追放された回復術師は、なんでも『回復』できて万能でした

新緑あらた

文字の大きさ
上 下
69 / 111

第69話 予想外の形での再会

しおりを挟む
「俺は……ゴブリンロード『心眼』との戦いを通じて、『心眼』とでも呼ぶべき第六感に目覚めたらしい」

「第六感だぁ~?」

 胡散臭そうにするレイルだったが、意外なことにベルトラントがフォローしてくれた。

「いいえ。『気づき』というものはございます。わたくしもある時、手酷い目に遭い、九死に一生を得て『嘘を見抜く力』のようなものを手に入れたのでございます」

「いやいや。聞いたことないよ。何それ? 職業的なもんじゃなくて、なんとなくってこと? 『気づき』?」

「……えっと、冒険者の方々もそういう風にして技術を習得していくものではないのですか?」

 ルナリアまで議論に加わり、劣勢となったレイルは残り二人を見た。
 カエデは首を横に振ったが、クオンの方は首を縦に振った。

「『気づき』によって、大幅に技術が向上……いいえ、これまでにない力を身につけるケースはあります。僕自身経験がありますから」

 レイルは沈黙して薄気味悪そうにルナリア達を見つめた。

「……まあ、いいさ」と意外と早くレイルは悩むのをやめ、

「じゃあ、ヨシュアの『心眼』とやらを信じようぜ? その『心眼』とやらでは、探索しても問題ない、ってことなんだろ?」

「ああ……古竜も……たぶん力になってくれると思う。味方……とまでは言っていいのかわからないけど……」

 謎の声については、気を失ったせいもあって、ちょっと記憶があやふやだ。

(何かをしてほしい、って話だったと思うけど……)

 これ以上、第六感だの謎の声だのについてしゃべると、レイルのツッコミの対応が大変そうだ。疑う、というわけではなさそうだが、どうにも信じきれないらしい。

 俺達は全員で移動を開始した。
 敵対行動と見なされないように、武器は抜かないようにして。

 この古代魔法時代の遺跡は、神殿を模して作られているようだった。
 無駄に長い回廊に、等間隔の柱。
 魔法的に意味があるのかどうか詳細不明だが、青白い光は、ただ単に実務的な意味だけでなく、装飾的な意味があると、芸術的な感性に乏しい自分でも一目でわかるほどだ。

「――――ッ!?」

 ピタッと、先頭を俺と並んで歩いていたレイルがいきなり足を止め、同時に俺の腕を掴んで引き止めてきた。

 この位置からは見えないが、あの高い祭壇の上に古竜がいるはずだった。
 あの穴から覗き見た時には、前方に見える巨大な祭壇の上に、眠っていたのだ。

「……どうした、レイル?」

 小声で尋ねる俺に、レイルは驚きに目を見開き、口をぱくぱくさせている。

 どうにも薄暗くてよく見えないが、レイルは何かを目視したらしい。
 少なくともドラゴンではないだろう。それならいくら遠く暗くても俺の視力でもわかるはずだ。

(いったい、なんだ?)

 耳元に口を寄せたレイルが、小声で怒鳴るという器用なことをした。

「……何が安全だよ、バカヤローー」

 それは魂からの叫びだった。
 レイルの目尻に涙が浮かんでいる。珍しく涙目だった。

「えっ? いったい、どうしたんだ、ほんとに」

「アホスヴェンとバカフォルネウスが二人揃ってやられてんぞっ!」

 酷い渾名だな。心の中ではそんな風にひょっとして呼んでたのか? などと余所事に気を取られていたせいで、レイルの言葉の意味に気づくのが若干遅れた。

「やられてる? やられてるって?」

「馬鹿野郎! 倒されてる、倒れてる、フォルネウスの杖へし折れてんぞ……!」

 数瞬の沈黙の後、やっと俺はその事実の問題の大きさに気づく。

「――――は?」

 どうやら『心眼』はまたも不発、もしくは未確認の情報があったため、誤差が生じたらしかった。
 使い慣れない力は今後あまり信用しないようにしよう。そう固く誓う俺の耳に、声が届いた。
 あの謎の声と同じ声色。

 ――【やっと来たか。さぁ、さっさとこっちに来い。そして約束通り我が望みを叶えよ】

 有無を言わせぬ声だった。

 俺は息を呑み、恨めしい目を向けるレイル達と共に、ゆっくりと祭壇に向かって進んだ。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

俺を凡の生産職だからと追放したS級パーティ、魔王が滅んで需要激減したけど大丈夫そ?〜誰でもダンジョン時代にクラフトスキルがバカ売れしてます~

風見 源一郎
ファンタジー
勇者が魔王を倒したことにより、強力な魔物が消滅。ダンジョン踏破の難易度が下がり、強力な武具さえあれば、誰でも魔石集めをしながら最奥のアイテムを取りに行けるようになった。かつてのS級パーティたちも護衛としての需要はあるもの、単価が高すぎて雇ってもらえず、値下げ合戦をせざるを得ない。そんな中、特殊能力や強い魔力を帯びた武具を作り出せる主人公のクラフトスキルは、誰からも求められるようになった。その後勇者がどうなったのかって? さぁ…

誰も要らないなら僕が貰いますが、よろしいでしょうか?

伊東 丘多
ファンタジー
ジャストキルでしか、手に入らないレアな石を取るために冒険します 小さな少年が、独自の方法でスキルアップをして強くなっていく。 そして、田舎の町から王都へ向かいます 登場人物の名前と色 グラン デディーリエ(義母の名字) 8才 若草色の髪 ブルーグリーンの目 アルフ 実父 アダマス 母 エンジュ ミライト 13才 グランの義理姉 桃色の髪 ブルーの瞳 ユーディア ミライト 17才 グランの義理姉 濃い赤紫の髪 ブルーの瞳 コンティ ミライト 7才 グランの義理の弟 フォンシル コンドーラル ベージュ 11才皇太子 ピーター サイマルト 近衛兵 皇太子付き アダマゼイン 魔王 目が透明 ガーゼル 魔王の側近 女の子 ジャスパー フロー  食堂宿の人 宝石の名前関係をもじってます。 色とかもあわせて。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

明日を信じて生きていきます~異世界に転生した俺はのんびり暮らします~

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生した主人公は、新たな冒険が待っていることを知りながらも、のんびりとした暮らしを選ぶことに決めました。 彼は明日を信じて、異世界での新しい生活を楽しむ決意を固めました。 最初の仲間たちと共に、未知の地での平穏な冒険が繰り広げられます。 一種の童話感覚で物語は語られます。 童話小説を読む感じで一読頂けると幸いです

コストカットだ!と追放された王宮道化師は、無数のスキルで冒険者として成り上がる。

あけちともあき
ファンタジー
「宮廷道化師オーギュスト、お前はクビだ」  長い間、マールイ王国に仕え、平和を維持するために尽力してきた道化師オーギュスト。  だが、彼はその活躍を妬んだ大臣ガルフスの陰謀によって職を解かれ、追放されてしまう。  困ったオーギュストは、手っ取り早く金を手に入れて生活を安定させるべく、冒険者になろうとする。  長い道化師生活で身につけた、数々の技術系スキル、知識系スキル、そしてコネクション。  それはどんな難関も突破し、どんな謎も明らかにする。  その活躍は、まさに万能!  死神と呼ばれた凄腕の女戦士を相棒に、オーギュストはあっという間に、冒険者たちの中から頭角を現し、成り上がっていく。  一方、国の要であったオーギュストを失ったマールイ王国。  大臣一派は次々と問題を起こし、あるいは起こる事態に対応ができない。  その方法も、人脈も、全てオーギュストが担当していたのだ。  かくしてマールイ王国は傾き、転げ落ちていく。 目次 連載中 全21話 2021年2月17日 23:39 更新

【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?

歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。 それから数十年が経ち、気づけば38歳。 のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。 しかしーー 「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」 突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。 これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。 ※書籍化のため更新をストップします。

異世界で魔法が使えるなんて幻想だった!〜街を追われたので馬車を改造して車中泊します!〜え、魔力持ってるじゃんて?違います、電力です!

あるちゃいる
ファンタジー
 山菜を採りに山へ入ると運悪く猪に遭遇し、慌てて逃げると崖から落ちて意識を失った。  気が付いたら山だった場所は平坦な森で、落ちたはずの崖も無かった。  不思議に思ったが、理由はすぐに判明した。  どうやら農作業中の外国人に助けられたようだ。  その外国人は背中に背負子と鍬を背負っていたからきっと近所の農家の人なのだろう。意外と流暢な日本語を話す。が、言葉の意味はあまり理解してないらしく、『県道は何処か?』と聞いても首を傾げていた。  『道は何処にありますか?』と言ったら、漸く理解したのか案内してくれるというので着いていく。  が、行けども行けどもどんどん森は深くなり、不審に思い始めた頃に少し開けた場所に出た。  そこは農具でも置いてる場所なのかボロ小屋が数軒建っていて、外国人さんが大声で叫ぶと、人が十数人ゾロゾロと小屋から出てきて、俺の周りを囲む。  そして何故か縄で手足を縛られて大八車に転がされ……。   ⚠️超絶不定期更新⚠️

こちらの異世界で頑張ります

kotaro
ファンタジー
原 雪は、初出勤で事故にあい死亡する。神様に第二の人生を授かり幼女の姿で 魔の森に降り立つ 其処で獣魔となるフェンリルと出合い後の保護者となる冒険者と出合う。 様々の事が起こり解決していく

処理中です...