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第Ⅳ章 天国へ至る迷宮
新たな勇者の動向
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「シャフィール……、君が来たということは――」
俺は、久しぶりに会った彼女が真面目な顔をしているのを見て、どうやら真剣な話し合いをするために来たのだと悟った。
てっきりリノが軽い調子で言い、シャフィールの来訪をサプライズみたいに黙っていたので、遊びに来たのかという希望をかすかに持ってしまったのだが。
「はい。……恐れていた事態が起きました。――〈治癒神の御手教会〉や王家、赤魔道士組合などに魔族領の動きが勘付かれつつあるようです」
「どういうことだ?」
魔族領は、数百年の長きにわたって、不毛の大地と思われてきた。旨味はなく、リスクだけがある土地。そんな場所をわざわざ訪ねるような者はいなかったはずだ。
「どうやら、新たな『勇者』が誕生し、最も難易度の高いダンジョンを求めたそうです」
「名声を高めるためだよな」
かつてアレクサンダーたちが、宗教都市ロウの近くの森にある最難関ダンジョンを攻略しようとした時のように、名声が目的だろう。
「はい。その通りです。しかし、めぼしい最難関ダンジョンは、立て続けに攻略されてしまいました」
「……ん?」
なんのことかわからず、首を傾げた俺に、シャフィールは苦笑した。
「どっちもフウマさんが攻略したものですよ。宗教都市ロウ近くの最難関ダンジョンも、水産都市エレフィンの近くの最難関ダンジョンも」
「ああ……」
「宗教都市ロウという、大都市の近くに古来からあり、よく知られていた最難関ダンジョン。そこが先代の勇者パーティーに攻略されました。そして、それほど時間を空けずに、水産都市エレフィンの近くの最難関ダンジョン『天涯』まで攻略されたのです」
「つまり、最難関ダンジョンの株みたいなものが暴落したわけか。『大したことない』みたいな」
「そういうことです。……新たな勇者にとっては、ここでまた最難関ダンジョンを攻略したとしても、大した名声の上昇は狙えないと考えたのでしょう。そこで、誰もこの数百年間なし得なかった偉業をなそうと考えたのです」
「偉業って……まさか…………」
最悪の展開が脳裏に浮かぶ。
「魔族領――それこそが最難関ダンジョンにも勝る前人未到の地と考えたのでしょう」
「ちょっと待って、その勇者パーティーはもう旅立ったのか?」
「いいえ。準備にまだしばらくかかるでしょう。なにせ大所帯ですし」
「大所帯って……」
「今回も、勇者をバックアップする大組織が複数存在するんです。遠く離れた魔族領にいる私でさえ情報を掴めるほど、大々的に広報活動も行っているそうですよ」
俺は、久しぶりに会った彼女が真面目な顔をしているのを見て、どうやら真剣な話し合いをするために来たのだと悟った。
てっきりリノが軽い調子で言い、シャフィールの来訪をサプライズみたいに黙っていたので、遊びに来たのかという希望をかすかに持ってしまったのだが。
「はい。……恐れていた事態が起きました。――〈治癒神の御手教会〉や王家、赤魔道士組合などに魔族領の動きが勘付かれつつあるようです」
「どういうことだ?」
魔族領は、数百年の長きにわたって、不毛の大地と思われてきた。旨味はなく、リスクだけがある土地。そんな場所をわざわざ訪ねるような者はいなかったはずだ。
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「名声を高めるためだよな」
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「はい。その通りです。しかし、めぼしい最難関ダンジョンは、立て続けに攻略されてしまいました」
「……ん?」
なんのことかわからず、首を傾げた俺に、シャフィールは苦笑した。
「どっちもフウマさんが攻略したものですよ。宗教都市ロウ近くの最難関ダンジョンも、水産都市エレフィンの近くの最難関ダンジョンも」
「ああ……」
「宗教都市ロウという、大都市の近くに古来からあり、よく知られていた最難関ダンジョン。そこが先代の勇者パーティーに攻略されました。そして、それほど時間を空けずに、水産都市エレフィンの近くの最難関ダンジョン『天涯』まで攻略されたのです」
「つまり、最難関ダンジョンの株みたいなものが暴落したわけか。『大したことない』みたいな」
「そういうことです。……新たな勇者にとっては、ここでまた最難関ダンジョンを攻略したとしても、大した名声の上昇は狙えないと考えたのでしょう。そこで、誰もこの数百年間なし得なかった偉業をなそうと考えたのです」
「偉業って……まさか…………」
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「ちょっと待って、その勇者パーティーはもう旅立ったのか?」
「いいえ。準備にまだしばらくかかるでしょう。なにせ大所帯ですし」
「大所帯って……」
「今回も、勇者をバックアップする大組織が複数存在するんです。遠く離れた魔族領にいる私でさえ情報を掴めるほど、大々的に広報活動も行っているそうですよ」
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