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第Ⅳ章 天国へ至る迷宮

新米たち 13

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ラックがやがて観念したかのように口を開いた。

「俺さ、さっきちょっとだけ嘘ついた」

 夜の闇の中、三人の足音だけが響く。

「俺、剣だけじゃない。お前らと一緒にいる『関係』も捨てたくないんだ。だから……どっかの兵士なんかになりたくなかったんだ」

「それは俺もおんなじだ……まあ、幼馴染みだしな」

「腐れ縁じゃなかったの?」

 呟くようなエーデの言葉に、無言が返ってきた。

「辞めるのか、俺たち」

「さっき辞めるって言っただろ」

「辞めたくねえな」

「俺だってそうさ」

「でも、私らに才能なんてないもの」

 深夜に温泉宿「しのびゆ」の食堂に戻り、厨房に顔を出した。
 どうやら大勢の宴会は食堂ではなく、どこかの部屋でやっているらしく、ここは閑散としていた。
 よく見れば、宴会場という看板と矢印もあった。

「オゥバァさん、すみません。遅くなりました」

「ん。大丈夫。代わりに夕飯食べに来た知り合いの老人に頼んだから」

「あの人ですか、もしかして……」

 驚愕に染まった顔を見たオゥバァは、頷いた。

「たぶん、その人で間違いないんじゃないかな」

 黙り込んだ三人を見て、オゥバァは不思議そうにした。

「どうしたの?」

「私たち冒険者を辞めようと思って……」

「ふぅん。いいんじゃない」

「え?」

「だって、無理して続けるもんじゃないし、無理して仲間を失いでもしたら、きっと後悔するよ」

「でも、俺たち離れ離れになりたくなくて……」

 せつなそうな、悔しそうな顔をする三人の顔を順に眺めたオゥバァは、笑ってから何やら小さな札を取り出した。

「別れたくないなら、借金でも作れば?」

「は?」

「花札っていうのをフウマに教わったんだけど、私、器用だし、魔法使えるからいろいろと細工できてさ。それでセーレアっていう奴をはめたんだ」

「はあ?」

 いきなりの話に呆然とする三人。

「それも別れたくなかったから。綺麗な方法じゃなくても、泥臭くても、いいんじゃないかな?」

「いいわけあるかっ……てか、まさかセーレアの借金地獄の真相をこんなところで聞くことになるとは……」

 呆れたような男の声がして、四人は振り向いた。特にオゥバァは非常に驚いた顔をしていた。

「あーっ! ずるい! 気配を消して動いてたでしょ!?」

「ハズレだ。本気でスキルを片っ端から使っていた。気配を消してただけじゃない。……今日はイヌガミのことも追っかけてたし」

「……うぅー……まさか、セーレアに言うつもり?」

「言っても言わなくても変わらないさ。セーレアだってさすがにあんだけ負けたら、何かトリックがあるって気づいただろうけど、それが何かわからなかったんだしさ、あの場では。だから反故にしたりはしないだろ」

「意外な反応。もっと怒るかと……」

「怒るのは俺じゃなくて、セーレアの役目だろ? 俺、後でうっかり口を滑らせるかもしれないから、もし気が気じゃないなら、自分からセーレアに伝えた方がいいぞ? 早めに」

「くっ……なんだか、本当に変わったわね、アンタ……。最初森であった頃の純粋無垢だった頃が懐かしいわ」

「懐かしがられるほど前のことじゃ……いや、もうあれからそのくらいの年月は流れたか…………」

 どこか遠い目をした二人だったが、オゥバァはさっさと手を拭くと、宴会場という表示のある方に歩いていった。
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