追放された回復術師は、なんでも『回復』できて万能でした

新緑あらた

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第69話 予想外の形での再会

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「俺は……ゴブリンロード『心眼』との戦いを通じて、『心眼』とでも呼ぶべき第六感に目覚めたらしい」

「第六感だぁ~?」

 胡散臭そうにするレイルだったが、意外なことにベルトラントがフォローしてくれた。

「いいえ。『気づき』というものはございます。わたくしもある時、手酷い目に遭い、九死に一生を得て『嘘を見抜く力』のようなものを手に入れたのでございます」

「いやいや。聞いたことないよ。何それ? 職業的なもんじゃなくて、なんとなくってこと? 『気づき』?」

「……えっと、冒険者の方々もそういう風にして技術を習得していくものではないのですか?」

 ルナリアまで議論に加わり、劣勢となったレイルは残り二人を見た。
 カエデは首を横に振ったが、クオンの方は首を縦に振った。

「『気づき』によって、大幅に技術が向上……いいえ、これまでにない力を身につけるケースはあります。僕自身経験がありますから」

 レイルは沈黙して薄気味悪そうにルナリア達を見つめた。

「……まあ、いいさ」と意外と早くレイルは悩むのをやめ、

「じゃあ、ヨシュアの『心眼』とやらを信じようぜ? その『心眼』とやらでは、探索しても問題ない、ってことなんだろ?」

「ああ……古竜も……たぶん力になってくれると思う。味方……とまでは言っていいのかわからないけど……」

 謎の声については、気を失ったせいもあって、ちょっと記憶があやふやだ。

(何かをしてほしい、って話だったと思うけど……)

 これ以上、第六感だの謎の声だのについてしゃべると、レイルのツッコミの対応が大変そうだ。疑う、というわけではなさそうだが、どうにも信じきれないらしい。

 俺達は全員で移動を開始した。
 敵対行動と見なされないように、武器は抜かないようにして。

 この古代魔法時代の遺跡は、神殿を模して作られているようだった。
 無駄に長い回廊に、等間隔の柱。
 魔法的に意味があるのかどうか詳細不明だが、青白い光は、ただ単に実務的な意味だけでなく、装飾的な意味があると、芸術的な感性に乏しい自分でも一目でわかるほどだ。

「――――ッ!?」

 ピタッと、先頭を俺と並んで歩いていたレイルがいきなり足を止め、同時に俺の腕を掴んで引き止めてきた。

 この位置からは見えないが、あの高い祭壇の上に古竜がいるはずだった。
 あの穴から覗き見た時には、前方に見える巨大な祭壇の上に、眠っていたのだ。

「……どうした、レイル?」

 小声で尋ねる俺に、レイルは驚きに目を見開き、口をぱくぱくさせている。

 どうにも薄暗くてよく見えないが、レイルは何かを目視したらしい。
 少なくともドラゴンではないだろう。それならいくら遠く暗くても俺の視力でもわかるはずだ。

(いったい、なんだ?)

 耳元に口を寄せたレイルが、小声で怒鳴るという器用なことをした。

「……何が安全だよ、バカヤローー」

 それは魂からの叫びだった。
 レイルの目尻に涙が浮かんでいる。珍しく涙目だった。

「えっ? いったい、どうしたんだ、ほんとに」

「アホスヴェンとバカフォルネウスが二人揃ってやられてんぞっ!」

 酷い渾名だな。心の中ではそんな風にひょっとして呼んでたのか? などと余所事に気を取られていたせいで、レイルの言葉の意味に気づくのが若干遅れた。

「やられてる? やられてるって?」

「馬鹿野郎! 倒されてる、倒れてる、フォルネウスの杖へし折れてんぞ……!」

 数瞬の沈黙の後、やっと俺はその事実の問題の大きさに気づく。

「――――は?」

 どうやら『心眼』はまたも不発、もしくは未確認の情報があったため、誤差が生じたらしかった。
 使い慣れない力は今後あまり信用しないようにしよう。そう固く誓う俺の耳に、声が届いた。
 あの謎の声と同じ声色。

 ――【やっと来たか。さぁ、さっさとこっちに来い。そして約束通り我が望みを叶えよ】

 有無を言わせぬ声だった。

 俺は息を呑み、恨めしい目を向けるレイル達と共に、ゆっくりと祭壇に向かって進んだ。
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