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スウェントル王国編

20話 ゴーレム討伐しますわよ!

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ゴーレムは台形の巨大な胴体に、円柱の頭部を持ち、短い足に長くて太い腕を持つ。
指などはなく、ただ殴りつけるのがメインの攻撃方法で、当たりさえしなければ脅威では無い。

しかし、厄介なのはその硬さだ。

ポールとモニカが戦っているゴールドゴーレムは、通常のゴーレムよりも硬く一発の威力もでかい。

ポールが素早く動いてゴールドゴーレムを撹乱し、モニカが蹴りを脚部に入れるもまるでダメージが入っていない。

「モニカ!土魔法でこのデカブツの足元に穴作れるか!?」
「やってみる!」

モニカは、ブレスレットの聖宝石に魔力を込めて土術式を展開する。
二人の目論見通り、ゴーレムの短い足が穴にはまり、一歩も動けなくなった。

「じゃあ俺は、右腕を影縛りシャドウバインドで封じてみる!」
「あたしは左腕ね!任せて!」

ポールが闇術式の影縛りを展開、ゴーレムの影が物体化して伸び、右腕を絡め取る。
ゴーレムの力を持ってしても影を千切る事は出来ない様子だ。

モニカが樹術式を発動し、草縛りグラスバインドを展開。
ゴーレムの左腕に、数多の蔓や草が絡まり力任せに草を千切るも、再度生えてきて遂にはゴールドゴーレムの動きを封じる事に成功した。

「ポール!ゴーレムの弱点は胸部に剥き出しになっている魔石よ!風魔法で抉り出す事は出来そう!?」
「やってやらぁ!!」

ポールは風魔法で空中浮遊すると、両手から風の奔流を展開。
ゴールドゴーレムの魔石に向かって放った!!

**************

アクセルは、ゴールドゴーレムの攻撃をかわしながら、身体強化をし、エストックに炎属性を付与していた。

不壊の魔法剣とはいえ、刺突剣とゴーレムは相性が悪すぎる。

「さーてと、どうやって倒そうかなぁ。」

アクセルは、元の世界でも経験したことの無い、本格的な魔物討伐に気分が高揚していた。

「多分、胸の魔石が弱点だよね…。」

そう呟くと、ゴールドゴーレムがモグラ叩きの様にアクセルの頭上へと腕を振り下ろしてきた!
アクセルは華麗に身をかわし、腕へと飛び乗る。

そのまま腕を駆け上がり、ゴールドゴーレムの右のこめかみにエストックを突き刺す。
炎属性を付与しており、金属を溶かして刺さったのを確認するも、ゴールドゴーレムはアクセルを潰さんと自分のこめかみに向けて重たいパンチを繰り出してきた。

アクセルはゴールドゴーレムの頭頂部に『ひょいっ』と乗っかり、結果ゴールドゴーレムは自分のこめかみを強打し、そのまま『ズズゥン』と倒れこむ。

「よし、今のうちに…。」

アクセルは胸部へと素早く移動し、魔石を鷲掴む。

「やっぱ簡単には抜けないか。でも…いけそうだね。」

炎属性が付与されたエストックを持ち、魔石を傷つけない様、素早く周りを刺しつつ溶かしていく。
ゴールドゴーレムが起き上がるまでが勝負だ。

魔石の周りを半分程溶かしたところでゴールドゴーレムが起き上がろうとした為、アクセルは少し機嫌が悪くなる。

「あぁーもう!めんどくさいなぁ!寝とけよウスノロ!」

普段の穏やかな喋り方とは打って変わって暴言を吐き出した後、頭部に向かって飛び上がり、身体強化で勢いをつけてドロップキックをした。

ゴールドゴーレムは再度勢いよく倒れこむ

「よし、ちゃっちゃと魔石抜いちゃおっと。」

アクセルは再度魔石を抜くため、魔石周りを溶かし始めたのだった。

**************

クリスは結界に囲まれながらふわふわと空中浮遊している。

「こんな研究機会、そうそう無いですわね。」

そう言って、浮きながらクリスタルゴーレムの周りを回っていた。
クリスタルゴーレムも腕を振り回すも、全て空振りに終わる。

「本体は全て鉱物ですわよね。動力源は胸の魔石でしょうけど、こんな大きな胴体を動かせる程のすごい力が、あの魔石にあるのかしら?」

ふわふわと浮きながら、クリスタルゴーレムの右肩の付け根を触る。

「なるほど、やっぱり直接触るとわかるわね。簡単な敵性反応に対する操作術式と、物質加工の術式が組まれているだけですわ。でもこの魔石の力だけで動かせる代物では無いわ。」

クリスは、物質加工の術式ならすぐに解除出来そうだと判断し、実際に解除してみせた。
クリスタルゴーレムも右腕が外れ、轟音を持って地面に落ちる。

同様に、左腕も外してみせると、クリスタルゴーレムは体当たりでクリスを襲い出した。

「…さっきの木彫り人形の魔物然り、ダンジョンが作っているのよねぇ?魔石は心臓部で、動力源はダンジョンからの供給魔力?それだったら、ダンジョンの深層から強い魔物が出てこない理由も説明がつきそうね…。」

軽くクリスタルゴーレムの体当たりをかわしながら、考察を続けるクリス。

「さて、始末しましょうか。」

そう言って胸部に移動し、胸の魔石に手をかけると、クリスタルゴーレムへ魔力供給している術式を解除する。
その瞬間、クリスタルゴーレムはバラバラに崩れて、魔石もゴトリと地面へ落ちた。

「楽勝ですわ。」

術式を研究しているクリスにとって、魔法生物のゴーレムなどはただの研究材料にしかならない程度の扱いだった。

**************

「皆さん?ご無事ですか?怪我はしていませんこと?」
「はい!大丈夫です!余裕でしたね母上。」
「はい、俺たちも無事終わりました。魔石も回収出来ています。」

皆、怪我も無く倒せた様だ。
しかし、初めて戦う巨大な敵に緊張感を持って戦ったため、精神的疲労は感じている様だ。

モニカとポールは、以前に大怪我をしたイビルベアよりも強いゴールドゴーレムを二人で討伐した事が自信に繋がった様子で、すごくいい笑顔をしている。

あとは広間に転がる元ゴーレム達の残骸の処理をどうするか、モニカがクリスに問いかけた。

「ゴールドゴーレムやクリスタルゴーレムは、全身が素材になるんですが、どうします?この金とクリスタルの山。」
「これくらいなら、アクセルさんの空間術式に入るわよね?」
「はい、余裕です!」

アクセルはゴーレム達の残骸をそのまま手に触れ、空間収納に直していく。

すると、いつの間にやら広場の真ん中に金の宝箱が現れていた。

「是非ともクリス様がお開け下さい。」

モニカがそう進めると、クリスは少し顔をしかめる。

「えぇ?金の宝箱を私が開けて、三角木馬とか出てきたらどうするのよ…。」

と言いながらも、隠し通路のボス戦後の宝箱だ。
ワクワクしながら開けてみると

「まぁ、金貨の山ですわ。おおよそ5000枚ほどあるのでは無くて?ゴーレムの素材と、金貨の山。あらぁ、一気にお金持ちですわねぇ。お金があると、心に余裕が出る。いい事ですわ。」

宿に戻ってから後ほど財布に入れるとして、一旦は空間収納で宝箱ごとしまうクリス。

「さて、疲れましたし帰りましょ。どうせこの隠し部屋の報告とボス討伐、素材持ち込みでギルドが大波乱になるのは目に見えているのですから、今日はゆっくり休みましょう。」

身もふたもないクリスのセリフに一同は苦笑いだ。

しかし、元々目立つ存在なのだから、実力もしっかりとあると認識されるのはいい事だとアクセルは思い、モニカとポールも同様に強くなった事への評価が楽しみであるのも事実。

一行は転移帰還陣へと乗り込んで、ダンジョンを後にした。

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