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第80話 封印の解呪開始
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「なぜ揺れが?」
古竜の元に辿り着いた俺達は早速、古竜に質問した。
――【愚か者達の所業ゆえに】
古竜は、足元に倒れ伏すスヴェンとフォルネウスを見下ろした。
――【我が願いは、この壊れかけた封印を完全に解くこと。それを告げ、ヨシュアを呼びに行くように言ったのだ。もし封印を解けたら、財宝をくれてやろうと言ってな】
「はぁ……」
それがなぜ、揺れに繋がるのだろうか。
――【だが、愚かにもこやつらは、力づくで、自分達二人だけで、この古代魔法文明の封印を解けると息巻いたのだ。少なくともヨシュアなどよりもよほど頼りになると言ってな】
もうその時点でなんとなく想像がついた。
適当に遺跡を破壊したり、それで解けなくて直接ベール状の結界に襲いかかったりしたのだろう。
そして倒れた。
そういえば「騙された」みたいな発言をフォルネウスがしていた。きっとそのことだろう。
――【まず言っておくが、この封印を解こうとすれば、おそらくヨシュアの力は一時的に制限されるようになるだろう】
「一時的というと……?」
――【さあな、個体差があるゆえに期間はわからぬが、この封印は非常に厄介なものだというのは説明した通りだ。おいそれと解くことができぬ。例え黒髪黒目の、古代魔法文明の特権階級だった魔術師達の子孫だとしてもな】
なんとも心もとない説明だった。
――【ただ、長くとも数年もすれば、完全に元に戻るだろう。それに通常の回復魔法は使えるはずだ】
俺は最も気になることを尋ねた。
「古竜ドヴォルザーグ様をお助けすれば……ここから俺達は脱出できますか? お力をお貸し願えますか?」
――【容易いこと】
古竜は翼を広げた。
――【我が頭上の岩盤を突き破り、翼にて運んでやろう。どこへなりと……なんなら多島海都市国家連合ヤマトでもな】
多島海都市国家連合ヤマトは、かなり遠い国だ。
なぜ例えでヤマトを出したのだろうか。
単純に、黒髪黒目が多いという噂から連想しただけかもしれないが、ルナリアだけはちょっとだけどぎまぎした様子だった。
「いえ、普通に安全な近場に下ろしていただければ……」
――【安全か……この山は噴火するであろうな】
「えっ、そうなのですか?」
ルナリアが驚いて口を挟んだ。
「それでは高純度の魔石を掘り返すようなことは……」
――【溶岩の底に沈み、落盤の危険性だらけの半壊したダンジョンをうろつく覚悟があるなら、可能かもな。おすすめせんが。……古代魔法時代の遺跡の罠がどう発動するかわかったものではない。ちなみに今は我が魔法で発動を封じているが、我はいなくなるしな】
「あ……ぁ…………」
残念そうなルナリアの深い溜息に、俺は彼女がここにある魔石で一山当てる気だったと気づいた。
(そ、想像以上にたくましいな)
家臣のメイドと執事を連れて、黒髪ロングのお嬢様然としたルナリアだったが、苦しい家計の貴族家の育ちだからか、商魂たくましいようだった。
――【では、ヨシュアよ。話もまとまったことだ。封印を頼む】
「……わ、わかりました」
目の前で揺れめく薄いカーテンのような結界を注視し、踏み出す。
正直、正体不明と言っても過言ではない、古代魔法文明の結界だ。
古竜曰く俺ならば解けるというが、正直解呪などの経験は一切ない。
不安だ。不安しかない。
数歩進んだ瞬間、なんとも気色悪い感触を感じた。
見下ろすと、俺の足がスヴェンの局部を踏みつけていた。
俺は何も見なかったことにして、足をずらした。
周囲も何も見なかったことにしてくれたらしく、無言。俺は皆に感謝しつつ古竜を囲む結界に近づき、
「――あれ? これってどうすればいいんですか?」
――【触れれば良い。なんなら「ヒール」と唱えても良い】
「そうですか……」
ヒ、といつもの呪文を唱えながら触ろうとした俺の意識は――プツン、と切れた。
古竜の元に辿り着いた俺達は早速、古竜に質問した。
――【愚か者達の所業ゆえに】
古竜は、足元に倒れ伏すスヴェンとフォルネウスを見下ろした。
――【我が願いは、この壊れかけた封印を完全に解くこと。それを告げ、ヨシュアを呼びに行くように言ったのだ。もし封印を解けたら、財宝をくれてやろうと言ってな】
「はぁ……」
それがなぜ、揺れに繋がるのだろうか。
――【だが、愚かにもこやつらは、力づくで、自分達二人だけで、この古代魔法文明の封印を解けると息巻いたのだ。少なくともヨシュアなどよりもよほど頼りになると言ってな】
もうその時点でなんとなく想像がついた。
適当に遺跡を破壊したり、それで解けなくて直接ベール状の結界に襲いかかったりしたのだろう。
そして倒れた。
そういえば「騙された」みたいな発言をフォルネウスがしていた。きっとそのことだろう。
――【まず言っておくが、この封印を解こうとすれば、おそらくヨシュアの力は一時的に制限されるようになるだろう】
「一時的というと……?」
――【さあな、個体差があるゆえに期間はわからぬが、この封印は非常に厄介なものだというのは説明した通りだ。おいそれと解くことができぬ。例え黒髪黒目の、古代魔法文明の特権階級だった魔術師達の子孫だとしてもな】
なんとも心もとない説明だった。
――【ただ、長くとも数年もすれば、完全に元に戻るだろう。それに通常の回復魔法は使えるはずだ】
俺は最も気になることを尋ねた。
「古竜ドヴォルザーグ様をお助けすれば……ここから俺達は脱出できますか? お力をお貸し願えますか?」
――【容易いこと】
古竜は翼を広げた。
――【我が頭上の岩盤を突き破り、翼にて運んでやろう。どこへなりと……なんなら多島海都市国家連合ヤマトでもな】
多島海都市国家連合ヤマトは、かなり遠い国だ。
なぜ例えでヤマトを出したのだろうか。
単純に、黒髪黒目が多いという噂から連想しただけかもしれないが、ルナリアだけはちょっとだけどぎまぎした様子だった。
「いえ、普通に安全な近場に下ろしていただければ……」
――【安全か……この山は噴火するであろうな】
「えっ、そうなのですか?」
ルナリアが驚いて口を挟んだ。
「それでは高純度の魔石を掘り返すようなことは……」
――【溶岩の底に沈み、落盤の危険性だらけの半壊したダンジョンをうろつく覚悟があるなら、可能かもな。おすすめせんが。……古代魔法時代の遺跡の罠がどう発動するかわかったものではない。ちなみに今は我が魔法で発動を封じているが、我はいなくなるしな】
「あ……ぁ…………」
残念そうなルナリアの深い溜息に、俺は彼女がここにある魔石で一山当てる気だったと気づいた。
(そ、想像以上にたくましいな)
家臣のメイドと執事を連れて、黒髪ロングのお嬢様然としたルナリアだったが、苦しい家計の貴族家の育ちだからか、商魂たくましいようだった。
――【では、ヨシュアよ。話もまとまったことだ。封印を頼む】
「……わ、わかりました」
目の前で揺れめく薄いカーテンのような結界を注視し、踏み出す。
正直、正体不明と言っても過言ではない、古代魔法文明の結界だ。
古竜曰く俺ならば解けるというが、正直解呪などの経験は一切ない。
不安だ。不安しかない。
数歩進んだ瞬間、なんとも気色悪い感触を感じた。
見下ろすと、俺の足がスヴェンの局部を踏みつけていた。
俺は何も見なかったことにして、足をずらした。
周囲も何も見なかったことにしてくれたらしく、無言。俺は皆に感謝しつつ古竜を囲む結界に近づき、
「――あれ? これってどうすればいいんですか?」
――【触れれば良い。なんなら「ヒール」と唱えても良い】
「そうですか……」
ヒ、といつもの呪文を唱えながら触ろうとした俺の意識は――プツン、と切れた。
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