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第8話 願い
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ロケットペンダントが戻ってきたことをルナリア達三人がひとしきり喜んだ後、俺はルナリアに刀も差し出した。
俺は心の中だけで刀に別れを告げる。
(……短い付き合いだったな、相棒。でも本当に助かったよ)
倒したのはゴブリン十二匹だけだが、冒険者パーティー「暁」を追放されて初めての戦いで勝利に導いてくれた武器だ。
いくら回避能力に優れていても、素手では武装したゴブリン達を相手に三人を救うのは難しかっただろう。
この刀がなければあそこまで上手くはいかなかったはずだ。
(――ありがとう)
刀という希少性。
黒髪と関連性があるという逸話。
不思議と手に馴染む感触……。
俺は刀にじっと視線を落として感慨に耽っていたが、一向にルナリアの手が伸びてこない。
不思議に思って視線を上げると、なぜか彼女は祈るように手を組み、俺に何かを訴えかけるような目をしていた。
「どうかヨシュア様、一つお願いを聞き届けていただけませんでしょうか? もしその願いを叶えていただけるなら、我が家の家宝であるその刀を差し上げます。――いいえ。それだけではなく、私にできることなら……なんだっていたします」
家宝の刀を与えるという発言には、目を丸くしただけで突っ込まなかったルナリアの家臣二人だが、さすがに女主人が「なんでもする」などと口にしたので、窘めるようにベルトラントが口を挟んだ。
「お嬢様! そのようなはしたない発言は……!」
「でも、もうそれしかないのです! 弟とお母様をお救いするには!」
にわかに口論し始めた二人に、俺は困惑しながら一旦刀を腰に戻し、ただ一人冷静な様子のカエデに向き直る。
「いったい、どういうことだ? まったく事情が見えないんだが」
「お嬢様のお願いというのは、この山に生息するという噂のある伝説の霊薬エリクサーを採取することなのでございます」
その発言を聞いた俺はぽかんと口を開けた。
――伝説の霊薬エリクサーを入手してほしい。
もし冒険者ギルドで依頼すれば間違いなくSランク相当。
報酬金額も「捜索」だけで、未発見であっても、金貨を皮袋一杯支払うことになるだろう。
そんなとんでもない難易度の依頼だ。
俺は、途端に頭痛を覚えたように額を押さえ、恐る恐る鸚鵡返しに尋ねた。
「『この山に生息するという噂のある伝説の霊薬エリクサーを採取すること』。それがルナリアさん達のお願いでいいんですか?」
ルナリアとベルトランとは口論をやめ、カエデと一緒に不思議そうに俺の様子を見つめた。
俺が断るでもなく、受けるでもなく、顔をしかめてそのまま問い返したのが不思議なのだろう。
「ヨシュア様はエリクサーについて何かご存知なのですか!?」
俺の反応にルナリアが食いついてしまう。
「落ち着いて聞いてほしいんだが……」
「はい!」
両手を拳にして意気込むルナリアに、俺は続く言葉を告げるのが躊躇われた。
それでもきちんと伝えるべきだろう。
ルナリアだけでなく、ベルトランもカエデもこれ以上ないほど真剣な顔で俺を見つめてくる。
ルナリアの母と弟は、家臣の二人にとっても大切な存在なのだろう。
俺は重く感じる口を開き、彼女達に説明することにした。
俺は心の中だけで刀に別れを告げる。
(……短い付き合いだったな、相棒。でも本当に助かったよ)
倒したのはゴブリン十二匹だけだが、冒険者パーティー「暁」を追放されて初めての戦いで勝利に導いてくれた武器だ。
いくら回避能力に優れていても、素手では武装したゴブリン達を相手に三人を救うのは難しかっただろう。
この刀がなければあそこまで上手くはいかなかったはずだ。
(――ありがとう)
刀という希少性。
黒髪と関連性があるという逸話。
不思議と手に馴染む感触……。
俺は刀にじっと視線を落として感慨に耽っていたが、一向にルナリアの手が伸びてこない。
不思議に思って視線を上げると、なぜか彼女は祈るように手を組み、俺に何かを訴えかけるような目をしていた。
「どうかヨシュア様、一つお願いを聞き届けていただけませんでしょうか? もしその願いを叶えていただけるなら、我が家の家宝であるその刀を差し上げます。――いいえ。それだけではなく、私にできることなら……なんだっていたします」
家宝の刀を与えるという発言には、目を丸くしただけで突っ込まなかったルナリアの家臣二人だが、さすがに女主人が「なんでもする」などと口にしたので、窘めるようにベルトラントが口を挟んだ。
「お嬢様! そのようなはしたない発言は……!」
「でも、もうそれしかないのです! 弟とお母様をお救いするには!」
にわかに口論し始めた二人に、俺は困惑しながら一旦刀を腰に戻し、ただ一人冷静な様子のカエデに向き直る。
「いったい、どういうことだ? まったく事情が見えないんだが」
「お嬢様のお願いというのは、この山に生息するという噂のある伝説の霊薬エリクサーを採取することなのでございます」
その発言を聞いた俺はぽかんと口を開けた。
――伝説の霊薬エリクサーを入手してほしい。
もし冒険者ギルドで依頼すれば間違いなくSランク相当。
報酬金額も「捜索」だけで、未発見であっても、金貨を皮袋一杯支払うことになるだろう。
そんなとんでもない難易度の依頼だ。
俺は、途端に頭痛を覚えたように額を押さえ、恐る恐る鸚鵡返しに尋ねた。
「『この山に生息するという噂のある伝説の霊薬エリクサーを採取すること』。それがルナリアさん達のお願いでいいんですか?」
ルナリアとベルトランとは口論をやめ、カエデと一緒に不思議そうに俺の様子を見つめた。
俺が断るでもなく、受けるでもなく、顔をしかめてそのまま問い返したのが不思議なのだろう。
「ヨシュア様はエリクサーについて何かご存知なのですか!?」
俺の反応にルナリアが食いついてしまう。
「落ち着いて聞いてほしいんだが……」
「はい!」
両手を拳にして意気込むルナリアに、俺は続く言葉を告げるのが躊躇われた。
それでもきちんと伝えるべきだろう。
ルナリアだけでなく、ベルトランもカエデもこれ以上ないほど真剣な顔で俺を見つめてくる。
ルナリアの母と弟は、家臣の二人にとっても大切な存在なのだろう。
俺は重く感じる口を開き、彼女達に説明することにした。
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