季節は流れる〜十人十色〜

老人とコタツ

おお。坊や。また来たのかね。

外は寒かっただろう、手袋はどうした？

手が真っ赤じゃないか。耳も赤くなって、おー寒そうだ。

おこたにお入り。みかんもあるよ。

今から暖かいココア、入れてあげるからね。


はい。少し遅れたけど、坊やにお年玉だよ。

あけましておめでとう。

はい、今年もよろしくねぇ。


うん、うん。

そっかー。お友達とそんな事があったんだねぇ。

よしよし。お友達も悪いけど、君はどうしたいんだい？

正直に言ってごらん？そっか、仲直り、したいよね。

じゃあ、相手が謝ってきたらきちんと許すんだよ。

後は、そうだね。謝るきっかけを、与えてあげなさい。

2人きりで、話をするきっかけを、別のお友達に作ってもらうとか。

うん、うん。

よく頑張った。私が褒めてあげるよ。よしよし。


ありゃ？なんだい？

もう行くのかい？あぁ、塾か。

うん、子供は一生懸命に勉強して、全力で遊びなさい。

かけがえのない時間だからこそ。その輝きを胸に抱いて成長なさいな。


え？もうすぐ子供じゃ無くなるって？

…あぁ、電車料金の話かい。

あははは。

そうだねぇ。もうそんな年齢なんだね。

子供はあっという間に成長するものだ。

はい、行ってらっしゃい。外の道路、凍ってるから足元気をつけるんだよ。

風邪、引かないようにねー。


ふぅ、行ったか。

最近、あの子が遊びに来るお陰で、寂しいという気持ちを思い出してしまったじゃないか。

このまま、一人で朽ちて行くだけだと思っていた。

一人で良いと思い、生きてきた人生は、実は寂しさを誤魔化していただけだと気付かされたのはここ最近。

ふふふ、最近、本当に楽しいなぁと、心から思い、こたつの中で横になり私は目を瞑った。


また、あの子が会いに来る事を夢みて…。