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スウェントル王国編

23話 高級ブティックでお買い物ですわ!

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冒険者ギルドに報告した事で、全てが明日にならないと動きようがなく、今日一日時間がまるまる空いてしまう事になってしまった。

そこで、クリス達は所謂高級ブティックと呼ばれる店へと足を運んだ。
貴族のドレスや男性用のフォーマルウェアなどをオーダーメイドで作成してくれる店だ。

「母上、なぜ高級服を見るのでしょうか?」
「アクセルさん、今後、こちらの世界の子爵様や、状況によっては高位貴族様とも会う事が考えられます。その時になって、今までの様な普段着や冒険者用の服装では失礼に当たるでしょ。余裕を持って、全員分、高級かつ、お上品な服を購入しますわよ。」

アクセルは、冒険者として会うのだからいいんじゃないかと考えたが、自分も世界が違うとはいえ、公爵家ひいては宰相の次男として恥ずかしい姿は見せれないなと理解して、頷いた。

モニカとポールは「そこまで気にせずとも問題にはなりませんよ。」と声をかけるも、クリスにも何か考えがあるようで高級服は購入する事に決定している。

店員も見慣れない貴族が来たとやや緊張の色はあったがそこは普段から貴族向けに商売をしているだけあって、丁寧な接客をしてくれた。

全員がオーダーメイドの為、出来上がりは約二週間後との事だった。

「まぁ、子爵様の対談には間に合わないでしょうけど、ポールとモニカは普段の冒険者の格好で問題はないでしょう。私とアクセルさんは、転移時に来ていた服を着ましょうか。」

と、フェルナール子爵に会う時の服装については普段のままで行く事とした。

ただ、そのままであったとしても実際問題、失礼には当たらない上、クリス親子が全力で貴族であることも変えようが無いのは事実である。


話は変わって、この世界の貴婦人の流行は、コルセットで胴を細くし、クリノリンと呼ばれる針金でスカートを大きく膨らました華美なドレスの種類が流行らしいが、最近では布を膨らませて優雅に見せるプリンセスラインや、Aラインと呼ばれる比較的シンプルなドレスが出てきている。

前述したクリノリンでスカートを膨らませていると、馬車に乗れない貴婦人が多数出ているらしく、実は男性からは「なんだあのでかい尻は」とそこまで評判は良くないらしい。

クリスは、スレンダーラインのオーロラグラデーションドレスをオーダーメイドし、ドレスの型としては異端な程にシンプルだが、最高級のシルクにて上品な物を注文した。

高級ブティックの店員からも「本当にこちらの型で良いのですか?」と再確認された程である。

髪かざりや、アクセサリーは気に入ったものがなく、元々自分の空間収納に入っていた元の世界のを流用するつもりらしい。

アクセルは、白地に金でさりげなく花柄の刺繍の入った上品なジュストコール(膝丈のコート)に、エメラルドグリーンのジレ(細身のベスト)、ワインレッドのキュロット(膝下までのぴっちりしたズボン)で、膝丈まであるブーツを注文。首元には白いシルクのアスコットタイ(スカーフの様なネクタイ)で上品にまとまるようにした。

モニカとポールは従者としても最高級の出で立ちに見える、お揃いで色違いの服装だ。
モニカにとっては男装になってしまうが、動きやすさを追求している女性従者はズボンをメインにはいている事もあり、不自然ではない。

ポールは青のジュストコールに緑のジレと、オッドアイの瞳に合わせて服を選択。
ズボンは髪色と反対の黒色のロング丈ズボンでまとめた。

モニカは瞳の色に合わせた薄紫のジュストコールに髪色に合わせた薄桃色のジレ、主人の瞳の色の薄緑のロング丈ズボンで、パステルカラーで統一され非常に女性らしい色合いで男装には見えない綺麗な色合いだ。

また、モニカとポールの高級服は動きやすさも意識した為、二人とも有事の際の行動に支障は出ないようになっている。

「これで、今後何かあった時には色々と使えるわね。満足だわ。」

まとまったお金が入り、久しぶりのお買い物をしてスッキリした顔のクリス。
モニカとポールの二人にも似合う服を用意出来たことに、ご機嫌な様子を隠していない。

「こんな高貴な服を着る機会、本当にあるのでしょうか…」

とポールが心配しているが、「これからちょくちょく着ることになるでしょうね。」と何かを考えている様子のクリスはその理由を話すつもりは今のところ無いようだ。


ブティックで服を注文した後、宿屋の部屋で話し合う事になった。

「さて、皆さん。今後の事を話し合いたいのですが宜しいですか?」

クリスは普段よりも、やや真面目な顔で問いかける。

アクセルも、元の世界の時によく見ていた母上が出てきたと感じた。

「この度、ダンジョンの隠し部屋で、まとまったお金を手に入れました。さらに、明日の素材の報酬は更に上を行く金額となるのではと踏んでおります。隠し部屋を見つけたポール、お手柄ですわよ。」

「光栄です!」
と感激の瞳でクリスを見つめる。

アクセル達三人は、真面目に話を聞いている。

とは言っても、アクセルはなぜかポールの膝の上に乗っかり、ポールも主人が望むならと後ろからアクセルを抱きしめている謎の仲良しさを醸し出しているが、クリスもモニカも特に違和感を感じていない様子だ。

「今後の行動として、各国に旅をして色々な国を周り、フットワーク軽く元の世界への帰還方法を探すか、スウェントル王国に本拠地を構えて、じっくりと地道に調べて行くか。選択できるだけの財産と冒険者としての地位を手に入れる事になります。皆さんの意見を聞きたいですわ。」

問いかけはしたが、実はクリスも満場一致で決まるだろうと言う予想していた。

その予想の通り、全員が旅をする事を希望したのだ。

様々な国を見る事で、何か新しい事を見つけ、己が成長にもつながる。

観光気分が全く無いとも言い切れない。

特にアクセルなどは、「色んな国を巡りたいです!」と元気よく返事をした際に、アクセルを抱っこしているポールの顔面に後頭部をしたたかにぶつけ、お互い痛がっていたくらい、はしゃいでいた。

「では、次に訪れる国について相談なのですが、どこがいいかしらね?私としては、『魔導国家ヴェリス』か、広大ですけど『ダロム連邦国家』を見て回りたい気分ですわ。」

と回答すると、ポールとモニカは双方意見が一致していた。

「『ダロム連邦』は、広大で見て回るのに時間がかかる上に、都市国家ごとに文化が違うので、観光としては楽しめます。ですが、最終目的を考えると、まずは『魔導国家ヴェリス』へ向かうのが良いかと。帰還方法についても他国より調べやすいのではと愚考いたします。」

とはモニカの弁だ。

「そう…では魔導国家ヴェリスへと近々向かいましょうか。まぁ、もうしばらくはこの国に滞在してからになりますけどね。」

「母上、魔導国家ヴェリスでは、どんな術式や魔法が研究されているのか楽しみですね!」
「そうね、楽しみだわ。」

そうして、今後の予定も決まったところで、夕食まで雑談に花を咲かせるのであった。

ーーーーーーー

早くザ・貴族!って感じの服装を着させてブイブイ言わせたい。
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