一瞬内股になった。
ただ表情はしっかりと無表情を貫きまたすぐに元の姿勢に戻れたのは、驚愕のちょん切りを目の前で見て、驚きも過ぎ去った後にて冷静になっているからだろう。

「ありがとうございます。騎士団長のブレイズ様へもお礼をお伝え願えますか?」
「かしこまりました。」

淡々と終わった達成報告であるが、次にハリーの発した言葉で、クリスは優雅な微笑みから少しだけ真面目な表情に切り替えた。

「ところで、先日のゴーレム素材のお礼について、スウェントル国王陛下より召喚状を受けております。我々も予想以上の国のトップからの召喚状で驚愕仕切りでして…日時なのですが、明後日を希望されております。国王陛下も、突然の事なのでもし既に予定があるのであれば、と日時をずらす事も許可頂いています。」
「あら、光栄ですわ。国王陛下との謁見ですか。緊張いたしますわ。日程については問題ありません事よ。」

と、扇を口元に持ってきて優雅に微笑むクリスは一切緊張している様に見えない。
むしろハリーがこの国王からの召喚状を受け取った時に驚愕したくらいだ。

精々、王城の文官辺りに代理で褒美の報告となるだろうと思っていたが、冒険者が王と謁見するなど、前代未聞である。

「では、王城へはそのように報告致します。クリス様の宿へは、王城から馬車が迎えに上がります。恐らく、お昼前には迎えに上がると言っておりましたので、そのつもりでお願い致します。」
「かしこまりましたわ。」

その後、少しだけ今後の事を話し合った後、クリス達は綺麗な礼をして客室を出て行った。

「はぁー。クリスティーナ様には驚かされてばかりだな。」
「ギルドマスターでも、驚くんですね。」
「ナタリー君?どういう意味かな?」
「いえいえ、特に深い意味は無いですよ。全く、ギルドの受付全員がクリスティーナ様の受付を嫌がりやがって。全部私に丸投げですよ。マスター、お給料アップを求めます。」
「ははは。確かに、ナタリー君には気苦労をかけているね。でもクリスティーナ様も明らかに君の事を気に入っているからなぁ。」
「でも、私が別の人の受付してる時に、御一行が私の所に並んだからといっても、手の空いてる受付が自分の所に誘導したらいいじゃないですか!それを横から『交代するよ。クリスティーナ様御一行来てるからお願い。』って普通言います!?」
「まぁまぁ、御一行が気持ちよく受付出来るように計らっているんだよ。そうだね、気持ち、ボーナスでも渡そうか。今回のクリスティーナ様の報酬が国からギルドにも出るからね。頑張ってくれたご褒美だよ。」
「よっしゃ!今の言葉、忘れないで下さいね。」

そう言ってナタリーはそそくさと客室から退場して行った。

「彼女が受付の中で一番仕事が出来るのは確かだからなぁ。流石、クリスティーナ様も良い見る目をしてるよ。」

ハリーは苦笑しつつも、閉じられた扉を見つめながら、疲れを吹き飛ばすように大きな伸びをした。
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