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第97話 第三勢力の介入
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だが、そんな『心眼』の能力に飲まれる中、窓が割れる音が響いた。
窓から飛び込むのは、脇差を抜き放った影――クオンだ。
「うぉおおおぉぉおお!!」
クオンの物凄い雄叫びと共に、何かを斬りつける音。
その時になってやっとレイルが窓の向こうに消える。
俺も慌ててそれに続く。ほんのわずか数秒のことだ。
(クオンは最初っから斬るつもりだったのか……)
あの反応の早さは、もう斬るための予備動作を完全に終えていたからだったのだろう。おそらくタジムの独白があろうがなかろうが、踏み込むつもりだったのだ。
窓ガラスの散乱する室内には、『孔雀』――詐欺師と思しき男達と女達がいた。男女共に年齢層が幅広く、少し年の離れた親子のように見える。
そんな家族のように見える連中が手に手に、暗器の銀色の輝きを放っていた。
クオンは、息子役でもできそうな同い年くらいの男に斬りかかっていた。
『孔雀』達は、劣勢だ。
不意を突かれたのもあるだろうが、どんどん窓の向こうから侵入してくる俺達の数に驚いているらしい。
実際は六人しかいないし、ルナリアのように戦いに不向きなものもいるのだが。
「――謀ったな!?」
サーシュ、『孔雀』の頭領は、完全に勘違いしていた。
タジムがあんな発言をしたのは、こうして背後に武力が控えていたからと思ったらしく、顔を赤くして歪めていた。
「大丈夫ですか、タジム殿!」
クオンはタジムを庇うように、敵との間に立ちはだかった。
「邪魔だ、小僧! ――そうか、貴様、フォージュン家の!」
「よくも騙してくれたな! 貴様らは全員捕縛する。そして極刑にしてやるぞ!」
「ほざけ! グランドギルドマスターの命令で動いた『孔雀』の頭領である我を嵌めたことを、貴様らは魔界で後悔し――」
いきなり男が倒れた。
サーシュの後頭部に、ダーツみたいなものが突き刺さっている。
暗器の一種だろうか。
困惑したのは、頭領を殺された『孔雀』達だけではない。
いきなり第三者からの攻撃が飛んできたのは、俺達も驚いていた。
(――ッ。『心眼』……)
先程の発動直後だからか、それとも未来予知した光景を幻視するほどの強力な効果の後だからか、上手く発動しない。
「来る!」
だが、もともと『心眼』の能力なしで、これまで冒険者として生きてきたのだ。
回避能力には自信があった。
(――んん?)
言葉にならない違和感があり、妙な感覚に囚われながらも、俺はルナリア達をかばう位置取りをした。
ダーツを受けたサーシュの後頭部がずぶずぶと溶けていく。
その姿、そこから立ち上る異臭に、全員が驚く。
「コカトリスの猛毒――いや、バジリスクの猛毒だ!」
レイルの驚きの声。
コカトリスとバジリスクは、暗殺者が使う中でも強力な毒で有名だった。
暗殺者の毒の代名詞とも言える。
だが、その知名度に反して、それが実際に使われるところを見ることは滅多に無い。
おそろしく貴重なためだ。
だが、その毒性は強力。
即死したサーシュが、そのまま後頭部に、強酸で溶かされたような穴を空ける無残な様子からも明らかだった。
(こりゃ、本当に盗賊ギルドのグランドギルドマスターが関わってるかもな)
これほどのアイテムを無造作に使うところが、相手が小物ではないとわからせてくれる。
バジリスクの猛毒により、一気に溶け出した『孔雀』の頭領の異臭に混乱する中、次々にダーツが飛び、祖母役、妹役と思しき相手に次々に突き立っていく。
女だろうが、老人だろうが、容赦ない攻撃だ。
だが、こちらには攻撃が飛んでこない。
(そうか……殺意がないからか)
『心眼』が発動しづらい上に、強敵のモンスターと戦い培った戦闘勘が働きにくかったわけだ。
窓から飛び込むのは、脇差を抜き放った影――クオンだ。
「うぉおおおぉぉおお!!」
クオンの物凄い雄叫びと共に、何かを斬りつける音。
その時になってやっとレイルが窓の向こうに消える。
俺も慌ててそれに続く。ほんのわずか数秒のことだ。
(クオンは最初っから斬るつもりだったのか……)
あの反応の早さは、もう斬るための予備動作を完全に終えていたからだったのだろう。おそらくタジムの独白があろうがなかろうが、踏み込むつもりだったのだ。
窓ガラスの散乱する室内には、『孔雀』――詐欺師と思しき男達と女達がいた。男女共に年齢層が幅広く、少し年の離れた親子のように見える。
そんな家族のように見える連中が手に手に、暗器の銀色の輝きを放っていた。
クオンは、息子役でもできそうな同い年くらいの男に斬りかかっていた。
『孔雀』達は、劣勢だ。
不意を突かれたのもあるだろうが、どんどん窓の向こうから侵入してくる俺達の数に驚いているらしい。
実際は六人しかいないし、ルナリアのように戦いに不向きなものもいるのだが。
「――謀ったな!?」
サーシュ、『孔雀』の頭領は、完全に勘違いしていた。
タジムがあんな発言をしたのは、こうして背後に武力が控えていたからと思ったらしく、顔を赤くして歪めていた。
「大丈夫ですか、タジム殿!」
クオンはタジムを庇うように、敵との間に立ちはだかった。
「邪魔だ、小僧! ――そうか、貴様、フォージュン家の!」
「よくも騙してくれたな! 貴様らは全員捕縛する。そして極刑にしてやるぞ!」
「ほざけ! グランドギルドマスターの命令で動いた『孔雀』の頭領である我を嵌めたことを、貴様らは魔界で後悔し――」
いきなり男が倒れた。
サーシュの後頭部に、ダーツみたいなものが突き刺さっている。
暗器の一種だろうか。
困惑したのは、頭領を殺された『孔雀』達だけではない。
いきなり第三者からの攻撃が飛んできたのは、俺達も驚いていた。
(――ッ。『心眼』……)
先程の発動直後だからか、それとも未来予知した光景を幻視するほどの強力な効果の後だからか、上手く発動しない。
「来る!」
だが、もともと『心眼』の能力なしで、これまで冒険者として生きてきたのだ。
回避能力には自信があった。
(――んん?)
言葉にならない違和感があり、妙な感覚に囚われながらも、俺はルナリア達をかばう位置取りをした。
ダーツを受けたサーシュの後頭部がずぶずぶと溶けていく。
その姿、そこから立ち上る異臭に、全員が驚く。
「コカトリスの猛毒――いや、バジリスクの猛毒だ!」
レイルの驚きの声。
コカトリスとバジリスクは、暗殺者が使う中でも強力な毒で有名だった。
暗殺者の毒の代名詞とも言える。
だが、その知名度に反して、それが実際に使われるところを見ることは滅多に無い。
おそろしく貴重なためだ。
だが、その毒性は強力。
即死したサーシュが、そのまま後頭部に、強酸で溶かされたような穴を空ける無残な様子からも明らかだった。
(こりゃ、本当に盗賊ギルドのグランドギルドマスターが関わってるかもな)
これほどのアイテムを無造作に使うところが、相手が小物ではないとわからせてくれる。
バジリスクの猛毒により、一気に溶け出した『孔雀』の頭領の異臭に混乱する中、次々にダーツが飛び、祖母役、妹役と思しき相手に次々に突き立っていく。
女だろうが、老人だろうが、容赦ない攻撃だ。
だが、こちらには攻撃が飛んでこない。
(そうか……殺意がないからか)
『心眼』が発動しづらい上に、強敵のモンスターと戦い培った戦闘勘が働きにくかったわけだ。
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