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第Ⅳ章 天国へ至る迷宮

考えすぎるのもよくない

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「他の方を呼んでみては?」

 シャフィールの提案に従い、俺は厨房を出てすぐのところにいた赤ら顔のドワーフたちを連れてきた。
 三人ほど壁にもたれて休んでいたので、ちょうど良かった。

「うむ。野菜っちゅーもんは、生でも美味いな」

 しゃくしゃくと生野菜をかじるドワーフ。

「こっちの味噌とか塩とか適当につけてもいけるな」

 赤ら顔で、半目のようになったドワーフたちは、野菜の山に手を伸ばしている。

 「何か美味しい料理にできないか?」とアイデアを募ったはずが、生で野菜をかじっている。

「い、いけるのか……? 生のまま、ただ切った食材と、調味料そのままをテーブルに置くだけで……?」

 俺は難しく考えすぎていたのかもしれない。ここは魔族領。少なくない者たちが食料難に陥っている場所なのだ。

 俺とシャフィールは、顔を輝かせ、山盛りの野菜と調味料を向こうに運んで、どんとテーブルに載せた。

 瞬間、酔っ払ったセーレアを筆頭に、ドワーフたちからブーイングが上がった。

「料理人の横暴だ! こんなもの料理でもなんでもない! ブーブー!」

「おい! なんで、アイデア一つ出さなかったセーレアが最も文句を言ってるんだ!」

「だいたいニンジンやジャガイモは火を通しなさいよ! そんなの常識でしょ!?」

「うっ……まあ、言いたいことはわかるが……でも、あっちにいるドワーフたちは」

「奴らはドワーフの面汚し」

 何やらお年寄りのドワーフが、皺くちゃの顔にさらに皺を寄せて苦々しく言ってきた。

「ドワーフのくせに、酒に弱いんじゃ」

「つまり、ひどく酔っぱらった状態だから気にしなかっただけでしょ」

 セーレアがお年寄りのドワーフの話を引き継ぐ。

「ああ。なるほど……」

 壁にもたれて休んでいたんじゃなくて、酔いつぶれていただけか。
 そして、俺は酔いつぶれた連中に意見を求めたわけだ。

(つくづく間が悪いというか、聞く相手を間違えることがあるな……)

 シャフィールが困っていると思ったのか、ハイエルフたちが近づいてきて、少しだけ料理を作ってくれた。
 だが、薄味の野菜炒めには、酔っぱらいたちの好みに合わなかったらしく、閉口している。

「……かつての失敗は、相談できなかったことが原因の一つかと思ったが、こうして今相談しても、料理の問題一つ解決できないのか…………」

 俺は成長しているいるのか、いないのか。
 もしかしたら、ずっと俺は成長していないのかもしれない……。
 そんな言い知れない不安が襲ってきた。

 そんな時、宴会場となる洞窟に、ぬっと巨大なイノシシが顔を出した。

「うぉおっ!!」

 ドワーフたちを中心とした様々な種族が、酔いが吹っ飛んだというような驚きの声を上げた。
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