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第23話 ゴブリンの連携
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警戒していたつもりだったが、いきなりその小さな横穴から高速で矢が飛び出し、俺は反射的に刀で弾きつつも驚いた。
(――ゴブリン・アーチャー!?)
ゴブリン・アーチャーも、このダンジョンを支配していたゴブリンロードとの決戦時にいなかった。
それもそのはず、遮蔽物が苦手なゴブリン・アーチャーも、ゴブリンの騎兵とでもいうべきゴブリン・ライダーも、このような狭いダンジョンでは力を発揮しにくい。
弓は使いにくいし、ウルフの機動力も削がれてしまうからだ。
実際、ゴブリン達は横穴の中でつっかえそうになっている気配がする。
ゴブリン・ライダーもゴブリン・アーチャーも平原などの広々とした場所でこそ特性を活かせるのだ。
ゴブリンロードも馬鹿ではないから、ダンジョンに適した兵種のゴブリンを作り出す。
だからこそ、ここを根城にしたゴブリンロード『片角』を討伐した際、冒険者パーティー「暁」のメンバーの誰も、ここにゴブリン・メイジやホブゴブリンがいても、ゴブリン・ライダーやゴブリン・アーチャーがいないことを不自然だとは口にしなかったのだ。
――むしろ、今のこの状況こそが不自然。
不思議な状況に考え込みそうになる俺と同様に、敵側のゴブリン達も戸惑っている様子が伝わってくる。
(そうか――向こうも不意の遭遇戦か)
これは、低ランク冒険者が見落としがちな状況の一つ。
敵味方ともに予想していない遭遇戦に陥ったケースだ。
新人冒険者はまずい状況に陥ると、つい自分達だけが不利になったと思い込んでしまう。
だが実際には、冒険者側が慌てているのと同じくらい、モンスター側も慌てている状況も少なくない。
飛来した矢を刀で払った俺の隙を突き、ゴブリン・ライダーが飛び出してくる。
それも何匹も立て続けに。
いくら機動力があっても、出てくる場所がわかっていれば対応は楽だ。
三分の二は出現と同時に瞬時に狩ることができたが、穴の奥から射るゴブリン・アーチャーの矢が邪魔で殺し切ることはできなかった。
ルナリアに迫るゴブリン・ライダーを斬るために無茶な姿勢になった瞬間、ゴブリン・アーチャーの矢が刀を握る俺の手に当たりそうになる。
「――っ!」
間違いなく偶然だ。
ゴブリンの未熟な腕ででそのような精密な狙いをつけられるはずがない。
咄嗟に刀を放すことになったが、ただでは終わらせない。
ルナリアに迫るゴブリン・ライダーに刀を振ろうとした勢いのまま手を放し、投げナイフのようにゴブリンの胴体に刃を深々と突き立てる。
絶命したゴブリン・ライダーの緑色の血を顔に浴びたウルフは視界を奪われた。
そしてベルトラントとカエデによって危なげなく倒された。
(良かった……ルナリアさんは無事だ)
だが、素手となった俺を見て、ゴブリン達は好機と判断したのだろう。
ずっと横穴に潜んでいたゴブリン・アーチャーも含め、ゴブリン・ライダー達が飛び出してきた。
ゴブリン・ライダー三匹とゴブリン・アーチャー二匹と俺は対峙する。
もう横穴に潜むものの気配はない。
(ゴブリン・ライダーが前衛で、ゴブリン・アーチャーが後衛か)
しっかりと役割分担している。
しかも、ゴブリン・ライダーが突進の予備動作である前傾姿勢を取ることで、ゴブリン・アーチャーの射線を遮ることなく、俺に狙いを定めることができていた。
この狭い空間で奴らができる最も効果的なコンビネーションを迷うことなく選択したゴブリン達に、俺は警戒を強めつつ松明の炎で牽制し、いつでも回避できるようにした。
(――ゴブリン・アーチャー!?)
ゴブリン・アーチャーも、このダンジョンを支配していたゴブリンロードとの決戦時にいなかった。
それもそのはず、遮蔽物が苦手なゴブリン・アーチャーも、ゴブリンの騎兵とでもいうべきゴブリン・ライダーも、このような狭いダンジョンでは力を発揮しにくい。
弓は使いにくいし、ウルフの機動力も削がれてしまうからだ。
実際、ゴブリン達は横穴の中でつっかえそうになっている気配がする。
ゴブリン・ライダーもゴブリン・アーチャーも平原などの広々とした場所でこそ特性を活かせるのだ。
ゴブリンロードも馬鹿ではないから、ダンジョンに適した兵種のゴブリンを作り出す。
だからこそ、ここを根城にしたゴブリンロード『片角』を討伐した際、冒険者パーティー「暁」のメンバーの誰も、ここにゴブリン・メイジやホブゴブリンがいても、ゴブリン・ライダーやゴブリン・アーチャーがいないことを不自然だとは口にしなかったのだ。
――むしろ、今のこの状況こそが不自然。
不思議な状況に考え込みそうになる俺と同様に、敵側のゴブリン達も戸惑っている様子が伝わってくる。
(そうか――向こうも不意の遭遇戦か)
これは、低ランク冒険者が見落としがちな状況の一つ。
敵味方ともに予想していない遭遇戦に陥ったケースだ。
新人冒険者はまずい状況に陥ると、つい自分達だけが不利になったと思い込んでしまう。
だが実際には、冒険者側が慌てているのと同じくらい、モンスター側も慌てている状況も少なくない。
飛来した矢を刀で払った俺の隙を突き、ゴブリン・ライダーが飛び出してくる。
それも何匹も立て続けに。
いくら機動力があっても、出てくる場所がわかっていれば対応は楽だ。
三分の二は出現と同時に瞬時に狩ることができたが、穴の奥から射るゴブリン・アーチャーの矢が邪魔で殺し切ることはできなかった。
ルナリアに迫るゴブリン・ライダーを斬るために無茶な姿勢になった瞬間、ゴブリン・アーチャーの矢が刀を握る俺の手に当たりそうになる。
「――っ!」
間違いなく偶然だ。
ゴブリンの未熟な腕ででそのような精密な狙いをつけられるはずがない。
咄嗟に刀を放すことになったが、ただでは終わらせない。
ルナリアに迫るゴブリン・ライダーに刀を振ろうとした勢いのまま手を放し、投げナイフのようにゴブリンの胴体に刃を深々と突き立てる。
絶命したゴブリン・ライダーの緑色の血を顔に浴びたウルフは視界を奪われた。
そしてベルトラントとカエデによって危なげなく倒された。
(良かった……ルナリアさんは無事だ)
だが、素手となった俺を見て、ゴブリン達は好機と判断したのだろう。
ずっと横穴に潜んでいたゴブリン・アーチャーも含め、ゴブリン・ライダー達が飛び出してきた。
ゴブリン・ライダー三匹とゴブリン・アーチャー二匹と俺は対峙する。
もう横穴に潜むものの気配はない。
(ゴブリン・ライダーが前衛で、ゴブリン・アーチャーが後衛か)
しっかりと役割分担している。
しかも、ゴブリン・ライダーが突進の予備動作である前傾姿勢を取ることで、ゴブリン・アーチャーの射線を遮ることなく、俺に狙いを定めることができていた。
この狭い空間で奴らができる最も効果的なコンビネーションを迷うことなく選択したゴブリン達に、俺は警戒を強めつつ松明の炎で牽制し、いつでも回避できるようにした。
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